経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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15/8/24(857号)
改めてメガ・フロートを提案

  • 袋小路に入った沖縄の基地問題

    今週は、最近、話題になっている事を二つ取上げる。一つ目は普天間基地の辺野古への移設が暗礁に乗上げていることである。本誌は10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」10/4/5(第610号)「何事もタイミング」10/4/12(第611号)「ミクロで捉えた日本経済」他で、普天間基地の代替案として可動式のメガ・フロートの採用を提案した。

    日本のメーカは、既にメガ・フロートを使った飛行機の離発着の実験を行っている。それどころか関西空港建設の際には、一応このメガ・フロートも検討されたという話もあった。実際、普天間基地移転の話が出た時、メガ・フロートも検討の対象になったという。未確認ではあるが、どうも米国側も当初は「メガ・フロートで良い」という感触だったという話さえある。


    しかしメガ・フロート案は、辺野古沖埋立案が本決まりになる過程で消えたという。一説によると、メガ・フロートでは地元に金が落ちないことが理由として挙げられている。世の中には表向きの話と裏の話が大きく違っていることがよくある。沖縄の基地問題でも似たことがあると考えても良い。

    ただ沖縄県民の気持ちとして、これ以上の恒久的な米軍の軍事施設の建設に強い抵抗感があることは事実であろう。たしかに仲井真前知事は、苦渋の決断で辺野古沖への基地移設を認めた。日本政府と与党はこれを盾に基地建設を進める他はない。


    ところが代わった県知事が、前知事が承認した方針を翻したのである。この方針変更の原因や事情を今さら詮索してもあまり意味がない。一方、一旦前知事が辺野古移設を認めたのだから、国としては基地建設計画を覆すことはないと見られる。おそらく法的に政府の建設計画は認められており、仮に裁判になっても国が勝つと思われる。

    しかしいくら法的に有利であっても、地元沖縄と大きく対立したままで基地建設を進めることは大きな困難を伴う。とうとう政府は、基地建設を中断し沖縄県と話合いを持つことにした。これは正しい判断と思われる。


    しかし両者の言い分がこれだけ違うのだから、冷却期間を一ヶ月設け両者がその間に話合いを行っても、妥協点を見つけることは難しいと筆者は見ている。おそらく両者の主張は平行線のままと思われる。しかも深刻なことにこの平行線は、このままずっと続くと見られる。

    しかし辺野古移設が進まなければ、普天間基地の問題の方も解決しないということになる。そして普天間基地問題(=辺野古移設問題)はここまでこじれたのだから、少なくとも1年や2年で決着を見るとは考えにくい。いよいよ政府と沖縄県が袋小路に入ったまま、普天間基地問題が続くという最悪の事態に陥ったのである。両者に今さら自分達の掲げた旗を降ろすという気配はない。

    「第三の道」を模索という話が出ている。しかし「第三の道」と言っても簡単ではないと筆者は思っている。辺野古新基地計画の縮小などが考えられるが、これで沖縄側が納得するのか不明である。また基地建設計画の変更ということになれば米国の了解も必要になる。いずれにしても決着が付くまでかなりの時間を要することは確実である。


    そこでこの事態を受け、筆者は持論であったメガ・フロート案を改めて提案したい。しかしこれは「第三の道」としての提案ではない。政府と沖縄が妥協点を見つけるまでの暫定的な措置であり、つまり一つの時間稼ぎである。両者の話合いに時間が相当掛かるといって、普天間の問題を放っておくわけには行かないのである。

    政府と沖縄の話合いが決着するまでの臨時的対策がこのメガ・フロートである。メガ・フロートの臨時基地建設によって、取り敢えず差し迫っている普天間問題の解決を図るという対策が必要と筆者は訴えたい。しかし今日の膠着状況を脱すると言っても沖縄の方が先に動くとは考えられない。どうも政府の方から第一歩を踏出す他はないと筆者は見ている。


  • 人民元切下は外貨調達が目的?

    中国の突然の為替切下げが話題になっている。8月11日から3日間で基準値を4.5%切下げ、結果的に3%ほど人民元は安くなった。これに対して色々な解説がなされている。しかし納得の行く解説や説明がほとんどないのが現状である。

    まず中国の景気低迷はほぼ常識になっており、7%の経済成長率というの中国政府の公表数字を信じる者はほとんどいないであろう。この不況の打破のため人民元切下による輸出推進が図られたという説をよく聞く。しかしたった3%の切下げで輸出が大きく伸びるとはとても考えられない。またこの話は中国当局も否定している。実際、輪出市場のライバル国の中には、ベトナムように為替を切下げ中国に対抗する国が出てきている。したがって輸出推進のための人民元切下という話を筆者は信じていない。


    たしかに中国の輸出は不振で、対前年同月比でマイナスが続いている。これは中国製品の競争力の低下と輸出先国の経済低迷が影響していると考えられる。したがって3%程度の人民元の切下でカバーできる話ではない。

    ところで中国の輸出は多少減少しているが、輸入の方がもっと大きく減少している。この結果、貿易収支の黒字は逆に大きくなっている。つまり貿易黒字が大きくなっているはずの中国が、為替を切下げるといった全く矛盾した政策を採ったのである。今回の人民元切下が、米国を始め各国から批難を浴びたのは当然である。


    中国は毎月5〜6兆円の貿易黒字を記録している(しかも輸入の落込みの方が大きいので貿易黒字額はむしろ大きくなっている)。つまり他の収支がトントンならば、毎月5〜6兆円の外貨準備が増えることになる。ところが逆に毎月ほぼ同額の5〜6兆円の外貨準備が減少しているのである。つまり中国から毎月10〜12兆円の資金が海外に流出している計算になる。

    それにしても10〜12兆円もの巨額資金が毎月流出しているという話は信じ難いが、それしか考えられないのである。ちなみに輸出額の減少に比べ輸入額の減少が大き過ぎることも不可解である。それにしても中国という国は、正しい数字を公表しないので色々な詮索が生まれる(それでも何とか分析する必要がある)。


    15/6/1(第846号)「中国は資金繰り難?」15/6/8(第847号)「中国は外貨不足?」で、筆者は中国が外貨の資金繰りに窮しているといった世間では信じられないような仮説を唱えた。毎月、巨額の貿易収支の黒字を記録しているはずの中国が、外貨不足に陥っているというかなり乱暴な説である。そして人民元の不足なら人民銀行が人民元の増刷をすれば済むが、外貨が不足する場合は市場から調達する他はないと筆者は説明してきた。

    つまり今回の人民元の切下は、不足する外貨の調達が目的ではないかというのが筆者の大胆な推測である。また香港経由で大量の資金が流出する懸念を、14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」で取上げたことがある。そしてこれが本当に起っている可能性がある。したがって筆者の推測があながち外れてはいないかもしれない。

    中国人観光客の爆買いが話題になっているが、これで対外的に外貨不足を誤魔化している可能性がある(爆買いと言っているが中国の膨大な貿易黒字を考えると大した金額ではない)。たしかに仮に中国が外貨不足に陥っていても、これは一般の中国国民に知られたくないことである。ところでここ数年、東京で中国人が次々とマンションを買っているという話をよく聞いた。

    ところが最近になってこれらがどんどんキャンセルされているという噂が出ている。この噂が本当なら、海外への不動産投資といった資金流出ルートの方は、中国当局が締め始めていることを窺わせる。いずれ時間が経てば、これらのことははっきりするであろう。





来週は、中国における意思決定というもの取上げる。

読者の方から「日本財政破たんの可能性は今のところ国民が金融資産を外貨に換えるときくらいではないか」というご質問があった。まず日本が財政破綻する可能性はないということを強調したい。理由としてこの読者の方と同様に、日本の膨大な金融資産の存在を挙げることができる。さらにこれに加え、日銀が日本国債の事実上無制限の買入れを決めたため、財政が破綻するということは考えられなくなったのである。

また「国民が金融資産を外貨に換える(事実上の海外への資金流出)」といっても、日本は世界最大の外貨準備を保有しており(中国の外貨準備は大きいが、外貨の借金も大きいので差引の外貨準備は日本が世界一)、資金流出にも十分対応できる。また外貨準備が不足するような大量な資金流出となれば、日本で大きなパニックが生じたケースに限られる。しかしそのような事態は、財政の問題を越えたものであり、財政の問題として捉える方がおかしい。




15/8/10(第856号)「鰯の頭も信心から」
15/8/3(第855号)「個別的自衛権だけなら国連からは脱退」
15/7/27(第854号)「時代に取残された人々」
15/7/20(第853号)「宮沢俊義という変節漢」
15/7/13(第852号)「「緊縮財政路線」はジリ貧路線」
15/7/6(第851号)「議論のすり替えとデマ」
15/6/29(第850号)「安倍政権に対する提言」
15/6/22(第849号)「憲法は不要」
15/6/15(第848号)「22才のベアテが作った日本国憲法条文」
15/6/8(第847号)「中国は外貨不足?」
15/6/1(第846号)「中国は資金繰り難?」
15/5/25(第845号)「今こそ郵貯と財投をアジアに広めろ」
15/5/18(第844号)「AIIBの資金力は「ゴミ」程度」
15/5/11(第843号)「中国との付合い方」
15/4/27(第842号)「中国はマイナス成長?」
15/4/20(第841号)「ドイツ軍の敗走開始の話」
15/4/13(第840号)「反・脱原発派の陥落は近い?」
15/4/6(第839号)「「エコ」の横暴と呪縛」
15/3/30(第838号)「原油の高値時代の後始末」
15/3/23(第837号)「ドバイショック再現の可能性」
15/3/16(第836号)「価格暴落でも供給増」
15/3/9(第835号)「原油価格は二番底に向かう?」
15/3/2(第834号)「実態がない地政学的リスク」
15/2/23(第833号)「米大手金融機関の「情報発信力」」
15/2/16(第832号)「「今が潮時」とうまく撤退」
15/2/9(第831号)「代替資源(非在来型資源)のインパクト」
15/2/2(第830号)「原油価格の動きに変調」
15/1/26(第829号)「低調になった経済論議」
15/1/19(第828号)「「どんぶり勘定」の経済運営」
15/1/12(第827号)「IMFの借金取りモデルの導入」
14/12/24(第826号)「増税版バカの壁」
14/12/19(第825号)「総選挙後の動きと課題」
14/12/8(第824号)「今回の総選挙の注目点」
14/12/1(第823号)「「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」
14/11/24(第822号)「解散・総選挙の裏側」
14/11/17(第821号)「再増税は延期?」
14/11/10(第820号)「日本のぺらぺら族」
14/11/3(第819号)「財務省とマスコミの関係」
14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」
14/10/20(第817号)「消費税増税と八代亜紀」」
14/10/13(第816号)「増税なんて必要ない」」
14/10/6(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」
14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」


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