経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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10/3/29(609号)
政策提言の想定問答

  • Q&A
    先々週、先週と本誌の政策提言を掲載した。もちろん筆者は、提言がただちに人々に理解され、賛同を得られるとは考えない。また提言に対する反論や疑問もあると思う。そこで今週はこれに対応する想定問答を示す。


    Q1:公的年金の徴収額を減額すると言っても、将来の年金給付が心配です

    A:今回は、一年間の時限措置であり、給付額の計算に影響させません。また年金改革の検討を早くスタートさせ、将来の年金制度の姿を示すことによって人々の将来不安を払拭させます。

    Q2:徴収額の減額分が将来の増税額を大きくするのでは

    A:15兆円の徴収額の減額によって、景気が良くなり、必ず税収が増えます。この一部を積立金に繰り入れることを考えます。この措置によって積立金の減少額は最小限に抑えることができます。

    Q3:年金積立金を取崩した場合、運用している債券や株式を売ることになり、債券価格や株価が暴落するのでは

    A:年金の運用資産を担保にした債券を発行し、これを市中で売却したり日銀に買ってもらいます。実際の資産売却は少しずつ行うので、市場に影響はほとんどないと考えます。特に運用の資産の過半を占める国債は、満期まで保有することによって損失の回避ができます。

    Q4:長期金利が上がるのでは

    A:景気が良くなり、民間の資金需要が増えることに伴って長期金利が上昇することが考えられます。しかしこれは決して不自然ではなく、むしろこれまでが異常な低金利だったのです。

    ただし年金の国債の買入れが少なくなることによって、長期金利が上昇しやすくなるのも事実です。しかし、一方、税収が増えることによって新規の国債の発行の方も減額ができ、これによって長期金利の上昇を抑えることが可能です。おそらく長期金利の動きは両者の綱引きになるでしょう。

    Q5:しかし長期金利の動きが不安定になる可能性がありますね

    A:長期金利の動きには様々な要素がからんでいます。ご指摘のように経済に悪影響を与える程度の長期金利の急上昇も有りえます。
    その場合我々としては、日銀に低金利政策の継続を希望すると同時に、長期金利が異常な上昇を示した時には国債の買い切りオペ額の増額を期待することになります。

    Q6:為替も変動しそうですね

    A:公的年金の徴収額を減額すれば、国民の可処分所得が増え消費も増えます。この内需拡大政策によって輸出が減り輸入が増えます。つまりこの政策は円安要因になります。

    しかしこれは長期的に見た場合の話であり、短期的には日本の景気が良くなるということで、外国から投機資金が流入してくることも考えられます。つまり資金の流入額によっては逆に円高になる可能性があります。もし日本経済にダメージになるほどの円高になる場合には、政府・日銀の為替介入も考えられます。

    Q7:年金改革によって、将来、ものすごく消費税が上がると聞きますが

    A:一定の年金給付額を将来にわたり確保するには、国費の投入、つまり増税が必要となるでしょう。これをどのような税で行うかについては、年金改革の議論の中で検討されます。増税の候補は消費税と所得税ですが、それぞれ一長一短があります。

    しかし増税を実施するにも経済状態が深く関わってきます。もし経済状態が良くなって税収がどんどん上がる状況なら、増税時期を遅らせたり、また増税額を圧縮できます。つまり年金改革議論とマクロ経済対策とは無縁では有りえません。
    マクロ経済の事を考えるなら、増税より年金積立金の取崩しを先行させるべきと考えます。一つの提案は、増税が決まっても年金積立金が100兆円までに減少しない間は、増税を実施しないというものです。


  • 積立金取崩は既定路線
    実のところこれまで示してきた政策提言は、昨年の暮れに仲間内に示し、他の人にも少し説明したものである。前段の想定問答もその一部である。しかし公的年金の積立金を取崩すことに対する人々の抵抗は想像以上に大きかった。

    膨大な年金積立金自体が日本経済の慢性的なデフレの大きな要因になっていると説明しても、積立金を取崩すということに心理的な反発があるようだ。特に比較的高額な年金を受給することを予定している人々は、既得権を脅かされると感じるのであろう。


    しかし先週示した参考資料の中で説明したように、2004年の年金改定で膨大な年金積立金を取崩すことは既に決定していることである。「永久均衡方式から有限均衡方式(積立金は2100年までに一年分に減らす)への変更」の話である。ところがこのことが世間で全く認識されていない。

    長い間、厚生官僚は膨大な年金積立金を一円も取崩すつもりはなかった。むしろ人々の将来に対する不安を煽って積立金を増やしてきた。膨大な積立金をあたかも厚生官僚は自分達の「財産」と勘違いしているようなものである。それが日本経済のデフレを助長しようと、全くお構い無しであった。酷い話では、政府が景気対策で減税を実施したタイミングで、年金の保険料を上げたこともあった。

    本誌は、日本の官僚機構が、自分の官庁の庭先だけきれにしておけば良いと考え勝ちと指摘してきた。まさに昔の厚生省はこの典型であった。この結果、年金積立金は世界に類を見ない大規模なものになった。


    この厚生官僚がとうとう折れて年金積立金の取崩しに同意したのが、2004年の年金改定であった。これは画期的なことである。ところがばかな日本のマスコミはこのことを全く取上げなかった。マスコミが騒いだのは、「政治家の国民年金の未納問題」「年金記録のミス」「ゴルフボール購入やグリーピア建設などへの保険料の流用」など、年金問題の本質と全くかけ離れたものばかりであった。

    本誌の提言は「90年かかって一年分に減らす」というものを、もっと早く短期間のうちに実施すると捉えてもらっても良い。年金財政がデフレ要因にならないためには、集めた年金保険料と財政負担分を即座に年金給付として使うことである。つまり積立金という資金の澱みを最小限にするのである。したがって積み上がった積立金を優先的に取崩すことは当り前である。ただこれには早期の公的年金制度の改定が必要となる。


    本誌の政策提言のようなものは賛否が別れる。少なくともこれまでは衆参のねじれによって実現が不可能な政策であった。仮に与党が提案しても野党が必ず反対し、この種の法案は通らなかったと思われる。しかし昨年の政権交代によって、このような難しい政策も実現する可能性が出てきたのである。



来週は、難しい法案が成立するにはタイミングが必要であることを取り上げる。今、民主党は混乱している。そのタイミングで郵政改革法案が出てきた。これまでの経緯では絶対に通らない内容である。しかし案外今のタイミングなら、ほとんど法案の修正なしで通る可能性があるような気がする。

昨年末、普天間基地の移転について仲間内で話をしたことがある。筆者は、普天間沖にメガフロートの基地を作ってはと提案した。またその海上基地はタグボートを使って移動が可能というものである。いわゆる「ひょっこりひょうたん島」のようなものである。メンバーの一人がそれについて色々と調べてくれた。なんと移動性を別に、メガフロート案は過去に検討されたことがあったという。しかも米側にもこれに乗り気の人々がいた。またこれが可能なら、他の基地の整理統合もできるという話である。さらに日本のメーカはメガフロートを使った飛行機の離発着の実験も行っている。

この案が潰れるあたって、海を埋め立てるのに比べ公共工事が小さくなることが難点になっていたという話がある。たしかに本州の造船工場でメガフロートを製作し、沖縄に送れば基地は完成する。地元で行う公共工事は桟橋の建設くらいしかない。しかしもしそれがネックなら、海を埋め立てるのと同程度の額の別の公共事業を沖縄で行うことにしたら良いのである。またメガフロートの製造工場を沖縄に作っても良い。

さらにタグボートで曳航が可能なら、訓練時は常に沖合いに出ておれば良い。沖縄本島から遠く離れて訓練すれば、県外移設という条件にもギリギリかなうと思われる。



10/3/22(第608号)「政策提言(後半)」
10/3/15(第607号)「政策提言(前半)」
10/3/8(第606号)「税収と名目GDPの関係」
10/3/1(第605号)「政治ができる事」
10/2/22(第604号)「積極財政への雑音」
10/2/15(第603号)「経済と金融の間の緊張関係」
10/2/8(第602号)「第二回目キャンペーン」
10/2/1(第601号)「第一回目キャンペーン」
10/1/25(第600号)「日本の財政構造」
10/1/18(第599号)「財政非常事態宣言」
10/1/11(第598号)「10年今年の景気」
09/12/21(第597号)「今年を振返って」
09/12/7(第596号)「事業仕分けの顛末」
09/11/30(第595号)「ヘッジファンドの広報担当」
09/11/23(第594号)「素朴な疑問」
09/11/16(第593号)「民主党と官僚」
09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
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09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
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09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
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