経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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15/7/20(853号)
宮沢俊義という変節漢

  • 日米安保と自衛隊で守ってきた日本

    今週は憲法と憲法学者についてもう一歩突っ込んだ話をする。まず日本国憲法や護憲派の話をするには、宮沢俊義という学者の存在を避けることができない。彼は大日本帝国憲法に特に思い入れが強かった憲法学者であり、戦前、美濃部達吉東京帝大教授から憲法の講座を引継いだ。戦後GHQが日本に新憲法の制定を迫った時、これに猛反発したのがこの宮沢教授である。当初、教授は「大日本帝国憲法の手直しで十分」とか「新憲法はGHQの押付け憲法」と強く主張した。

    ところがある日をもって、宮沢教授は新しい日本国憲法の宣伝マンに大変身した。宮沢教授は新制東大でも憲法の講座を引続き受け持ち、また新憲法を解説し後に出世して法学部長となった。彼の憲法解説は、日本で基準となり今日の司法試験でも通説として扱われている。このように戦後の宮沢教授は、一転して大日本帝国憲法を否定し、戦前を「まことに暗い時代であった」と以前の発言を完全に翻している。ちなみにこの宮沢教授が大日本帝国憲法のことを明治憲法と呼び始めたのである。


    一言で言えば彼はまさに「変節漢」であった。変節の原因は、占領軍、つまりGHQの圧力(はっきり言えば脅し)と見て良い。変節は卑怯と言える。しかし当時は彼のような卑怯者が沢山いて、卑怯な者ほど戦後をうまく生き延びたのである。

    敗戦を機に変節したのは学者だけではない。戦前・戦中に軍国主義を煽った言論機関も変節した。その代表が朝日新聞を始めとした新聞であり、これらの変節もGHQの圧力による。変節するくらいなら、宮沢教授などの憲法学者は職を辞すれば良かったし、新聞も廃刊すべきであった。しかし彼等は変節によって生き延びることを選択したのである。この卑怯者の遺伝子が脈々と、今日の憲法学者(いかに憲法学者が卑怯者かを来週あたりに取上げる)や朝日新聞などに引継がれていると筆者は感じている。


    宮沢教授は1945年8月15日、つまり敗戦の日に日本で革命が起ったという驚くような珍説を唱え始めた。つまり革命によって明治憲法(大日本帝国憲法)は無効になったと主張しているのである。そして新しい日本国憲法(現行の憲法)こそが絶対的正義と諭した。日本の憲法サークルは、この宮沢教授を中心に出来上がった。ここに日本国憲法教という新興宗教が日本で生まれたのである。

    憲法学者やその周辺の弁護士団体など法曹界からは、宮沢教授の変節振りを批難する声は出ない。たしかに日本国憲法教の教祖を悪く言うわけには行かない。唯一教授を厳しく批判したのは、評論家の江藤淳氏ぐらいであったという話である。


    戦後、社会主義者・共産主義者などの左翼勢力が大きくなった。国会でも社会党や共産党が議席を大きく伸した。また既にソ連と米国を中心とした西側との間で冷戦が始まっていた。この冷戦構造は1951年のサンフランシスコ講和条約締結を巡って日本国内に対立を生んだ。単独講和を目指す政府・与党と全面講和を主張する社会党・共産党が鋭く対立した。

    またこの頃にはソ連の対日工作が始まっていた(有名な工作員にはイワン・コワレンコ、ラストボロフや、後に米国に亡命したレフチェンコ)。この冷戦下で問題になったのが日本の再軍備である。ソ連や中国にシンパシーを感じる社会党などは、第9条を盾に自衛隊や日米安保に猛反発した。特に社会党は、ソ連軍の侵攻による日本の社会主義化を目論でいたため「非武装中立」と言うまやかしのスローガンを掲げた。


    ちなみに1951年の講和条約締結と同時に日本は米国と日米安保条約を結んだ。この条約締結の真相を言えば、これはわざわざ日本の方から米国に請うたものであった(外交交渉による取決めなので、国民向けには全く違った表現を使ったかもしれないが)。もし連合軍が占領終了と同時に撤退すれば、日本を防衛する術が全くなくなるからである。

    安保条約で日本は米軍に基地を提供した。また今日こそ米軍基地は機能的に配置されているが、当時は日本全土にバラバラに在った。自衛隊が整備されるにつれて米軍基地も整理統合されて行った。ところが左翼はこの安保条約を米国に強いられたものと事実と全く違う宣伝をずっとして来た。


    ただこんな経緯があったためか、この最初の安保条約では米国が日本を守る義務はなかった。しかし日本を守る義務がなくとも、日本国内に米軍が駐留していれば他国からの侵略は防げるという日本側の発想である。まさに駐留する米軍人は、日本にとっての人質の役目を果した。ようやく60年の安保条約改定で米国が日本を守る義務を課した条項が追加されたのである。しかしこれも日本が米国を助ける必要のない片務条約であった。今回の安保法案はこれを一部見直そうというものである。

    サンフランシスコ講和条約が発行したのが52年4月であったが、さっそく韓国がその直前に李承晩ラインを設定し竹島を勝手に自国に編入した(占領終了と同時にマッカーサー・ラインがなくなることを見越していたと見られる)。さらに53年に韓国は竹島を占領し実行支配に入った。日本が自衛隊を創設する前年のことである。戦後、日本が平和を保たれたのは、第9条のお陰と左翼や護憲派は実にいい加減で間抜けなことを言って来た。しかし日米安保と自衛隊が日本を守って来たことははっきりしている。もしこれらがなかったら北海道、対馬、沖縄あたりはどうなっていたか分らないと筆者は思っている。


  • 憲法学者の異常さを示す朝日のアンケート調査

    マルクスを学んだのは、社会主義・共産主義、つまり元々左翼思想の持ち主がほとんどであった。たまたまマルクスを読んで左翼思想に染まったというケースは稀と思われる。同様に法律を学ぶ者の中で特に憲法を専攻したのは左翼思想の持ち主が多かったと筆者は見ている。さらに戦前の軍部に反感を持つ素朴な反戦主義者も第9条で戦争放棄を唱った日本国憲法に魅了されこの憲法サークルに加わった。

    この結果、日本の憲法学界は左翼思想の持ち主(ソ連軍による日本占領によって日本の社会主義化・共産主義化を企む者達)と反戦・平和主義者といったイデオロギー色が極めて濃い者で占領されることになった。したがって客観的かつ学術的に憲法や日本国憲法を研究しようという学者にとってこの憲法サークルには居場所がなく、ここからはじき出されることになった。この結果、日本の憲法学界は特殊な思想と思考を持つ者だけの集団となった。つまり今日でもほとんどの憲法学者(周辺には日弁連などの法曹団体がある)は、故宮沢俊義教授を教祖とした日本国憲法教の熱心な信者なのである。


    15/6/15(第848号)「22才のベアテが作った日本国憲法条文」で取上げたように、6月4日の衆院憲法審査会で、与党側の参考人を含め三名の憲法学者全員が「集団的自衛権は違憲(つまり安保法案)」は違憲と表明した。しかしマスコミは、この三名が集団的自衛権を違憲としているのか、あるいはこれまでの自衛権の拡大解釈が問題なのか、はたまた個別的自衛権までも否定しているのかといった極めて重要な点をはっきりさせていない。ところが野党やマスコミは、72年の政府見解(日本に個別的自衛権はあるが集団的自衛権はない)の解釈変更を三人の憲法学者が違憲と断じたと喧伝している。

    しかし筆者は、大半の憲法学者の考えはそんな中途半端なものではないと思っている。ほとんどの日本の憲法学者は自衛隊や個別的自衛権さえも違憲と見ていると筆者は思っている。実際、これを証明するような朝日新聞の憲法学者へのアンケート調査の結果がある(先月下旬に実施)。まず今回の安保法案を違憲、あるいは違憲の可能性があるとした者が121名の中で119名いて、合憲としたのはたった2名であった。

    しかし同アンケートで筆者が最も注目した質問は自衛隊に関するもので、118名の回答者で中で違憲あるいは違憲の可能性があるとした者が77人と65.3%も占めている(ただこれでも筆者が思っていた数字より小さい・・ひょっとすると頑迷な憲法学界でも地殻変動が起る前夜なのかもしれない)。つまり集団的自衛権の拡大解釈の善し悪しの前に、大半の憲法学者は個別的自衛権(つまり自衛隊)さえも違憲と考えているのである。またもちろん日米安保もほとんどの憲法学者は違憲と答えるものと筆者は見ている。


    ところがこんな憲法学者と正反対の国民の意識調査の結果がある。内閣府が継続的に行っている国民意識調査である(HPがある)。これによると日本国民の実に91.7%が自衛隊に良い印象を持っている。また日米安保は役立っていると81.2%が回答している。このように国民と憲法学者の意識は真逆である。つまり本当に憲法学者は特殊で異常な考えの者ばかりであることを、朝日のアンケート調査は裏付けているのである。しかしこの重要なことを国民に気付かさせないようにマスコミは報道し、野党は行動している。

    内閣府の調査であるから多少のバイアスを考慮しても、国民の感覚がまことに正常なことが分る。しかも近年、国民の国防意識は段々と高まっている(自衛隊や日米安保を肯定する比率が年々高くなっている)。これも日本周辺で安全保障上で問題になることが連続して起っているからであろう。今回の安倍政権の安保法制の整備は、まさにこの国民の意識に沿ったものである。

    このことに国民自身がまだ気付いていないだけである(自民党議員の中にもこれに気付いていない者がいるようだ)。これに対してかなりのマスコミと憲法学者(周辺を含む)、そして野党だけが正反対のことを言っている。さらに伝統的にプロパガンダだけに長けた左翼野党議員が「戦争法案」とか「徴兵制」といった本質をわざと外した宣伝工作を行ったので、安保法案がますます分りにくくなった。騒ぎが大きくなれば良いと思うマスコミもこれに乗ったことになる。



安保法案は、衆議院を通過し参議院に送られ、成立することがほぼ確実になった。ただ集団自衛権を一部認めるという閣議決定から一年も掛かったのである。安保法制の改定はいつも揉めるのでしょうがないのであろう。

筆者は、安保法制の改定を機にして、毎回、世の中の雰囲気が大きく変ることに興味を持っている。来週はこれを取り上げる。例えば今回は朝日新聞の論調に変化が起るかもしれないと筆者は注目してきた(これには月刊誌に面白い調査がある)。たしかに今回の安保国会の報道にも変化が少し見られると感じられる。本文で紹介した朝日のアンケート調査も、物事の本質(ここでは憲法学者の本質)をもっと客観的に見ようという試みの一つと筆者は理解している。




15/7/13(第852号)「「緊縮財政路線」はジリ貧路線」
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