経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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14/1/13(780号)
新春のトピックス

  • 中国政府の弱体化

    年頭にあたり恒例なら本年度(14年度)の経済予測を行うことになる。しかしこれについては既に13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」で行い、今の段階で修正は必要ないと考える。ここでは「ゼロないしマイナスの低成長」と結論を出した。

    この予想を上回るかは、4月以降(それも早期に)に追加の大型の補正予算が組まれるかどうかに掛かっている。政府は消費税増税による景気の冷込みに対して、5兆円超の経済対策を打ったから大丈夫とまた寝ぼけたことを言っている。しかし補正予算同士を比べると、前年度より5兆円程度減額されるのだからマイナスの乗数効果が生じる。


    このように今日に到っても、日本の政府は素人同然の間違った経済理論(5兆円超の経済対策を打ったから大丈夫と言った)を振りかざしている。たしかに今年の3月末までは、消費税増税を睨んだ駆込み需要があり底堅い経済状態が続くと思われる。しかし増税後は、この反動も有り日本経済はかなり落込むと思われる。これに対して政府は、追加の補正予算による景気対策を打つものと筆者は見ている。

    それにしても似たシナリオを、これまで我々はさんざん見て来た。今回もそれらと同じである。これも政権が財政再建論者に周りを取囲まれていて、身動きが取れないからであろう。安倍政権が本当にデフレ脱却に道筋を付けられるかは、この財政再建論者にどう対処するかに掛かっている。


    このように日本経済は、4月まで大きな動きがなく退屈なものになってしまった。人々の関心も経済から離れている。筆者の一番の関心事も経済ではなく、安全保障であり外交である。特に中国の動きには最大の注意を払っている。

    そこで今週は、今年、人々の関心を集めると思われるトピックスをいくつか取上げてみる。やはり一番目は中国の動向であろう。しかし中国は最も読みにくい国の一つであり、何が起っても不思議はない。


    日本だけでなく、米国も中国についての正確な情報の入手が難しくなっているようである。ところで筆者は、中国の中央政府の権力が弱くなっているのではないかと本誌でずっと指摘してきた。どうも米国にも習近平政権が中国全体を統制できていないのではないかといった見方が最近出ている。

    つまり中国共産党の力が弱くなったので、地方や軍が勝手な行動を起こすようになっているのである。したがって統制が効かない軍が次に何をしでかすか予測がつかない。今の中央政府が出来ることは、せいぜいデモを起こしたりこれを抑えることぐらいなのかもしれない。


    筆者は、昔、飲屋で偶然隣り合った盗聴器の調査、つまり盗聴器バスターをしている会社の社員と話をしたことがある。筆者は、当時、日本の役所に沢山の盗聴器が仕掛けられているという話を聞いていた。官僚達は盗聴を警戒し、廊下に机を出して仕事をしていたという話まであった。この話をこの盗聴器バスターに確認してみた。

    彼によれば、それは本当の話であり、役所に観葉植物が持ち込まれたならまず盗聴器が仕掛けられていないか疑った方が良いと言う。しかし日本で一番盗聴器が仕掛けられているのは、アメリカ大使館と中国大使館と言っていた。米国が諜報活動を活発に行っていることは周知のことである。その米国にとって、中国、特に中国軍の行動が読みにくくなっているというのである。これが本当なら由々しきことであり、今年も中国が突発的な軍事的行動に出る可能性は十分ある。


    安倍総理が、先月、靖国神社を参拝した。筆者は、これに対する各国の反応に注目してきた。しかし意外にも中国の反応が大人しかった。本来なら反日デモを煽っても良い場面である。ところが中国政府は、むしろそのような動きを抑えに掛かっている。

    筆者は、反日デモが起るとそれに乗じた者による反政府活動が起ることを恐れているのではと勘ぐっている。これも習近平政権の弱体化を示すものという見方ができる。米国の「失望発言」も、政権弱体化によって予測不能になっている中国軍を刺激してくれるなと解釈される。とにかくオバマ政権は7,000億ドルまで膨らんだ軍事費を5,000億ドルまで減らすつもりであり、米国はこれ以上の極東の緊張に対処できないと考えられるのである。


  • 「枯れ木も山のごとく賑わい」

    中国関連の他では、目先で東京都知事選が関心を集めている。細川元首相の立候補で俄然マスコミがうるさくなってきた。これによって誰が当選するか分からないような難しい選挙になった。

    選挙民の関心は、経済や安全保障、そしてオリンピックの準備といったところであろう。しかしそこに「脱原発」を掲げて細川氏が参戦するのだから強い違和感を感じる。また登場人物が、細川元首相の他に小泉元首相や小沢一郎氏である。さらにおまけのように鳩山元首相と菅元元首相まで加わるという話が出ている。まさにマスコミ的には「枯れ木も山のごとく賑わい」であろう。


    登場人物に元首相が4人もいると言った豪華なものである。ところで日本の首相はコロコロ変わるが、中には本来は首相になるはずのなかった者が首相になったケースが多々あった。まさにこの4名はこれである。特に細川氏と鳩山氏は小沢一郎氏のバックアップで首相に就いたようなものであった(小沢氏は、両名以外に首相になるはずのなかった海部氏を首相にしている)。

    力のない(人望もない)政治家が首相になり政権を維持するとなれば、マスコミ受けするパフォーマンスを続ける他はない。しかし最後は人々に見捨てられ首相の座を降りることになる。一旦、政権から離れるとこのような力のない(人望もない)政治家は、急速に影響力がなくなる(なるべくしてなった政治家の場合は、首相を降りても一定の影響力を持つ)。今回の都知事選は、影響力がなくなり誰も相手にしてくれない彼等のリベンジ選みたいなものである。

    客観的に見て細川元首相の都知事就任は考えにくい。しかしマスコミの騒ぎ方によっては、どうなるか分からない。特に東京の選挙民は、ムードや雰囲気に流されやすいことで定評がある。筆者は、今回の選挙は、都知事を選ぶものに違いはないが、同時に東京の有権者の質というものが試されると思っている。


    TPP交渉の行方も注目されるところである。一部に昨年末にまとまるといった観測があったが、やはり妥結は無理であった。これによってTPP交渉妥結は難しいと人々の関心はかなり遠のいた。しかしそもそも筆者は、前から交渉が通商の専門家によってなされている段階では交渉成立は難しいと思っていた。

    通商の専門家は、たいてい観念論者であるか、あるいは自分の立場だけを考えて交渉に臨んでいる。これでは交渉が妥結するはずがない。どうしても交渉妥結には、政治的判断ができるレベルの者が登場する必要がある。今の段階までこれがなかったのだから、進まなかったのが当たり前である。


    1月9日になって米議会が超党派で「大統領貿易促進権限(TPA)」法案を提出した。これは外国政府と通商交渉を迅速に行うことを目的に、権限を大統領に一任するためのものである(権限の期限は原則4年)。この法案は当然TPP交渉を睨んだものである。ただ議会との関係が良くないオバマ大統領であるから、成立まで多少手間取ると見られる。

    このような米国の動きを見て、日本の政府も本気になると思われる。政治の登場によって、筆者は最終的にTPP交渉は妥結するものと思っている(最後はあっけなく妥結すると見ている)。交渉のカギは、日本が自動車でどこまで譲歩し、農産物で各国の譲歩をどこまで勝ち取るかである。また日米などの先進国は、発展途上国に対して知的所有権でハードルを上げないことが肝要と筆者は考える。


    筆者は、TPPが表向きは自由貿易の枠組み作りとみられるが、実態は安全保障の枠組みも伴うものと理解している。この考え方は今も変わらない。たしかにTPPのような経済のグローバリズム化が色々な弊害を生むことを承知している。しかしそれ以上のメリットがあるなら、TPPに参加すべきである。

    ところで不幸にも日本の周辺には、反日教育を公然と行っている国々がある。ところが日本はこれまでこれらの国々と大きな経済関係を持って来た。しかし長期的な観点から見れば、そのような国々との関係はますます難しくなる。これまで「政治と経済は別」と誤魔化して来たが、既に限界を越えている。当然、これらの国々との経済依存関係はどんどん小さくなると考える。


    筆者は、無理してこのような国々と付合う必要は全くないと思っている。むしろ対外的なエネルギーは全て他の国に向けるべきであり、その一つの枠組みがTPPと理解している。また筆者は、TPPは経済中心にスタートするが、いずれ安全保障の色合いが出てくると見ている。

    日本の周辺に時代錯誤的に覇権を求める国がある以上、頼りなくなった米国だけでなく他の国とも安全保障の枠組みを急いで作るべきである。実際のところ安全保障の観点がない自由貿易圏の創設なんて考えにくい。EUもスタートは安全保障の枠組み作りからであった。


    このように考えるとTPPは日本にとって重要である。TPP交渉の妥結のために、一部の国内産業に財政的手当が必要となるケースも考えられる。筆者は、日本政府はこの費用を負担しても交渉妥結に動くべきと考える。その財政負担は防衛費の一部と考えれば良い。

    11/2/14(第650号)「TPPに関する推理」で、筆者は次にTPP参加を表明する国として台湾とインドネシアに注目していると述べた。その台湾がTPP参加の意向を示し始めた(中国からの圧力が考えられ、実現するか難しいところであるが)。やはり台湾も中国内の不穏な動きに神経質になり始めているのではと筆者は見ている。



面白みがなくなった日本経済であるが、来週は筆者の日本経済の見方を再確認してみる。



13/12/23(第779号)「周辺国の異常行動」
13/12/16(第778号)「ピカピカのバランスシート」
13/12/9(第777号)「中谷巌氏の変心」
13/12/2(第776号)「何処に行った経済成長戦略」
13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」
13/11/18(第774号)「ここ一ヶ月の出来事」
13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」
13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」
12/12/31(第738号)「中央銀行の働きの変化」
12/12/24(第737号)「日銀とFRBの違い」
12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
12/12/10(第735号)「建設国債引受け発言の波紋」
12/12/3(第734号)「先進国だからデフレ」
12/11/26(第733号)「総選挙の行方」
12/11/19(第732号)「残る経済成長路線」
12/11/12(第731号)「先進国における経済成長」
12/11/5(第730号)「投資と経済成長」
12/10/29(第729号)「プラスアルファーの議論」
12/10/22(第728号)「アラン・ブラインダー教授の文章」
12/10/15(第727号)「バランスを欠いた報道」
12/10/8(第726号)「中国からの撤退も視野に」
12/10/1(第725号)「中国の反日暴動に対する感想」
12/9/24(第724号)「本誌の中国問題ダイジェスト」
12/9/17(第723号)「技術流出と日本の伝承文化」
12/9/10(第722号)「技術流出の現状」
12/9/3(第721号)「知的所有権の話」
12/8/27(第720号)「最近の出来事」
12/8/6(第719号)「御用学者の話」
12/7/30(第718号)「増税マニア達は現実離れ」
12/7/23(第717号)「吉川洋東大教授の文章」
12/7/16(第716号)「消費税増税が待ち遠しい?」
12/7/9(第715号)「消費税は「鬼門」」
12/7/2(第714号)「増税騒動の感想」
12/6/25(第713号)「今日の諸情勢の変化」
12/6/18(第712号)「世界中「展望がない」」
12/6/11(第711号)「schole(スコレー、暇)の話」
12/6/4(第710号)「ギリシャ化の話」
12/5/21(第709号)「単式簿記の世界」
12/5/14(第708号)「文春と朝日の関係」
12/4/30(第707号)「続・増税論議と文芸春秋」
12/4/23(第706号)「増税論議と文芸春秋」
12/4/16(第705号)「増税論議と政界」
12/4/9(第704号)「増税派の人々」
12/4/2(第703号)「松下政経塾政治家と増税」
12/3/26(第702号)「英国の永久債発行」
12/3/19(第701号)「過去の号の修正」
12/3/12(第700号)「本誌700号に寄せて」
12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」
12/2/27(第698号)「橋下維新政党へのコメント」
12/2/20(第697号)「地方自治体と通貨」
12/2/13(第696号)「デフレ経済下での増税」
12/1/30(第695号)「無税国家への道」
12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」


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