経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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14/10/6(815号)
日経新聞のねつ造解説

  • 消費税と支持率は密接な関係

    先週号で、ここ数年の「消費税増税に賛成」という、日本のメディアの世論調査結果はねつ造の疑いが濃いことを指摘した。むしろ時事通信の世論調査結果(8月16日)の「来年10月の10%への増税に反対75%、賛成23%」「消費税に軽減税率導入は賛成81%、反対9%」が本当の民意と筆者は見ている。つまり一般の国民は消費税に対してずっと強く反対していると考えられる。時事通信では反対が賛成のトリプルスコア、日経でさえ「反対63%、賛成30%」とダブルスコアである。

    どうして消費税に関する日本のメディアの世論調査結果が大きく転換したのか謎である。しかし最近までの調査結果がねつ造されていたとしたなら、これは由々しき問題である。ただ朝日新聞のねつ造記事の件を見ても分るように、日本のメディアでは起りそうなことではある。実際のところ筆者自身や周辺の者で、メディアの世論調査を受けた経験のある者がいない。したがって調査がどのように行われているのか全く不明である。


    しかし消費税と政党支持率や選挙結果の関係はかなり明白である。竹下内閣の消費税導入で自民党の支持率は急落し、89年の参議院選で消費税反対を唱えていた社会党が大勝した(山が動いた騒動)。また橋本政権での5%への引上げによって、98年の参議院選で自民党は大敗した。

    消費税増税に動いた民主党の支持率の零落は衝撃的であった。菅政権、野田政権で支持率がどんどん落ちた。特に野田政権で消費税増税が現実のものとなるにつれ、民主党の支持率は10%程度までに低下している。民主党が国勢選挙で壊滅的な敗北を続けたのも当たり前である。

    反対に「消費税増税は行わない」と宣言した小泉政権は比較的高い支持率を維持した。ただ小泉政権は消費税率を上げなかったが、03年に消費税改正を行っている(免税事業者の課税対象売上高を3,000万円から1,000万円に引下げ、簡易課税制度適用の上限を2億円から5千万円に引下げ)。13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」で述べたように、これが07年の安倍政権の参議院選のボロ負けに微妙に影響していると筆者は見ている。この消費税改正による課税対象年は2年後の05年であり、実際の納税は06年から始まっている。


    政治家ならこのように「鬼門」と分かっている消費税増税を、民主党、特に野田政権が何故強引に推し進めたのかこれが謎である。もちろん政党支持率や国勢選挙の結果が消費税だけで決まるものではない。しかしここ30年間の政治は、消費税に振回されて来たという事実は動かし難い。

    野田政権が、当時の日本のメディアの作った「消費税増税を国民の多くが容認している」という話に乗ったことが考えられる(あるいは安易に捉えていた)。つい最近まで日経新聞を始めとした日本のメディアの情報操作には凄まじいものがあった。この様子を例えば13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」で取上げた。

    「13年8月26日の日経新聞に「消費増税7割超が容認」というタイトルの記事が一面に掲載された。しかし中味を読むと「予定通り引上げる」17%、「引上げるべきではない」24%であり、55%は「引上げるべきだが、時期や引上げ幅は柔軟に」である。ところが最後の「引上げるべきだが、時期や引上げ幅は柔軟に」の55%までも日経は消費税容認派に含めているのである。これこそ情報操作である。大きなタイトルだけを読んでいては日経新聞に騙されることになる。」

    野田政権が「消費税増税を国民の多くが容認している」という大嘘に騙され、増税を推し進め民主党が壊滅したという話になる。しかし民主党でも独自に世論調査をすることが出来るはずである。ちょっと調べれば、日経などの世論調査がかなりおかしいことは直に分ることである。民主党の消費税増税は、憲政史上の七不思議の一つである。


  • 無党派層は消費税で動く

    ところが消費税についてまだ情報操作が続いている。日経新聞9月21日の永田町インサイドで「無党派層膨張のワケ」という特集が組まれていた。要旨は無党派層が「第2次安倍政権で24%上昇」「自民支持低下、野党に流れず」である。無党派層が増えていることや、若い年代に無党派層が多いというこの特集の話は筆者も納得の行くところである。

    安倍政権と自民党の支持率が下がり、無党派層が増えたのは事実であろう。しかし安倍政権と自民党が支持率を落とした理由が問題である。日経は、「特定秘密保護法成立や集団的自衛権の行使容認」などで、弱い支持層の一部が離れたと解説している。他のメディアも同様の事を言っている。しかしこれは事実ではないであろう。


    秘密保護法や集団的自衛権は、前から安倍内閣で推進することが分かっていたテーマである。むしろこれらが実現して支持率が上がることがあっても、急落することは考えられない。ましてや中国の脅威が現実のものとなりつつある今日である。

    どう考えても安倍政権と自民党の支持率が下った原因は明らかに消費税と筆者は判断する。ところで民主党が政権を奪取できたのも、無党派層の投票行動による。当時、未知の民主党に一度政権を委ねてみようという雰囲気があったのは事実である。

    ところがその民主党が公約にも盛込まれていない消費税増税を押し進めたのである。一旦民主党を支持した無党派層は驚いたに違いない。民主党の支持率は瞬く間に落ち始めた。おそらくこの無党派層は民主党に二度と戻らないと筆者は見ている。


    民主党政権の後半(つまり消費税増税に邁進していた頃)、自民党の支持率が上がったのも無党派層が民主党から自民党に移ったからである。増税は三党合意となっているが、安倍政権は最終的な増税決定はギリギリまで様子を見ると宣言していた。ひょっとしたなら安倍政権なら増税を避けられるのではないかと、無党派層は淡い期待を抱いたと思われる。これによって安倍政権は高い支持率を維持してきたと筆者は見ている。

    日経の特集の政党支持率のグラフによると、無党派層が増えはじめるのは消費税増税が決定される2ヶ月前の8月頃からである(当時の日本のマスコミの雰囲気で人々が増税回避は無理と感じた頃)。また自民党の支持率が急落する(50%から40%へ)のは、消費税8%への決定した10月以降である。つまり日経の解説の「特定秘密保護法成立や集団的自衛権の行使容認」などは全く関係がない。

    これこそねつ造解説と筆者は断言する。たしかに今年の3月以降から安倍政権と自民党の支持率がさらに下がっているが、これは実際に消費税が増税が実施されたことへの消費者と現場の不満を反映したものと筆者は解釈している(増税に加えレジや値札の変更など面倒なことへの反感)。税率アップによる納税が始まるのが来年の5月頃からであり、さらに自民党の支持率の低下が見込まれると筆者は見ている。


    このように消費税は、前段で述べたように政治にとって「消費税は鬼門」という現実は今日でも全く変わっていない。国民の本心はやはり消費税に強い反感を持っている。しかし日本の財政が危機的という大嘘が蔓延している今日、「将来的には増税も止む無し」と国民が何となく感じているに過ぎない。

    日本の財政に大きな問題はなく、むしろ必要な財政支出は積極的に行うべきといった筆者などの意見は少数派である。そして日経のねつ造解説(筆者はねつ造と見ている)に見られるように、日本はまことに暗い空気によって封じ込められている。安倍総理は、消費税増税に対して12月にどのように判断するか注目される。



12月の安倍政権の消費税追加増税への政治判断を取上げる。



14/9/29(第814号)「メディアはねつ造だらけ」」
14/9/22(第813号)「人手不足は本当か」」
14/9/15(第812号)「経済学とニヒリズム」」
14/9/8(第811号)「サミュエルソンは新古典派?」」
14/9/1(第810号)「ハシゴを外されそうな日本」」
14/8/25(第809号)「ハシゴを外された話」」
14/8/4(第808号)「トマ・ピケティの「21世紀の資本論」」
14/7/28(第807号)「三教授のサマーズ論の解説」
14/7/21(第806号)「一家に一台が需要の天井」
14/7/14(第805号)「ポンコツ経済理論の信奉者達」
14/7/7(第804号)「経済成長の三つのパターン」
14/6/30(第803号)「サマーズとトマ・ピケティ」
14/6/23(第802号)「奇妙な話ばかり」
14/6/16(第801号)「石油は人々をおかしくさせる」
14/6/9(第800号)「ベトナム沖の一大事」
14/6/2(第799号)「金利低下の背景」
14/5/26(第798号)「政策目標の変更」
14/5/19(第797号)「「美味しんぼ」騒動」
14/5/12(第796号)「使えない経済指標」
14/4/28(第795号)「推理小説のような中国経済の実態」
14/4/21(第794号)「中国1〜3月期のGDP成長率」
14/4/14(第793号)「日本のマスコミの問題体質」
14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」
13/12/23(第779号)「周辺国の異常行動」
13/12/16(第778号)「ピカピカのバランスシート」
13/12/9(第777号)「中谷巌氏の変心」
13/12/2(第776号)「何処に行った経済成長戦略」
13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」
13/11/18(第774号)「ここ一ヶ月の出来事」
13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
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13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
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13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
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13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
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13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
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13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」


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