経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




17/11/6(961号)
旧民進党の研究

    無党派層票が去った旧民進党

    民進党は分裂したまま総選挙に挑んだが、希望の党、立憲民主党、無所属の合計で120議席を獲得した。したがって解散前から30議席以上増やしたことになる。希望の党の不振ばかりが報じられているが、結果的には民進党は助かったと言える。


    民主党は09年の総選挙で308議席という空前の大勝で政権を奪取した。ところが12年の総選挙で57議席と信じられないような大敗を喫し、自民党に政権を渡した。また反動増を狙った14年の総選挙でも73議席と伸び悩んだ(その後、維新などとの合流によって解散前には87議席)。今回の総選挙も、民進党の支持率が低迷し苦戦が予想されていた。

    この状況の中、希望の党(都民ファーストの会)の都議選での大躍進は、民進党にとって衝撃的であった。したがって希望の党への合流話が出た時、誰も反対しなかったのである。ところが地方では、希望の党の風が全く吹いていなかったのである。


    このように民主党(民進党)は大勝の次には大敗といった派手な選挙戦を行ってきた。これは民主党の基礎票が自民党に比べずっと少なく(自民の小選挙区2,600万票、比例区1,800万票に対し、民主党は小選挙区1,200万票、比例区1,000万票程度)、自民党との戦いが反自民の無党派層の票に左右されるからである。実際、大勝した09年には小選挙区3,350万票、比例区で3,000万票も集めた。

    つまり反自民の無党派層の票は最大で約2,000万票程度と推定される。ところが大敗した12年と14年では、これがほぼゼロになったのである。もっともこの移り気で軽いのが無党派層の投票行動の一大特徴である。このように民主党(民進党)の選挙は「風」頼りと言える。したがって小池旋風は民進党の議員にとってまさに垂涎の的であった(実際は風が幻であったが)。


    しかしこの民主党(民進党)の中にあっても、風を頼らず小選挙区で勝ち上がって来る者がいる。彼等は大きな個人票を持ちこれに組織票を加え(これらは基礎票と言える)、自民党の候補に勝つのである。ただこのような力のある議員は少数である(特に大きな個人票を持つ者は稀)。

    旧民進党の候補者のほとんどは基礎票だけでは当選しない。どうしても無党派層の票が必要になるため、彼等の政治活動は目立つためのパフォーマンスに走りがちである。しかしこれまで国会で安倍総理や女性閣僚を追い詰めるパフォーマンスを続けて来たがうまく行かなかった。


    結局、風が吹かないため民主党(民進党)で議員として残ったのは、基礎票を持っている者に限られた。しかし個人票だけで勝ち上がることは稀なのだから、問題は組織票ということになる。民主党(民進党)の場合の組織票の大半は労組票である。つまり12年と14年の総選挙で当選した民主党(民進党)議員は、労組から強い支援を受けたと見られる。

    無党派層票が獲得できないので、民主党(民進党)はますます労組依存を強めざるを得なくなっていた。大勝した頃の民主党時代の議員は、政治的に幅が極めて広かった。自民党から分れて来た者や社会党や民社党から合流した者達が一緒になっていた。また小選挙区制になったため、自民党の公認の枠から外れた者が民主党から立候補するといったケースも多かった。つまり政治心情(安保観など)が自民党と同じような議員が民主党の中にかなりいた。

    ところが風が吹かなくなり労組への依存が強くなった。これによって民主党議員の政治行動は労組のイデオロギーに沿うようになった。労組に逆らっては、選挙で支援が受けられなくなるのである。


    労組依存を強めた旧民進党

    民主党(民進党)を論ずるには、今日、政治家に影響力を持つ労組について考える必要がある。日本の労組は共産党系を除けばほぼ「連合」に統一された。「連合」は、総評、同盟、中立労連、新産別が89年に統合し発足した。政治的には同盟が民社党を支援し、他は社会党を支援していた。特に総評の中でも官公労(日教組や自治労など)は一番左寄りで活動的である。また同盟系は自動車総連のような大企業が中心であり、地域的に片寄りがある。総評系は同盟系より大きく組織は全国的である。

    また民主党(民進党)の地方組織と労組の関係も考える必要がある。民主党(民進党)の地方組織の職員には、社会党が解党した時に社会党の地方組織から移ってきた者が多い。したがって民主党(民進党)の地方組織は左翼色が濃い。ところで連合の地方組織と民主党(民進党)の地方組織はほぼ重なると見て良い。このように連合には右寄りから左寄りの労組が混在するため、政治的には複雑である。

    つまり民主党(民進党)だけでなく、連合も考えや政治心情の違う者が集った集団である。寄せ集めの連合にとって、所属議員の政治心情がバラバラの民主党(民進党)はむしろ都合が良かった。希望の党への合流話が出た時、連合の幹部は民進党の丸ごとの合流にむしろ積極的であった。したがって合流に際しては選別を行うという小池希望の党の方針は、連合にとって極めてショックであったはずだ。また結果的に民進党が分裂したことは、連合の分裂に繋がる由々しき状況が生まれたことを意味する。


    風(無党派層の支持)が起らない限り、民主党(民進党)の議員は労組の支援がなければ当選は難しい。したがって前述の通り民主党(民進党)の政治行動はどうしても労組に向いたものになった。また同盟系は右寄りであるが、連合全体ではどうしても力に勝る旧社会党に近い左寄り路線に沿った政治行動に民進党は走るようになった。


    12年の第二次安倍政権発足の後、与野党は2年毎に対決法案で激突した。13年特定秘密保護法、15年安保法制改革、そして17年テロ等準備罪法(組織犯罪処罰法改正案)である。筆者から見ると、民主党(民進党)の国会での反対行動は常軌を逸していた。特に15年安保法制改革に対しては「戦争法案」「徴兵制への道」と最初からケンカ腰であった。国会における合意形成という言葉が多分に建前だとしても、民主党(民進党)の極端な反対行動は度が過ぎていた。

    また13年特定秘密保護法は、尖閣諸島での中国漁船の海上保安庁船への体当たり映像を元海上保安庁職員の一色政春氏が流した一件を発端に、民主党政権が法制化を目指したものである。ちなみに当時、左翼メディア(朝日、毎日など)はこの法案に賛同する論陣を張っていた。これもいかに日本の左翼メディアがいい加減なものかを示している(だから筆者の日本の左翼メディアへの不信感は極めて強い)。またこの法整備により機密漏れが防げると、米国から重要情報が流れて来るようになったプラス面があるという指摘がある。さらに数カ月前に成立したテロ等準備罪法も民主党が法制化を目指した共謀罪の改正版であり、民進党が真っ向から反対するものではなかったはずだ。


    このように民主党(民進党)の派手な徹底抗戦は、当初は無党派層に向けたものであったが、結果的には選挙を支援する労組の左派勢力と左翼メディアに向けたものになったと筆者は見ている。たしかに対決法案を与党が通す時には内閣支持率は下がるが、その後は元に戻すといったパターンが続いている(今回も総選挙後、安倍内閣の支持率は急上昇している)。それに対し民進党の支持率は下がりっぱなしであった。

    たしかに労組色が濃くなった民進党にいやけをさした議員が、希望の党に期待を抱いたのは理解できる。ところが選挙戦が始まり、地方に希望の党の風が全く吹いていないことを知り(小池氏の排除宣言の前から風は吹いていなかった)、民進党から来た多くの立候補者は左に急旋回した。

    だいたいの地方で頼りになるのは、やはり左派系の組合員の活動家である。だから「安保法制改革に反対」と言い始めたのである。ただ保守系と見られた松下政経塾出身者までが一斉に左旋回したのには筆者も驚いた(希望の党には松下政経塾出身者が多い)。

    大惨敗と言われている希望の党であるが、よく見るとある程度健闘している。特に同盟系労組が強い東海比例区ではかなりの票を獲得している。どうも同盟系労組は希望の党を支援していたと見られる。ただ旧民進党系各派の動向はいまだ流動的であり、今後については何とも言えない。旧民進党内部の対立構図が一層複雑になったようである。



来週は政治の世界の「しがらみ」を取上げる。選挙中、小池都知事は盛んに「希望の党はしがらみを断つ政治」と言っていた。自民党が「しがらみ」に縛られていると言いたかったのであろう。来週は、この関連で自民党内の財政再建派について述べる。かなり重要な話になる。



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