経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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17/9/25(956号)
解散は早い方が良い

    2〜3ヶ月くらいは比較的平穏

    衆議院が解散し総選挙が実施される。野党やマスコミは「大義なき解散」と批判的である。しかしこれまでも大義がないまま解散・総選挙は行われてきた。むしろ大義を巡って解散が行われたケースの方が思いつかない。

    解散はだいたい与党の都合で行われてきた。任期満了に近い総選挙では与党が負けている。つまり安倍政権としては、不利な任期満了に近い選挙を回避し、有利に総選挙を戦うにはせいぜい半年間ぐらいしか余裕はない。このことを野党やマスコミも分かっていながら文句を言っているのである。それどころか2〜3ヶ月前の内閣支持率が急落した頃には、野党の方が解散・総選挙を求めていた


    しかし今日、解散・総選挙を急いだ方が良い情勢になっている。理由は半島情勢の緊迫化である。むしろこのことを考えると急いで解散・総選挙を行うべきと言える。選挙の大義にこだわる必要はない。

    たしかに半島情勢の緊迫で、逆に解散・総選挙をやっている場合ではないという声がある。あるテレビ番組のアンケート調査では、今年中の懸念事項として「半島有事」が一番に挙げられていた。つまり「選挙をやっている場合ではない」という話に通じる。


    しかし筆者は、時間とともに「半島有事」の可能性は徐々に高まって行くものと予想している。むしろここ2〜3ヶ月くらいは比較的平穏と予想する。おそらく半年後には緊縛感はずっと高くなっていると見る。それこそ「選挙をやっている場合ではない」という情勢になっていると筆者は思っている。この根拠は、北朝鮮の核とミサイルの実験の間隔が短くなっていること今回の国連の制裁決議である。

    総理やその周辺も同じような考えを持っていると筆者は想像する。もっとも民進党の混乱などが有り、与党にとって有利な情勢が生まれている。これらも解散・総選挙の追い風になっていることは事実である。


    国連の経済制裁が効果がないので、北朝鮮は核とミサイルの実験を続けているという声がある。しかし反対に制裁が効いているからこそ、焦って北朝鮮は実験の頻度を上げているという見方がある。筆者は後者に賛成である。

    今回の国連の制裁決議の内容は相当厳しい。また抜け穴が指摘されて来たが、徐々にその穴は埋まっている。また制裁決議には、北朝鮮がさらに挑発を行った場合、今回見送った制裁項目を復活させるという取決めがある。つまり次は原油・石油製品の禁輸や追加制限などが実行される可能性がある。

    ヘイリー米国連大使が「今回の国連の制裁でやれることはやった。後は軍事的オプションになる」と気になる発言を行っている。どうも次に北朝鮮の挑発があれば、自動的に最高の制裁が実施されると筆者は解釈している。だから「やれることはやった」という発言になったと思われる。


    半島有事となれば「北朝鮮の暴発」「米国の先制攻撃」が考えられる。過去に北朝鮮は韓国の延坪島への砲撃などの突発的な軍事攻撃を行ったことがある。もし今日これらが実行されたら立派な「暴発」と見なされるであろう。ただしこれらを命じたのは全て金正日であった。一方、息子の金正恩はこの手の「暴発」を起こしたことがない(ただ延坪島への砲撃で指揮をした)。金正恩は父親と違って性格的に慎重と見られる。したがって経済制裁が効き、仮に暴発を起こすとしてもまだ先のことと見られている。

    米国の先制攻撃についてはその可能性の有無さえはっきりしない。しかし確率がゼロではない。ただし米軍の準備が整っていないことは確かであろう。例えば、今日、周辺に展開している米空母は一隻だけである。過去に米軍はイラク攻撃などを行った時は、いつも三隻以上の空母を集結させている。前述した「ここ2〜3ヶ月くらいは比較的平穏」の根拠はこれらである。比較的平穏なうちに総選挙を済ました方が良いと筆者は言いたい。


    中国と北朝鮮の秘密主義

    北朝鮮の軍事的脅威を語るのが難しいのは分らないことが多いからである。この原因は北朝鮮の秘密主義とハッタリである。流れてくる映像がCGであったり、また北朝鮮政府の声明のほとんどがハッタリだったりする(ハッタリを作成する専門部署がある)。日本の北朝鮮の専門家も必ずしも正しい情報を掴んでいるとは限らない。先週号で取上げたような、北朝鮮政府の広報官まがいの専門家さえいる。

    実際のところ、様々な情報があり北朝鮮人民軍の実力さえよく分らない。もし戦端が切られると、1万の火砲から無数のロケット弾が放たれソウルは火の海になると言われている。そして韓国の犠牲者は百万、千万単位になるという話が定説になっている。しかし筆者は、これを何となく疑わしく思っている。


    また韓国の方も北朝鮮のロケット砲の射程圏内に首都機能を維持し、ソウルの人口増加を放置してきたことに対し筆者は強い違和感を持っている。本当のところ、韓国人は北朝鮮のロケット砲の威力が「大したことはない」と思っているのかもしれない。ところでマティス米国防長官が「韓国に犠牲者の出ない軍事オプションがある」と気になる発言を最近行っている。これによって半島有事の際の具体的なイメージがますます分らなくなって来ている。

    昔から日本にとって、北朝鮮だけでく韓国もよく分らない国である。突然、韓国政府は800万ドルの北朝鮮への人道支援を決めた。この半島情勢が緊迫している中でである。これには日本は唖然とし米国はかなり怒った。しかし韓国はそのような国なのである。日本だけでなく米国も、この一件で韓国という国が変だとしみじみ認識したはずである。


    先週号で「昔から極東アジア(中国、ロシア(ソ連)、北朝鮮、韓国)の国々は、他国との条約や契約を軽んじる傾向がある」と述べた。とりあえずロシアを除き、中国、北朝鮮、韓国の三国の関係も複雑で難解である。まず韓国が前述の通り北朝鮮への人道支援を唐突に決めたりする。中国はTHAADの配備を理由に韓国叩きに転じた。ちょっと前まで韓国の朴大統領が中国の戦勝記念日に招待されていたほどの仲であった。

    しかし今日一番注目されるのが中国と北朝鮮の関係である。一応、筆者は中朝軍事同盟は既に風化していると指摘した。ただこれには諸説があり、たしかに中央の習政権と北朝鮮の関係は最悪であるが、中国軍部はいまだに親北朝鮮という見方がある。


    中国軍部と言ったが、具体的には旧瀋陽軍区(今の北部戦区)である。管轄する地域には朝鮮族の人々が多く住み、この軍区の兵は朝鮮戦争の時に義勇兵として派遣された。今でもこの時の「血の同盟」が生きていて旧瀋陽軍区の人民解放軍は北朝鮮と通じているという。

    まず旧瀋陽軍区がこれまで北朝鮮の核やミサイルの開発を支援してきたという驚くような話がある。また旧瀋陽軍区が北朝鮮と結託してクーデータを起こすという話まである。中国の核兵器は成都軍区(今の西部戦区)が独占管理(発射場と生産)している。旧瀋陽軍区はこれに対抗するため、クーデータの際には北朝鮮の核ミサイルを使うというのである。たしかに習政権がどこまで軍部を掌握しているのかいつも疑問が呈されてきた。しかし旧瀋陽軍区が北朝鮮の核兵器を使うという話まで行くと、筆者はさすがにこれは「眉唾もの」と思う。事態が進めば、いずれ習政権の軍部の掌握状況ははっきりするであろう。


    国連の制裁決議で、原油の禁輸に中国は最後まで反対した。これには「中国が北朝鮮の暴発」を恐れたという説の他に「旧瀋陽軍区の抵抗」があったという話がある。しかしこの他に一旦パイプラインを閉じると原油がパイプの中で固まり、送油再開が難しくなるという技術的な問題があるという中国側の話がある(しかし2003年に中国は送油を3日間止めたことがある)

    04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」で述べたように、原油には性状によってパラフィン系、ナフテン系、混合系などある。中国が北朝鮮に輸出しているのはパラフィン系の大慶油田の原油であり、たしかにパイプに詰り易い(大慶原油はろう分が多く粘度が高い)。しかし中国のこの言い分が本当なのか時間が経なければ分らない。このような中国と北朝鮮の秘密主義が半島情勢を一層混迷させている。来年2月開催予定の平昌五輪は一体どうなってしまうのだろうか。



総選挙で消費増税がまたテーマになるという話が出ているので、来週はこれを取上げる。



17/9/18(第955号)「制裁の狙いと効果」
17/9/11(第954号)「北朝鮮への「圧力と対話」」
17/9/4(第953号)「北朝鮮の核を考える」
17/8/28(第952号)「日本のテレビ局をBPOに告発」
17/8/14(第951号)「日本の構造改革派の変遷」
17/8/7(第950号)「今回の内閣改造について」
17/7/31(第949号)「加計問題の教訓」
17/7/24(第948号)「加計問題と日本のマスコミ」
17/7/17(第947号)「消化不良の参考人招致の質議」
17/7/10(第946号)「前川前事務次官の参考人招致」
17/7/3(第945号)「官邸への報復」
17/6/26(第944号)「加計学園の獣医学部新設騒動」
17/6/19(第943号)「小池都知事の不安煽り政治」
17/6/12(第942号)「米国のパリ協定離脱」
17/6/5(第941号)「テロ等準備罪(共謀罪)の話」
17/5/29(第940号)「安倍総理の憲法改正の提案」
17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」
17/5/15(第938号)「朝鮮半島の非核化」
17/5/1(第937号)「予備自衛官の大幅増員を」
17/4/24(第936号)「理解されないシムズ理論の本質」
17/4/17(第935号)「シムズ理論と「バカの壁」」
17/4/10(第934号)「経済再生政策提言フォーラムとシムズ理論」
17/4/3(第933号)「シムズ理論の裏」
17/3/27(第932号)「シムズ理論とシムズ教授」
17/3/20(第931号)「シムズ理論とアベノミクス」
17/3/13(第930号)「アメリカの分断を考える」
17/3/6(第929号)「移民と経済成長」
17/2/27(第928号)「トランプ大統領のパリ協定離脱宣言」
17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」
16/12/26(第922号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(まとめ)」
16/12/19(第921号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(モラルハザード他」
16/12/12(第920号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(日銀の独立性他」
16/12/5(第919号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(2))」
16/11/28(第918号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(1))」
16/11/21(第917号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(基本編)」
16/11/14(第916号)「トランプ大統領誕生は良かった?」
16/11/7(第915号)「Q&A集作成のための準備」
16/10/31(第914号)「中央銀行に対する観念論者の誤解」
16/10/24(第913号)「落日の構造改革派」
16/10/17(第912号)「ヘリコプター・マネー政策への障害や雑音」
16/10/10(第911号)「事実上のヘリコプター・マネー政策」
16/10/3(第910号)「財政均衡主義の呪縛からの覚醒」
16/9/26(第909号)「日本経済こそが「ニューノーマル」」
16/9/19(第908号)「プライマリーバランスの回復は危険」
16/9/12(第907号)「労働分配率と内部留保」
16/9/5(第906号)「経済学者の討論の仕方」
16/8/29(第905号)「吉川教授と竹中教授の討論」
16/8/22(第904号)「芥川賞受賞作「コンビニ人間」」
16/8/8(第903号)「新経済対策への評価」
16/8/1(第902号)「大きな車はゆっくり回る」
16/7/25(第901号)「アベノミクス下における注入と漏出」
16/7/18(第900号)「経済循環における注入と漏出」
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16/6/20(第896号)「ヘリコプター・マネーと物価上昇」
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16/6/6(第894号)「消費増税問題の決着」
16/5/30(第893号)「安倍政権の次のハードル」
16/5/23(第892号)「アベノミクス停滞の理由」
16/5/16(第891号)「ヘリコプターマネーは日本の救世主か」
16/5/2(第890号)「毎年1,000件もの新製品」
16/4/25(第889号)「日本は消費税の重税国家」
16/4/18(第888号)「財政問題に対する考えが大きく変る前夜」
16/4/11(第887号)「民進党が消費税増税を推進する背景」
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16/3/28(第885号)「終わっている日本の経済学者」
16/3/21(第884号)「国際金融経済分析会合の影響」
16/3/14(第883号)「信用を完全に失った財務省」
16/3/7(第882号)「「政界」がおかしい」
16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
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16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」


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