経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




10/6/28(621号)
各党のデフレ対策

  • 寄せ集めの政党
    参議院選を控え、今週から各党の政策についてコメントする。ただその前に少し日本の政党政治について述べる。筆者は日本人が政党政治というものに本当に馴染んでいるのか疑問に思っている。鳩山首相と小沢幹事長が辞める直前の民主党政権の支持率は20%まで下がっていた。ところが両者が退陣し、菅政権に交代したとたんに支持率は40%もハネ上がった。

    また内閣支持率だけでなく、民主党の支持率も急上昇した。しかし鳩山、小沢両氏がどれだけ不評であっても、こんなに支持率が激変するのは異常な現象である。これはどうしても民主党でなければならないという人が多くないからである。せいぜい自民党がいやだから民主党を支持するといった程度の人が多いのであろう。


    どうしてもこの党でなければと思っているのは、公明党と共産党の支持者くらいのものである。自民党支持者も怪しくなっている。冷戦時代おいては、自民党はイデオロギー政党という面があり、根強い支持者がいた。しかし冷戦時代が終わって、この面での自民党の存在意義は薄まった。

    またこれまで自民党は政権党という理由で支持を集めていた。しかし少なくとも当分の間、自民党が政権に復権することはないと人々は見ている。これが有権者の自民党離れを加速させている。さらに自民党は、二世、三世議員が増え、政党としての活力と魅力が失われている。


    このように自民党だけでなく他の政党も存在意義が薄くなっている。特に日本の政党には、欧州の政党にあるような階級的な名残がなく、また米国の政党のような宗教観の対立もない。このような日本では、政党が考えの異なる人々の寄せ集めになりがちである。これを反映してか日本の有権者の方も、流動化し、政党離れを起している。

    ところが日本の政治制度は、政党の存在を前提に改正されてきた。小選挙区制導入や政党交付金も政党政治を強く意識したものである。しかしこれが様々な矛盾を引き起している。流行りの選挙用マニフェストもその一つである。


    さて筆者は、政府が関わるべきことは防衛や年金・医療など国家の基本的なこと、そして最も重要なことはマクロ経済における需給調整と考える。反対に個人の生活は各々が考え、企業経営は民間が主体的に考えるべきであり、政府がこれらに深く立入ることは避けるべきと思っている。ところが今日の日本は、生活保護世帯の増加などに見られるようにおかしな方向に進んでいる。

    今日の日本経済は明らかに需要不足なのだから大きな財政支出を必要としている。政府が第一にやるべき事は、日本の需給ギャップの調整である。名目GDPが年々縮小しているようでは、個人の生活も企業の経営もジリ貧である。以上の観点から各党のマニフェストを眺めてみようと思う。


  • 100兆円の無利子国債
    一部の小政党を除き、日本の政党には異なる信条や考えの者が集まっている。そのような矛盾を抱えながらマニフェストを創っているのである。したがってマニフェストには政党内で誰も反対しないものが載せられる。

    この結果、どの党のマニフェストにも世間受けする似かよったものが並ぶ。筆者は、政府紙幣発行といったような、思い切った政策を掲げるところか一つくらいあっても良いと考える。しかしこのような世間に認知されていない政策は避けられる。


    前段で述べたように筆者が一番関心があるのは、マクロ経済政策、つまりデフレ対策である。たしかにどの党も3〜4%の名目成長率を掲げている。ところが国民新党を除き、どの党もそれだけの経済成長を実現させる具体策が全くない。

    各党は成長戦略によって3〜4%の名目成長率を実現と言っているが、よく聞いてみると、それは名目成長率ではなく潜在成長率の話である。潜在成長率を大きくする政策を並べておきながら、これで名目成長率が大きくなると誤魔化しているのである。有権者は簡単に騙せるとなめきっているのであろう。


    唯一のデフレ対策と呼べるのは、国民新党の100兆円の無利子国債の発行だけである。これは相続税を免除する代わりに無利子の国債を購入してもらうというものである。しかしこれには金持優遇という批難がつきまとう。

    筆者は、無利子国債を発行するなら、これを日銀が購入すれば良いと考える。利付き国債であっても、日銀が購入分の国債については利息が最終的に国庫に戻ってくるのだから、金利をゼロにしても同じことである。しかしこれには日銀の独立性を脅かすという批難が必ず出てくると思われる。


    菅民主党に同額の増税と財政支出という構想がある。これによって経済成長が可能というのである。しかしこれについては先週号で検証したように、決して大きな需要と所得の増加は望めない。

    この政策の特徴は国費を使って直接雇用を増やそうというものである。対象は介護や医療など今後需要が増えると思われる分野である。ところでこれらの分野にはなかなか人が集まらないのが実情である。


    筆者は、菅構想はこれらの分野で準公務員的なものを増やそうしているのだと理解している。公務員には予備校ができるほど希望者がいるのに、介護や医療などの現場には人が集まらない。筆者に言わせれば両者で待遇が大きく異なるからである。その意味では、この分野で準公務員的なものを増やし、待遇を引上げることは悪い政策ではない。

    先進国の中で、日本の公務員の数は決して多くはない。しかし公務員を減らすと言えばマスコミと世間に受ける。このような日本の空気の中で、増税してまで準公務員を増やすとは言えないのであろう。大体、消費税増税を実現すると言っても最低でも3年はかかる。3年先なんて誰が首相の座にいるかも分らない。そもそもこれは決してデフレ対策とは呼べないものである。今日、本当にデフレ対策を兼ねて行うのなら、国債を発行すれば良いのである。



来週は各党の個別の政策の中で筆者が注目したものを取上げる。



10/6/21(第620号)「菅首相の想定」
10/6/14(第619号)「EU市場混乱の本質」
10/6/7(第618号)「EU経済の混乱とIMF」
10/5/31(第617号)「議論の前提条件」
10/5/24(第616号)「現実離れの構造改革派」
10/5/17(第615号)「これも一歩前進か」
10/5/10(第614号)「一歩前進か」
10/4/26(第613号)「ガラパゴス症候群証」
10/4/19(第612号)「マクロによる検証」
10/4/12(第611号)「ミクロで捉えた日本経済」
10/4/5(第610号)「何事もタイミング」
10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」
10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
10/3/15(第607号)「政策提言(前半)」
10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」
10/3/1(第605号)「政治ができる事」
10/2/22(第604号)「積極財政への雑音」
10/2/15(第603号)「経済と金融の間の緊張関係」
10/2/8(第602号)「第二回目キャンペーン」
10/2/1(第601号)「第一回目キャンペーン」
10/1/25(第600号)「日本の財政構造」
10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
10/1/11(第598号)「10年今年の景気」
09/12/21(第597号)「今年を振返って」
09/12/7(第596号)「事業仕分けの顛末」
09/11/30(第595号)「ヘッジファンドの広報担当」
09/11/23(第594号)「素朴な疑問」
09/11/16(第593号)「民主党と官僚」
09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08年のバックナンバー

07年のバックナンバー

06年のバックナンバー

05年のバックナンバー

04年のバックナンバー

03年のバックナンバー

02年のバックナンバー

01年のバックナンバー

00年のバックナンバー

99年のバックナンバー

98年のバックナンバー

97年のバックナンバー