経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




13/9/16(769号)
利払い額のGDP比率の推移

  • 減少している利払い額
    先週号で、他の主要国と財政状態の比較を行って、「日本の財政に問題はない」という説明を行った(むしろ他の国に比べ日本の方が財政は良好という結論)。これには国の債務に対する利払い額のGDP比率を使った。今週はこの同じ利払い額のGDP比率を使って、これまでの日本の財政状態の推移を見る。

    人々を洗脳しようとしているエコノミストや御用学者(ほとんどの財政学者)、そして日経新聞を始めとした日本のマスコミは、いかに日本の財政が悪いかを毎日のように喧伝してきた。そして彼等は日本の財政状態が年々悪化し、明日にも日本の財政が破綻するようなことを言う。しかしこれは真っ赤な嘘である。しかし問題になっている消費税増税は、このいい加減な連中のいい加減な話を根拠に押し進められようとしているのである。


    次の表は、日本の最近22年間の財政関連の経済数値の推移である。GDP(兆円)は名目GDPである。公債残高(兆円)、金利(%)、利払い額(兆円)の3項目は財務省のホームページの数字である。利払い額比率(%)は利払い額の名目GDP比率であり、表のGDPと利払い額から算出(利払い額÷GDP)した。

    名目GDPと利払い額の名目GDP比率他の推移
    年度GDP公債残高金利利払い額利払い額比率年度GDP公債残高金利利払い額利払い額比率
    924771785.810.82.3034944571.77.81.6
    934811935.410.62.2044964991.57.31.5
    944832075.110.72.2055035271.47.01.4
    954942254.610.72.0065115321.47.01.4
    965102454.310.72.1075165411.47.41.4
    975202584.010.62.0084925461.47.61.5
    985152953.510.82.1094745941.47.71.6
    995143323.110.52.0104806361.37.91.6
    005153682.710.01.9114736701.28.11.7
    015033922.39.41.912475713( )8.41.8
    024984212.08.61.713( )750( )9.9( )


    表を見てもわかるように、一番注目している利払い額の名目GDP比率は90年代の2%台から徐々に下がり、それ以降は1%台に定着している。したがって消費税の増税論議は、この数字が下がっている(良化している)過程でなされて来たことになる。「このままでは日本の財政が悪化の一途だからしょうがない」という説明がなされ、増税が強引に押し進められてきたのだ。しかし事実はこの話と正反対なのである。


    先週号は、データが揃わなかった各国との比較で、債務残高比率を使って債務残高を算出したり、利払い額を直近の長期金利を使って計算した。つまりかなり窮屈な方法でデータを取り揃えた。これに対して、今週は、財務省のホームページに公債残高、金利、利払い額といったまさに知りたい3項目が掲載されていて(親切にもグラフに数値が表示されている)、苦労なく表を作成できた。

    財政再建が大事と騒いでいる政治家やマスコミ人は多い。しかしこれらの人々は、財務省のホームページの中でも公債残高の推移だけを見て、日本の財政の善し悪しを判断しているのだ。同じ財務省のホームページのデータであっても、肝心の日本政府の利払い額はずっと減り続けてきた。先週号で述べたように公債残高が増える以上に金利が低下してきたからである。財政再建と騒いでいる政治家やマスコミ人は、このような他の数字を見ていないのであろう。何と怠慢な人々なのであろうか。いや不都合な数字は見ないことにしているのである。


  • 財務省のホームページの細工
    この数値付きグラフが掲載されている財務省のホームページは、検索サーバで簡単に捜すことができる(「国債利払い」などで検索する)。しかし増税を推進したい財務省にとっては、あまり見られたくないグラフとも言える。またこのグラフと数字には奇妙な工夫(筆者に言わせれば操作)がこらされている。

    最後の2年、つまり12年度と13年度の金利がないのである。ところが両年とも利払い額は表示されている。おそらくこれらは予算ベース、つまり想定の数字である。ところが財務省の作成する予算では、実態と掛け離れた高い金利で利払い額が想定されていることは有名な話である。


    この想定金利が高過ぎるので、予算はその分悪く、また決算はその分良くなる。例えば予算で金利を2%で組んで、実績が1.2%となれば、0.8%分に相当する予算が余る。正確には、期限が来て償還される国債の借換債と新規発行の国債の金利が2%ではなく平均1.2%で発行できるので、その分予算が余るのである。

    今年度、つまり25年度も2.0%といった超高めの金利で予算を組もうとしたらしいが、高過ぎるという批難があり、1.8%で予算を作成している。しかし今日、長期金利が0.7%程度で推移していることを見ると、今年度もかなり大きな差益が発生しそうである。


    つまり12年度と13年度は予算ベースの高い金利で利払い額を算出しているので、利払い額のグラフの最後がハネ上がって見えるのである。また12年度は、決算が確定していないということが理由なのか、予算ベースの利払い額がそのままになっているようである(つまり13年度だけでなく12年度も実際よりかなり大きな利払い額になっている)。したがって時間が経って実績値が出てくれば、ハネ上がったグラフも下がるが、また次の年度の利払い額を大きく想定するので最後はハネ上がった形になる。

    予算を高めの金利で組むのは、安全サイドで見たという言い訳と同時に、日本の財政がより悪く見えるようにする細工の一つと解釈される。たしかにリーマンショックの対策や東日本大震災の復興債発行によって、ここ数年公債残高は増えている。これらによって利払い額も08年度から若干増えている。しかしこれらの特殊要因を除き、実際の金利で計算すれば、相変わらず利払い額は安定的かあるいは少し減っているはずである。


    さらに国債は日銀が大量に買っている。政府は日銀にその分の金利を払うことになる。しかし日銀は、受取り金利から経費と準備金を差引いたものを国庫に納付している。ところがこれは雑収入に計上され、利払い額からは差引かれていない。もし差引けば、利払い額はもっと小さくなる。

    ところで公債だけでなく、政府には他の債務があるのではないかという話になる。たしかに政府短期証券と借入金が合計で180兆円ほどあり、大半は政府短期証券である。この金利は0.07%程度であり、これで計算すると利払い額は年間0.1兆円程度と推計される。つまり利払い額はわずかであり、統計上外しても今週の話には影響はないと考えた。


    このように金利の動向は、日本の財政状況を見る上で極めて重要な要素になっている。したがって市場の綾で少しでも長期金利が上がると、財政学者や御用学者はここぞとばかり大騒ぎを起こす。ところが市場が落着き金利が低下すると、途端に彼等は黙り込むのである。これがいつものパターンである。

    また彼等は、何故、日本の金利が下がり続けるかについて真面目に考えるつもりがない。むしろ高齢化によって貯蓄は減り、貯蓄不足に陥り将来金利がハネ上がるといったいい加減な予想しか行わない。企業が投資を控え、借入金の返済に励み、余剰資金を貯蓄しているといった重要なことには一切触れない。しかも予想(金利がどんどん高くなる)が何十年も外れ続けていることを、彼等は全く恥とは思っていない。

    彼等は、財政を考える時、債務残高(あるいは公債残高)といった片勘定にしか興味がない。財政再建論者が、純債務残高ではなく総債務残高にこだわるのもこのことが原因と考えられる。彼等は、一方にある日本経済における慢性的な過剰貯蓄を考慮しないのである。今日一番の問題はデフレであり、この背景にはこの過剰貯蓄がある。また彼等はデフレを克服し税収の増加を試みるといった発想は一切しない。常に増税と歳出削減しかないないのである。


    大蔵省から財務省に変わったことによって、ますます財務官僚は日本経済全体を考えることがなくなった。また日銀が国債購入をどんどん増やすのだから、金利が将来ハネ上がるといったこともなくなった。財務官僚もこのことは知っているはずである。

    しかし官僚にはこれまでの増税と歳出削減による財政再建路線を、今さら修正する気はない。これが出来るのは政治だけである。政治家が泥をかぶってもこれまでの路線を大胆に変更する他はない。

    先週、今週と日本の財政について述べた。筆者が言いたいのは、日本の財政には特に問題がないということである。財政に問題がないのなら、国債をもっと発行しこれを財源に日本経済の浮揚を考えるべきである。また新規発行国債に枠をはめることは撤回すべきである。ましてや消費税増税なんてとんでもない話である。



来週は、安倍政権の消費税増税に対する決断を取上げる。



13/9/9(第768号)「利払い額で見る財政の健全性」
13/9/2(第767号)「消費税増税は雲行きが怪しくなった?」
13/8/26(第766号)「財政が危機という怪しい話」
13/8/10(第765号)「消費税増税は絶対に避ける道」
13/8/5(第764号)「消費税増税を促す包囲網」
13/7/26(第763号)「参議院選の結果を考える」
13/7/15(第762号)「アベノミクスの評価他2件」
13/7/8(第761号)「デフレに興味のない大新聞」
13/7/1(第760号)「日経新聞の論説の特徴」
13/6/24(第759号)「アベノミクスを牽制する人々」
13/6/17(第758号)「長期金利上昇で騒いでいる人々」
13/6/10(第757号)「雲行きが怪しいデフレ脱却」
13/6/3(第756号)「財政再建論者のサークル」
13/5/27(第755号)「財政の2010年問題」
13/4/29(第754号)「国民一律の年金」
13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
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13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
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12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
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