経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


今年は今週号が最後であり、新年は1月13日号から

13/12/23(779号)
周辺国の異常行動

  • しばらくは興味が湧かない日本経済

    本年度の最後なので経済に関する特別のテーマを考えた。しかし、近頃、日本経済が面白くない。アベノミクスでデフレ克服と思っていたが、消費税増税や補正予算の大幅減額を見ていると、今のところデフレ克服はとても無理と判断される。当分の間は様子見である。

    安倍政権は財政再建主義者に取囲まれ、動きが取れない状況に置かれている。また「頭の中がお花畑」の構造改革派は「成長戦略で経済は成長しデフレ脱却が可能」といった夢のようなことを言っている。今日、提示されている成長戦略はほとんど効果がないだけでなく弊害さえ考えられる。例えば規制緩和によって法人による農地の取得を可能にするという。つまり外国資本(中国資本でも)の法人の農地取得も大丈夫ということである。


    13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」で述べたように、安倍政権は広い勢力の支持に支えられている。しかし支持勢力の中には明らかな嘘やいい加減な事を言っている者がいる。このような状況では、あらゆる勢力の言っている政策を取合えず実行して見るのも一つの方法であろう。この結果を確認して次の政策に移れば良い(例えば補正予算減額が失敗と分かれば、次は大幅に増額すれば良い)。意見が対立すると言って、立ち止ったままなのが一番まずく時間の無駄になる。幸い安倍政権は衆参のねじれを解消できたのだから、好ましいと思われる政策を次々と実行できるはずである。

    簡単に述べたが、筆者は今しばらくは経済に興味が湧かないと思っている。来年度、日本の経済成長率の政府見通は1.4%(筆者はもっと低くみている)ということであり、これで経済に興味を持てという方が無茶である。今後の日本経済のポイントは、来年4月以降に補正予算が組まれるか、またそれがどの程度の規模になるかという点である(ポイントは国債の発行額を増やしても経済復興を優先させるかどうか)。それより国民の方も関心が経済から周辺国の異常行動に移っている。臨時国会の審議内容も我が国の安全保障に係わるものに完全にシフトしていた。


    そこで今週はこれについて雑駁な筆者の感想を述べる。上記の周辺国とは重要度の順番で、中国、北朝鮮、そして韓国である。これらの国々の特徴は本音が分からないことである。日本はこれまで訳が分からないまま、相手の言う通り謝罪や譲歩を繰返してきたが、全く逆効果であったようである。

    13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」で述べたように、これらの国の専門家や情報通と言われる人でさえ、その国の本心というものを掴みかねている。ここでは中国を取上げたが、韓国や北朝鮮も似たようなものである。

    おそらく他国や他民族から頻繁に侵略されたり支配された厳しい歴史のある国々なので、対外的に本音を吐くことを避けるのであろう。また本音や本心で物事を話合うことに価値を見い出していない国民性が伺える。信頼できるのは家族か、あるいはせいぜい一族までである。


    一方、幸いにも日本は海に囲まれ他国の侵略をほとんど受けてこなかった。ただ国内では激しい戦乱の時代を経験したり、もめ事が続いた。しかし戦の仕方は「鏑矢(かぶらや)」を放ちこれを合図に戦闘開始になるなど、他の国から見たら暢気なものであった。

    日本人は列島といった限られたスペースに住み、他人との調和を大切にしてきた。日頃は本音を隠し、摩擦が生じないように生活している。しかし両者間の問題がどうしようもない事態に至ったら、本音で話合いこれを解決してきた。このように「本音で語る」とか「胸襟を開く」といったことに日本人は価値を置いてきた。


    しかし日本人同士でのこの問題解決手法は、日本の周辺国には通用しないようである。また外交には「密約」というものが付き物である。条約締結のギリギリの交渉の場では、国民に知らせない「密約」というものがよく結ばれる。おそらく日韓基本条約や日中平和条約にも「密約」があったと思われる。「密約」(例えば竹島の扱いについて)は代々の政権が機密事項として引継ぐことになっているが、少なくとも韓国ではこの引継ぎがなされていないようである(密約を知っていても知らないフリをしていることが考えられるが)。

    日本は、「本音で語る」ことができず密約も守られないこれらの国々との付合い方に苦慮している。特に中国は、今年に入って「海上自衛隊艦船へのレーダー照射」やいきなりの「防空識別圏の設定」など唐突な行動に出ている。また中国艦船は、先日、対日だけでなく米イージス巡洋艦に対して南シナ海の公海上で進路を妨げた。もちろんこれに対して米国は中国に強く抗議している。筆者は「2001年の海南島事件(それまでも挑発を繰返していた中国軍用機が米偵察機に体当たり)」を思い出す。


  • 「妄想」と「現実」の境が曖昧な中国

    中国が異質なことを欧米を始め各国は認識している。このため天安門事件が起って、国際社会は人権問題で中国に経済制裁を発した(制裁対象国の中国が常任理事国として拒否権を持っているようでは、国連が機能しなのは当たり前)。日本人だけでなく世界中の人々は、中国が異常なのは「共産党一党支配のため」「情報が閉ざされているせい」とか「国が貧しいから」と思ってきた。

    しかしインターネットが普及し、国民所得が増えても中国は変わらない。またWTOに加盟させ世界との交易が増え、オリンピックを開催すれば中国も普通の国に近付くと期待したが、これもカラ振りであった。それにもかかわらず、まだ人々は中国に対して淡い期待を抱いている。例えば中国の民主化が進めば、国が変わると思っている。しかし筆者はそれでも無理と考える。実際、香港の民主化運動家が、何度も尖閣諸島への上陸を試みていることを見ればそのことが分かる(皮肉にもこれを抑えているのが中国共産党政府である)。


    筆者は、中国を読み説く鍵を13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」で取上げた「中華民族の偉大な復興」と見ている。人々はこれを「冗談」とか「妄想」と認識してきたが、どうもこれが中国指導部の本心と見られるのである。中国指導部達の狭いサークルの中では、「妄想」と「現実」の境が曖昧になっていることが十分考えられる。

    2007年頃、人民解放軍の幹部が米国のキーティング大平洋軍司令官に「大平洋二分論」を持ちかけ話題になった。当時は、話があまりにも突飛なので「冗談」とか「中国国内向けのメッセージ」と受け止め、さして将来を危惧する声は出なかった。しかしこれは世界の人々の勘違いであった。

    習近平総書記は、今年、「大平洋は広い。米中でこれを分割して管理しよう。」と8時間に渡ってオバマ大統領に説得を試みた。つまり人々が中国の「妄想」と思っていたことが「本気」だったのである。しかし日本にはまだ「冗談」と感じる人々が多いためか、たいした話題にはなっていない。


    あなたの考えは「妄想」といっても、相手が中国なら意味がない。「妄想」こそが中国にとって達成すべき「現実」なのである。もちろん中国人の中には、我々と同様、このような事を「妄想」と思っている人々はいる。しかしそのような声は力にならない。

    少なくともここ5年ほどで日中間で起って来た一連の出来事は、中国の「大平洋二分論」という「妄想」に起因したものと理解できる。当初、中国は日本だけに腹を立てていると解釈がなされてきた。しかし米巡洋艦に対する先日の行為を見ると中国は本気と考えられる。


    中国の真の狙いは、「大平洋二分論」に見られるように国際秩序の変更である。中国の言い分は「今日の国際秩序は中国の力がなかった時代に作られたものでありとても承服しかねる」というものである。したがって元々国際法を認めたくない中国に対して、国際法を持出しても効果は薄い。例えば南シナ海の大部分は公海なのに、中国はこれを自国の領海と思っている。

    つまりこれまで日本では閣僚の靖国神社参拝や教科書問題で中国に配慮と言ってきたが、中国の本音ではこれらはどうでも良かったのであろう。尖閣諸島の領有権問題も、中国は本音でどう思っているのかよく分からない。尖閣諸島周辺が、軍艦が大平洋に出るための要所になっているからこそ、しつこく領有権を主張している可能性がある。


    日中の緊張が一気に進む事態が有りうる(もちろん韓国VS北朝鮮、中国VS北朝鮮の衝突も考えられる)。筆者の考え過ぎという意見もあろうが、そろそろ日本政府は中国にいる邦人の保護を考えておくべきである。実際、中国は日本に住む中国人の所在確認を最近始めている。ところがこのような中国に、ビジネスチャンスは大きいといまだに進出を企てる日本企業があるから驚く。

    大変な事態も考えられる昨今なのに、肝心の米国が頼りなくなっている。今の時代に「法」より「力」を信じる中国は、この米国政府の弱腰を見ながら軍事的挑発をエスカレートさせる可能性がある。やはりノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領は足元を見られているのか。今週、この他にTPPや特定秘密保護法案なども取上げるつもりでいたが、これらは来年である。



今年は今週号が最後であり、新年は1月13日号からである。それでは皆様良いお年を。来年は、経済より外交や安全保障が重要になりそうである。



13/12/16(第778号)「ピカピカのバランスシート」
13/12/9(第777号)「中谷巌氏の変心」
13/12/2(第776号)「何処に行った経済成長戦略」
13/11/25(第775号)「アベノミクスの行方」
13/11/18(第774号)「ここ一ヶ月の出来事」
13/10/14(第773号)「虚言・妄言の判断基準」
13/10/7(第772号)「消費税増税、次の焦点」
13/9/30(第771号)「消費税にまつわる諸問題」
13/9/23(第770号)「「声なき声」が届くか」
13/9/16(第769号)「利払い額のGDP比率の推移」
13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」
12/12/31(第738号)「中央銀行の働きの変化」
12/12/24(第737号)「日銀とFRBの違い」
12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
12/12/10(第735号)「建設国債引受け発言の波紋」
12/12/3(第734号)「先進国だからデフレ」
12/11/26(第733号)「総選挙の行方」
12/11/19(第732号)「残る経済成長路線」
12/11/12(第731号)「先進国における経済成長」
12/11/5(第730号)「投資と経済成長」
12/10/29(第729号)「プラスアルファーの議論」
12/10/22(第728号)「アラン・ブラインダー教授の文章」
12/10/15(第727号)「バランスを欠いた報道」
12/10/8(第726号)「中国からの撤退も視野に」
12/10/1(第725号)「中国の反日暴動に対する感想」
12/9/24(第724号)「本誌の中国問題ダイジェスト」
12/9/17(第723号)「技術流出と日本の伝承文化」
12/9/10(第722号)「技術流出の現状」
12/9/3(第721号)「知的所有権の話」
12/8/27(第720号)「最近の出来事」
12/8/6(第719号)「御用学者の話」
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12/7/23(第717号)「吉川洋東大教授の文章」
12/7/16(第716号)「消費税増税が待ち遠しい?」
12/7/9(第715号)「消費税は「鬼門」」
12/7/2(第714号)「増税騒動の感想」
12/6/25(第713号)「今日の諸情勢の変化」
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12/5/21(第709号)「単式簿記の世界」
12/5/14(第708号)「文春と朝日の関係」
12/4/30(第707号)「続・増税論議と文芸春秋」
12/4/23(第706号)「増税論議と文芸春秋」
12/4/16(第705号)「増税論議と政界」
12/4/9(第704号)「増税派の人々」
12/4/2(第703号)「松下政経塾政治家と増税」
12/3/26(第702号)「英国の永久債発行」
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