経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




18/3/19(978号)
米朝主脳会談を推理

    実質的に北朝鮮の降伏

    最近の最も重要な出来事は、米朝主脳会談が行われる見通しが出てきたことである。どうも主脳会談は、北朝鮮の方から求めてきたようだ。今の北朝鮮の体制を認めるのなら、核を放棄しても良いと言う。また米韓共同軍事演習は行ってもかまわないと言っている(共同軍事演習を北朝鮮は一番嫌っているという有識者の話は間違いだったようだ)。

    明らかに北朝鮮側が大きく譲歩することによって、米朝主脳会談は実現することになったと筆者は見ている。会談は5月辺り(多少遅れるかもしれない)に想定され、それまでの間に邪魔な出来事が起らない限り、これは実施される見込みである。米国にとって理想的な展開ということになる。


    北朝鮮が核を本当に放棄するのかが一番のポイントである。しかし今回の米朝主脳会談は北朝鮮側から言い出したことで分るように、この会談の要請は北朝鮮の降伏宣言みたいなものと筆者は理解する。おそらく北朝鮮は、核を放棄する方針を固めたものと思われる。

    土壇場になって、北朝鮮が裏切り「やはり核は保有する」という話になるとは考えにくい。もちろん金体制を認めることに加え、金正恩委員長は米国に何らかの要求を出してくることは有り得る。トランプ大統領はそれらを最大限受入れるということになろう。


    筆者は、潮目が変わったきっかけは17/9/18(第955号)「制裁の狙いと効果」」で取上げたように、6回目の核実験を受け9月11日に新たな国連制裁がすんなりと決まったことと見ている。もちろん国連の制裁は確実に効いている。しかもこの制裁決議にはロシアまでもが賛同した。つまり最後の頼みの綱であったロシアまでが北朝鮮を裏切ったことになる。まさに北朝鮮は孤立無援に陥ったのである。

    その後、北朝鮮はミサイルの発射実験を行っているが、一方で降伏路線を模索したと見られる。米朝主脳会談は、平昌オリンピックでの韓国・北朝鮮の交流から決まったという話になっている。しかし筆者は、この話の流れは全く逆で、まず米朝の間で主脳会談の開催が極秘裏に決まり、この流れの中で南北主脳会談などが決まったと見ている。


    ただこのような筆者の見方は、一般的ではなくそのようなマスコミ報道もない。しかしトランプ大統領の発言の変化などを観察していると、そう考えざるを得ない。筆者が「何か変」と感じたのは、唐突にトランプ大統領がツイッターで「金正恩委員長という人物は実に賢い」とつぶやいた時である。昨年の11月から12月にかけた頃だったと思う。筆者は「これは北朝鮮が動いたから」と感じた。

    筆者は、何らかのルートを通じ北朝鮮は、直接トランプ大統領に「核放棄を条件に、北朝鮮の現体制への敵視政策を止めるよう」訴えたと見ている。そもそもトランプ政権は、北朝鮮に核の放棄を要求するが、体制の転換までは求めないと最初から言っていた。たしかに北朝鮮にとって現体制の維持こそが最重要課題である。ただし核を放棄すれば、本当に米国が現体制の維持を認めるのか確信を持てなかったと想像する。


    しかし北朝鮮は国連の経済制裁が効いてきたことに加え、米国での「ブラッディーノーズ(鼻血)作戦」など先制攻撃論の高まりを見て、このトランプ政権の提案に乗る他はないと観念したと筆者は見る。冒頭で述べたように条件付き降伏である。これを受けトランプ大統領は「勝利宣言」を行ったのである。

    一連の米朝の交渉に、外交の正式ルートである米国務省は関与していないと筆者は推測する。トランプ大統領は、オバマ政権時代から居残る国務省スタッフを信用していないと思われる。17/9/11(第954号)「北朝鮮への「圧力と対話」」で述べたように、オバマ政権の高官の中には「北朝鮮の核保有を一旦認め、その上で核兵器の制限などについて交渉すべき」ととんでもないことを言う者さえいた。だからこの感覚を引き摺った国務省高官や、これらの官僚に考えが近いティラーソン国務長官をトランプ大統領は解任したのである。


    トランプ大統領は「次は中国問題」

    主脳会談については米国と北朝鮮の間で、かなり具体的に話が進んでいたと筆者は想っている。そう考えると色々と不可解に思われた出来事の謎が解ける。まず北朝鮮は4ヶ月以上核実験やミサイル発射実験を行っていない。

    また平昌オリンピックに訪れたいわゆる美女応援団のユニフォームが揃っていて用意周到であった。だいたい北朝鮮の工業力を考えると、オリンピック参加を表明してわずか一ヶ月で準備できるようなものではない。たぶん数カ月前から準備したと見られる。おそらくその前には米国が米朝主脳会談に「OK」のサインを出していたと思われる。

    また米朝主脳会談がほぼ決まってから、韓国と北朝鮮の接触は始まったと思われる(昨年の11月頃か)。韓国政府は否定しているが、昨年から南北でオリンピック参加を巡って話合いを行っていたはずと見られる。しかし筆者は、米朝主脳会談はあくまでも米国と北朝鮮が主導して実現する運びになったと考える。


    北朝鮮は核保有国として米国と対等の立場で国交回復の交渉を行いと常々表明していた。しかしトランプ大統領を始め日本や周辺諸国はこれを絶対に認めるわけには行かない。もちろん各国はこれに対し「圧力」を前面に出して対抗した。この具体策である国連の経済制裁などによって苦しい立場に追込まれ、北朝鮮はとうとう「核放棄」を飲まざるを得なくなったと筆者は理解している。

    たしかに現実として北朝鮮の核廃棄までの道程は遠い。まずNPT(核拡散防止条約)に復帰するのか不明であるが、やはりIAEAの査察の受入れということになろう。しかし過去のIAEA査察はうまく行かなかった。今回は、米国が関与したかなり強い形での査察が行われると筆者は考える。


    まだ米朝主脳会談でさえ実施されていない段階で、北朝鮮の核放棄を前提にした話の総括を行うのは早過ぎると思われるかもしれない。しかしトランプ大統領は、北朝鮮の核放棄に関してかなりの自信を持っているような話振りである。これには何かしっかりとした根拠があると思われる。

    やはり北朝鮮問題は解決の方向に向かったと見て良さそうである。一方、トランプ大統領は「次は中国問題」だと言わんばかりの雰囲気である。鉄・アルミの輸入制限に続き、米大統領が台湾を訪問できるよう大統領令に署名したという報道がある。中国の反発は織込み済みのようだ。


    ともかく核放棄を決めたことは、北朝鮮が敗北を認めたことを意味する。筆者は、本誌で9月11日の新たな国連制裁は実質的な戦争の始まりと説明した。米国や日本などによる兵糧攻めという戦闘が開始されたのである。この兵糧攻めが始まり、あまり間を置かず北朝鮮は白旗を掲げたことになる。

    北朝鮮の核兵器やICBMはハッタリであり、北朝鮮こそがこのことを認識している。これらで米国を攻撃できるとは北朝鮮も思っていないはずである。むしろこれらによって米国の安全が脅かされるといった口実で、米軍が本気になって北朝鮮に攻撃を仕掛けて来ることこそ恐怖である。


    これまでの米大統領に対しては、北朝鮮もそこまで心配する必要はなかった。また中国やロシアの存在が米国への牽制となった。ところが米国の大統領にトランプ氏が就任してからは状況が変わった。本気になって北朝鮮に攻撃を仕掛けて来るかもしれない米大統領が登場したのだ。

    しかしトランプ政権の方針は分りやすく「核を放棄するなら、体制の転換までは求めない」というものである。北朝鮮の人権抑圧などには触れていない。北朝鮮に関心のなかったオバマ政権より組みやすいと判断した可能性があると筆者は感じる。ただ日本には拉致問題がある。米朝主脳会談の流れの中で、拉致問題は解決の糸口を見つける必要がある。



来週はトランプ大統領の「次は中国問題」を取上げる予定である。

日本国内では連日、森友学園問題が大きな話題になっている。しかしそれほど重要な問題とは思われない。おそらく安倍政権をどうしても倒したい勢力にとっては、最重要課題なのであろう。



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