経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




10/8/23(628号)
野田財務大臣を罷免せよ!

  • 止まらない円高傾向
    これまで本誌は為替変動を何度も取上げてきたが、今週も改めてこれについて述べる。日々の為替変動の要因は色々とあり、例えば金利変動や国際情勢まで実に幅広い。さらに投機マネーの動きもこれに加わり、為替変動の予想は難しくなっている。

    しかし為替の中長期のトレンドを決める一番の要素は経常収支と、長年、筆者は本誌で主張してきた。08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」では、将来1米ドルが40円になることも有りうると述べた。この中で、ここ1,2年のうちに1ドル90円が定着すれば、30年後にちょうど40円になるラインに乗ると指摘した。したがって今日の85円はこれを越えており、40円という円レートは決して非現実的とは言えない。


    ところが世間で取上げられる円高要因は短期的なものばかりである。したがって主張される為替対策もそれに応じたものである。例えばこれ以上の金融緩和に限界があるのに、日銀に一層の金融緩和を求めている。仮に日銀が何らかの政策を実施しても、効果は一時的である。

    また日米金利差が縮小していることが、一つの円高要因とされている。たしかに米国の長期国債が買われて、長期金利が低下している。この要因として日本の銀行が米国債を買っていることが指摘されている。

    ただし日本の銀行には、為替リスクを回避させるために外貨建資産の持ち高規制がある。したがって米国債という米ドル資産を増やす場合には、一方で米ドル建ての債務を増やす必要がある。つまり日本の銀行の米国債買い自体は為替相場に中立である(もし日本の銀行が円を持出して米国債を買っていたなら円安要因となる)。しかし米国債を買う(国債の値上がり期待で購入)ことによって米国の長期金利が低下し、これが円高要因の一つとなっている。


    さらに円の先高観が強く、投機筋の円買いポジションが膨らんでいる。たしかにいずれ反対売買がなされることを考えると、これは将来的に円安要因となる。ただそれがいつなのか不明である。

    政府や日銀の動きを睨み、投機マネーは動くことになる。もし今週出される政府・日銀の対策が「しょぼい」ものなら、仮に一時的に円安となっても、再び円高局面に戻ることが十分考えられる。世界中で自国通貨の切下げ競争が既に始まっていることを認識すべきである。


    筆者は、これらの短期的な要因ではなく、経常収支の大きな黒字という中長期の円高要因が問題にされないことを不思議に思っている。したがって目先の短期的な対策を打っても、そのうち必ず円高に向かうことになる。為替が変動相場制になってからの長期的な動きを見れば、これは明らかである。

    ところが日本の貿易収支が黒字なのに「世界に原発や新幹線を売り込め」とか「日本企業はグローバル化に遅れた。これから反転攻勢が必要」と言ったトンチンカンな外需依存推進の論調が広がっている。個々の企業にとってはそれが必要かもしれないが、民間がその方向に走れば、それ以上に政府は内需を増やす必要がある。内需が増えない限り、この円高傾向は止まらない。

    円の360円時代から今日の85円まで、日本は円高の対応に追われてきた。しかしこれによって国民はかなり疲れ切っている。何故、日本の政治は外需依存の経済からの脱却を考えないのであろうか。


  • 中国の戦略
    為替に関して気になることを二点取上げる。一つは10/7/19(第624号)「中国の日本国債購入」で取上げた事である。6月の中国の日本国債の買越し額は4,564億円と5月の7,352億円に比べ少し減ったが依然高い水準である。これで1月からの合計は1兆7,326億円の買越しになった。

    ところが中国の日本国債の購入を「短期国債が中心であり、一時的な運用」と言った楽観論がある。また金額的に小さくまだ問題ではないと言った意見もある。しかし筆者はこれが新たな中長期の円高要因になると警戒する。


    中国は、ユーロ資産や米国債を減らし、日本や韓国などのアジア諸国の国債の購入を増やしている。米国債を売っていることについて、以前、「米国の財政赤字が増えているから」と言った間抜けな解説があった。しかし中国の資金シフトはもっと戦略的である。人民元安をやかましく批難し始めた米国を意識しているのである。

    米国債を売っただけなら人民元高になり中国製品の競争力が落ちる。そこで中国はこの売却代金を日本を始めとしたアジア諸国にシフトしているのだ。日本は、小泉政権当時の03年から04年の1年余りの間に35兆円の為替介入を行っている。たしかにこれに比べれば、今のところ中国の日本国債買越し額は小さい。しかし4月あたりから急増していることに注目すべきである。

    ところが日本国内では、中国の日本国債の購入はほとんど話題にもなっていない。4〜6月の買越しペースは月間で5,000億円程度である。しかしこれによる円高圧力を貿易黒字の減少によって打消すには、年間6兆円の輸出を減らすことが必要になる。


    中国の日本国債の購入に対して、日本政府の反応がはっきりしなかった。ところが10/7/26(第625号)「国債利払いの名目GDP比率」の冒頭で述べたように、どうも野田財務大臣は歓迎の意向という話がある。日本国債の保有者の多様化という点で望ましいということらしい。しかしこれはネット上だけの情報であり、多少信憑性に欠ける。ただ筆者は、これまでの経緯を考えこれは有りうる話と見ている。しかもそれが中国だけに伝わっている可能性がある。

    もし本当に野田財務大臣がそのような発言を行っていたとしたなら重大問題である。中国に対して完全に間違ったメッセージを送ったことになる。筆者は野田財務大臣は罷免されてしかるべき発言を行ったとまで考える。

    それにしても中国の日本国債購入に関する情報が遅すぎる。ようやく6月のデータが公開されているのが現状である。7月、8月の状況が全く分らない。もし日本政府が直近の情報を掴んでいないのなら、これも問題である。


    もう一つ筆者が気になるのは外為特会の謎である。詳しくは来週取上げる。それにしても本誌が以前から指摘しているように、日本では何十兆円単位の事柄は政治家ではなく官僚が主導している。一方、政治家は、事業仕分けや天下り根絶と言ったどうでも良いチマチマしたことに一生懸命になっている。その間に国民はどんどん不幸になっているのである。



来週は本文で述べたように「外為特会の謎」を取上げる。



10/8/9(第627号)「世界に広がるデフレ」
10/8/2(第626号)「米国もデフレ?」
10/7/26(第625号)「国債利払いの名目GDP比率」
10/7/19(第624号)「中国の日本国債購入」
10/7/12(第623号)「10年参議院選挙の結果」
10/7/5(第622号)「サミットの変質」
10/6/28(第621号)「各党のデフレ対策」
10/6/21(第620号)「菅首相の想定」
10/6/14(第619号)「EU市場混乱の本質」
10/6/7(第618号)「EU経済の混乱とIMF」
10/5/31(第617号)「議論の前提条件」
10/5/24(第616号)「現実離れの構造改革派」
10/5/17(第615号)「これも一歩前進か」
10/5/10(第614号)「一歩前進か」
10/4/26(第613号)「ガラパゴス症候群証」
10/4/19(第612号)「マクロによる検証」
10/4/12(第611号)「ミクロで捉えた日本経済」
10/4/5(第610号)「何事もタイミング」
10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」
10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
10/3/15(第607号)「政策提言(前半)」
10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」
10/3/1(第605号)「政治ができる事」
10/2/22(第604号)「積極財政への雑音」
10/2/15(第603号)「経済と金融の間の緊張関係」
10/2/8(第602号)「第二回目キャンペーン」
10/2/1(第601号)「第一回目キャンペーン」
10/1/25(第600号)「日本の財政構造」
10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
10/1/11(第598号)「10年今年の景気」
09/12/21(第597号)「今年を振返って」
09/12/7(第596号)「事業仕分けの顛末」
09/11/30(第595号)「ヘッジファンドの広報担当」
09/11/23(第594号)「素朴な疑問」
09/11/16(第593号)「民主党と官僚」
09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08年のバックナンバー

07年のバックナンバー

06年のバックナンバー

05年のバックナンバー

04年のバックナンバー

03年のバックナンバー

02年のバックナンバー

01年のバックナンバー

00年のバックナンバー

99年のバックナンバー

98年のバックナンバー

97年のバックナンバー