経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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18/4/2(980号)
森友学園問題の真相

    怪しくなった「忖度」

    最初に、先週号で取上げた「米中貿易戦争」についてもう少し述べる。筆者は、この争いの勝敗は「トランプ大統領の大勝利」と予想した。当初、これに対し中国は米国の対中制裁に「報復も辞さない」と息巻いていた。しかし実際には、水面下で中国は「米国製の半導体や自動車の輸入増でどうか」と米国に打診しているという。既に米国の圧倒的な勝利が見えている。

    「米中貿易戦争」と大袈裟に騒いだのは、実態を知らないマスコミが「このままでは両国の間で報復合戦が起る」と間違った判断をしたからである。米国側には対中国で沢山の攻撃材料があるのに対し、中国には有力な報復手段はほとんどない。中国の対抗策は、輸出農産物の産地が選挙区の政治家へのロビー活動くらいである。つまり「戦争」には成り得ない。せいぜいこれは米中間の「貿易摩擦」であり、中国はもっぱら防戦一辺倒になると筆者は思っている。

    トランプ政権の対米黒字削減要求は、当然、そのうち日本にも向けられる。日本は今のうちに対策を考えておく必要がある。筆者は、昨年の日米首脳会談の際に17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」でいくつかの対策を提案した。具体的には「米国からのNLG輸入」「アラスカ原油の開発投資と原油輸入」「財政政策による内需拡大」などである。しかしこれまで日本の対米貿易黒字削減策は手付かずの状態である。もちろん消費税増税はとんでもない話であり、むしろ安倍政権は内需拡大のため5%への引下げを打出すべきと筆者は考える。


    さて本題の森友学園問題である。本誌は、加計学園問題をかなり取上げたが、森友学園問題の方はほとんど取上げてこなかった。これは色々な事情によって、取上げにくかったからである。一つにはメディアが伝える情報に片寄りがあり、肝腎な話が全く報道されないことが挙げられる。また決裁文書が改竄されていたことも影響している。

    まず安倍政権の倒閣を目指すメディアは、安倍総理の責任でこの問題が起ったという方向で報道を行ってきた。そのターゲットとなったのが昭恵総理夫人であった。まず日本のメディアは、昭恵夫人サイドが直接・間接的に、国有地の値下げに関与していたことを示す証拠集めに奔走した。これが無理筋と分ると、今度は近畿財務局や財務省が昭恵夫人に「忖度」し異常な値引きになったというシナリオを作り、この線に沿った報道を連日繰り替えした。


    しかし仮に公務員が「忖度」をしたとしても、「忖度」された方は関知しないのが普通である。もちろん仮に「忖度」に問題があっても、「忖度」された方には法的な責任はない。せいぜい問題が生じるような「忖度」がなされないよう注意するしかない。

    ところが安倍政権倒閣に燃えるメディアは、「忖度」を行わせる行動が悪いという論理で政権を攻めている。決裁文書の改竄まで、根拠がないのに官僚の安倍政権への「忖度」という話を出している。日本のメディアの中には「忖度を迫られた官僚が可哀想」といった屈折した報道を行っているところまである。与党にもこれに乗っかり、同様の発言をしている政治家がいる。もっとも歪んでいてもこのキャンペーンには効果があって、内閣支持率は急落している。

    しかし官僚によるこれら二つの「忖度」話(国有地の値下げと決裁文書の改竄)は、佐川前国税庁長官の国会での証人喚問での答弁を聞く限り怪しくなった。実際、佐川氏の証人喚問後、メディアの森友学園問題追求の熱気は急速に冷めた。攻撃している野党も、次の一手がないようだ。

    一番重要な問題点は、何故、国有地がタダ同然で売却されたかであったはずである。ところが問題発覚から1年も経つのに、メディアと野党政治家はこの真相に全く迫っていない。いまだに「昭恵総理夫人が」と言っているのを見ると、日本の野党は完全に終わっている。むしろ真相が明らかになると、野党政治家にとって不都合なことがあるとさえ感じられる。


    大阪地検が「闇」にどこまで迫れるか

    まず異常な値引きによって国有地が売却された背景を考える必要がある。この原因はこの土地を近畿財務局が売り急いだからと筆者は見ている。しかしもっと正確に言うと近畿財務局だけではなく、土地の所有者である国交省大阪航空局も売却を急いでいたということになろう。むしろ一番売り急いだのは近畿財務局ではなく、大阪航空局という見方もできると筆者は思っている。もっとも売却を急いだのが大阪航空局ということになれば、昭恵夫人はさらに関係が薄くなる。

    しかし不思議なことに、メディアと野党はこの重要な点を取上げようとしないのである。証人喚問でもこの点に野党の質問者は触れようともしなかった。この点に繋がる質問を行ったのは唯一公明党の横山信一参議院議員だけである。これに関し佐川氏は「当時、国有地売却に財務省が積極的であり、どうしてもこの土地を売りたかった」と答弁している。

    この答えを聞けば、当然、次は「何故、土地の売却を急いだのか」という質問を行ってしかるべきである。しかし横山議員はこの質問をせず、次の質問に移った。他にこれに関する質問を行った議員はいなかった。午後に質問を行った衆議院議員の質問者もこれには触れていない。筆者は、この点こそが森友学園問題の核心と思っている。


    財務省は土地を売って処分したかったが、特例で8年という長い定期借地契約を結んだ(定期借地契約は通達で原則3年まで)。売却を急いでいたことは、改竄前の文章にも書かれているという。ところが森友が問題の小学校用地をボーリングしてみると新たなゴミが出てきた。これを元に森友の弁護士に「これでは開校が遅れるので、損害賠償請求も」と凄まれたのである。損害賠償の額によっては、売却額がマイナスに陥る事態に直面したのである。おそらく土地を早く処分したかった近畿財務局と大阪航空局は協議したはずである。

    ただ近畿財務局と大阪航空局で、土地売却を急いだ理由は異なると筆者は見ている(大阪航空局はとにかく処分を急ぎ、近畿財務局の方は最初は定期借地の問題であり、後にゴミによる瑕疵担保責任の問題が発生)。ちなみにこの問題が起ったのは、昭恵夫人の「いい土地ですね」話の前である。

    そこで大阪航空局が不動産鑑定を行って、大幅な値引きとなった。ここで重要なポイントは、不動産鑑定を行ったのが近畿財務局ではなく大阪航空局に出入りしていた鑑定士(業者)という点である。それにしても問題になった大幅な値引きの理由となった不動産鑑定が、本当に適正に行われたのか追求される必要がある。佐川氏の方は、不動産鑑定が法令により操作不能と証人喚問で答えている。

    たしかに以前にもっと高い価格でこの用地を買いたいという者がいたという。したがって森友に売る必要はなかったのではという話がある。しかし新たなゴミが見つかったのは、森友と定期借地契約を結んだ後である。これまでメディアと野党の関心は近畿財務局と財務省だけに集中し、不思議なことに同様に深く関わったと見られる大阪航空局を全く問題にしてこなかった。


    森友学園用地の隣に豊中市の野田中央公園がある。この敷地も以前は大阪航空局の所有の国有地であり、2010年頃に豊中市に売却されている。鑑定価格は14.2億円であったが、なんと補助金が14億円拠出され、たった2千万円で売却されている(しかも補助金の金額が決まった後に鑑定が行われたという話まである)。当時、豊中市議会でも「夢のような話です」という声が上がったという(籠池氏の「神風」発言と全く同じ)

    ここからは未確認の伝聞になる(筆者はほとんどが本当と思っている)。森友への値引きのアイディアは大阪航空局から出たという。野田中央公園と同様に補助金という手もあったが、予算措置が間に合わないので値引きで対応するよう、近畿財務局に持ち掛けたという。これに使われたのが「新たなゴミ」ということになる(大阪航空局がゴミの存在を事前に把握していたかもポイントになる)。


    大阪航空局所有の国有地が、タダ同然の値段で売却されているこれらの事例は昨年の国会でも出ていた。たしかこれら2件(森友と野田中央公園)の他にもう1件あったと記憶している。しかし不思議なことにこれらの話はその後誰も触れなくなった。メディアと野党は、ターゲットを財務省ルートと昭恵夫人に絞って攻撃を開始している。

    この話が再び取上げられるとしたなら、改竄前の文章が出てきたことと今回の佐川氏の証人喚問がきっかということになる。これらの土地を大阪航空局が所有したのは、航空機の騒音が問題になり所有者から買取り請求が出たからである。

    それにしても大阪航空局が、大きな補助金や大幅値引きを使ってもこれらの所有地を早く処分したがったのは「謎」である。これらの土地を巡って何かディープな「闇」でもあるような印象がある。筆者は、真相解明には大阪地検の捜査結果を待つ他はないと思っている。ただ大阪地検がどこまで踏込むか不明である。ちなみに野田中央公園に14億円もの補助金拠出を決めたのは民主党政権の時である。 



最近けっこう大きな出来事が続いている。来週はその中からテーマを選びたい。

ドル・円レートは、104円台から106円台まで少し戻した。米ドルを売り越していた投機筋が、4半期末のポジション調整でドルを買戻したのである。しかし休み明けにならなければ、今後の円レートの動向は分らない。また外資は3ヶ月近くも日本株を売り続けている。何事もなければ休み明けから、外資が日本株を買戻す可能性は高いという話がある。



18/3/26(第979号)「米中貿易戦争」
18/3/19(第978号)「米朝主脳会談を推理」
18/3/12(第977号)「トランプ政権の脆弱な経済スタッフ」
18/3/5(第976号)「米国でのシニョリッジ政策」
18/2/26(第975号)「世界的な「金余り」の実態」
18/2/19(第974号)「VIX指数の不正操作」
18/2/12(第973号)「VIX指数暴落か」
18/2/5(第972号)「日本政府の貸借対照表」
18/1/29(第971号)「日本の経済論壇の病根」
18/1/22(第970号)「再びノストラダムスの大予言」
18/1/15(第969号)「今年のキーワードは「渾沌」」
17/12/25(第968号)「狙いは需要創出政策の阻止」
17/12/18(第967号)「経済論議混迷の根源はNAIRU」
17/12/11(第966号)「日本の経済の専門家はおかしい」
17/12/4(第965号)「需要で日本の経済成長は決まる」
17/11/27(第964号)「続・「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」
17/11/20(第963号)「PB黒字化は本当に国際公約か」
17/11/13(第962号)「これからの重大な政治課題」
17/11/6(第961号)「旧民進党の研究」
17/10/26(第960号)「48回衆議員選の分析」
17/10/16(第959号)「北朝鮮の国営メディアと同じ」
17/10/9(第958号)「総選挙の結果の予想」
17/10/2(第957号)「総選挙と消費増税」」
17/9/25(第956号)「解散は早い方が良い」」
17/9/18(第955号)「制裁の狙いと効果」」
17/9/11(第954号)「北朝鮮への「圧力と対話」」
17/9/4(第953号)「北朝鮮の核を考える」
17/8/28(第952号)「日本のテレビ局をBPOに告発」
17/8/14(第951号)「日本の構造改革派の変遷」
17/8/7(第950号)「今回の内閣改造について」
17/7/31(第949号)「加計問題の教訓」
17/7/24(第948号)「加計問題と日本のマスコミ」
17/7/17(第947号)「消化不良の参考人招致の質議」
17/7/10(第946号)「前川前事務次官の参考人招致」
17/7/3(第945号)「官邸への報復」
17/6/26(第944号)「加計学園の獣医学部新設騒動」
17/6/19(第943号)「小池都知事の不安煽り政治」
17/6/12(第942号)「米国のパリ協定離脱」
17/6/5(第941号)「テロ等準備罪(共謀罪)の話」
17/5/29(第940号)「安倍総理の憲法改正の提案」
17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」
17/5/15(第938号)「朝鮮半島の非核化」
17/5/1(第937号)「予備自衛官の大幅増員を」
17/4/24(第936号)「理解されないシムズ理論の本質」
17/4/17(第935号)「シムズ理論と「バカの壁」」
17/4/10(第934号)「経済再生政策提言フォーラムとシムズ理論」
17/4/3(第933号)「シムズ理論の裏」
17/3/27(第932号)「シムズ理論とシムズ教授」
17/3/20(第931号)「シムズ理論とアベノミクス」
17/3/13(第930号)「アメリカの分断を考える」
17/3/6(第929号)「移民と経済成長」
17/2/27(第928号)「トランプ大統領のパリ協定離脱宣言」
17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」


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