平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


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98/12/7(第93号)


自自連立政権を考える
  • 自由党の経済政策
    自民党と自由党の連立政権への動きが現実化している。連立政権が成立すれば、国会運営がスムースになると言うことで、市場からは比較的好感されている。しかし、マスコミや野党からは厳しい意見や非難が続いている。また、自民党の支持者の中にもこれを批判的に捉える向きが多い。一方筆者は、自民党が参議院で少数与党である現状から、むしろこれは自然の流れと考えている。
    少数野党がキャスティングボ-ドを握り、連立政権の主導権を持ち、政治が混乱するケースがある。昔のイタリアの社会党がその例である。このためイタリアは政治も経済も混乱し、最終的には選挙制度の改訂までに至ったのである。しかしおそらく自自連立政権の場合には、主導権を自民党が持つことになり、このような事態に陥らないと考える。むしろ今回の連立は「自民党による自由党の救済合併」と言う色彩が強いと考える。
    今週号は始めに、自自連立政権の政策を占う上で、自由党の政策を検証してみたい。政策を「安全保障政策」と「経済政策」に分ける。まず自由党の安全保障政策は、「国連軍への参加」に見られるように、タカ派である。しかし、これについては自民党内部にも割に近い考えの政治家もおり、政策上は妥協点を見つけやすいと考える。
    問題は経済政策である。自由党や、その前身である新進党の経済政策はズバリ「小さな政府」指向である。自民党の中にも「小さな政府」を指向する意見を持つ者もいるが、実際行っている政策は現実的である。一般的に「小さな政府」を主張する者は「小さな政府が実現すれば、全ての経済問題は解決する」と固く信じ、考え方はとても観念的であり、けっこう頑固である。ちょうど「世界が共産化すれば、人類の問題は全て解決する」と言う、共産主義者の主張の仕方ととても似ている。ベルリンの壁が壊れ、共産主義国家が崩壊するのと合わせて、「小さな政府」を主張する声が世界的に大きくなってきたのもおもしろい現象である。つまり「共産主義と言う観念論、から小さな政府と言う観念論」に流行が変わっただけである。両者は極めてイデオロギー的であり、共通点も多い。時には宗教的色彩を帯びているのも共通している。
    一年ほど前に本紙では新進党の経済政策を取り上げた。以前、新進党の経済政策は盗用されたものと言う主張が「月刊文芸春秋」でなされた。故松下幸之助氏は松下電器の経営者であり、毎年公表される長者番付では一番を長らく続けていた。当然会社や個人にかかる税金には関心が強かった。そこで経済学者グループに「税金のない国家」の構想を作ることを要請した。この作業の結論が「日本再編計画ー無税国家への道」と言う書籍である。新進党の経済政策はこの書籍の内容に非常に似ていると言うことである。しかし筆者は、新進党の経済政策が盗用したものであるかどうかは、あまり問題にしていない。「小さな政府」を指向すれば、主張する政策は似ざるを得ないと考えるからである。
    世間には新進党は前回の選挙では「18兆円の減税」を主張したと言うことで、今日の経済の不況を予知していたと言う意見がある。しかし、これは全くの誤解である。新進党の全体の構想は「18兆円の減税と20兆円の財税支出の削減を組み合わせること」である。ただ選挙戦略上「20兆円の財税支出の削減」はまずいので、これを全面に出さなかっただけである。もし新進党の主張する経済政策を全て行っていたら、日本経済は混乱どころか確実に沈没していたはずである。
    「小さな政府」論の経済政策のポイントを簡単に述べれば「減税と規制緩和を行えば、経済が活発化し、財政支出を削減しても景気は落ち込まない」と言うことである。しかしこれまで政府は実際に「2兆円の特別減税」を2回行った。しかし、日本経済はみごとなまでに反応しなかったのである。たとえ減税額を18兆円に増やしても効果が限定されることが容易に予想できる。そして日本経済においては減税を行っても、経済は活発化しないと言うことが証明されたのである。つまり新進党や自由党の主張が間違っていることが、自由党のメンバーにも薄々わかってきたのである。今だに自由党の経済政策が正しいと信じている自由党の国会議員は小沢一郎氏とその周りの数名であろう。したがってこうなれば自民党と連立する流れは自然である。政治家はマスコミや学者と異なり、支持者の支持が必要であり、行動にリアリズムが要求されるのである。そして公共投資を伴う今回の景気対策を含む第三次補正予算に反対する者も自由党にはそれほどいないと考えられる。また自由党との連立に積極的に動いた人物が、積極財政論者である亀井元建設相であると言うことも象徴的である。

  • 今後の自由党の動き
    この他にも松下幸之助氏は政治に影響を残した。政治家を養成するための教育機関を設立したことである。いわゆる「松下政経塾」である。これ自体はりっぱなことである。しかし問題はこの塾出身の政治家が総じて「小さな政府」の信奉者と言うことである。「松下政経塾」の幹部が時々テレビに出演し、意見を述べているが、やはり「小さな政府」論である。「小さな政府」にそった政策を行えば、全ての経済問題は解決すると主張する。その語り口には一種の宗教的雰囲気さえ感じられるのである。
    旧日本新党の議員にはこの塾の出身者が多かった。当初、日本新党は「新党さきがけ」と合流することが噂されていたが、筆者はちょっと違うと感じた。実際、日本新党の大半は、「小さな政府」の主張のより強い新生党に合流して新進党を作ったのである。
    日本経済新聞の論調は一貫して「小さな政府」指向である。最近、気になるのは解説の最後に「これは小さな政府に反している政策だから間違いである」と言う断定的な言葉が目立つことである。一体、誰が「小さな政府」が正しいと決めたと言うのか。「2,020年からの警鐘」と言う長期の特集も酷かった。橋本内閣の「財政再建路線の政策」もこの日経新聞のような主張に影響を受けていると筆者は考えている。日経新聞は、今だに「減税の方が公共投資より経済効果がある」と言う主張を繰り返しているのである。筆者は政府は効率的であるべきと考えるが、財政の規模は、その国の経済の実状に合った適正な大きさが必要と考えている。国民の消費や投資が大きい場合には財政規模は小さくし、反対の場合には政府が財政規模を大きくせざるを得ないのである。単純にどの国でも「小さな政府」が良いと言う考えは間違っており、危険と考える。これについては別の機会に述べたい。
    日経新聞の系列であるテレビ東京も、当然日経新聞の論調の影響を強く受けている。出演するエコノミストも圧倒的に「小さな政府」論者が多い。このテレビ東京出身の小池百合子代議士は日本新党から新進党、そして現在は自由党に所属している。まさしく「小さな政府」論者の王道を歩んでいるのである。今回の自自連立劇で氏がどのような行動に出るか注目される。
    自由党は小沢一郎氏を中心にした政党と見られているが、筆者は、現在氏の影響力はほとんどなくなったと見ている。そして筆者は、自由党の実権は現在野田幹事長を中心した数名のメンバーに移っていると見ている。今後注目されるのは小沢一郎氏とその周りの信奉者と「小さな政府」にこだわりを持つ代議士の行動である。

来週号からは久しぶりに米国経済を取り上げ、順調と伝えられている米国経済の「光と影」について2週に渡り検証するつもりである。
今「経済コラムマガジン」とは別のオンラインマガジンの発行を計画している。具体的な構成と内容については、そのうちデモ版を作成する予定であり、それをご覧願いたい。




98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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