経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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14/10/13(816号)
増税なんて必要ない

  • 日経新聞の「東スポ」化

    先週号をアップした直後、10月5日の日経新聞を広げると、驚くことに一面に「予定通り再増税(もちろん消費税のこと)」に賛成が6割という記事が掲載されていた。これは来年10月の消費税10%への引上げの賛否を問うアンケート調査の結果である。つまり6割の人々が再増税に賛同しているというまことに奇妙な囲み記事である。

    ところが記事の中味をよく読んでみると、アンケートの対象者が有識者ということである。この有識者とは13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」で取上げた昨年8月26日から31日にかけて実施された「消費税増税に対する意見聴取のための集中点検会合」に呼ばれた60人の有識者のことである。

    この有識者は官僚が選定したものである。安倍首相の「反対派も入れるように」という指示もあり、たしかに宍戸俊太郎元筑波大元副学長のように反対派も少しは含まれていた。しかし大半の対象者が、都合の良い御用学者や御用財界人というまさに茶番聴聞会であった。もちろん増税を実施したい官僚が選んだのだから、ほとんどの者は賛成意見を述べた(7割超が賛成)。

    この60人の有識者に日経新聞がアンケート調査を行ったのである。回答者は7割の43名であり、この6割が来年10月の追加増税に賛成しているという話である。つまり一般の国民の6割が再増税に賛成しているということではない。しかし見出ししか読まず中味を読まない者が誤解するような(誤解させるような)記事である。これを意図的に行っているとしたなら、まさに日経新聞は「東スポ」と違いがないということである。


    おそらく昨年に実施された有識者に対するこの手の聴聞会みたいなものが、追加(再)増税に向けまた開催されると思われる。しかしメンバーの選定方法が前回と同じなら、同様の結果になることは必至である。ただ日本のメディアによる情報操作が難しくなるほど国民の増税に対する反発は強くなっている。したがって今回は多少反対派を増やしたメンバー構成が予想される。

    しかし安倍政権としては、有識者への聴聞結果を真に受けては、今度こそとんでもないことになると筆者は考える。最近の時事通信などのアンケート結果に見られるように、大半の国民は消費税増税にはっきりと反対しているのが実態である。これまで日本メディアは、消費税に関する本当の民意というものを操作し誤魔化(まさにねつ造)して来たのである。


    先週号で取上げたように消費税を上げると政権の支持率は大きく下がる。ただ今日においてはっきりと増税反対を唱えているのは、共産党、社民党、そして生活の党だけである。しかし社民党と生活の党は既に死に体である。

    したがって増税に反対する者は、先週号14/10/29(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」で述べたように無党派層になる他はないのである。実際、その無党派層が急増しているが、これは消費税の8%への増税によると筆者は判断している。たしかに仮に今の時点、あるいは増税決定後に、国勢選挙が行われても自民党は政権を維持すると思われる。しかし消費税によって国民の支持率が低下した政権の力は著しく損なわれると筆者は考える。つまり消費税増税によって間違いなく政権は躓くのである。


  • 分り始めている消費税の問題点

    消費税の追加(再)増税を巡って、国民の間でも色々な思いが交錯している。無邪気に「破綻寸前の日本の財政を救うには消費税増税しかない」とか「社会保障を維持するためには増税は止む無し」と思っている者は段々と少なくなっていると筆者は見ている。またこのような人々こそまさに「オレオレ詐欺」などのに引っ掛かりやすい体質の持ち主である。

    多くの国民も消費税増税に関して色々なことが解って来ていると思われる。例えば国の借金は1,000兆円を超えると言われているが、13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」で述べたように、8%への引上げによる消費税の増収額はたったの8兆円である。まさに焼け石に水である。ましてや今日のように増税によって経済が低迷すれば、税収全体では減収になる可能性さえある。実際、橋本政権での5%への消費税増税後は、全体では税収が逆に減っている。

    また消費税は延滞額が一番大きい税目である。増税によってさらに延滞が急増することは確実である。だいたい利益が出なくとも納税事業者が納付義務を負っているという、無茶な税金が消費税である。消費税が理想的と言っているのは、現実を知らない人々(むしろ現実を知らないことを自慢している人々)か「本当のバカ」である。

    消費税は上げられているのに、目の前で年金支給額は減り続け、逆に保険料は上がり続けている。さらに年金支給開始年齢も引き上げられている。これで「消費税増税が将来の社会保障制度を担保するもの」といったセリフがいかに空疎なものか国民は実感している。たしかに社会保障の当局にも言い分(これまでの保障が手厚過ぎた)はあるが、有権者である一般国民にはなかなか納得の行かないところである。


    もう少し分っている人々は、日本の財政破綻が叫ばれているのに反して長期金利(国債利回り)が極めて低いことに気付いている。今日の長期金利は実に0.5%である。しかもその長期金利が年々低下している。また日銀による国債の購入が有り、今後も長期金利上昇という事態は考えられない。つまり「財政破綻」なんて有り得ないと気付き始めている。官僚もこのことを承知しているのか、今年、久しぶりに公務員の報酬を引上げている(理由として大企業の賃上げを参考にしたなど色々言っているが)。つまり自分達だけは消費税増税分を補填済みなのである。

    さらに分っている人なら、筆者達が昔から唱えている政府紙幣の発行という手段があることを知っている。これを発行して財政支出や政府の債務の消却に充当すれば良いのである。また日銀が大量に国債を購入しているのだから、これと政府債務を相殺(つまり政府債務の消却)するという方法もある。さらに永久債(コンソル債)を発行し、これを日銀が買うということも考えられる。


    とにかく日銀が購入した分の国債は、実質的に国の債務ではなくなる。国と日銀の関係は、親会社(国)と子会社(日銀)ということになる。子会社(日銀)の保有する国債は、親会社(国)に対する債権である(親会社(国)にとっては債務)。両者を連結決算すれば、両者の債権・債務は相殺される。実際のところ、日銀が保有する国債にも国から利払いはあるが、これを含め日銀の収入は最終的に国庫に納付されている(諸経費を差引いて)。不思議なことにほとんどの日本の経済学者や財政学者は、このような事情を説明することをしない。

    むしろこれだけ日銀が国債を購入しても、国内の設備投資が上向かないことの方が大問題である。それだけ日本の有効需要が不足しているのである。つまり今日必要な政策は、増税や歳出カットではなく財政支出の拡大と減税である。安倍政権は、間違っても消費税の追加(再)増税という愚かな判断をすべきではない。



来週は消費税の追加(再)増税を巡る政治的な思惑を取上げる。



14/10/6(第815号)「日経新聞のねつ造解説」」
14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」
13/12/23(第779号)「周辺国の異常行動」
13/12/16(第778号)「ピカピカのバランスシート」
13/12/9(第777号)「中谷巌氏の変心」
13/12/2(第776号)「何処に行った経済成長戦略」
13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」
13/11/18(第774号)「ここ一ヶ月の出来事」
13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」
13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」


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