経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




11/8/15(674号)
脱・反原発派の人々

  • 理屈や理論ではない脱・反原発の流れ
    7月22日のテレビ朝日系「朝まで生テレビ」は、原発推進派と脱・反原発派が対峙し議論を行う形であった。原発問題がこれだけ注目されているにもかかわらず、これまでこのような形式の議論は珍しかった。マスコミは、どういうわけか両者を一緒に出演させることに躊躇している。


    まず脱・反原発派の出席者の今回の発言は、何回も聞いたものであり目新しいものはなかった。またほとんどのメンバーはいつもの通りであった。筆者から見れば本当に冴えない学者や原子力の関係者ばかりであった。出演していた脱・反原発派には、原発の廃止の必要性をキチンと説明できる者がいない。

    一方、原発推進派は、福島原発での不手際を認めつつも、脱・反原発派の発言を一つ一つ覆して行った。おそらく第三者から見ても、両者の議論は、原発推進派の圧勝ということは容易に分かったであろう。これまで政府が関与する原発に関する会議で原発推進派と脱・反原発派が対峙し議論する場面はあったであろう。しかしおそらくこの番組と同様、脱・反原発派が一方的に攻められる様子が容易に想像できる。


    飯田哲也氏は、例のごとく「世界の原発は今後は衰退して行く」「今後、太陽光発電のコストは劇的に下がる」と言った、事実とは違ったり根拠の怪しい話を繰返していた。反原発の論客の代表と見られる飯田氏であるが、脱原発の必要性を適確に説明することはない。何か太陽光パネルのセールスマンのような人物である。

    欧米は、スリーマイル島やチェルノブイリの事故以降、原発建設を行ってこなかった。しかし今、フランスとフィンランドで新型の原発を建設している。新興国は、もっと原発建設に積極的であり、先日、中国で新しい原発が稼動を開始した。


    日本を除き、全ての先進国のサミット参加国の首脳は原発建設に積極的である。ただ福島原発事故を受け、ドイツは脱原発の選択をせざるを得なくなった。またイタリアのベルスコーニ首相も、原発再稼動を目論んで国民投票に賭けたが、福島原発事故で裏目に出た。

    筆者が一番驚くのは、カナダが原発に積極的なことである。カナダは、水力の発電量が大きく、またタダ同然の天然ガス(特にシェールガスの埋蔵量は莫大)が豊富にあり、さらに石油やオイルサンドまで産出する。このカナダでさえも原発に前向きなのである。このように飯田氏の話は嘘ばかりである。


    このような体たらくの脱・反原発派の論客を見かねてか、脱・反原発派の一人として出席していたイタリア人ジャーナリストのビオ・デミリアという者が口を開いた。彼は「脱・反原発の流れは理屈や理論ではない。社会の構成員である一般国民の気持というものが重要」「原爆で被災した日本が原発を推進してきたことが間違い」と扇動的なこと言っていた。

    筆者はこのような非論理的、非科学的な言動が大嫌いだ。ところが残念ながら日本人にはこのような理屈に合わない言論に左右されやすい体質がある。例えば消費税導入後の参議院選挙で、党首土井たか子氏の「いやなものはいやだ」というセリフで社会党が大勝した。消費税の是非については、色々な意見や主張はある。しかしこの「いやなものはいやだ」が政治の世界で通用する言葉であってはならない。しかしこのような人々のムードを操作する事例は、戦前からどれだけでもある。


    話題になっていた東海テレビの「セシウム米テロップ事件」や京都の「五山の送り火での東北の松の拒否騒動」も人々の根底にある非科学的な体質が反映されている。当事者達は、放射能の危険性に関する知識が乏しいだけでなく、自分で調べようという気もない人々である。周りが「恐い」と言っているから、自分も「恐い」と思い込んでいるのである。しかしこのような人々こそ、今日の平均的な日本人でもある。

    しかし日本のような国の人間が、科学的な思考を放棄し否定するのなら、お先は真っ暗である。そしてビオ・デミリア氏のようにこれらの人々を思考停止に追いやって、扇動を行うというのが昔から左翼の常套手段であった。筆者は、このビオ・デミリアという者に何か引っ掛るものを感じ、色々と調べてみた。驚くことに菅首相が突然ストレステストを実施すると言って原発の再稼動を中止させた日の前夜、この人物こそ菅首相が会っていたイタリア人の環境保護活動家である。

    菅首相は、この夜3軒の飲食店をはしごし、最後に六本木のイタリアンレストランでこのビオ・デミリア氏と落ち合った。彼は、菅首相に「電力は十分にある」と言って、原発の再稼動を止めるよう説得したという。この人物は、菅直人氏と20年来の知合いで特別顧問だったという話もある。


  • 戦略は「原発の是非を問う国民投票」
    しかしこの環境保護活動家でありジャーナリストはただ者ではない。イタリアの過激派「赤い旅団」の弁護士をやっていたという話がある(本人は「赤い旅団」との関係を否定しているが)。70年代、日本で日本赤軍、ドイツでドイツ赤軍、そしてイタリアではこの赤い旅団が、ハイジャック、テロ、誘拐、殺人といった過激な活動をやっていた。これらの過激派は互いに連携し「世界同時革命」を目指していた。

    しかしこのような過激な活動には、追随者はなく彼等は孤立し最終的に敗北した。逆に警察・司法に追詰められ、組織は壊滅状態になった。これらの過激派やそのシンパの一部は、緑の党に流れたり環境保護団体に衣替えし、戦術転換を図った。


    「赤」が「緑」になったのである。しかし活動を行っているのは同じような人々である。これを「赤いきつね」と「緑のたぬき」と揶揄する人もいる(メーカにとっては失礼で迷惑な表現であるが)。このビオ・デミリア氏は、以前、指紋押捺の拒否などで日本への入国拒否を受けている。どうも他の国でも要注意人物として入国を拒否されているケースがあるらしい。

    それにしても彼のような公安にマークされていそうな活動家に、一国の首相が会ってアドバイスをもらうとは、一体、日本はどうなっているのか。また菅首相は、北朝鮮に近い政治団体への巨額寄付で問題になっている。こちらは日本赤軍のルートである。


    菅首相が首相の座を降りようとしないのを見て、「自分は革命家」と錯覚しているのではと筆者には感じられた。しかしとうとう首相を退陣しそうである。やはり彼は少なくとも「革命家」ではなかったようだ。

    それにしてもこれらの活動家と親密な日本の首相を、米国は警戒するのではと思われる。今、菅首相の居座りを断念した理由が色々と取りただされている。筆者は、9月に設定しよとしていたオバマ大統領との会談を、米国側から断ってきたことが大きな要因ではないかと見ている。


    「朝まで生テレビ」の話に戻る。筆者は、原子力関係の学者や技術者は基本的に原発の推進者派と見ている。もちろん彼等の間で技術や安全に対する考えで違いはあるだろう。例えば今の原発や原子力行政の問題点を指摘する専門家もいるだろう。また安全にもっとカネを掛けろと主張する原子力技術者もいるだろう。

    しかし考えが違うからといって彼等が即脱原発を唱えるということはない。つまりまともな原子力の専門家なら「朝まで生テレビ」などに反原発派として登場することはないと考えられる。また「原発を推進していた御用学者」という表現はおかしい。まともな原子力関係の学者なら、程度の差はあれ原発に賛成のはずである。

    この点をマスコミは誤解している。日本の原子力の専門家の間で、何か推進派と反原発派がいると勘違いしているのである。そしてマスコミは推進派を「御用学者」と決めつけたがっているだけである。たしかに反原発をはっきりと主張する原子力学者はわずかにいる。しかしこのような人物の反原発の動機は、技術的というより他のこと、例えば政治的なものと見られる。


    福島の原発事故以降、反原発の専門家として飯田哲也氏の他にもう一人、京大の助教授がテレビなどのメディアによく登場している。しかしこの人物は、一方的に発言できるVTR出演とかラジオにしか出ない。つまり反論する者がいそうな場面には一切登場しないのである。その点、飯田氏の方が良心的といえる。

    ところでこの反原発の京大助教授もただ者ではない。筆者は試しにこの助教授の名前と「北朝鮮」というキーワードで検索してみた。ある週刊誌がそれらしいことを書いていたからである。驚くことに何十万件もの検索結果が出てきた。

    どうもこの学者は、北朝鮮の核保有を擁護し北朝鮮も核兵器を持つ権利があると主張している。つまり「北朝鮮は核武装してもかまわないが、日本は原発を廃棄しろ」と言っているのである。このようなメチャクチャな人物を反原発のヒーロー学者としてテレビに頻繁に登場させ、彼の本がよく売れていると宣伝している日本のマスコミはどうかしている。


    筆者は、「朝まで生テレビ」の最後あたりで、ビオ・デミリア氏が「反原発の流れの決手は国民投票の実施」と言っていたことに注目している。玄海原発再稼動の動きに抗議して佐賀県庁内になだれ込んだ反原発派の市民団体の中に元タレント(本人は反原発活動が原因でタレント活動ができなくなったと言っているが本当のところは分らない)がいた。報道機関のインタビューに応え、彼は「これから原発の是非を問う国民投票の実施が重要」と言っていた。まさにビオ・デミリア氏の発言に呼応している。ちなみにこの元タレントは数年前テレビで「竹島は韓国に渡すべき」と言っていた。

    日本は憲法関連以外では、法的に国民投票の結果は無効である。その点、国民投票で原発の是非を問うことができるイタリアやドイツとは違う。しかし法的に無効であっても、国民投票の結果によって政治的な縛りが作れるというのが彼等の戦略である。反原発団体は、国民投票実施に向け、情宣活動を活発化させていると思われる。先日、「みんなの党」が参議院に原発の是非を問う国民投票実施のための議案を提出した。「みんなの党」の性格と体質を考え「なるほど」と筆者は納得した。



米国債の格下げや欧米各国の財政問題で、世界の株価や資源価格が乱高下している。来週はこれを取上げる。

先週号で筆者は「いつものように株価操作が行われているのであろう(米国債格下げ情報などが漏洩していると思われる)」と感想を述べた。ちょっと驚くことに米証券取引委員会(SEC)が、5日のS&Pの米国債格下げに関してインサイダー取引がなかったか予備的調査を始めたという(13日日経夕刊)。7月から8月上旬にかけた株価の推移がおかしいと思ったのは筆者だけではないようである。またS&Pは米国の債務額について計算ミスをしながら格下げを行った(後に計算ミスを認めたが、S&Pは格付に影響しないと突っぱねている)。ちなみにS&Pの米国国債格付の責任者は、専門が哲学や文学という話が出ている。金融会社の重役からS&Pに転職してきた人物という。

市場関係者の間では、8月26日のジャクソン・ホール会合(経済シンポジウム)での、バーナンキFRB議長の講演が注目されている。ひょっとしたならここでQE3を示唆する発言が出るのではという観測である。26日までQE3の可能性を睨みながら市場は動くということになる。経済を巡り世界には沢山のエコノミスト、中央銀行総裁、そして政治家がいるが、まともで正気なのはバーナンキFRB議長ただ一人ではないかと思われる今日この頃である。特に欧州中央銀行総裁は酷すぎる。ECBなんか7月に利上げをしているのである。



11/8/8(第673号)「食品安全委員会の問題」
11/8/1(第672号)「タウンミーティングの報告」
11/7/25(第671号)「意味の解らない暫定基準値」
11/7/18(第670号)「政府が明らかにすべきこと」
11/7/11(第669号)「放射線防護の専門家」
11/7/4(第668号)「ダイオキシンとプルトニウム」
11/6/27(第667号)「付加価値を生まない発電」
11/6/20(第666号)「付加価値と発電」
11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
11/4/25(第659号)「放射線は身体に良い?」
11/4/18(第658号)「山を越えたか?」
11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
11/4/4(第656号)「本当に重大な事は何か」
11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
11/3/21(第654号)「東日本巨大地震」
11/3/7(第653号)「日本が貿易立国という誤解」
11/2/28(第652号)「日本は本当に貿易立国?」
11/2/21(第651号)「関税以外の貿易障壁」
11/2/14(第650号)「TPPに関する推理」
11/2/7(第649号)「菅首相の消費税増税」
11/1/31(第648号)「モラルハザードの話」
11/1/24(第647号)「問題は分配ではない」
11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」
11/1/10(第645号)「日本の経済成長シナリオ」
10/12/20(第644号)「難しい日本の経済成長」
10/12/13(第643号)「日本における新経済成長論」
10/12/6(第642号)「経済成長理論に対する批判」
10/11/29(第641号)「「ケインズはもう古い」?」
10/11/22(第640号)「不況下の反ケインズ政策」
10/11/15(第639号)「政治家に向かない職業」
10/11/8(第638号)「米政府に対するロビー活動」
10/11/1(第637号)「この日をつかめ(Seize the Day)」
10/10/25(第636号)「人民元安容認の経緯」
10/10/18(第635号)「本誌の中国経済の見方」
10/10/11(第634号)「「腹を括る」べき時」
10/10/4(第633号)「中国漁船の公務執行妨害」
10/9/20(第632号)「菅政権の行方」
10/9/13(第631号)「中央銀行の制度設計」
10/9/6(第630号)「日銀悪玉説」
10/8/30(第629号)「外為特会の31兆円の評価損」
10/8/23(第628号)「野田財務大臣を罷免せよ!」
10/8/9(第627号)「世界に広がるデフレ」
10/8/2(第626号)「米国もデフレ?」
10/7/26(第625号)「国債利払いの名目GDP比率」
10/7/19(第624号)「中国の日本国債購入」
10/7/12(第623号)「10年参議院選挙の結果」
10/7/5(第622号)「サミットの変質」
10/6/28(第621号)「各党のデフレ対策」
10/6/21(第620号)「菅首相の想定」
10/6/14(第619号)「EU市場混乱の本質」
10/6/7(第618号)「EU経済の混乱とIMF」
10/5/31(第617号)「議論の前提条件」
10/5/24(第616号)「現実離れの構造改革派」
10/5/17(第615号)「これも一歩前進か」
10/5/10(第614号)「一歩前進か」
10/4/26(第613号)「ガラパゴス症候群」
10/4/19(第612号)「マクロによる検証」
10/4/12(第611号)「ミクロで捉えた日本経済」
10/4/5(第610号)「何事もタイミング」
10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」
10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
10/3/15(第607号)「政策提言(前半)」
10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」
10/3/1(第605号)「政治ができる事」
10/2/22(第604号)「積極財政への雑音」
10/2/15(第603号)「経済と金融の間の緊張関係」
10/2/8(第602号)「第二回目キャンペーン」
10/2/1(第601号)「第一回目キャンペーン」
10/1/25(第600号)「日本の財政構造」
10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
10/1/11(第598号)「10年今年の景気」
09年のバックナンバー

08年のバックナンバー

07年のバックナンバー

06年のバックナンバー

05年のバックナンバー

04年のバックナンバー

03年のバックナンバー

02年のバックナンバー

01年のバックナンバー

00年のバックナンバー

99年のバックナンバー

98年のバックナンバー

97年のバックナンバー