経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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15/10/26(865号)
避けられる物事の根本や本質

  • 科学的で論理的な話は力がない

    日本では、問題が起っても物事の根本や本質を避けて話が進む。先週号まで取上げていた安保法制については、15/10/12(第863号)「安保法制改正の必要性」で述べた「中国の軍拡」と「米国の内向き指向への転換」という状況の変化、つまり物事の根本や本質に国会審議で野党は全くと言って良いほど触れなかった。日本のマスコミも、一部の保守系の雑誌を除き、これらの根本的問題をほとんどスルーしていた。

    毎日報道されるのは、国会議事堂前に集って一方的な自分達の考えを主張する抗議団体の様子ばかりであった。しかし本当に今必要な議論は、「中国の軍拡」の実態と「米国の内向き指向への転換」への日本の対応であると筆者達は認識している。悲惨なことに日本の国会では、本質を外れた全く噛み合わない議論が延々と続いていた。


    15/10/5(第862号)「フォルクスワーゲンの排ガス不正問題」でも、問題の本質は避けられている。つまり物事の根本や本質を避けた議論が横行するのは日本だけではないようだ。欧州でデイーゼル車が爆発的に売れた背景には「エコ」があった。デイーゼル車の方が燃費が良く、排出する二酸化炭素の量がガソリン車よりわずかであるが少ないとされた(もちろんハイブリッド車はもっと少ない)。

    したがって欧州各国では、デイーゼル車の販売を推進するため補助金が支給され、また軽油税は低く設定された。この根本には「二酸化炭素による地球温暖化」の問題がある。しかし今回もこの根本問題には議論は及んでいない。


    地球温暖化が事実としても、その原因が本当に二酸化炭素なのか議論の余地がある。また仮に犯人が二酸化炭素としても、人類が排出した二酸化炭素なのかこれも結論が出たとは言えない。本誌は二酸化炭素説を主張するIPCC(地球の温暖化については専門家で構成する気候変動に関する政府間パネル)を、08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」で胡散臭い科学者集団と指摘した。

    仮にIPCCの主張が正しいとしたならば、地球温暖化を止めるには二酸化炭素の排出量を劇的に削減する必要がある。ガソリン車からデイーゼル車に乗り換える程度で済むわけがない。おそらく火力発電の全廃や化石燃料による暖房を止める必要がある。もちろん車もガソリン車だけでなくデイーゼル車も全て走行禁止である。二酸化炭素の排出量を産業革命当時に抑えるには、これくらいやらなければならないのである。

    欧州を中心とした怪しい科学者集団(IPCCのこと)の結論が、欧州だけでなく世界中を引っ掻き回して来たのである。しかし真相はハイブリッド車の開発に遅れを取った欧州が、デイーゼル車の方が「エコ」という幻想を作ったと筆者は見ている。そして欧州はこの幻想をハイブリッド車の流入を阻止する市場参入障壁として使って来たと筆者は認識している。さらに二酸化炭素の排出権取引といったいかがわしさの極みみたいな商売も生まれた。


    物事の根本や本質を避けた議論が横行する背景を考える必要がある。筆者は、これは人々を思考停止に追い込むようなイデオロギーの存在と言う他はないと考える。この場合のイデオロギーとは、具体的には宗教とか環境至上主義みたいなものである。さらにこのイデオロギーが特定の利益団体に結び付いているケースが多くあり、この場合は結論を覆すことは一段と難しくなる。

    筆者は、抽象的にイデオロギーに結び付いている勢力について述べているが、頭ではもっと具体的なイメージを思い浮かべている。例えば「日本の左翼」「欧州の環境保護団体」「反捕鯨団体」「反原発運動」などである。これらに対抗する武器は、科学的で論理的な反論と説明しかないと思っている。ところが残念ながら科学的で論理的な話は案外と力がない。せいぜい数十年後に「あの人が言っていたことは正しかったかも」で終わるのである。


  • マンションの傾斜問題の一万倍以上も重要な情報

    安保法制改正が成った今日、日本が直面している最大の課題は経済の浮揚である。ところが経済浮揚策どころか、今、話題となっているのは軽減税率やマイナンバーである。全てが増税に繋がる話である。つまり経済浮揚どころか、どうやって日本経済を沈没させようかという議論ばかりである。

    軽減税率と言っても、増税のための手段と捉えられる。また財政当局は、軽減税率の適応範囲をなるべく小さくしようと画策している。しかし軽減税率を適応しても増税額がそれほど変らないのなら、軽減税率を導入する意味が全くない。マイナンバーにいたっては、採用と同時に全国民のマイナンバーを記載した名簿が日本中に出回りそうである(罰則をきつくしたから漏れないなんて考えるのは大バカ者だけである)。

    日本中が前回の消費税増税で、経済がマイナス成長に転落したことを既に忘れ去っているようである。当時、間抜けな日本のエコノミストのほとんどが「消費税率を5%から8%に上げても日本経済は大丈夫」と言っていた。しかしこのいい加減な予想が完全に外れたのである。つまり軽減税率を適応しても、今回、増税を行えば日本経済にとって確実にマイナスである。ところが日本のマスコミは「軽減税率の適用範囲」とか「軽減税率の適用方法」といった、増税を前提にした話ばかりで騒いでいる。


    しかしそもそも消費税の議論は、「日本の財政が最悪」であり、また「この状況で社会保障の財源をどのように確保するか」がスタートであった。ところが本誌が昔から主張しているように「日本の財政が最悪」という話は世紀の大嘘なのである。今週号のテーマの「物事の根本や本質を避けた議論が横行する」とは、まさに日本の財政に関する議論が代表選手である。

    「日本の財政が最悪」が嘘と分り、日本の財政に問題がないと理解されれば「社会保障の財源」うんぬんの話で増税の話にはならない。ところが消費税の話は頻繁に出るが、日本の財政の善し悪しの議論は全くと言って良いほど話題にならない。まるで日本の財政が悪い事は当たり前になっていて、議論の余地はないということになっている。


    14/12/1(第823号)「「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」他で、日本の財政が他の先進国と比べ決して悪くないという話を、本誌はそれこそ何十回も掲載してきた。しかも様々な角度からこのことを説明してきたつもりである。しかし大平政権の頃から「日本の財政は最悪」ということが決定事項のように扱われている。

    先週末、ついに日本の長期金利は0.3%まで低下した。つまり10年物の国債の利回りが何と0.3%になったのである。これでどうして日本の財政が悪いとか危機的と言っているのか意味が分らない。

    しかしこう言うと必ず待ってましたと言わんばかりに、「それは日銀が国債を買っているから」と財政再建論者(代表が財政学者)達は惨めな反論を行う。しかし日本の長期金利が低いのは昔からである。日銀が異次元の金融政策を開始した13年4月のずっと前から日本の長期金利は世界一低い水準で推移していた(むしろ今日、日本よりスイスの長期金利の方が少し低くなった)。このように嘘つきの代名詞である財政再建論者(代表が財政学者)達は直にバレる嘘を平気でつく。


    時たまであるが、テレビ番組に出演したコメンテーターが「日本の財政は言われているほど悪くはないのでは」といった正しい発言を思わず漏らすことがある。すると途端に司会者などが話を遮るという具合である。つまり財政についての根本に迫る発言は直に刈り取られるという印象を筆者は持っている。

    逆に一年前安倍政権が消費税の再増税を見送る直前、日頃辛口の発言で知られる女性コメンテーターが、声高に「法律で上げると決められている増税を止めるなんてできないでしょう」と唐突な発言をした。日頃の彼女の発言から掛け離れた内容の言い分であった。いずれのケースも筆者はマスコミ界での大手広告代理店などの工作活動の影を感じる。


    国債の日銀保有分に対して一旦国が利息を日銀に払うが、この利息はそっくり国庫に戻って来る(ただし14/12/24(第826号)「増税版バカの壁」で述べたように利息の20%は準備金として積立てるため、これを差引いて国庫に納付。ただしこの準備金はいわゆる日銀の埋蔵金になっている。しかしこの埋蔵金は日本政府のものである)。つまり日銀が国債を買えば買うほど、実質的に国の借金は減ることになる。

    これは簡単なことであるが、ほとんどの国民に知らせられていない仕組である。ところがこの手の話はほとんどの日本のマスコミは取上げない。日銀の日本国債の保有額が300兆円にも迫ろうとしている今日、このような最重要な情報を一般国民は知らないのである。ここにも広告代理店の影を感じる。この情報は、今日騒がれているマンションの傾斜問題の一万倍以上も重要と筆者は思っている。



来週は典型的な財政学者の財政再建論を取上げ、この間違いを指摘する。




15/10/19(第864号)「安保法案騒動に対する感想」
15/10/12(第863号)「安保法制改正の必要性」
15/10/5(第862号)「フォルクスワーゲンの排ガス不正問題」
15/9/28(第861号)「今回の安保騒動」
15/9/21(第860号)「数年後、中国はIMFの管理下に?」
15/9/7(第859号)「中国の為替戦略の行き詰り」
15/8/31(第858号)「唐突な人民元の切下」
15/8/24(第857号)「改めてメガ・フロートを提案」
15/8/10(第856号)「鰯の頭も信心から」
15/8/3(第855号)「個別的自衛権だけなら国連からは脱退」
15/7/27(第854号)「時代に取残された人々」
15/7/20(第853号)「宮沢俊義という変節漢」
15/7/13(第852号)「「緊縮財政路線」はジリ貧路線」
15/7/6(第851号)「議論のすり替えとデマ」
15/6/29(第850号)「安倍政権に対する提言」
15/6/22(第849号)「憲法は不要」
15/6/15(第848号)「22才のベアテが作った日本国憲法条文」
15/6/8(第847号)「中国は外貨不足?」
15/6/1(第846号)「中国は資金繰り難?」
15/5/25(第845号)「今こそ郵貯と財投をアジアに広めろ」
15/5/18(第844号)「AIIBの資金力は「ゴミ」程度」
15/5/11(第843号)「中国との付合い方」
15/4/27(第842号)「中国はマイナス成長?」
15/4/20(第841号)「ドイツ軍の敗走開始の話」
15/4/13(第840号)「反・脱原発派の陥落は近い?」
15/4/6(第839号)「「エコ」の横暴と呪縛」
15/3/30(第838号)「原油の高値時代の後始末」
15/3/23(第837号)「ドバイショック再現の可能性」
15/3/16(第836号)「価格暴落でも供給増」
15/3/9(第835号)「原油価格は二番底に向かう?」
15/3/2(第834号)「実態がない地政学的リスク」
15/2/23(第833号)「米大手金融機関の「情報発信力」」
15/2/16(第832号)「「今が潮時」とうまく撤退」
15/2/9(第831号)「代替資源(非在来型資源)のインパクト」
15/2/2(第830号)「原油価格の動きに変調」
15/1/26(第829号)「低調になった経済論議」
15/1/19(第828号)「「どんぶり勘定」の経済運営」
15/1/12(第827号)「IMFの借金取りモデルの導入」
14/12/24(第826号)「増税版バカの壁」
14/12/19(第825号)「総選挙後の動きと課題」
14/12/8(第824号)「今回の総選挙の注目点」
14/12/1(第823号)「「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」
14/11/24(第822号)「解散・総選挙の裏側」
14/11/17(第821号)「再増税は延期?」
14/11/10(第820号)「日本のぺらぺら族」
14/11/3(第819号)「財務省とマスコミの関係」
14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」
14/10/20(第817号)「消費税増税と八代亜紀」」
14/10/13(第816号)「増税なんて必要ない」」
14/10/6(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」
14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」


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