経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




17/6/26(944号)
加計学園の獣医学部新設騒動

    民主党政権が進めた案件

    マスコミや野党は加計学園の獣医学部新設認可が問題と騒ぎ立てている。次から次と新しいことが出て来て、マスコミと野党はこれらを材料に安倍政権を攻撃している。森友学園問題を含めここ半年近く、安倍政権というより安倍総理個人や総理周辺を狙った追求が連日国会で繰り広げられてきた。

    疑惑は、安倍総理が友人である加計学園理事長に便宜を図ったということである。もちろん官邸サイドはこれを否定している。これは安倍総理周辺の関与を臭わせる文科省役人が作成した文章が朝日新聞に掲載されたことが発端である。また前川前文科省事務次官がこれらは本物と週刊誌に明かし騒動が大きくなった。これに対する官邸サイドの説明が一転するなどして、さらに混乱は大きくなった。


    しかし客観的に見て、総理の直接指示によって新設認可が出たとは考えにくい。愛媛県・今治市と加計学園はこれまで何度となく獣医学部新設の申請を行って来たのである。もし総理の威光が有効でこれが働くものならば、とうの昔に学部新設は実現していたはずである。また加計学園理事長が安倍総理に近いことを承知していたからこそ、むしろ総理周辺はなお一層慎重に事を進めて来たと考える。また安倍総理自身もなるべく獣医学部新設の件に近付かないようにしていたと筆者は推測する。

    17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」で述べたように、そもそも加計学園の獣医学部新設は、民進党の高井崇志衆院議員や江田五月最高顧問などが民主党政権時代から押し進めてきた案件である。これらの事実を踏まえれば、どうして安倍政権がこの獣医学部新設認可問題で攻撃されているのかまことに奇妙である。またマスコミや野党の追求が効き、安倍内閣の支持率が下がったとしたなら由々しきことである。

    マスコミや野党は、文科省から出た文章やメールを元に疑惑に対する官邸の説明が不十分と騒いでいる。これに対し官邸は文章やメールに書かれていることには事実と異なる点が多いと反論している。しかしマスコミと野党はこれに満足せず「真相隠し」と反発している。


    色々な政治評論家(主にマスコミ出身)などが、加計学園問題について発言しているが、ほとんどは出演するメディアの意向(つまり台本)に沿うものである。彼等の論評を聞いていては、真相がますます分らなくのが現実である。そんな中で筆者が一番納得するのは高橋洋一氏の説明である。さすがに官僚や内閣参事官としてこれまで政策決定現場に深く関わってきただけに、官僚や政治家の行動パターンの解説は適確である。

    高橋氏によれば、4条件を付け獣医学部新設認可の方針を閣議決定したのが2015年6月である。これに伴い新設に反対する文科省に対しては、4条件の一つである将来の獣医師の「需要見通し」を作成することを求めた。ところで獣医学部新設認可など複数の省庁に関係する案件については、ほとんどが課長レベルの会議で方針を決定するという(話がこじれ局長以上(事務次官、大臣)のレベルまで行くケースは稀)。閣議決定から9ヶ月後の16年3月にこの担当課長レベル(文科、農水、内閣府)の会議が行われた。

    本来ならここで方針が決定し話は終わる予定であった。ところが文科省は約束の「需要見通し」(新設に反対する文科省であるから将来獣医師は余るといった需要見通しになろう)を用意できなかった。そこで文科省は各省に決定を半年延期してもらうよう懇願したようだ。ところで文科省の不手際によるこの延期は、開校準備を急いでいた加計学園にとってスケジュールを厳しくしたと筆者は考える。ところが半年後、16年9月16日の2回目の課長レベル会議で、またしても文科省は「需要見通し」が用意できなかったのである。文科省が有効な反論ができなかったので、獣医学部新設認可の基本方針はここで決まったのである(要するに文科省はこの政策論争で負けた)

    担当課長レベルの会議は正式なもので議事録も残っていると高橋氏は言う。しかし何故か民進党などの野党やマスコミはこの議事録については触れない。また筆者は「需要見通し」が作成できなかったのは、逆に獣医師が決定的に不足している現実があるからと考える(特に公務員獣医師の不足は深刻)。文科省OBの愛媛県知事が獣医学部を新設するよう文科省に陳情しているくらいである。


    高橋洋一氏が明かす官僚の実態

    16年9月16日の課長レベルの2回目会議の結論を踏まえ、加計学園の獣医学部新設は16年12月22日に内閣特命担当相、文科相、農水相の間で正式に合意された。(ここからまた高橋の話)問題の文章やメールは、全て16年9月の2回目の課長レベル会議からこの12月22日までの間に作成されている。議論に負けて獣医学部新設を容認せざるを得なかった担当課長やその周辺が、局長以上の上層部への説明のためにこれらを作成したものと見られる。この目的が文科省上層部への言い訳であるから、「有ること」「無いこと」が混在した文章を作った可能性が強い。

    そもそも課長レベルの会議で物事が決定するのだから、安倍総理がこの程度の会議に具体的な指示を出すはずがない。せいぜい内閣府の課長が「総理も特区の規制改革は強力に進めろと言っている」といったハッタリをかますくらいであろう。さらに「総理の意向」うんぬんの話が出ているが、議事録があるのだからこれを読めばはっきりするはずである。


    筆者が知っている限りでは、高橋洋一氏は6月18日「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ系・・東京では放送されず)6月19日「橋下×羽鳥の番組」(テレビ朝日系)に出演してこの話をしている。両番組には他の元官僚が出演していたが、高橋氏の一連の発言に反論する者はいなかった。むしろ高橋氏の説明を補強するような話が次々と出た。特に「そこまで言って委員会NP」には8人くらいの元官僚が出演し、その中には元文科官僚もいたと筆者は記憶する。この番組ではほぼ出演者の全員が「文科省はどうしようもない役所」という声を上げていた。また高橋氏の説明はZAKZAK(夕刊フジのインターネット版)に何回か掲載されている。

    つまり高橋氏の説明では、前川前事務次官は部下の言い訳の文章(「有ること」「無いこと」が書かれている)を信じたようである(むしろ筆者は信じたことにしたと考える・・薄々嘘が混じっていることは承知)。要するに文章の内容がどれだけ正確なのか確かめてはいないと見られる。もし課長レベルの会議議事録でも取り寄せれば、部下がどの程度の嘘を言っているかはっきりしたはずである。

    テレビ番組に出演した元官僚によれば、上司にこのような言い訳めいた報告書(時には嘘が混じる)を提出することはよくあると言う。しかし前川氏やその周辺者のように文章のことを外部に漏らす者がいないので、他の省庁ではこれらのことが表沙汰になっていないだけと言う。


    ここからは高橋氏の説明を踏まえた筆者の憶測である。会議に出席した文科省の担当課長は、バックに獣医師会が控える農水省も反対するものと想定したと筆者は見る。したがって農水省が「将来獣医師は不足しない・・したがって獣医学部新設は不要」といった需要見通しを作って来るものと、文科省は勝手に思い込んでいたと考える(たしかこのセリフは獣医学部新設が問題となった最初の頃に聞いた)。ところがおそらく農水省は賛成しないまでも、反対はしなかったのであろう。したがって農水省がそのような需要見通しを用意するはずはなかった。

    おそらく農水省とは一校新設で話がついていた(水面下で)と筆者は推測する。もちろん獣医師会はこれを否定している(おそらく表向きであろう)。またこの話は霞ヶ関や永田町ではある程度知られていたと思われる。ただ情報に疎く空気を読めない文科官僚だけが知らなかった可能性が強い。高橋氏はテレビ番組で文科省を「アホ官庁」と言い、他の元官僚は「三流官庁」と言っていたが筆者もこれらの表現に納得が行く。


    52年間も新設学部が認められなかったため(しかも申請は全て門前払い)、安倍政権はわざわざ特区まで作り獣医学部新設を政策の目玉に据えたのである。また日本の獣医学部の8割は東日本に集中し、西日本の獣医師不足ははっきりしている。空気を読んだ農水省が「ゼロ回答」はまずいと考えても不思議はない。「アホ」だったのが最後まで抵抗した文科省と見て良いであろう。

    先日(6月23日)、前川前事務次官は2回目の記者会見を行ったが、発言を微妙に変えている。問題は「30年4月開校と期限を切られたこと」であると言い始めたのである。しかし課長レベル会議での決定を半年延期してもらいたいと懇願したのは文科省である。しかもその半年の間に需要見通しさえ作成できなかったのである。この半年が本当に無駄だったのだから、期限を切られとしても当然と筆者は考える。それどころか文科省がモタモタしている間に、想定外にも京都産業大が獣医学部新設を申請して来るなど事態の収拾が困難な状況が出てきたのである。



来週も引続き加計学園問題を取上げ、もう少し深い話をする。

小池都知事が豊洲移転を決定した。しかし都知事の言っている築地再開発なんて遠い将来の話でありどうでも良い。豊洲移転は「安全性に問題がある」と、知事の一存で延期したのである(議会は移転を承認していた)。つまり問題の核心は豊洲の安全性である。無駄に一年半も移転を延期する意味をマスコミは問うべきなのに、ほとんど批難めいたことを言わない。一体、日本のマスコミはどうなっているのか。



17/6/19(第943号)「小池都知事の不安煽り政治」
17/6/12(第942号)「米国のパリ協定離脱」
17/6/5(第941号)「テロ等準備罪(共謀罪)の話」
17/5/29(第940号)「安倍総理の憲法改正の提案」
17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」
17/5/15(第938号)「朝鮮半島の非核化」
17/5/1(第937号)「予備自衛官の大幅増員を」
17/4/24(第936号)「理解されないシムズ理論の本質」
17/4/17(第935号)「シムズ理論と「バカの壁」」
17/4/10(第934号)「経済再生政策提言フォーラムとシムズ理論」
17/4/3(第933号)「シムズ理論の裏」
17/3/27(第932号)「シムズ理論とシムズ教授」
17/3/20(第931号)「シムズ理論とアベノミクス」
17/3/13(第930号)「アメリカの分断を考える」
17/3/6(第929号)「移民と経済成長」
17/2/27(第928号)「トランプ大統領のパリ協定離脱宣言」
17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」
16/12/26(第922号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(まとめ)」
16/12/19(第921号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(モラルハザード他」
16/12/12(第920号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(日銀の独立性他」
16/12/5(第919号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(2))」
16/11/28(第918号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(物価上昇編(1))」
16/11/21(第917号)「ヘリコプターマネーに関するQ&A集(基本編)」
16/11/14(第916号)「トランプ大統領誕生は良かった?」
16/11/7(第915号)「Q&A集作成のための準備」
16/10/31(第914号)「中央銀行に対する観念論者の誤解」
16/10/24(第913号)「落日の構造改革派」
16/10/17(第912号)「ヘリコプター・マネー政策への障害や雑音」
16/10/10(第911号)「事実上のヘリコプター・マネー政策」
16/10/3(第910号)「財政均衡主義の呪縛からの覚醒」
16/9/26(第909号)「日本経済こそが「ニューノーマル」」
16/9/19(第908号)「プライマリーバランスの回復は危険」
16/9/12(第907号)「労働分配率と内部留保」
16/9/5(第906号)「経済学者の討論の仕方」
16/8/29(第905号)「吉川教授と竹中教授の討論」
16/8/22(第904号)「芥川賞受賞作「コンビニ人間」」
16/8/8(第903号)「新経済対策への評価」
16/8/1(第902号)「大きな車はゆっくり回る」
16/7/25(第901号)「アベノミクス下における注入と漏出」
16/7/18(第900号)「経済循環における注入と漏出」
16/7/13(第899号)「16年参議員選の結果」
16/7/4(第898号)「奇異な話二題」
16/6/27(第897号)「ヘリコプター・マネーと国民所得」
16/6/20(第896号)「ヘリコプター・マネーと物価上昇」
16/6/13(第895号)「ヘリコプター・マネーと消費増税の比較」
16/6/6(第894号)「消費増税問題の決着」
16/5/30(第893号)「安倍政権の次のハードル」
16/5/23(第892号)「アベノミクス停滞の理由」
16/5/16(第891号)「ヘリコプターマネーは日本の救世主か」
16/5/2(第890号)「毎年1,000件もの新製品」
16/4/25(第889号)「日本は消費税の重税国家」
16/4/18(第888号)「財政問題に対する考えが大きく変る前夜」
16/4/11(第887号)「民進党が消費税増税を推進する背景」
16/4/4(第886号)「財政問題が解決済みということの理解」
16/3/28(第885号)「終わっている日本の経済学者」
16/3/21(第884号)「国際金融経済分析会合の影響」
16/3/14(第883号)「信用を完全に失った財務省」
16/3/7(第882号)「「政界」がおかしい」
16/2/29(第881号)「一向に醸成されない「空気」」
16/2/22(第880号)「緊縮財政からの脱却」
16/2/15(第879号)「超低金利の今こそ国債発行を」
16/2/8(第878号)「日銀の「マイナス金利」政策の実態」
16/2/1(第877号)「CTAヘッジファンドの話」
16/1/25(第876号)「今後の原油価格の動きは「売り投機筋」に聞いてくれ」
16/1/18(第875号)「日本の経済論壇は新興宗教の世界」
16/1/11(第874号)「日本のデフレギャップは資産(財産)」


15年のバックナンバー

14年のバックナンバー

13年のバックナンバー

12年のバックナンバー

11年のバックナンバー

10年のバックナンバー

09年のバックナンバー

08年のバックナンバー

07年のバックナンバー

06年のバックナンバー

05年のバックナンバー

04年のバックナンバー

03年のバックナンバー

02年のバックナンバー

01年のバックナンバー

00年のバックナンバー

99年のバックナンバー

98年のバックナンバー

97年のバックナンバー