平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


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98/7/20(第75号)


橋本総理退陣を考える
  • 自民党大敗の原因
    マスコミの事前の予想に比べ、自民党は参院選で大きく負けた。今週号は予定を変更して、これについて述べたい。本誌は橋本内閣の支持率が高かった頃から、その政策に批判的であった。今回の敗北はその意味では、有権者もその政策の間違いにようやく気が付き、行動した結果であろうと解釈している。世間では無党派層の反乱と言われている。たしかに投票率が高く、今まで投票を棄権してきた層の投票が野党への投票に回ったことが、響いたが、問題は自民党の支持層にも反橋本の行動が見られたことである。かりに自民党支持者が従来の行動を行なっていたならこのような惨敗は少なくとも回避されていたであろう。
    自民党惨敗を予感させる事態が事前にあった。それは橋本内閣の支持率の急低下である。選挙直前の調査では、メディアによって若干違うが、内閣支持率は20パーセント台まで落ちていた。ここまで落ちると、自民党支持者の中にも橋本総理を支持しない者が相当いることを意味している。たしかに参院選前の補選では自民党が完勝しており、自民党に気の緩みが生じたことも考えられるが、一番の敗因は国民の中の「反橋本」と言う心理であったと考えている。つまり選挙中橋本総理が全面に出るほど、自民党は支持を失ったのである。接戦と伝えられた選挙区で自民党はことごとく負けた。このような選挙区は重点選挙区として橋本総理自ら応援演説を行なっている。しかし、これだけ反感の大きい総理が全面に立った結果、勝てるものも勝てなくなったのである。
    テレビのスポットのコマーシャルもひどかった。まずコマーシャルの内容は訳のわからないものであり、橋本政治の性格をよく表わしていた。自民党支持者でも、テレビでこのコマーシャルが始まるとチャンネルを換える人が相当いたのではないかと想われる。一回コマーシャルを流す度に、野党の投票が2万票ずつ増えていったのである。自民党支持者からも反感を持たれていたのだから、運動員もそれほど熱心に活動したとは考えられない。ポスターも良い所は、民主党や自由党に占められており、自民党のポスターはあまり見かけなかった。つまり党に一体感もなかったのである。
    自民党がこのような大敗を避けるためには、選挙前に総理を交代させる他はなかったのである。実際、選挙後、こんなにあっさり首相を止めると表明するくらいなら、選挙前に止めるべきであった。一歩譲って、選挙後に止めることを示唆していても結果はかなり違っていたはずである。しかし、これにはとんだ邪魔が入ったのである。バーミンガムサミットの場で、クリントン大統領から選挙後の訪米を要請されたのである。このように外交日程が次から次に決まれば、首相の交代が難しいことになる。この訪米要請の報道を知った時には、筆者は、自民党にとってまずことになったと直感した。結果的には橋本内閣の延命決定が今回の自民党大敗の原因なら、この訪米要請が橋本政権の崩壊を早めたことになる。訪米要請が、まさか橋本総理の退陣を早めるために、米国政府が行なった高等戦術とは考えにくいが、結果的には米国政府が日本の政権交代と言う、内心期待しているものが現実になったのである。
    しかしこれだけ自民党が負けると問題は残る。今後6年間は、国会の運営が難しくなり、法案を通すにも野党の要求をある程度受け入れざるを得なくなるからである。今、日本には「小さな政府」が経済の危機を救うと言う奇妙な信仰が流布している。野党も例外ではなく、むしろ野党の方が、この宗教の信者が多い。特に影響を受けているのは自由党と民主党である。したがって景気対策も「減税」の一辺倒である。筆者は、本誌で何度も主張しているように、政府の大きさ自体が問題ではなく、その時の経済状況や経済の発展段階によって適正な政府の大きさが決まると考えている。現状の日本では財政的には、大きな政府にならざるを得ない状況と考えている。
    現在の日本の需給ギゃップは20兆円あると言われている。需給ギゃップについては筆者なりの試算は最近行なっていないが、この20兆円と言う数字は大きく違っているとは思われない。政府は16兆円の総合経済対策を決めたが、このうちの一部は来年度のものだったり、地方の財政からの支出を期待する不確定なものである。つまりこの総合対策でも20兆円の需給ギゃップを埋めることはできない。さらにこの需給ギゃップは日々大きくなっていると思われる。したがって第二次の補正予算による追加景気対策が必至である。ところが野党が主張する減税ではとてもこの需給ギゃップは埋らない。また、野党は揃って公共事業に反対している。公共事業などの財政支出の増大がなければ、とても景気を立て直すことはできない。また減税が討議されれば、当然財源が問題になり、減税を国債発行でまかなうと言う話になればかまわないが、公共事業を減らせと言う話に進むと問題である。特に「小さな政府」が良いと考える政党にとっては、「減税と財政支出の削減」が理想の政策であり、公共事業には大きな抵抗を示すはずである。もし、自民党がこの主張に負け、公共事業を削減すると言うことになれば、とんでもないことになる危険性がある。
    自民党は長年政権を担当していた結果、柔軟性のある現実的な政党である。自民党のかなりのメンバーもこの「小さな政府」教に取りつかれている者もいるが、総合対策を観る限り、軽症である。「財政再建路線」も事実上放棄している。問題は野党である。今後の具体的な景気対策をめぐる与野党の攻防が注目される。
    自民党の幹部の一部は、橋本総理のやろうとした政策、特に「財政再建路線」自体は正しい政策であり、今後、橋本総理も見直されるだろうと言う発言を行なっている。しかし、筆者はそのようなことはないと考えており、今後分析が進めば、「なんとバカげたことをやったのか」と言う評価が定着するだけと考えている。緊縮予算で財政の赤字を減らそうとしたが、今回の補正予算による財政支出増である。また、日本の不況とアジアの経済危機との因果関係は全くないとは言えず、これらの国々への金融支援も相当額に上っている。これらの支援が戻ってくるのか、最終的には援助となるの今のところはっきりしない。さらにアジア経済危機に触発され、ロシアも経済的におかしくなり、日本はここにも直接の金融支援を行なっているのである。つまり日本はこの2年間何をやっていたのか分からないのである。まさしく空白の2年間であった。6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」で述べたように、責められるのは橋本総理だけではなく、そのブレーンとなって首相にこれらの政策を進言していた人々も含まれるべきである。

  • 次期総理に望まれること
    現在、自民党では次期の総裁選びが進行中である。今のところ小淵、梶山、小泉の三氏の立候補が濃厚である。週間誌などは小淵氏が総理となれば、円と株が暴落すると言っているが、そのようなことはまずないであろう。また梶山氏が総理になれば、円高になると予想する市場関係者の声が新聞に載っている。しかし、市場関係者の声などは元々いい加減なものがほとんどであり、このような声に忠実な政策を行なうことが間違いの元である。筆者は、市場の動きには関心はあるが、メディアが伝える市場関係者の声はほとんど信用していない。ところで橋本総理は、以前から市場関係者の声を集めたレポートを熱心に読んでいたと言うことである。橋本政権の経済政策がおかしかったのも、このようなことも原因になっているのかもしれない。
    三氏の主張は、手法の違いがあるが、案外政策は共通したものが多い。景気対策の必要性の認識や恒久減税についてはほぼ一致している。また景気対策の財源には赤字国債を想定しており、三氏とも「財改法」の凍結ないし、廃止を主張している。これは明らかに橋本政権の政策の否定であり、最も大切なポイントである。
    一番の違いは、金融機関の不良資産の処理方法である。小淵氏は「大きな銀行の破綻は避ける」と言うスタンスであり、梶山氏は「たとえ大銀行が倒産しても、不良債権の処理を進める」と主張している。小泉氏は不良債権の処理を進めると言っているが、具体的な方法ははっきりしていない。筆者は、景気を立て直してからの金融機関の不良債権の処理を主張している。実際、貸し渋りが景気に悪影響を与え始めたのは最近のことであり、また大手の金融機関の危機が表面化したのも、景気が下落してからと筆者は理解している。逆に不良債権の処理過程で銀行の破綻がさらに続くようだと、さらに景気に悪影響を与えることになる。つまり梶山氏の主張に沿った政策が忠実に行なわれるとなると、経済にも大きなマイナスの影響が考えられる。
    筆者には、梶山氏が「経済通」と言う認識はなかった。最近、梶山氏が経済に積極的に発言を行なっているが、背後に経済政策ブレーンがいると確信している。問題はこのブレーンの考え方である。あまりにも金融機関の不良債権に重点を置いているからである。世間には「財政再建路線には間違いがなかったが、金融機関の不良債権が景気の足を引っぱった」と言う考えがある。この人々は自分達の考えが間違っていたと認めない人々である。経済同友会の人々がそうであり、これに近い「識者」である。いずれにしても梶山氏の経済政策ブレーンが誰なのか注目される。
    世間の考えに反して、筆者は、誰が総理になっても政策に大きな違いが生じることはないと考えている。仮に梶山氏が総理になっても、自民党をバックにする政権である以上、銀行がバタバタ倒産するような政策を採るはずがないと考えている。総合的には、筆者の考えに近いのは小淵氏であり、氏が総理の座に一番近いと予想されている。
    誰が総理になっても、筆者が希望することは、景気を立て直すことを政策の中心に据えることである。なにがなんでも「景気を回復させる意志」を示すことである。具体的には、景気が回復するまで強力な経済政策を継続することを明らかにすることである。本年度では補正予算が決まっているが、これで足らない場合には第二次補正、さらには第三次補正も行なうと言うことを表明することである。実際これだけ行なうかどうかは別に、なにがなんでも景気を立て直すと言う政府の意志を示すことが重要なのである。
    世間には景気を回復させるには経済の構造を改革する必要があると主張する人々が大勢いるが、この「改革」の具体的内容はあまり示されることはない。たぶん「規制緩和」などがその内容になるのであろうが、このようなもので景気が回復するはずがないと考えている。最近、「経済白書」が発表されたが、今回の不況の原因は金融機関の不良債権と非製造業の生産性がアツプしないことと分析している。そして景気対策としては不良債権問題の解決と経済の構造改革を主張している。元々非製造業の生産性の計測自体が難しく、また非製造業には生産性のアツプが難しい業種が多いのである。今だに経済企画庁はこんな「とんま」なことを言っているのである。不況の原因は需要の不足であり、マクロ経済対策でこれを補う方策を採る他はないのである。景気がこれまで落ち込むと、当分の間、誘発投資や住宅投資を期待することは無理である。






98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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