平成9年2月10日より
経済コラムマガジン



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次回号は1月11日の予定
98/12/28(第96号)


不況の原因と消費税減税を考える
  • とんでもない発言集
    今週号は予定を変更して、消費税減税の経済効果について考えることにし、新年度の経済見通しについてはまた後日取り上げる。
    さて、一ヵ月ほど前のテレビ朝日系の番組、「サンデープロジェクト」にゲストとして、リチャード・クー氏とウオールストリートジャーナルの駐日記者が登場していた。番組は両者の紹介から始まったが、司会の田原総一郎氏の冒頭の発言が注目された。それは「今まで登場した日本の経済学者やエコノミストがあまりにもいい加減なので、本日は外国人エコノミストだけをゲストに招いた」と言う発言であった。一つの一例として、今まで「悪い銀行は潰せ」と言っていた声が大きかったのに、最近では誰もそのようなことを言わなくなって、「公的資金を大胆に投入し、銀行の破綻を回避すべき」の大合唱に転換していることを挙げていた。
    このようなことは本紙でも何回も取り上げたことであり、日本の経済学者やエコノミストの発言がいい加減と言う指摘に筆者も同感である。特にマスコミに登場するエコノミストの発言は共感できるケースが本当に少ないのである。むしろとんでもない発言が今まで続いているのである。前述した「悪い銀行は潰せ」もその一つである。
    とにかく奇妙な発言が続いている。まず「財政再建なくしては日本の将来はない」「国や地方の借金孫子の代に残すな」などがあった。周知の通り、これらの意見を念頭に置いた「財政改革路線」の政策により、景気の落ち込みに拍車がかかり、結果的には景気対策費用がかさみ、かえって財政の悪化を招いているのである。日本の累進的な税構造から税収のGDPに対する弾性値は「1」を大きく越えると考えられる。つまりGDPが1%伸びることによって税収は1%以上伸びるのである。このことは反対にGDPが1%減少すると税収は1%以上減少することを意味する。つまり間違った緊縮財政の結果、GDPが減少するケースにおいて、弾性値が極めて大きい場合には、かえって財政を悪化させることが有り得るのである。
    さらに景気後退がはっきりしてからも、おかしな発言が続いた。「公共投資は効果がない。景気対策には減税を大きく、できるなら5兆円くらい行う必要がある。」「公共投資は効果がない。もっと供給サイドの政策、つまり規制緩和を徹底的に行う必要がある。」と言ったものである。同様の意見は多くのエコノミストから聞かれた。そしてこのような主張を行う代表的な経済学者の何名かは「経済戦略会議」のメンバーとなっている。ところが「経済戦略会議」は「都市型の公共投資」は効果が大きいから積極的に行うよう提言しているのである。
    極端な例としては「財政再建路線を採れば、景気が悪くなるのは仕方がなく、これを耐え忍ぶことが必要である。しかし5年後には日本経済は立派に再生する。」と主張する銀行系のエコノミストがいる。さらに彼は、政府が行う景気対策は有害無益と主張していた。ところが次にテレビに登場した時にはいつのまにか「10年後までには再生する。」に変わっていた。さらにその後には「2,010年頃、つまり12年後くらいには日本経済は再生する。」とさらに後退していたのである。たった半年くらいの出来事である。その後このエコノミストの興味も「米国の株価の崩壊」に移ったらしい。現在彼が「日本経済が立派に再生するのは何年後」と考えているのかは不明である。
    このように世間には経済に関し「とんでもない発言」で溢れているのである。そしてこれが問題なのは、このような発言がマスコミを通じ広く国民に影響を与え、世論を動かすことである。驚くことに、2年前の世論調査では、「財政再建」が圧倒的に政府が取り組む政策として支持されていたのである。もちろんこのような世論の形成にはこれらの学者やエコノミストの発言が影響していることは間違いない。そしてこのような間違った世論に迎合した経済政策を行うと、今日のような経済の混乱を招くのである。
    「とんでもない発言」は今も続いている。複数のエコノミストや自由党が主張している「消費税を一旦ゼロにして、半年毎に2%ずつ上げ、最終的には6%にする」と言う提案である。今、日本においては、「システムの2,000年問題」に加え、「郵便番号の7桁移行」や「携帯電話番号の11桁化」「大阪などの一部地域の市外番号の変更」などで混乱している。さらにこれに短期間のうちに消費税の改訂が4回も追加されれば、国民の活動は本当にマヒしてしまうであろう。このアイディアは「単なるおもいつき」にしてもちょっとひど過ぎる。そして「消費税減税」は、次に述べるように景気対策としての経済効果は極めて小さいと考える。

  • 消費税の減税の経済効果
    ほとんどの経済学者やエコノミストは今回の不況の原因を「97年度の消費税のアップや特別減税の廃止による実質増税」と説明している。そしてこれは「世間の常識」のように受け取られている。したがって景気対策も「減税」を中心に主張されている。しかし、筆者はこれとは違った意見である。たしかに97年度の増税は景気にマイナスの要素ではあったが、その影響はそれほど大きなものではなかったと考えている。
    筆者は、今回の不況の原因を計量的に分析したものを見たことがない。そして何処もこれをまだきちんと行っていないようである。したがって現在の景気対策は今回の不況の原因をあまり考えずに作成されていることになる。そして今回の景気対策を見ていると、これは可能性のあることと思われる。景気対策は過去の経験と政党間の駆け引きを中心に作成されている印象が強いのである。筆者は、今回の政府の「緊急経済対策」は一応評価していが、正しい経済政策を行うには、本来は正しい不況の原因分析をまず行うべきと考えるのである。もっともこれを行うと前任者の政策ミスを指摘することにはなるが。
    オイルショック時、世界各国で物価が高騰した。日本でも狂乱物価と称された物価の高騰となった。当時、世間ではこれは石油価格の上昇によるものと言う考えが常識であった。しかし数年後にこの物価上昇の計量分析が発表されたが、結果は意外なものであった。たしかに原油価格の高騰は物価上昇に影響を与えていたが、それにも増して影響があったのが、原油以外の一次産品の価格上昇であった。当時昭和48年頃は、世界同時の好景気であった。一次産品の特徴は「需要に対する供給の弾力性が極めて小さい」ことである。そして好況により原油以外の一次産品も需要増により価格が大幅に上昇していたのである。つまり当時の物価上昇は「産油国のカルテル」と言うより「主要国の景気がシンクロナイズされた」ことが主な原因となるのである。このような当時の「常識」が間違っていることはよく有り得ることなのである。
    いまだ不況の原因を計量的に分析したものがない以上、筆者は不況の原因を推定することによって話を進める他はない。筆者は、今回の不況の一番の原因を「住宅投資の急減」と「97年度の公共投資の削減」と考えている。根拠の一つは、これらの投資の乗数効果は大きく、減少した場合にもそのマイナスの乗数効果が大きいことである。97年度の国の当初予算段階では、公共投資は前年とほぼ同額が計上されていたが、前年まで行われていた補正予算での公共投資がほとんどなされなかったのである。さらに地方は財政難を理由に相当公共投資を削減している。また「住宅投資の急減」については、本紙でも何回も取り上げているので、ここでは省略する。ただ住宅着工件数の30万戸の減少は、計算上は最終需要で約9兆円の減少となる。
    一方、消費税のアツプの経済に与える影響は、価格上昇を通じた需要の減少として現われるはずである。実際、97年度は消費者物価は2%上昇したが、このほとんどは消費税のアツプの影響と思われる。しかし、97年度全体の消費支出の減少は0.2%に止まっているのである。たしかに消費税のアツプのあった4月以降消費支出はしばらく低迷したが、7月以降ははっきりプラスに転換したのである。これは当局の「消費税のアツプの経済に与える影響は一時的」と言う言葉を裏付ける結果となっている。ちなみに消費支出が再びマイナスに転じたのは、「拓銀」「山一」が破綻した11月からであり、この動きは消費税のアツプとはあまり関係がないと考えられる。またこの頃には景気の後退がはっきりして来ており、設備投資も減少し始めた。筆者は、今回の不況は「公共投資の減少」と「住宅投資の急減」に始まり、大型の金融機関の破綻が加わり、消費にも影響が及び、最終的には設備投資も減少したためと考える。一方円安により外需は増加したが、これらの需要の減少をとてもカバーできなかったと考える。特に「住宅投資の急減」は十分事前に予想された事態であり、97年度は緊縮予算どころではなく景気対策を意識した予算を作成する必要があったのである。
    以上述べたように、筆者は、「消費税のアツプ」が今回の不況にそれほど大きな影響を与えていないと考えている。したがって反対に消費税を廃止あるいは税率の引き下げを行っても、それほど景気を浮揚する力はないと考えている。特に昨年の大型の金融機関の破綻以降経済の先行きの見通しが悪く、限界消費性向も小さくなっており、景気回復のための消費の拡大を期待することは無理である。実際、今年のデータを見ても、物価の動きと消費支出の動きはほぼ無関係である。消費税を廃止あるいは税率の引き下げによる物価の下落が、景気対策の決定打と言う考えは、日本においてはほとんど「迷信」である。
    「減税」がまったく景気対策として全く効果がないと言うのではない。日本の現状では効果が極めて小さいのである。ところで「各減税」を景気対策としての効果の大きい順番に並べると次のようになると考える。「住宅減税」「消費税」「所得税」「法人税」の順番である。筆者もあまり賛成ではないが、評判の悪い「商品券」は「住宅減税」と「消費税」の間と考えている。つまり「消費税減税」は「所得税減税」や「法人税減税」よりややましと言うレベルである。
    「有価証券取引税」の廃止も予定されている。「減税」も「なんでも有り」の状況である。それならば筆者も減税の提案を行いたい。それは「印紙税」の廃止である。これは貸渋り対策とも関係してくる。次回号では久しぶりに景気対策について、本紙なりの提案を行いたい。「印紙税」の廃止もその一つである。

来週は休刊であり、次回号は1月11日に予定。テーマは前述したように本紙提案の景気対策を予定している。今年は今週号が最後である。来年は日本の経済も今年よりましであろう。読者の方々も良い年を迎えてもらいたいものである。




98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
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98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
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97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
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97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
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97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
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97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
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97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
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97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
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97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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