経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




11/6/27(667号)
付加価値を生まない発電

  • 淡いエネルギーの集まり
    菅首相は、延命を狙って「再生可能エネルギー全量固定価格買取り制度」なるものを強引に導入しようとしている。これが「再生可能エネルギーの普及」という美名のもとで法制化されようとしている。再生可能エネルギーは、太陽光、風力、地熱そして水力ということになるが、おそらく今後の焦点は太陽光発電になろう。

    これは再生可能エネルギー発電の電気を電力会社が一旦全量買上げ、全電力消費者に一律に負担を転嫁するというものである。買取り価格は、太陽光以外で1kw/時あたり15〜20円程度、そして太陽光は未定となっている。筆者の予想では、太陽光は40〜45円程度になると踏んでいる。これ以下では、太陽光発電パネルを設置してもペイしないからである。この結果、標準家庭で一ヶ月当たり150円程度の負担という試算が出ている。この150円という金額は一見小さいような気がするが、しかしその算出根拠がはっきりしない。

    元々この法律は自民党時代から検討されてきたものであり、またこれは原発が増えて行くことを暗黙の了解としていた。実際、東北大震災の起った当日にこれが閣議決定されている。仮に再生可能エネルギー発電の電気を買取りその負担を消費者に転嫁しても、一方で原発が増えるためトータルで電気料金は上げることはないという前提である。ところが今日、とんでもないことにこの法律は反原発のシンボルとなっている。


    筆者は、太陽光や風力といった淡いエネルギーの集まりは、とうてい主要なエネルギー源にはなりえないと考える。主要なエネルギー源になるには、これらはあまりにも非効率的である。

    また太陽光や風力による発電は、今後、ほとんど技術進歩が期待できないと筆者は考える。したがって今後も主要なエネルギー源になり得るものは、依然として化石燃料と原子力ということである。ところが原子力を止めても、再生可能エネルギーでそれを代替できるという虚言・妄言が最近広まっている。


    太陽に手をかざし、手の平に受ける太陽光というエネルギーで発電するのが太陽光発電である。また手に受ける風で発電するのが風力発電である。基本的に両者とも発電量は手の平の面積に比例する。

    たしかに両者にも技術進歩が考えられる。まず太陽光発電は変換率の向上が考えられる。しかし変換率はどうも現在の20%程度が限界のようである。またものすごい研究開発を行い数パーセントの変換率の向上を実現させても、太陽光発電パネルを2倍設置する方が手っ取り早いのである。

    風力発電でも、あらゆる方向の風で発電する技術などが考えられている。また風の電気への変換率を向上させる技術も研究されている。しかしこのような努力より、これも建てる発電風車の数を増やした方が手っ取り早い。


    このように今日の太陽光発電と風力発電の機器の製造分野においては、日本企業が得意な技術開発によって差別化するといった状態ではなくなっている。せいぜい特殊な素材を提供する程度であろう。実際、これまで太陽光発電パネル市場を独占してきたドイツや日本のメーカは、中国などに激しく追い上げられ苦戦している。

    風力発電装置でも中国が伸びている。先日、中国から風力発電装置を輸入している米国は、中国政府が風力発電装置メーカに補助金を出してきたことに抗議していた。このように太陽光発電と風力発電は、もはや技術開発競争ではなく価格競争の世界に入っている。

    考えて見れば、太陽光や風力で発電するなら日本で行うより、明らかに他の国でやった方がはるかに良い。太陽光発電なら日照時間の長いタイや、砂漠などの未利用地が多いサウジアラビアなどが絶対的に有利である。風力発電も同様である。


    自然エネルギーによる発電が盛んとマスコミが言っているドイツは、太陽光発電、風力発電とも既に頭打ちになっている。太陽光発電はたった総発電量の2%で足踏み状態である。ドイツの太陽光パネルメーカのQセルズ社は、このため慢性的な赤字経営である。そこで家屋の屋根に設置する太陽光パネルは高く売れるというので、最近Qセルズ社は日本に進出してきた。しかし筆者は、Qセルズ社も中国メーカの低価格製品に苦戦すると思っている。

    ドイツの風力発電も頭打ちである。ドイツは風力発電大国というイメージがあるが、今一番伸びているは中国であり発電能力も中国がトップである(2位が米国で3位がドイツ)。2010年の伸び率は、中国が64.0%に対してドイツはたった5.8%(主要国の中で最低)である。


    太陽光にしても風力にしても、圧倒的に有利な条件を有しているにも拘らず、サウジアラビアが一番関心があるのは原発である。福島原発の事故にも拘らず、19基の原発の建設計画は変えないという。一方、「再生可能エネルギー」の開発によって原発はなくても良いといった間抜けなことを言っているのが、ドイツと日本、そしてイタリアである。揃って第二次世界大戦の負け組であり、何かこれらの国民には精神分析が必要と思われる。筆者に言わせれば、物事を客観的に見るのが苦手で、またデマに弱くノイローゼに陥りやすい国民性ということになる。


  • 安全性は大きな付加価値
    先週号で述べたように、日本が高い所得水準を維持して行くには、大きな付加価値を産む産業を拡大させる必要がある。今の日本が過去の遺産で比較的高い所得を得ているに過ぎないことが認識されていない。ましてや付加価値が大きい原発を止め、付加価値がほとんどないかあるいはマイナスの「再生可能エネルギー」による発電を推進しようというのだから、日本人もどうかしている。

    前段で述べたように、「再生可能エネルギー」による発電なんて先端技術ではなく、ローテクそのものである。だいたい中国製の太陽光パネルの変換率は日本の最新製にそれほど遜色がない。ましてや日本では買取った太陽光発電の電気は、ほとんどが捨てられている。


    それに対して、原子力発電は、今後の発展の余地は極めて大きい。もちろん安全性の追求という面は、今後、より重要となりこれが大事なポイントでもある。トルコは、同じ地震国である日本製の原発を導入しようとしている。福島の原発事故によって、日本製の原発の安全性がより高くなると考えているからである。それに対して、今後、より安全である新規の原発を日本には作らないと言っている日本の政治家達は、頭がおかしいと言わざるを得ない。

    つまり高くても安全だから日本製の原発を導入しようと言うのだから、安全性というものが大きな付加価値を生むことを意味する。たしかに安全性を追求するには困難が伴う。しかしこのような困難を克服して行くところが日本の特徴であり、また日本人が得意な分野である。時代遅れの技術である太陽光パネルを、力づくで並べて「これがエコだ」と言っている人々は、本当に間が抜けている。


    原発は総合的な技術で成立っている。それこそ発電設備から素材まで実に幅が広い。そして原発を開発すること自体が、これらの日本の技術を発展させることに結び付く。またこれによる技術の向上が他の日本製の製品の付加価値を大きくするのである。原発を止めるということは、このような技術進歩の機会を放棄することを意味する。

    実際、今回の福島の原発事故でも日本の先端技術がいくつも使われている。例えば水ガラスというものが汚染水の漏洩をみごとに止めた。今、汚染水の処理でもたついているが、これが克服されたなら汚染水処理技術は日本にとって貴重な技術になり得る。米国やフランスも遊びで福島に来ているわけではなく、これらの原発事故処理の技術を得ることが主たる目的と筆者は考える。


    原発はエネルギー活用の面で極めて発展の余地が大きい。まず原発は発電にエネルギーの30%しか使っていない。残りの70%のほとんどが排熱として捨てられている。排熱はせいぜい「うなぎ」の養殖に少し使われている程度である。この排熱の活用が一つの課題と考える。

    最も大きいのがプルトニウムの活用である。正直に言って高速増殖炉「もんじゅ」がもたついているので、プルトニウムに関して筆者も積極的な発言は控えてきた。しかしプルトニウムによる高速増殖炉は、将来の重要な開発目標と再び考えるようになった。


    筆者が、このように思い改めるようになった一つの理由は、フランスアレバ社の技術力というものに疑問を持つようになったからである。これまでフランスの核技術は隔絶して高いと思い込んでいる人が多かった。しかし筆者は、福島原発事故でのアレバ社の働きがそれほどでもないという印象を持っている。

    高速増殖炉開発で先頭を走っていたフランスが、フェニックスの事故で高速増殖炉開発を止めた。多くの日本人は、あの核技術力を持つフランスが断念した高速増殖炉を、日本人に開発できるわけがないと思ったものである。しかしアレバ社が関与する六ヶ所村の再処理工場の建設は、トラブル続きである。もちろんアレバ社だけの問題ではないと思うが、このように「絶対」と思われていたフランスアレバ社の技術力への信頼が揺らいでいるのは事実である。


    原子力発電所にしても高速増殖炉にしても、必要なものは総合的な技術力である。たしかに考えてみれば総合的な技術力という観点なら、明らかに日本の方がフランスより上であろう。筆者は、この総合的な技術力に劣るという理由で、フランスは高速増殖炉開発を断念したと考えるようになっている。

    もし高速増殖炉の開発に成功するとしたら(中国やインドが熱心に開発しているが)、今のところ日本ぐらいしか考えられないと思われるほどである。仮に日本がこれに成功すれば大きい。電気料金はかなり下がるであろうし、エネルギーの海外依存度は格段に下がる。ただ現行の熱媒体にナトリウムを使う方式はやはりハードルが高いと考える。実際、世界中の高速増殖炉開発では、ほとんどのトラブルがこのナトリウムのコントロールの失敗に起因している。



来週は今週の続きである。日本には、いまだに「プルトニウムは猛毒(一匙で100万人死ぬ)」と思い込んでいる大ばか者が多い。そしてこの大ばか者達によって政策が決定されるとすれば恐いことである。来週はこれについても述べる。



11/6/20(第666号)「付加価値と発電」
11/6/13(第665号)「ポスト原発はやはり原発」
11/6/6(第664号)「菅政権に対する不信任案騒動」
11/5/30(第663号)「ニューニューサンシャイン計画」
11/5/23(第662号)「原発と電力会社の経営」
11/5/16(第661号)「原発推進派と反・脱原発派」
11/5/2(第660号)「菅政権の迷走」
11/4/25(第659号)「放射線は身体に良い?」
11/4/18(第658号)「山を越えたか?」
11/4/11(第657号)「原子力の専門家」
11/4/4(第656号)「本当に重大な事は何か」
11/3/28(第655号)「電力不足で表沙汰になった事実」
11/3/21(第654号)「東日本巨大地震」
11/3/7(第653号)「日本が貿易立国という誤解」
11/2/28(第652号)「日本は本当に貿易立国?」
11/2/21(第651号)「関税以外の貿易障壁」
11/2/14(第650号)「TPPに関する推理」
11/2/7(第649号)「菅首相の消費税増税」
11/1/31(第648号)「モラルハザードの話」
11/1/24(第647号)「問題は分配ではない」
11/1/17(第646号)「永久債の日銀引受け」
11/1/10(第645号)「日本の経済成長シナリオ」
10/12/20(第644号)「難しい日本の経済成長」
10/12/13(第643号)「日本における新経済成長論」
10/12/6(第642号)「経済成長理論に対する批判」
10/11/29(第641号)「「ケインズはもう古い」?」
10/11/22(第640号)「不況下の反ケインズ政策」
10/11/15(第639号)「政治家に向かない職業」
10/11/8(第638号)「米政府に対するロビー活動」
10/11/1(第637号)「この日をつかめ(Seize the Day)」
10/10/25(第636号)「人民元安容認の経緯」
10/10/18(第635号)「本誌の中国経済の見方」
10/10/11(第634号)「「腹を括る」べき時」
10/10/4(第633号)「中国漁船の公務執行妨害」
10/9/20(第632号)「菅政権の行方」
10/9/13(第631号)「中央銀行の制度設計」
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10/8/30(第629号)「外為特会の31兆円の評価損」
10/8/23(第628号)「野田財務大臣を罷免せよ!」
10/8/9(第627号)「世界に広がるデフレ」
10/8/2(第626号)「米国もデフレ?」
10/7/26(第625号)「国債利払いの名目GDP比率」
10/7/19(第624号)「中国の日本国債購入」
10/7/12(第623号)「10年参議院選挙の結果」
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10/6/21(第620号)「菅首相の想定」
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10/5/24(第616号)「現実離れの構造改革派」
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10/4/26(第613号)「ガラパゴス症候群」
10/4/19(第612号)「マクロによる検証」
10/4/12(第611号)「ミクロで捉えた日本経済」
10/4/5(第610号)「何事もタイミング」
10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」
10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
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10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
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