経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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10/4/5(610号)
何事もタイミング

  • 郵政改革案の行方
    先週まで、本誌は政策提言を行ってきた。ただタイミングによって、この種の提言は興味を持たれるかどうかが変わってくる。今週は何事もタイミングが大切ということを述べる。09/12/21(第597号)「今年を振返って」で述べたように、筆者は、2月に公表される09年10〜12月のGDPの数値がかなり悪いのではないかと予想し、今回の政策提言を策定したつもりである。

    ところが速報のGDP成長率の実質値は年率で4.6%と比較的高く出た。もっとも確定値では予想通り年率3.8%と下方修正されている。また名目値は、速報で年率0.9%のプラス、確定値ではゼロ成長であった。名目のGDP成長率を見る限り、決して経済が好調になっているわけではない。しかし筆者が想定していたような最悪のケースは回避された見通しである。また輸出が持直しており、10年の1〜3月もそれほど落込まないと予想されている。


    GDPの水準はかなり低くなっているが(特に名目GDPは470兆円台という異常事態)、世間の日本経済に対する危機感というものが薄くなっている。マスコミや政治家の関心は、日本の経済から、他のところに行ってしまった。このようなことから筆者は、当分の間、日本では本格的なデフレ対策は採られないと思っている。

    内需の不振は続くが、円安傾向もあり、今後も輸出はある程度伸びると思われる。したがってせっかく衆参のねじれ現象が解消したのに、民主党連立政権では思い切ったデフレ対策は行われないと考える。まさに自民党政権下と同じパターンが続くと見ている。したがって雇用情勢の良化も見込めない(最近、完全失業率の低下が少しみられるが、経済環境が良くなったというより、政権交代によってハロワークの職員のけつが叩かれているからである)。どうも今回の政策提言のタイミングは良くなかったと感じる。


    与党の郵政改革案が急に話題として浮上している。マスコミに登場する亀井郵政担当大臣は、周りから袋叩きになった。モラトリアム法案や日本郵政の社長人事の時と全く同じ図式である。しかしマスコミの予想に反して、さして揉めることもなく原案がほぼ修正なく通った。これは本誌が先週号で予想した通りである。

    しかし日頃、郵政に全く興味がないはずのマスコミが急に騒ぎ出したので、筆者も驚いた。例のごとく「官業による民業の圧迫」という陳腐なセリフで責めている。また郵政に金が集まっても、国債の購入に回るだけであり、民間に資金が回らず、また財政の赤字が増えると筋違いの批難を行っている。


    民間に資金需要がないのは、経済状態が悪いからであり、決して郵貯や簡保に資金が集まっているからではない。これを反映し、銀行はせっせと国債を買っている。今日、この額は120兆円を越えている。もし日本のマスコミ人が、銀行の預貸率を知っていたなら、このようなばかげた事は言わないはずである。

    仮に民間から郵貯・簡保に資金が多少移動しても、民間への貸出しへの影響は考えられない。郵貯・簡保の枠の増加で注目されるのは、家に眠っている現金の動きである。日本の家の金庫に眠っている日銀券は30兆円を越えていると推定される。この一部が郵貯・簡保に移る可能性がある。


    郵貯・簡保の枠の増加の第一の目的は、非正規社員の正規化などの経費増を賄うことである。ところで今回の騒動で郵便局内が常にカメラで監視され、定期的にこのフィルムがチェックされていることが知られた。分社化推進のため、担当者が他の業務をしないよう牽制するためである。

    このように今の郵便局は刑務所より厳しい監視の下に置かれていたのである。頭がおかしい構造改革派のやりそうなことである。05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」で指摘したように、本誌は構造改革派に席巻されたアルゼンチンが、厳しい監視・管理社会になった話をした。同じことが日本郵政でも起っていたのである。ところがテレビなどのマスコミは、このような異常な状況をこれまで全く取上げたこがない。亀井大臣がテレビでこれに言及すると巧みに話題を変えていた。


  • 普天間基地のメガフロート化
    郵政改革案がすんなり通りそうなのも、民主党連立政権が他に大きな難問をいくつも抱えていたことが幸いしたからとも言える。郵政改革という新たな懸案事項を抱え込みたくないという雰囲気があった。その意味で郵政改革案は、まさに良いタイミングで提出されたと筆者は思っている。


    今、民主連立政権が抱える最大の案件と言えるのが、普天間基地の移転問題である。本誌は先週の最後に、普天間基地の代替施設としてメガフロートの基地建設を提案した。さっそく沖縄の読者の方からこれについてメールをいただいた。

    やはり地元の方だけあって、これまでの移転計画の変遷について詳しい説明があった。だいたい辺野古沖の案についても、当初は将来撤去可能な基地、つまりメガフロートのようなものを想定したというお話である。これは沖縄の人々にもギリギリ妥協が可能な線であった。


    ところがこれに対して建設業者が、これでは工事に伴って落ちる金が少なすぎると反対した。この結果、埋め立て案が浮上してきたというのである。どうもこの辺りが混乱のスタートと筆者も感じる。筆者は、沖縄への公共事業や経済の振興は別次元として進めるべきと考える。

    また公共事業が埋め立てしかないというのも地元への脅しである。政権交代したのだから基地建設とは別の公共事業を考えるべきである。それにしてもこれまでの経緯を知っているはずのマスコミが、メガフロート案(将来、撤去可能という案の一つとして)というものがあったことに全く触れないのは不思議なことである。


    これまでのメガフロート自体は鉄の箱である。技術的に決して難しいものではなくローテクの一つである。したがって埋め立て案が有力になるにつれ、メガフロートのメーカ(造船会社)も、興味を失って今日に到っている。そこで本誌が可動式のメガフロートを提案したのである。


    またメガフロートの素材についても研究する余地があるのではないかと考える。過去、メガフロートが検討された時は、鉄が今日よりずっと安かった時代である。しかし今日、鉄はかなり高くなっている。これは鉄鉱石や石炭がバカ高くなっているからである。特に鉄鉱石は世界的にたった3社で独占されている。これによって鉄鉱石は考えられないほど高騰している。今後もかなりのペースで価格が上昇する可能性がある。

    このような状況においては、日本は鉄の代替物を開発すべきと考える。鉄でなくとも構わないところには他の素材の使用を考えるべきである。例えばガードレールなんかは、防腐処理した木材(間伐材や竹など)を使うことが考えられる。メガフロートも鉄でなくても結構である。木でも軽石でも、とにかく水に浮くものならなんでも良い。またこのような新素材を開発する事は日本が最も得意なところである。


    普天間基地の移転がうまく行けば、嘉手納基地のメガフロート化も可能である。そうなれば沖縄にメガフロートの工場を建設することも現実的な話になる。またメガフロートは空港建設以外にも、大都市圏の緊急避難場所などに使える。

    仮に基地の移転が実現すれば、基地の跡地の再開発という公共事業が必要になってくる。また米軍が基地自体を撤去する際は、基地ごとどこにでも移動させることができる。メールをくださった沖縄の読者の方は、ご自身のプログにメガフロート化案を掲載し、読者の反応をみたいということであった。またこの案が軍事的合理性があるのか、軍事評論家にも聞いてみるというお話である。



来週は、日本の産業が本当に衰退するのかについて述べる。



10/3/29(第609号)「政策提言の想定問答」
10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
10/3/15(第607号)「政策提言(前半)」
10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」
10/3/1(第605号)「政治ができる事」
10/2/22(第604号)「積極財政への雑音」
10/2/15(第603号)「経済と金融の間の緊張関係」
10/2/8(第602号)「第二回目キャンペーン」
10/2/1(第601号)「第一回目キャンペーン」
10/1/25(第600号)「日本の財政構造」
10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
10/1/11(第598号)「10年今年の景気」
09/12/21(第597号)「今年を振返って」
09/12/7(第596号)「事業仕分けの顛末」
09/11/30(第595号)「ヘッジファンドの広報担当」
09/11/23(第594号)「素朴な疑問」
09/11/16(第593号)「民主党と官僚」
09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
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