経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




14/4/14(793号)
日本のマスコミの問題体質

  • 新聞のいい加減なキャンペーン

    消費税増税が実施されたこともあり、経済の先行きも怪しくなった。消費税増税に対して、本誌は昨年8月から2ヶ月ほど反対論を展開した。デフレ克服を掲げる安倍政権が、何もこの時期に財政再建を目指す(2020年のプライマリーバランスの回復)増税に踏切る必要はないというのが筆者の主張である。

    しかし増税派が既に日本における「空気」を完全に支配していて、消費税増税が抗しがたい既定路線となっていた。例えば増税に関して広く意見を聞くと60名の有識者会合(公聴会)が開かれたが、異義を唱えたのは宍戸駿太郎元筑波大元副学長など極めて少数であった。


    先日、4月6日の「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ)で今回の消費税増税が一つのテーマに取上げられた。ところが驚くことにほとんどのパネラーは、消費税増税を「失敗であった」「財政当局の巧妙な仕掛け」など極めて批判的なコメントを披露していた。しかし筆者は「何を今ごろ」という感想を持った。

    この時の番組の主旨は、これまでいかに日本の主要新聞がいい加減な論調でキャンペーンを行ってきたかを検証することであった。各新聞の従軍慰安婦問題などの取上げ方がテーマであり、今回の消費税増税もその一つであった。大新聞の中で増税に反対したのは読売だけ(それも途中から)であり、日本のメディアはこぞって増税が必要と世論の誘導を行っていたといった話が続出した。

    保守派論客の竹田恒泰氏は「消費税に関しては「赤旗」が一番適確な解説を行っていた」とまで言って笑いを誘っていた。またIMFなどの日本への勧告文は、日本の財務省(昔は大蔵省)からの出向した官僚が書いているという話も出ていた。これは本誌13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」で取上げた話である。ちなみに最近、OECDの総裁の「日本は最低でも消費税率を15%まで上げるべき」という発言が日経新聞に掲載されていたが、これも日本の財務官僚が絡んでいると考えられる。まだこんな事をやっているのである。


    しかし考えて見れば日本の大新聞は、このような問題のあるキャンペーンをずっと昔から行ってきたのである。それこそ戦前の戦意高揚キャンペーンもその一つである。戦争を煽った方が、世の中が騒然となり新聞が売れるからである。このどうしようもない体質が日本のマスコミには染込んでいる。

    1960年も新聞が「日米安保闘争(60年安保)」を煽った。しかし煽られて国会に集まった軽薄な学生のほとんどは「安保改定」の中味をほとんど知らなかった。この軽薄な学生の多くが教職に就いたりマスコミに職を得て、次の時代の左翼学生を育てた。この左翼学生による学園紛争は1970年(70年安保)まで続いた。この時代の学生の間では、小脇に「朝日ジャーナル」を抱えて闊歩するのが流行っていた(朝日ジャーナルの中味まで読んでいたか不明)。しかし左翼の読者が少なくなったので、朝日は「ジャーナル」を廃刊し「アエラ」に衣替えした。


    昨年の暮れに、この安保闘争をちょっと彷彿させるような出来事があった。「特定秘密保護法」の制定に対して朝日などが反対を煽るキャンペーンを行ったのである。テレビに登場する論客は、反対論を唱える者ばかりであった。マスコミは国会周辺に抗議のため集まる群集の様子を連日伝えていた。

    筆者は、マスコミにこの騒動を安保闘争みたいなものに持って行こうという雰囲気があると感じた。「夢よもう一度」ということなのであろう。しかし安倍政権は、これを察知したのか早々と法律を成立させた。今回はマスコミの敗北であった。だいたい日本の情報管理なんて穴だらけで問題山積であり、「特定秘密保護法」が必要なことは、マスコミ人自身がよく知っていることである。それにしても元毎日新聞記者の西山氏が、よくもまあ国会の参考人として登場したことには筆者も驚いた。


  • 科学性の欠除した経済学界

    だいたい消費税の導入時に猛烈な反対論を掲げていたのが、朝日を始めとした大新聞であり、日本のマスコミであった。ところがいつの間にか、彼等は消費税増税の片棒を担ぎ始めたのである。一体何があったのか知らないが(だいたい分かるが面倒なので触れない)、実に情けない話である。

    しかしマスコミ以上に情けないのが、日本の経済学者とエコノミストなどの経済の専門家である。昔から御用学者と揶揄されてきた財政学者だけでなく、ほとんどの経済の専門家と呼ばれる者は消費税増税推進の論陣を張っていた。例外的な経済学者は前段の宍戸さんなど極少数であった。

    今日、ほとんどの経済学者とエコノミストは、消費税増税の悪影響は軽微であると言い張っている。また彼等は、年後半には増税の影響がなくなり日本経済はV字回復するとまで言っている。さらに共通して前回の増税時の景気急落にはアジアの経済危機の影響があったと、唐突な思いつき発言をしている。筆者は、当時、日本の緊縮財政がアジア経済に悪影響を与えたが、アジアの経済危機が経常収支黒字国の日本に大きな影響を与えたとは考えない(同様に経常収支黒字国であった中国と台湾への影響も軽微であった)。誰かがこの奇妙な説を言い出し、何も考えない者がこれを口まねしているのであろう。


    経済学は社会科学の一分野と言われているが、今日の日本の経済学の現状は「科学性」に乏しい。本当に経済学が「科学」なら、経済学者も科学者ということになる。そしてもし本物の科学者なら、自分の展開する経済理論に責任を持つ必要がある。しかし日本にはそのような経済学者はほぼ皆無と言って良い。

    例えば日本の経済学者は財政赤字が続けば「ハイパーインフレが起ってどうしようもなくなる」とか「そのうち国債が暴落し、金利は暴騰する」と、根拠の薄い話を何十年も続けてきた。実際、インフレどころか日本経済はデフレに陥り、金利は歴史的な低位で推移している。しかしこのような間抜けな警告を発して来た経済学者やエコノミストは、自分達の間違いを一向に認めようとはしない。驚くことにこのような非科学的な学者に、懲りずに経済に関してお伺いを立てているのが日本のマスコミであり、日本政府である。


    ここまで本来なら駆逐されて当然の日本の経済学者の話を持出したのは、最近話題になっているSTAP細胞の話をしたかったからである。ノーベル賞級の大発見者と持ち上げられていた小保方氏は、一変して研究論文が「悪意」とか「ねつ造」と叩かれている。いい加減な社会科学の世界と違い、自然科学の世界は厳しいと筆者は感じた。日本の経済学者なんて、このように研究を厳しく検証されれば誰もいなくなると思われる。

    小保方氏の論文の真偽、またSTAP細胞の存在について筆者からは敢てコメントすることはない。ただもしこれが本当なら、山中教授のips細胞に続き画期的な大発見である。しかし豹変振りを含め、日本のマスコミの対応がおかしいのである。


    報道番組のキャスターやパネラーの発言が極めて奇妙である。小保方氏の弁明会見に対して、彼等は「もっと情報を開示すべき」「STAP細胞は人類全体に関わるものであり、より多くの人々が取組み早く研究が進むことが重要」と言った一見もっともらしい意見を述べている。

    しかしSTAP細胞みたいな研究は、特許権のような知的所有権、つまり経済的な権利という問題が必ず伴う。情報を全て公開して、皆で研究しましょうというものではない。筆者は、当初からこのようなことを感じていた。


    ips細胞の場合も、特許権が米国でなかなか成立しなかった。特に米国の特許法が変わる時期であったため(米国は先発明主義から、世界標準である先願主義に変更)、関係者はやきもきしたはずである。ましてや日本の技術や情報が韓国や中国にどんどん流出していることが問題になっている今日である(役立たずの日本の経済学者はどれだけ流出してもかまわないが、彼等は妙に日本にしがみついている)。

    日本の先端技術の研究員の経済的環境は極めて貧しい。ips細胞の山中教授なんかは、マラソンに参加して研究への寄付金を募ったほどである。日本政府は、公共投資だけではなく、研究開発や教育にももっと大胆に財政支出を行う必要があると筆者は考える。

    ところが日本では、構造改革派の軽薄な考えが浸透し、大学にも独立法人として経済的な自立を求めている。しかしこの動きの背景には、財政支出をケチるという財政再建派の影が見える。このような状況が続くのであれば、日本の将来は真っ暗である。筆者は、構造改革派や財政再建派には日本の弱体化を狙った勢力が紛れ込んでいるとずっと思っている。



来週のテーマは決まっていない(再来週は決まっているが)。



14/4/7(第792号)「ウクライナとロシアの関係」
14/3/31(第791号)「怪しくなったアベノミクスの行方」
14/3/24(第790号)「中国のバブル生成の過程」
14/3/17(第789号)「バブル経済崩壊の序章」
14/3/10(第788号)「中国経済にまつわる奇妙な話」
14/3/3(第787号)「中国経済に変調(その2)」
14/2/24(第786号)「中国経済に変調」
14/2/17(第785号)「経済戦略会議から15年」
14/2/10(第784号)「理論と現実の狭間・・金利編」
14/2/3(第783号)「経済理論と現実の狭間」
14/1/27(第782号)「なつかしい経済理論の復活」
14/1/20(第781号)「窮地に立つリフレ派」
14/1/13(第780号)「新春のトピックス」
13/12/23(第779号)「周辺国の異常行動」
13/12/16(第778号)「ピカピカのバランスシート」
13/12/9(第777号)「中谷巌氏の変心」
13/12/2(第776号)「何処に行った経済成長戦略」
13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」
13/11/18(第774号)「ここ一ヶ月の出来事」
13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」
13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
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13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
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