経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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14/11/17(821号)
再増税は延期?

  • 一般庶民も知っている事実

    最近、ある人(Aさんとする)と話をして大変驚いた。このAさんが「日銀が保有している日本国債は、実質的に国の借金にならない」ということを知っていたのである。年齢(30才代)や外見から失礼であるが、とてもそのような知識を持っているようには見えない一般庶民の一人である。

    ただAさんはネットで株式を売買していると話をしていた。ちょうどその日、日銀の追加緩和報道があり、一日で一割くらい儲けたと話をしていた。昼に追加緩和のニュースを知り、直に関連する株を買ったところ間に合ったと言う。このような話から、Aさんはかなり株式に関する知識を持っていると見られる。

    つまり株式や経済にある程度精通している人なら、「日銀が買入れ保有している日本国債は、実質的に国の借金にならない」ということを知っていても不思議はないということである。そしてぺらぺら御用学者やぺらぺらマスコミが言っている「日本の財政は破綻の危機にある」という話を、Aさんは「嘘だ」と笑っていた。面白くなって筆者が「極端な話、日銀が発行されている国債を全部買えば、日本は実質的に無借金になる」と話をしたところ、Aさんもこれに納得していた。


    本誌は00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」以来、14年間も日銀の国債買入れ政策や政府貨幣(紙幣)の発行を訴えてきた。ところがこのような主張が、14年間の間にどこまで浸透しているのか筆者にも分らなかった。たぶん本誌とは関係のないルートで、このような発想と知識が世間に広がっているものと思われる。

    おそらく株式の関連サイトなんかでも、このような話(日銀保有の国債は実質的に国の借金にならないなど)が出ているのであろう。とにかく日本の財政に関して、ようやく正しい情報がジワリジワリと世間に広がっていると筆者には思われる。これは本当に喜んで良いことである。


    いまだに「財政破綻の危機」とか「2020年までのプライマリーバランス回復は国際公約」と言っている人々は、根っからの嘘つきかピエロである。ちなみに「2020年の前は、プライマリーバランス回復の目標は2013年」であった。ところが財務省関係者しか関心がないこの目標年度は、いつの間にか延期されていた。しかも彼等はこれが日本国の国際公約だと言い張っているのだからおかしいのである。

    もちろんこれに関して政治的な議論は全くなく、国民もほとんど知らないことである。このようにプライマリーバランス回復は極めて軽い目標だったのに、政府の財政政策をがんじがらめに縛ってきた。安倍政権も「新規国債の発行は避ける」といった窮屈な財政運営を強いられている。また消費税増税もこの目標達成のための一環である。しかし安倍政権は、これだけ長期金利が低下し、かつ日銀が国債を買い続けると言っているのだから、もっと国債を発行し必要な財政支出を行えば良い。


    安倍政権発足に伴い経済や財政運営に関するパラダイムがシフトしチェンジしたはずであった。一つ目のチェンジはデフレが克服されるべき対象と認識されたことである。この過程での物価上昇は容認されるという雰囲気が生まれた。つまり物価上昇は「悪」という従来の考え方が否定されたのである。ただし何が何でも物価さえ上がれば良いという考え方は、倒錯していると筆者は強く否定してきたところである。

    もう一つは、日銀が国債の買入れの制限を外したことである。以前、日銀は国債保有額の限度を日銀券の発行額としていた(せいぜい70兆円が限度)。この意味のない限度を黒田日銀は突破らった。今日、この額は200兆円を越え300兆円程度が一応の目標になっている。

    先週号で「今のペースなら7〜10年で日本は実質的に無借金になる」と述べた。毎年、日銀が国債の保有額を40兆円ずつ増やせば7年、30兆円なら10年かかるという試算である。ただし筆者は「財政破綻ということはない」という正しい認識が世の中に広まることが重要であり(要するに嘘付き財政学者などを世の中から一掃したいということ)、もちろん実質無借金になるまで実際に日銀が国債を買い続けることは必要ないと考える。


  • パラダイムのシフトとチェンジ

    パラダイムが完全にシフトしチェンジしている。しかし古臭い概念を持出す人々は、はいまだに「日本国債が暴落し、長期金利が止めどもなく上昇する」「そのうち物価が止めどもなく上昇する」といい加減なことを言って人々を脅している。そしてこのどうしようもない彼等が消費税増税を推進してきたのである。今年度は消費税を増税しただけでなく、補正予算を前年度から真水で5兆円も減額した。したがってアベノミクスがうまく行かなくなるのも当然である。13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」で本誌が一年前に警告していたことが、今日、まさに起っているのである。

    どうやら安倍総理は、消費税の再増税の延期を決断したようである。また任期が2年も余っている衆議院を解散する意向という報道が流れている。筆者は「これは面白くなって来た」と思っている。


    マスコミや世間は、衆議院解散に大変驚いている。しかしこの徴候は前からいくつかあった。その一つは11月2日放送の「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)に出演した飯島勲内閣官房参与の発言である。飯島参与はメモを見ながら「12月2日衆議院が解散(衆議院選の公示の間違いで、解散はもっと前と考える)、14日に投開票が行われる」と発言したのである。この爆弾発言にスタジオ中騒然となった。この番組は11月2日に放送されたが、収録は10月31日あたりであろう。読売新聞が「解散」説を報道したのは、これから一週間以上も後のことである。

    筆者も飯島氏の爆弾発言には正直驚いた。しかし事はこの飯島氏の発言通りに進んでいる。もちろん再増税の延期と衆議院解散に筆者は大賛成である。これまで安倍総理を断固支持してきたことが大正解であったと筆者は本当に喜んでいる。


    14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」で再増税を推進している人々の素性を述べた。端的に言えば「安倍政権が倒れても一向にかまわない」、あるいはさらに一歩進んで「安倍政権を何が何でも倒したい」という勢力である。今まで筆者は、前者が多いと思ってきたが、どうも後者の方が精力的に動いている。

    10月24日に藤井裕久元財務相の出版記念(政治改革の熱狂と崩壊)パーティーが開かれた。藤井氏は、消費税増税を推進した元大蔵官僚であり、筆者が史上最低と思う政治家の一人である。新生党時代に大蔵大臣になって「財政支出をしなくとも構造改革や規制緩和で経済成長は可能」と主張し、「地ビールで経済成長」と間抜けなことを言っていた。あまりにも小物なので筆者も無視してきたが、民主党政権時代、消費税増税に奔走し勲章(旭日大受賞)をもらった。

    半ば引退状態の藤井氏を政界に引き戻したのがあの鳩山元首相である。鳩山氏の父親が大蔵官僚(事務次官)だったので、大蔵省出身者を異常に信頼していたからという話である。ただこの鳩山氏に関しては、筆者も最早コメントをしたくない。


    この出版記念パーティーには消費税推進派と安倍政権打倒派が集結した。民主党だけでなく、自民党関係の政治家も発起人となってこの最低政治家の出版を祝ったのである。ちなみに自民党関係者とは、古賀誠氏、野中広務氏、野田聖子氏、野田毅氏らである。

    出席メンバーを見て、このパーティーの性格が分る。まさに安倍政権打倒の決起集会である。したがって安倍総理の再増税回避(今の時点では不確定)は大正解である。筆者には、安倍総理にもっと長く政権を維持しやってもらいたいことが沢山ある。具体的には安全保障・外交と年金改革などである。年金については定額年金制度の導入である(定額年金は民主党が打出した唯一価値のある政策)。

    筆者は消費税増税自体は大きな問題とは思っていない(郵政民営化も似ていた)。日銀が10兆円、100兆円単位で国債の保有を増やしている今日、たかが数兆円の消費税の増収は何の意味もない。むしろ増税が有権者の支持を失わせ、結果的に安倍政権を潰すことを筆者は危惧している。筆者の感覚では、今日、激しい政治闘争が繰り広げられている。政治家を支配したい官僚(財務官僚)や、さらに政治家や官僚の上に立ちたいマスコミは、消費税を巡って激しく戦っている。ただマスコミはかなり前から官僚(財務官僚)には白旗を上げてきた。



来週は、消費税の再増税の延期と衆議院の解散・総選挙がテーマになろう。



14/11/10(第820号)「日本のぺらぺら族」
14/11/3(第819号)「財務省とマスコミの関係」
14/10/27(第818号)「増税派の素顔」」
14/10/20(第817号)「消費税増税と八代亜紀」」
14/10/13(第816号)「増税なんて必要ない」」
14/10/6(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」
14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」
13/12/23(第779号)「周辺国の異常行動」
13/12/16(第778号)「ピカピカのバランスシート」
13/12/9(第777号)「中谷巌氏の変心」
13/12/2(第776号)「何処に行った経済成長戦略」
13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」
13/11/18(第774号)「ここ一ヶ月の出来事」
13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」
13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」


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