経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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来週号はゴールデンウィークにつき休刊

15/4/27(842号)
中国はマイナス成長?

  • 輸入額の異常な減少

    公表されている中国の経済成長率がおかしいことは、大方の人々が感じているところである。しかし公表される数字が違うという証拠を示せないので、疑いながらもこれを受入れている。日本のマスコミもこの怪しい数字を元に「中国経済が成長が少し減速した」といった間抜けな解説を行っている。

    そもそも外部の者だけでなく、どうも中国政府でさえ中国経済の実態を正確には把握していないようである。中国政府の要人もほぼ正しい経済数字は、電力使用量や貨物の輸送量などに限られていると言っている。他の経済数字でほぼ正しいと見られるのは外資系企業のシェアーが高い自動車の販売台数くらいなものである。この状況で15年1〜3月の経済成長率が7%に低下し、中国経済は減速したとか言っているのである。普通の国なら経済成長率が7%もあれば相当の好景気であろう。


    筆者は、正確性が高いと思われるデータから中国経済の実態を少しでも正しく把握できないかと考えて来た。そこで筆者が注目したのは、中国の輸入額(金額)の推移である。輸入額は、他の国との関係がありある程度は正確に公表されていると思われる。そしてこの輸入額の推移を見ると、やはり最近の中国経済に大きな変調があると見られるのだ。

    中国の輸入額の対前年比の増減率は次の表の通りである。
    輸入額の対前年比の増減率
    年・月対前年増減率(%)
    14/11▲ 6.5
      12▲ 2.3
    15/ 1▲19.7
       2▲20.1
       3▲12.7


    何と5ヶ月も連続して中国の輸入額は対前年比でマイナスを記録している。筆者は、前年(14年)11月と12月のマイナスは、原油や他の輸入資源(鉄鉱石など)の価格が下がっていることが影響していると理解していた。しかし年が明け15年になってもマイナスが続いているのである。しかもマイナスの数字が大きくなっている。


    理論経済学上では、輸入額(M)と消費(C)は所得(Y)の従属関数と定義される(対して公共投資などの政府支出や投資は、所得(Y)に従属しない独立変数とされる)。つまり所得(Y)が決まれば、輸入額(M)は自動的に決まるという関係にある。そして所得(Y)に対する輸入額(M)の比率、つまり輸入性向(m=M/Y)は消費性向(c=C/Y)と同様に安定していると見られる(平均輸入性向と限界輸入性向が一致)。

    つまり中国経済が、昨年11月からマイナス成長になっていないと理論上は辻褄が合わない。しかしたしかに原油などの輸入資源の価格が大きく下落している。また中国では部品製造の内製化(部品の国内生産)が進んでいるという構造変化がある(これまでより部品を輸入に頼る度合が低下)。さらに中国人観光客の外国での爆買いが輸入統計から漏れていることも考えられる(GDP統計上で外国人の商品購入は、購入国にとって輸入、売った国にとって輸出に分類)。


    したがって中国の輸入額の推移を見る時には、これらの要素を加味する必要がある(この他に密輸出や密輸入が考えられるが、ここまで考慮すると推定すること自体が困難になる)。しかしこれらを考慮し輸入額の修正を行ったとしても、修正後の輸入額もかなり小さいと筆者は見ている。特に今年(15年)に入ってからの大きなマイナスを見ると、どうも修正後の輸入額はマイナスになると思っている。

    したがって筆者は、15年1〜3月期に中国はとうとうマイナス成長に陥ったのではないかと推定している。今後の中国の経済成長を推測する場合の注目点の一つは、比較的正しいとされる中国での自動車の販売台数の推移である(もし国民所得が減っているようだと車の販売も頭打ちになる)。それにしてもこの訳の分らない中国が主導し、アジアインフラ銀行(AIIB)という世界的な公的金融機関を設立しようというのだから混乱を招くのである。


  • 子供騙しの手法

    AIIBの発想は、14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」などで触れた、習国家主席の「中華民族の偉大なる復興」という冗談のような前時代的発言の延長線上にあると筆者は理解している。経済成長によって米国に次ぐ世界第2位の経済大国に登りつめた以上、国際金融機関、つまりIMFや世界銀行においてもそれに応じた影響力を持つことを中国はずっと希求してきた。

    中国は国際金融機関(IMFや世界銀行)で経済力に応じた地位を要求してきた。ところがこの要求はことごとく退けられてきた。主な理由として人民元の国際化が遅れていることが指摘されてきた。しかし中国は、これは旧体制(欧米・日)の横暴で、世界2位の経済大国である中国を軽んじていると憤っている(GDP統計が相当デタラメなので本当に世界第2位の経済大国になっているか疑いがあるが)。それならば中国が、AIIBという国際金融機関を創設し、これを主導しようと言うのである。


    「中華民族の偉大なる復興」と言っているが、中国という国は決して世界の覇権を握りたいのではない。中国はアジア、特に東アジアの盟主を目指しているのである。中国は昨年のベトナム沖での石油試掘や南シナ海の島における埋立など、周辺の小国に対しては傍若無人な振舞いを繰返している。

    中国にとって目障りなのが日本である。しかし日本に対しても尖閣諸島への領海侵犯や小笠原沖でのサンゴの密漁など、相手が弱いと見れば勝手な理屈で攻撃を仕掛けて来るのが中国である。そのような国が国際的な金融機関を創設し主導するというのだから呆れる。甘言にほだされてそのようなものに出資すれば、後でほぞを噛むのは明らかである。これが筆者の結論である。


    たしかにIMFや世界銀行に問題があることは筆者も承知している。例えば15/1/12(第827号)「IMFの借金取りモデルの導入」で触れたように、元世銀副総裁の経歴を持つスティグリッツは「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」でIMFの発展途上国救済モデルの問題点を指摘している。またここで筆者は、新古典派のIMFのマクロ経済シュミレーションモデルが全く日本に適合せず、このポンコツモデルを採用後、日本政府の経済予測が外れっぱなしであることを指摘した。

    また1997年のアジアの経済危機の際、日本がIMFのアジア版を創ろうとしたが、欧米の反対され頓挫したことがある。このように問題山積なのがIMFや世界銀行である。しかし中国主導のAIIBがこれらの問題を解決するとは思われず、もっと酷いものが出来る可能性の方が強いと筆者は考える。


    中国のAIIBについて、今週号は「さわり」だけにしておく。ここからはこれとは関連は薄いが最近気になった話を取上げる。安倍総理の米国議会での演説を前に不穏な空気が流れている。在米の中国系・韓国系の反日運動家が安倍総理の米議会演説を阻止する活動をしていたのである。

    その阻止活動が失敗したという話が出た後、ニューヨークタイムズ(NYタイムズ)に「安倍総理は議会演説で侵略したアジアの国々への「おわび」を入れるべき。安倍総理やその背後の右翼がいる以上、アジアで日本は指導的立場に立てない」といった旨の社説が掲載された。


    この「おわび」の一言を巡り一部の日本のメディアが騒いでいる。まず何故、このような社説を唐突に掲載したのかが不思議であると同時に、日本の各メディアがこのNYタイムズの社説を一斉に取上げていたことにいかがわしさを感じる。そもそもNYタイムズは発行部数が90万部にも満たない新聞であり(日本の地方紙と同規模)、米国での影響力は限られ、また社説なんて読む人はあまりいない。ましてや平均的な米国人の日本に対する関心は薄い。

    明らかにこの社説は、日本と日本のメディアに向けたものと見て良い。この種の記事はこれまでも度々NYタイムズに掲載され、その度に日本のメディアがこれを取上げ「米国人はこういう見方をしている」といった誤解を招くような情報操作と情報拡散が行われてきた。


    しかしこの種のNYタイムズの記事を書いているのは、驚くことに日本人かあるいは日本周辺の人々だということであり、しかもこの仕掛は既にバレている。NYタイムズの東京支局は、何と朝日新聞の本社ビル内にある。したがって例えば横浜在住の極左翼学者が朝日新聞本社ビルに通い、この種の記事や社説をNYタイムズに書いていると思えば良い。

    米議会演説や70年談話に「おわび」を入れるかは、米国人にとって全く興味がないと見て良い。「おわび」に異常に関心があるのは、中・韓と日本の左翼(メディアと学者など)だけである。日本の左翼メディアは、まだこの子供騙しの手法が通用すると思っているのである。


    報道ステーション(テレビ朝日系)では、案の定、この社説をしつこく取上げていた(他の局はさっと流していた)。番組の解説者が「この社説やアンケートを見ても「おわび」はやはり入れるべき」と真面目くさって話していたので筆者も笑った。興味のある方は御自分で「ニューヨークタイムズ、玉本」とか「NYタイムズ、大西」を検索サーバ(どの検索サーバでも良い)で確認してもらえば良い。

    日本のメディア界は、とんでもないことになっているのである(完全に堕落している)。朝日新聞などの左翼系メディアは嘘つきだと信頼が地に落ちているので、この子供騙しの手法にまだ頼っていると筆者は見ている。また24日の「ひるおび(TBS系)」でも、この子供騙し社説に言及し「おわび」を取上げていた。



来週号はゴールデンウィークにつき休刊で、次回号は5月11日を予定している。何事もなかったら、テーマは今週の続きである。




15/4/20(第841号)「ドイツ軍の敗走開始の話」
15/4/13(第840号)「反・脱原発派の陥落は近い?」
15/4/6(第839号)「「エコ」の横暴と呪縛」
15/3/30(第838号)「原油の高値時代の後始末」
15/3/23(第837号)「ドバイショック再現の可能性」
15/3/16(第836号)「価格暴落でも供給増」
15/3/9(第835号)「原油価格は二番底に向かう?」
15/3/2(第834号)「実態がない地政学的リスク」
15/2/23(第833号)「米大手金融機関の「情報発信力」」
15/2/16(第832号)「「今が潮時」とうまく撤退」
15/2/9(第831号)「代替資源(非在来型資源)のインバクト」
15/2/2(第830号)「原油価格の動きに変調」
15/1/26(第829号)「低調になった経済論議」
15/1/19(第828号)「「どんぶり勘定」の経済運営」
15/1/12(第827号)「IMFの借金取りモデルの導入」
14/12/24(第826号)「増税版バカの壁」
14/12/19(第825号)「総選挙後の動きと課題」
14/12/8(第824号)「今回の総選挙の注目点」
14/12/1(第823号)「「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」
14/11/24(第822号)「解散・総選挙の裏側」
14/11/17(第821号)「再増税は延期?」
14/11/10(第820号)「日本のぺらぺら族」
14/11/3(第819号)「財務省とマスコミの関係」
14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」
14/10/20(第817号)「消費税増税と八代亜紀」」
14/10/13(第816号)「増税なんて必要ない」」
14/10/6(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」
14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」


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