平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


毎週、経済などをテーマに独特の切り口で論評。最新号はトップページ。

97/3/10(第6号)
オリンピックと景気を考える
  • 当マガジンもう一ヵ月半を過ぎ、少しずつであるが、アクセス数も着実に増えてきている。テ-マがテ-マであるだけに、そんなに多くのアクセスを期待することは無理であるが、いっそう内容の充実を図って行きたい。現在のところ「NTTの新着」にしか載せていないが、今後は他のサイトにもリンクしてもらうことを考えている。(リンクはまったくフリ-ですので、ご自由に張って下さい。)

  • 絶好調と伝えられている米国の経済の実態と、これも活況を呈している株式市場が本当に大丈夫なのか分析してみたい。
    ところで筆者は、以前から、オリンピックを主催した国の経済が翌年スランプに陥るケ-スがよくあると考えている。日本も「東京オリンピック」の翌年は不景気で、「山一証券の経営危機」などもあった。韓国も「ソウルオリンピック」の翌年は調子が良くなかった。スペインにいたっては「バルセロナオリンピック」後の不景気から今だに回復できないでいる。
    このような景気後退の原因の一つは、オリンピックに係わる特別の需要がなくなることと、オリンピックを成し遂げたと言う達成感とそれに伴う精神的な「燃え尽き現象」で一部は説明できる。それに加え、オリンピックの年には「米国の大統領選挙」が行われることである。大統領選挙では景気が悪く失業者が多いと現政権が不利であると言われる。そのため経済政策は選挙の年に向け拡張的な政策が採られがちである。それが世界の経済にとって良い影響を与えるのである。しかしオリンピックの翌年にはこの反動で不況になるのである。
    去年はその米国でオリンピックがあった。はたして米国はこのジンクスを破ることができるか。(オリンピックなんて米国にとって影響小さいという意見は聞こえそうだが)

  • 現在の米国の景気を支えている要因としてよく言われるものは、次の三点である。
    1. リストラによる企業の収益力アップ
    2. インタ-ネットに代表されるマルチメディアの関連(ハイテク)企業が好調
    3. 株式市場の好調さと不動産価格上昇によるいわゆる「資産効果」
    では順番にこれらの景気を支えていると言う要因について検証してみよう。

  • 米国におけるリストラとは、端的に言えば不採算部門の切り捨て(場合によっては売却)である。リストラを行った企業の収益は当然アップするが、その分職を失う者がいるわけであるから、国民経済的にはほぼ中立であろう。失業率が低くなっているとの指摘がありそうだが、雇用が増えている部門は概して給料が安い小売業などである。例えるなら「中間管理職が失業し、ウォルマ-トに再雇用された」ようなものである。(もっともこのような就業者の移動が起きにくいヨ-ロッパはもっと深刻であるが)
    次にマルチメディア関連に代表されるハイテク部門であるが、少なくとも昨年までは絶好調であったことは筆者も認める。ただ、マスコミなどがよく喧伝するように「マルチメディアから派生する新産業、いわゆるベンチャ-企業にどんどん資本が集まり、これらの活動が今の好景気をささえている。つまり規制緩和やリストラで失業者が発生してもこれらの部門にうまく吸収されている。」という話は本当であろうか。
    96年のベンチャ- キャピタル(VC)投資の総額は95億ドルであり、さらにこの額も頭打ちである。この額がどれほど大きいのか検討してみよう。ちょっと話は変わるが、世界の犯罪組織が各種の犯罪行為で稼ぐ「犯罪総生産」が昨年1兆ドルに達し、米国の生産額は約5,000億ドルで世界の50%を占めているそうである。それに比べても、「VC投資の95億ドル」と言うものがいかに小さなものか、ご理解できると思われる。遠い将来は知らないが、これが今日の米国経済を支えているとはとても考えられないのである。
    たしかにインタ-ネットに関連したブ-ムはあるが、この本質は、単純にパソコン・サ-バ-、そしてそれに付随したソフトが大いに売れたことではないか。しかしパソコンの売れ行きも数量的には、米国内ではそろそろ頭打ちである。さらに1,000ドルパソコンの登場やサ-バのダウンサイジングなどにより、今後は金額の伸びもそう期待できまい。

  • 最後に株式市場である。まずこの市場に流入している資金の元を考えみよう。大体の資金の流入元は次の通りである。
    1. 米銀行の預金からのシフト(元々アメリカの銀行は信用が低いため、信用不安から株式に資金が移動した。これが今回の長い期間続いている株高の始まりであった 。)
    2. 海外からの投資(最近までの円安が示す通り、日本から米国の資金の流出はかなり大きいが、米国債の購入額はそんなに大きくないことから、株式市場にかなり流入していると想像される。もちろん外国の投資家が日本で資金を調達し、投資している場合もあろう。)
    3. 自社株式の手元流動性による償却(リストラによる収益増や事業の好調さを反映し、手元流動性が潤沢である。ただし筆者は、債券で運用すれば6~7%の収益が期待される資金で利回り2%の自社株を償却するのはちょっとおかしな行為とおもわれる。これは機関投資家の要請によるものらしいが、一種の株価操作ではないかと考えている。)
    ではこのまま株ははたして上がり続けるのだろうか。現在配当利回りは2%を下回り過去最低となっている。株価収益率(PER)からはまだ上がる余地があると言うアナリストもいるが、これは企業のさらなるリストラと好景気が持続されることが前提であろう。前段で指摘したように、リストラによる収益の改善が国民経済的には中立で、ハイテク関連も今年は頭打ちとなれば、残るのは「資産効果による所得増」である。つまりこれからは株式や不動産が上がり続けることが株式の上昇の条件である。
    そこで注目されるのは「物価の動向」と「ジャパンマネ-の動向」(最近は日本だけでなく中国などからの流入もあり、アジアマネ-と考えるべきと言う意見があるが、日本はこれらのアジアに融資残高を持っているのだから、これらは実質的にジャパンマネ-と考えても良いのではないか)である。つまり「円安・ドル高」が続けば、日本からの資金が流入し、輸入品の価格が安いままで、米国はハッピ-な状態が続くのである。しかし不安材料は「株式市場の崩壊」と「円安による日本からの輸入の急増」である。「円高傾向が株式市場を崩壊させるのか」それとも「株式市場の崩壊が円高傾向のひきがね」になるのかわからないが、いずれにしても、これからは、「為替が円高に向かうことがはっきりする」時点がいつなのかが注目される。(先週号を参照してください)

  • 米国の経済指標を見ても、ダウ平均株価を除けば、際立って良い数字はないのである。GDPの伸び率は、96年10~12月が年率3.9%(日本の同期間は3.8%でほぼ同じ)、97年の見通しが2.00~2.25%(日本の予想は2%前後でありこれもほぼ同じ)である。貿易赤字も依然増え続けている(海外拠点の業績は好調らしいが)。他で目につく数字は、住宅着工数と通貨供給量(M2)の増加である。しかしこれは、米経済がすでに「バブルの状態」であることを示しているのではないだろうか。むしろ筆者は、米国の景気が「いわゆるバブルに入りつつある」と言うより「すでにバブルにドップリつかっている」と考えている。そのためかジャククボンドも高騰している。
    つまり米国経済は「好況」はあるが「それほど好況」ではないと筆者は考えている。それを反映してか、いまだに年間の自己破産者数は100万人で、人口比で見れば日本の10倍もある。

  • 「円安による日本からの輸入急増懸念」への米政府の対応が注目される。本来なら「円高による解決」を考えるべきところだが、「内需の拡大」の要求だけで、「為替」には何も触れない(先週のサマ-ズ米財務副長官)。先週号で指摘したが、米政府の考えがはっきりしない。はっきりしないと言うより、「ドル安・円高」への決断が、資金の日本への逆流を招き、「米金融市場の崩壊」につながる危険性を意味し、難しいからであろう。特に今回は、ヨ-ロッパの株式市場もバブルっぽい上げ方をしているので、影響を考えると問題は深刻である。

  • やはり「オリンピックの翌年は景気が後退するか」と言うジンクスが米国にも当てはまるか。筆者はやはり今回も当ると予想する。そしてそのカギは「為替の動向」がにぎっていると思う。
    やはり「オリンピック」と「大統領選挙」の影響で、金融の引き締めが、多少遅れたきらいはなかったかと思われる。

     


日常的に起こる経済問題をトーク形式で解説
日頃忙しいビジネスマンへのオンラインマガジン



97/3/3(第5号)「為替レ-トの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レ-トの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レ-トを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」