経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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10/1/11(598号)
10年今年の景気

  • 名目GDPは470兆円台へ
    年頭にあたり、恒例によって今年の景気を占う。ただし今年と言っても、暦年と年度の二つベースがある。経済の変動が穏やかな時は、両者に大きな差異は生じない。しかし一昨年の9月のリーマンショックのような大きな出来事があった場合、暦年と年度ではある程度の違いが生じる。本誌の場合、過去において多少曖昧であったが、今後、特に断りを入れない限り暦年ベースと見てもらいたい。


    今年の景気を予想する前に、昨年の予想09/1/12(第553号)「09年今年の景気」を検証する。当時はリーマンショックで世界中の経済が混乱し、その後の政府の対応がよく見えなかった。しかしその割には日本経済はほぼ本誌の予想通りの推移となった。

    まず消費は1〜2%の減少を覚悟すべきであるが、消費不況(5〜10%)という状況にはならないと述べた。消費支出(対前年)の動きを見ている限り、この予想は当りそうである。4月までは対前年でマイナスであったが、5月以降は概ねプラスで推移している。

    ただ11月のプラス2.2%という数字にどうしても納得が行かない。筆者は10月辺から日本経済が二番底に向かい始めたと見ている。賃金カットなどで現金給与総額が減り続けているのに、消費だけが堅調ということが腑に落ちないのである(たしかに前年同月のリバウンドとも考えられるが、前年11月の消費支出(対前年)は0.5%のマイナスと、前後の月に比べマイナス幅は比較的小さかった)。


    設備投資は大不調を予想したが、対前年で20%を越えるマイナス(法人企業統計)が続いている。これは筆者の予想より大きいマイナスと言えよう。設備稼働率が上がっているのに一向に設備投資が増えない。稼働率のレベルがまだ低いため、設備投資は海外が中心になっていると考える他はない。

    公共投資は麻生政権の景気対策で増えた。少なくとも10月までは日本経済の下支えになっていた。しかし公共投資の金額自体が小さくなっており、とても日本経済を牽引するものではなかった。ところが政権交代があって、工事がストップした案件が多く、11月の公共工事請負額はとうとう0.0%とマイナスに転じた。

    住宅投資は不調であった。「新設住宅着工件数は100万件を割込みそう」と予想したが、実績は80万件程度と筆者の予想をさらに下回りそうである。


    輸出は予想通りある程度持直した。昨年の今頃はリーマンショックの影響で輸出が最悪であった。しかし企業は需要を海外に求めざるを得ない状況に追込まれている。新興国の経済が持直したこともあり、日本の貿易・サービス収支も5月から黒字に転じた。ただし貿易・サービス収支の黒転には輸入物価の大幅な下落も影響している。

    昨年の予想では「2%程度のマイナス成長」とした。GDP統計を見ている限り、実質経済成長率は今のところほぼこの線におさまりそうである。一方、物価の下落によって名目経済成長率はかなり落込みそうであり、最悪の場合、5%近くのマイナスを覚悟すべきである。そして500兆円程度を維持してきた名目GDPは、とうとう470兆円台まで縮小することになった。


  • 自民党政権が続いている?
    年度ベースで今年の経済成長率の政府見通しは、実質1.4%、名目0.4%となっている。筆者は、政権交代があったため、一段と経済成長率を予測することが少し難しくなったと思っていた。大したことをやらないと分っていた自民党政権時代の方が読みやすかった。

    一方、民主党連立政権には色々な考えの人々がいて、誰の主張に沿った政策が実行されるかによって結果がかなり異なってくると思われた。しかし「事業仕分け」が世間の脚光を浴びたことでこの読みが狂った。これによって民主党が間違った方向に進む可能性が大きくなったと筆者は見ている。


    このままでは財政出動による内需拡大政策などとても実現しない。ただ2月の初旬に公表される10〜12月のGDP統計の速報値が注目される。これで相当悪い数字が出る可能性がある(筆者はかなり悪いと見ている)。GDPの落込みの程度によっては、民主党連立政権の雰囲気がガラッと変わることも考えられる。

    しかし筆者は今のところ民主党連立政権のマクロ経済対策には大した変更はないと見ている(国民新党などが主張するような大胆な積極財政が採られる可能性は小さい)。したがってやっていることは公設派遣村に見られるような、目に付く問題に対するその場しのぎの対応だけである。結果的には自民党政権時代と大した差はないということになる。


    このような政府の経済政策を前提に今年の経済を予測する。本誌の予想は、GDPを構成する需要項目毎に予想を行いこれらを積み上げる。

    まず消費は全く期待ができない。可処分所得がこれだけ減少すれば、消費が増えるはずがない。場合によっては、昨年以上の落込みを予想している。またエコポイント政策は需要の先食いであり、今年はこの反動が予想される。


    投資項目はバラバラである。はっきり減少するのは公共投資である。国の公共投資は18%の減少である。国の公共投資が減ることに応じて地方の公共投資も減る。ただ地方交付金が多少増えるので地方の公共投資の減少は多少カバーされると見る。

    設備投資は多少回復すると見ている。ここのところ日本の設備投資は対前年で20%以上のマイナスが続いている。しかしいくらなんでもこのような異常事態がずっと続くことはないと考える。輸出企業を中心に設備投資は多少持直すと見ている。

    住宅投資は横這いと見ている。政府はエコ住宅推進政策を採っているが、住宅建設は伸びないと考える。住宅ローンの返済で苦しんでいる人が多く、さらに雇用不安があるのだから、エコ住宅減税ぐらいで家を購入しようという者はいない。昨年と同じ80万戸程度の住宅建設着工に止まると見ている。


    輸出は伸びると見る。引続き不調なのは日本だけであり、波はあるが新興国の経済はかなり回復している。また欧米も多少持直す気配がある。これを反映し日本の貿易・サービス収支の黒字は月を追うごとに大きくなっている。また菅財務相の「円相場は95円程度が適正」発言の効果が続くようなら、輸出企業とって為替は大きな障害にはならないと考える。

    これらの予想を合計すると、今年の経済成長率は冒頭の政府見通しを若干下回る程度と予想される。しかし経済情勢が悪化すれば、政府は何らかの対応を行うと考える。例えば小さな補正予算の策定などである。したがって最終的には、日本の経済成長率は政府の予想に極めて近いものになると思われる。ただ前述したように10〜12月のGDP統計の速報値の公表が、一つのターニングポイントになる可能性が少しはある。


    このように見てくると、民主党連立政権が目指した内需依存型の経済への転換はとうてい無理な話である。つまり政権交代がなされても何も変わらない。まるで自民党政権が続いているような錯覚に陥るのである。



来週は、日本の財政が危機という根拠のない話が続いていることを取上げる。



09/12/21(第597号)「今年を振返って」
09/12/7(第596号)「事業仕分けの顛末」
09/11/30(第595号)「ヘッジファンドの広報担当」
09/11/23(第594号)「素朴な疑問」
09/11/16(第593号)「民主党と官僚」
09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」」
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08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
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08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
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08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
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