平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


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97/3/31(第9号)
日本の株式を考える
  • ル-ビン財務長官が急遽来日するらしいが、大変注目される。対日要求と打ち合わせ事項は次のようなものではないかと、筆者は予想する。
    1. 円高是正への協力の条件であったはずの「内需拡大」はどうなったのか。(日本政府は約束通り97年度の公共事業総額は前年並みを確保していると反論するであろうが、米国側はまさか本当に増税を急いでやるとは思っていなかっただろう)
    2. 米国の金融市場で何事が起こっても、日本の機関投資家が急激に資金を引き上げるようなことがないようにしてほしい。
    3. 「円安」による急激な輸出増加は困る(第1号を参照)。業界で当分自主規制はできないか。もし無理なら「円高」政策も止むを得ない。
    とにかく、特に実害が出ていない「財政赤字の解消」をなぜ急いで日本政府が行おうとしているのか、財務長官には信じられないであろう。また、国際公約である「公共投資基本計画」を「財政再建」の掛け声のもと、なし崩しになりそうな状況に不信感を持っているであろう。


  • 米国の株式の動向も気になるところだが、大きな動きがある場合には、「緊急版」を発行する予定である。

  • 日本の株式や株価については、色々言われているのは筆者も承知している。特に株価については「ダウで8,000円位が妥当」とか、「いや22,000円位が適当で現在が安すぎる」とか言われているのだ。言っている人はそれぞれに根拠があるのだろう。筆者は、「為替の動向」と同様に今日・明日の株価を予想することはできないが、ただ、だたいの傾向とかトレンドと言ったものについては、ある程度語ることができるのではないかと考えている。結論から申せば、現在のダウ平均の18,000円位がほぼ妥当の線であり、今後の株価は、やはり土地の価格の動向によっては、そろそろ高くなっても良い時期に入りつつあると言うことである。

  • まず、「上場している株式の株価はいかにして決定するか」であるが、これは「その株式の需要と供給できまる」と言って反対する人はいないであろう。ただ、市場参加者が現在の株価をどう見るか(安ければ買うし、高いと思えば売る)が問題である。つまり投資家が「その会社の価値をどうカウントするのか」が問題である。
    筆者が、会社の価値を計る方法として参考になると考えるのは、「M&A」の際用いられていると言われる手法(カウント方法)である。この方法では、会社の価値を「(現在の解散価値)+(今後得られるであろう一定期間の収益を現在の利子率で割り引いたものの合計)」である。収益を割り引くと言う概念は、ちょっと難しいが、数年後の収益が現在の価値に直すといくらになるかということである(かえって難しくなったかもしれないが)。たとえば3年後の収益を150円とし、利子率を2%とすれば、この150円の現在の価値は
    150/(1.02X1.02X1.02)=141円となるのである。
    一方、「現在の解散価値」であるが、貸借対照表が正しく表示されており、また評価が時価でなされているなら、「資本金+社内留保」と言うことになろう。仮に子会社を持っているなら、それは連結決算の「資本金+社内留保」と言うことである。

  • 買収予定の会社が米国の会社である場合は、比較的容易に会社の価値がカウントできる。貸借対照表の数字もほぼ時価で評価されており、監査も厳しいらしく、不良債権の表示も比較的正しく行われていると言うことである。子会社を持っている場合も、連結決算書が信頼できるものであり、日本も是非見習うべきものである。また、米国の会社は配当性向が大きく社内留保も比較的小さい。
    後は毎年の収益を予想し、それぞれを利子率で割り引き、合計すれば会社の価値が算出できる。たしかに収益の予想については、予想する人によって異なるであろう。また何年後まで収益を見積もるかも人によって異なるかもしれない。たしかに後になるほど収益の予想に不確実性が増すことから、だいたいの線が出るのではないかと考える。一説によれば10年間位らしいが、投資家によって多少異なるのではなかろうか。
    投資家の立場から考えるならば、資金を比較的安全な債券で運用するか、それとも10年位で元をとる会社買収を行うかの判断が必要になる(ここでは取り敢えず税金のことは省いて説明した)。また、買収する側が同じ事業を行っていたならば、買収後の市場の支配力強化による全体の収益向上が期待でき、買収対象会社の価値が高くなろう。さらに間接部門の経費削減が期待できる場合も、価値が高まることになる。

  • 一方、日本の会社の場合の価値のカウントは非常に難しい。まず、公表されている決算書の数字に信頼性がない。倒産した銀行の実際の不良債権額が表示額の何十倍にもなっているケ- スを一つとっても、いかに日本の会社の決算書が信頼性がないか理解できるだろう。ただ、将来の収益の予想については、米国の場合と同様にある程度正しくカウントすることなができると考えている。
    問題は資産項目である。まず、表示されていない資産がある。一つには「ブランド」と言うものであり、日本の場合は特に価値がある。また、販売先との関係も一つの財産である。また従業員に対する過去からの教育投資と言うものが資産であると考える人もいるであろう。しかし、不良債権を除けば、一番カウントが難しくしていて、圧倒的に重要なものは「土地の含み益」であろう。子会社や孫会社を持っている場合は、それらの会社が持つ「土地の含み益」も含まれる。

  • 本当に日本の会社の「土地の含み益」をカウントするのは難しい。特に古い会社は、いたる所に昔からの土地を持っているケ-スが多く、通常その表示価額も取得原価のままである。
    その会社の社長でも、会社が保有する土地の全貌を把握していない場合もあろう。正しく把握しているのは「総務の管財担当」と「経理の固定資産税の納付担当」位かもしれない。また、彼らも子会社や孫会社の土地についてはどれだけ把握しているか疑問である。このように、その会社の社員も知らないのに、外部の人間がその会社の全部の土地の時価総額を知ることはほとんど不可能である。外部の人間にわかるのは、工場の敷地や本社社屋の土地くらいのものである。試しにどの会社でも結構だが、その会社の「有価証券報告書」をご覧になればわかる。

  • 下落したと言え、日本の会社の土地に関しては、時価と取得価額(表示価額)との開きは依然大きい。収益力がなくても、土地の含みだけで持っている会社もある。これらの含みが日本の会社の価値のカウントを難しくしている。

  • では、日本の株式のダウの成り立ちを検討してみよう。筆者は、ダウの構成のうち収益でカウントできるのは、8,000円位と考えている。これにははっきりとした根拠はない。だいたいこんなものであろうと言う線である。また、もっともらしく「PERを元にすれこの位が妥当」と言う言い方もあるかもしれないが。一方、「土地の含み益」を加えた現在の解散価値を10,000円と見たが、これも根拠がない。とにかく「日本の株式のダウ」の妥当な線は、これらの合計18,000円となる。根拠のあまりない話で申し訳ないが、強いて根拠らしいと筆者が思うのは、過去のダウの動きである。ダウが10,000円以下の時代には、企業の収益が一番の株価の変動要因だったと思う。しかし、10,000円を超えるあたりから会社の持つ土地の含みが注目を集めるようになったと記憶している。そもそも以前一般人は、ダウが10,000円を超えることさえ、考えなかったものである。バブル時はもっと極端であった。土地を持っている会社の株価はどんどん上がった。土地を買うほどお金がない者は、土地を買う代わりに土地を持っている会社の株を買ったのである。
    筆者は、このように日本の会社の収益力が、ダウで言えば10,000円を切る、8,000円位のものと 考えるのである。

  • いよいよ今後の日本の株価動向を予想してみよう。まず金利はほとんど変動しないと考えても良いだろう。収益面では景気の動向が注目されるが、円安による輸出増と言うプラスと政府の緊縮予算の影響によるマイナスをどうカウントするがポイントであるが、筆者は、両者がほぼ相殺されると考えている。もっとも今後、為替が「円高」に転換と言うことになれば、収益面でのマイナスはかなり、大きくなるであろう。
    一方土地の価格動向はどうであろうか。筆者は次の要因で土地の価格がそろそろ上がる局面に入るのではないかと考えている。
    1. 今日(3月31日)にも、政府の土地の流動化策が出され、不良資産処理が一歩進む。これに対してはその効果について疑問を呈する向きもあるが、筆者は一定の効果があると考える。流動化すればかえって土地の価格は下がると主張する人もいるが、これは誤解であろう。公的な表示価格(公示価格など)が一時的に下がるかもしれないが、実勢価格が上昇する要因となるであろう。
    2. 都市部の容積率の緩和策などで都心の土地の割安感が出てくる。
    3. 第一次オイルショク後の不動産不況で、当時は不動産はもう永久にだめと言われたが、6~7年後には都心の土地から動き出した。今回もバブル崩壊からそれくらいたっているので、サイクル的にはそろそろ動き出して良いと考えている。
    4. バブル景気に湧く地域から見れば、日本の土地、特に東京の土地が割安と感じられ、これらの地域から不動産投資の資金が流れてくる。ちょうどバブル期に日本の企業が不況下にあったニュ-ヨ-クのビルを高く買ったのとよく似ている。香港の資本が都心の土地を落札したと言う話は注目される。
    筆者は土地の価格は、超長期的には下がって行くと考えるが、当分の間は資金の流れによっては上がる場面を予想している。ただし、上がるとしても始めは都心の一等地の価格だけであろうが、いずれは周辺の土地も少しずつ上昇することになろう(土地価格の動向については別の機会にまた述べたい)。いわゆる「ミニバブル」と言うことであろうか。
    土地の価格が上昇し始めば、当然株価も上昇することになる。いずれにしても、資金の流れを読むことが重要である。

  • 「円高」傾向と言うものがはっきりしてきたら、資金が日本に流れて来る(日本からの資金の流出にストップがかかることも含め)ことになるが、この資金はどこに流れるのか問題だ。まさか牛(最近言われている委託契約)や馬(競馬馬)ではないであろうし、切手(中国や香港ではブ-ムらしい)でもない。債券も考えられるが、金利がすでに相当下がっているので、株と土地に相当部分流れることが考えられる。また、「円高」となれば当然景気に悪影響があろう。「円高」はダウ平均にプラスとマイナスに働く。つまり政府の政策によっては、「不況下の株高」と言うことになる。

  • バブル時には株価も、「経済実態と離れて高くなった」と言われるが、これは事実と違う。たしかに相場は時には行き過ぎることはあるが、比較的に正しく会社の価値を反映している。日本のバブル時に異常な価格形成がなされたのは「株価」ではなく、株価の高騰は「土地価格の高騰」を忠実に反映しただけである。これは「土地」が再生産が不可能な物であるのに対して、株式は増資などによって「需要増に対する供給増」の対処がされやすいためである。土地需要の増加による価格の上昇については先週号をご覧下さい。こう考えると米国株式の高騰が一部「株式の償却」でなされているのは気になる。(3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」を参照願います)



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97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レ-トの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レ-トの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レ-トを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」