経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


連休につき来週は休刊、次回号は5月13日に予定

13/4/29(754号)
国民一律の年金

  • 税と社会保障制度の一体改革
    安倍政権の運営の特徴を、考えの違う人々や、様々な勢力を糾合させているところと筆者は見ている。政策は、「三本の矢」、つまり「金融」「財政」「成長戦略(構造改革)」が三本柱である。これらによってデフレ経済からの脱却を目指している。

    日本においては、経済の論者やオピニオンリーダと言われる人々の各々が推進する政策が異なる。安倍政権はこれらの全てを実行しようというのである。したがって各陣営から、安倍政権の経済政策や日銀の金融緩和政策に対して表立った強い反発は出ていない(日銀の金融緩和については一部から「効果はない」「副作用が大きい」と言った意見が出ているが)。

    実際、株価が上昇し円安が進んでいる現状では、安倍政権の経済運営に対して誰も文句が言えない。また安倍内閣は、これらの実績もあり高い支持率を維持している。また逆にこの高い支持率を背景にかなり大胆な政策を実行することが可能となっている。


    安倍政権の経済運営は、ある意味で旧来の自民党の手法を踏襲していると言える。つまり色々な人々が主張する政策を全部取込んでいる。むしろ行財政改革に偏り緊縮財政や消費税増税を強引に進めた橋本政権や、構造改革しかないと叫んでいた小泉政権なんかは、むしろ歴代の自民党政権の中では異質であった。

    このように安倍政権は、様々な人々の顔を立てた政権運営を行っている。したがって必ずしも政策のベクトルが全て揃っているわけではない。例えば交際費の非課税枠を拡大する一方で相続税の実質増税を行おうとしている。しかし今の段階では、ベクトルの不揃いさはそれほど気にならないレベルである。


    ところが今後問題になることが待ち構えている。来年に予定されている消費税増税である。明らかにデフレ脱却を目指す安倍政権の政策にとって、大きな真逆のベクトルがこの消費税増税である。

    たしかに増税案の中に景気条項があるため、増税が実際に実施されるのか不明である。もし経済が持直していなければ増税は見送られるものと筆者は理解している。増税の決断はおそらく4〜6月の経済成長率を見てからということになると思われる。しかしまだ安倍政権の政策の効果が出る前であり、また世界経済の先行きが不透明な状態では、増税実施の決断は難しいと筆者は考える。


    だいたい消費税増税は、経済に疎い野田前首相が財政再建論者に取り囲まれ洗脳され強引に進めたものである。また新聞社の怪しい世論調査(国民の多数が増税に賛成しているかのような調査結果)に踊らされてきた面がある。しかしこの結果、増税に走った民主党は総選挙で大敗したのである。したがって安易に増税実施に走れば、安倍政権にとって命取りになることは確実である。

    また消費税増税は「税と社会保障制度の一体改革」と言われてきたはずである。ところが社会保障制度の見直しの方は全くなされていない。さらにこれから参議院議員選挙が行われることを考えれば、当分の間、これには手付かずの状態が続くことになる。これをやらないで増税だけが先行するなんてとても考えられないことである。


    しばらく前、筆者が極めて腹立たしく思ったことが判った。筆者がこんなに怒ったのは久しぶりである。それは新聞社が、新聞を消費税の軽減税率の対象にするよう政府に申入れていたのである。今回の消費税増税は、明らかに日本の新聞が、キャンペーンを張りリードした面がある。ところが新聞をその増税の対象外にしろと言っているのである。なんと図々しい話であろうか。それとも当局と軽減税率適用の密約でも出来ているのであろうか。

    とにかく日本の新聞は昔からずっととんでもない存在であった。権力に摺より世論を操作してきた。戦前は軍部におもねって軍国主義を煽った。戦後は一転して共産主義を礼讃した(日本でも共産主義革命が起ったり、社会主義政権が樹立されると勘違いしたのだろう)。最近は新保守主義に転向し構造改革を訴えたり、財政当局の代弁者のように財政再建を強く主張している。常にその時代の権力の在り処に敏感なのが日本の新聞である。

    また靖国神社の存在さえ知らなかった中国が、急にこれで騒ぎ始めた裏に日本の新聞の動きがあったことは昔から言われてきた。同様に従軍慰安婦問題でも日本の新聞が深く関わっている。もっとも中国や韓国は、これらの問題がなくとも他の事柄をネタに日本を攻撃していたであろうが。


  • 筆者の年金改革案金
    前段で触れたように、日本では消費税増税の前提になっている「社会保障制度改革」に全く手が付いていない。本誌は、取り敢えず年金積立金の運用について改革案を先週号で提示した。これさえ行っておけば多少時間の余裕は出てくると筆者は思っている。しかし現実は「社会保障制度改革」に関して何の進展もない。

    このままでは事態が悪化するのを眺めながら打つ手がない状態が続くと思われる。この結果、筆者の予想では、そのうち厚労省は年金財政の逼迫を理由にまた「年金支給額の削減」「支給年齢のさらなる繰り下げ」「年金保険料の引上げ」などを行うことになる。政治は、これを仕方がないと容認し、根本的な年金改革は先送りするものと見られる。

    日本のマスコミもおかしい。これまでも「年金の未納問題」や「年金記録のミス」といった年金制度の本質と懸け離れたことばかりを取上げ騒いできた。厚労省の役人は国民年金保険料を納めていない裕福な人を一生懸命になって追掛けていた(このような事をやっても何の意味もない)。年金詳しくミスター年金と呼ばれた政治家も、将来の年金制度に何のビジョンも持っていなかったと見られる。

    だいたい今の厚労省が中心になって今後の年金改革の構想を練るなんて実情にそぐわない。彼等の「タコ壷」的発想では、これまでの延長線上でしか物事は考えることができない。つまり厚労省の裁量の範囲ではどうしても前述の「年金支給額の削減」以下の施策になってしまうのである。


    そこで筆者の年金改革案をここで示す。年金改革についてはこれまで何回も取上げてきた。ただ今回の日銀の異次元的金融緩和を踏まえて案を練り直した。結論を先に申せば「国民一律の年金の創設」であり、その財源は永久債の発行である。さらにこの「永久債は日銀が購入」することを念頭に置いている(これによって国の借金は実質的に増えない)。

    先週号で利回り4.1%の永久債で運用するアイディアを示したが、これだけでは厚生年金と公務員共済年金の今の支給額を維持することは難しい。もっとも現行のように払込んだ保険料の5〜7倍もの年金を支給し続けることが非現実的である。また若い世代の3倍程度の支給というのも厳しい。

    まず年金支給額をどの程度にするのか議論する必要がある。一つのメドは、現役時代の収入の5割程度とするという考えがある(5割はちょつと難しいかもしれないが)。またあまりにも低く過ぎる国民年金の支給額も大問題である。国民年金に関しては、定年のない自営業者を対象にしたといった今日となっては非現実的な前提が一向に改められていない。この国民年金支給額を底上げすることも必要である。つまり削減される厚生年金と公務員共済年金の補填と国民年金を底上げが「国民一律の年金」の狙いである。


    だいたい今の厚生年金の保険料は高過ぎる。これによって可処分所得が減り消費も減る。企業も同額の保険料を負担(他の社会保険料の負担も重い)するのだから、正社員を減らそうとするのは当り前である。つまり筆者の主張である「国民一律の年金」を導入することによって、日本の企業の負担を減らすことも可能である。話はちょっとそれるが、このような全ての企業に負担が掛る年金制度を顧みず、儲かっている企業にしか恩恵がない法人税減税にこだわっている人々を筆者はいつも怪しい存在と見ている。

    ただこのようなアイディアを示すと、それは消費税増税で賄うべきという声が出る。今の増税案では最終的に5%の増税である。これによって3.5〜4%程度物価が確実に上昇する。それならば3.5〜4%程度の物価上昇が生じるまで、筆者の主張するような「国民一律の年金」と「永久債の日銀購入」を行えば良い。消費税増税は必ずデフレ圧力になるが、筆者のアイディアなら人々の可処分所得が増えデフレ脱却に大きく貢献するものと考えられる。


    また「国民一律の年金」を導入した場合は、生活保護費はその分減額する。だいたい今の日本の生活保護制度は、外国人への支給など考えられないほどメチャクチャである。また国民年金支給額とのアンバランスは常軌を逸している。ここでも厚労省の役人は「パチンコに生活保護費を使うな」といった本質と掛け離れたことに一生懸命取組んでいる。

    ただ一応筆者のアイディアを示したが、全てにこだわるつもりはない。例えば永久債が無理なら、一般の国債でもしょうがないと考えている。ところで幸いにも安倍総理は社労族の一人であり年金に詳しい。安倍総理が在任中に年金改革を是非とも実現してもらいたいものである。



連休につき来週は休刊。次回号は5月13日に発行を予定している。



13/4/22(第753号)「日銀のリスク資産購入」
13/4/15(第752号)「異次元の金融政策」
13/4/8(第751号)「久しぶりの「朝まで生テレビ」」
13/4/1(第750号)「不穏な中国と日本の安全保障」
13/3/25(第749号)「TPPの基本は友好」
13/3/18(第748号)「日本の雪崩的輸出の歴史」
13/3/11(第747号)「TPP交渉と日本警戒論」
13/3/4(第746号)「TPPの実態」
13/2/25(第745号)「有り得る軍事的衝突」
13/2/18(第744号)「群盲象をなでる」
13/2/11(第743号)「まず印紙税の廃止」
13/2/4(第742号)「「構造改革」と「規制緩和」の本当の姿」
13/1/28(第741号)「意志を持った「やじろべい」」
13/1/21(第740号)「金融政策に対する提言」
13/1/14(第739号)「年頭にあたり」
12/12/31(第738号)「中央銀行の働きの変化」
12/12/24(第737号)「日銀とFRBの違い」
12/12/17(第736号)「師走の総選挙の感想」
12/12/10(第735号)「建設国債引受け発言の波紋」
12/12/3(第734号)「先進国だからデフレ」
12/11/26(第733号)「総選挙の行方」
12/11/19(第732号)「残る経済成長路線」
12/11/12(第731号)「先進国における経済成長」
12/11/5(第730号)「投資と経済成長」
12/10/29(第729号)「プラスアルファーの議論」
12/10/22(第728号)「アラン・ブラインダー教授の文章」
12/10/15(第727号)「バランスを欠いた報道」
12/10/8(第726号)「中国からの撤退も視野に」
12/10/1(第725号)「中国の反日暴動に対する感想」
12/9/24(第724号)「本誌の中国問題ダイジェスト」
12/9/17(第723号)「技術流出と日本の伝承文化」
12/9/10(第722号)「技術流出の現状」
12/9/3(第721号)「知的所有権の話」
12/8/27(第720号)「最近の出来事」
12/8/6(第719号)「御用学者の話」
12/7/30(第718号)「増税マニア達は現実離れ」
12/7/23(第717号)「吉川洋東大教授の文章」
12/7/16(第716号)「消費税増税が待ち遠しい?」
12/7/9(第715号)「消費税は「鬼門」」
12/7/2(第714号)「増税騒動の感想」
12/6/25(第713号)「今日の諸情勢の変化」
12/6/18(第712号)「世界中「展望がない」」
12/6/11(第711号)「schole(スコレー、暇)の話」
12/6/4(第710号)「ギリシャ化の話」
12/5/21(第709号)「単式簿記の世界」
12/5/14(第708号)「文春と朝日の関係」
12/4/30(第707号)「続・増税論議と文芸春秋」
12/4/23(第706号)「増税論議と文芸春秋」
12/4/16(第705号)「増税論議と政界」
12/4/9(第704号)「増税派の人々」
12/4/2(第703号)「松下政経塾政治家と増税」
12/3/26(第702号)「英国の永久債発行」
12/3/19(第701号)「過去の号の修正」
12/3/12(第700号)「本誌700号に寄せて」
12/3/5(第699号)「投資顧問AIJの事件」
12/2/27(第698号)「橋下維新政党へのコメント」
12/2/20(第697号)「地方自治体と通貨」
12/2/13(第696号)「デフレ経済下での増税」
12/1/30(第695号)「無税国家への道」
12/1/23(第694号)「世界的な金利低下」
12/1/16(第693号)「過剰貯蓄による災い」
12/1/9(第692号)「バーチャルな話」
11/12/19(第691号)「シミュレーションモデルの話」
11/12/12(第690号)「財政破綻のすすめ」
11/12/5(第689号)「「騒ぎ屋」の時代」
11/11/28(第688号)「技術進歩の恩恵」
11/11/21(第687号)「避けられる根本問題」
11/11/14(第686号)「物事の本質」
11/11/7(第685号)「組織の異端児的存在」
11/10/31(第684号)「組織の研究」
11/10/24(第683号)「気乗りしないTPPの話」
11/10/17(第682号)「解決策はユーロ離脱か」
11/10/10(第681号)「ポール・クルーグマン教授の変心」
11/10/3(第680号)「現実論者VS観念論者」
11/9/26(第679号)「世界的な「日本化」」
11/9/12(第678号)「欧州発のリーマンショック」
11/9/5(第677号)「野田政権の成立」
11/8/29(第676号)「円相場の今後の動き」
11/8/22(第675号)「欧米経済の変調」
11/8/15(第674号)「脱・反原発派の人々」
11/8/8(第673号)「食品安全委員会の問題」
11/8/1(第672号)「タウンミーティングの報告」
11/7/25(第671号)「意味の解らない暫定基準値」
11/7/18(第670号)「政府が明らかにすべきこと」
11/7/11(第669号)「放射線防護の専門家」
11/7/4(第668号)「ダイオキシンとプルトニウム」
11/6/27(第667号)「付加価値を生まない発電」
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11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
11/4/25(第659号)「放射線は身体に良い?」
11/4/18(第658号)「山を越えたか?」
11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
11/4/4(第656号)「本当に重大な事は何か」
11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
11/3/21(第654号)「東日本巨大地震」
11/3/7(第653号)「日本が貿易立国という誤解」
11/2/28(第652号)「日本は本当に貿易立国?」
11/2/21(第651号)「関税以外の貿易障壁」
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11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」
11/1/10(第645号)「日本の経済成長シナリオ」
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