経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




09/11/23(594号)
素朴な疑問

  • レッテル貼りの習性
    筆者は、物の見方や人物の評価について、あまり先入観を持たないように努力しているつもりである。たしかに何らかの法則みたいなものを信じ、この法則に沿って全てを判断する方が楽である。またそのような法則を知っているということで、自分が一段高いところから物事を見ているという優越感にひたることができるかもしれない。しかしこれが筆者も含め多くの人々が陥る「罠」である。

    世の中には、何事にもレッテルを貼り何でもこれで理解しようとする者が多い。例えば財務・大蔵省出身だから全て財政再建至上主義者だとか、日銀出身だからいつも金利を上げたがっているといったふうだ。たしかに役所としての財務省のスタンスは財政の均衡であり、日銀の一番の願いは物価の安定(日銀券の価値の安定)である。


    しかし全ての官庁出身者が官庁の行動様式に縛られているとは限らない。先週号で述べたように過去において大蔵省出身の政治家の方が積極財政を唱える場合が多かった。また筆者は、日銀出身者(かなり高いポストまで登った人)でありながら、熱心に政府貨幣の発行を主張しておられる方を知っている(もちろんこれを財源に財政支出を行うことが前提)。

    民主党は先の日銀総裁・副総裁人事で、4人の候補者を財務省出身者という理由で蹴った。しかしその中に黒田東彦元財務官がいた。この元財務官僚は、02/12/9(第277号)「ルーカスの子供達」で取上げたように、財務官僚にしてはめずらしくリフレ政策を訴えていた。筆者は、この人物の事を詳しく知っているわけではないが、財務官僚の中では日銀の総裁・副総裁として適切ではないかと思ったのである。


    しかし野党時代の民主党は、候補者の見識などは無視し、財務省出身というレッテルを貼って拒否したのである。日銀の総裁・副総裁となれば、財務省や日銀の出身者と候補者も絞られる。筆者は、総裁に日銀出身者がなるくらいなら財務省出身者の方が良いと思っていた。どうも三重野氏、速水氏といった日銀出身の総裁に良い印象を持っていなかったからであろう。

    ただ福井氏と白川氏の両総裁は、日銀出身者にしては極端な政策には傾いていない。特に白川現総裁の評価はこれからと思っている。レッテル貼りが危険ということは、今回の日本郵政社長人事での教訓の一つである。筆者はずっと亀井金融・郵政担当相と斎藤次郎元大蔵次官は仲が悪いと思い込んでいたのである。


    しかし民主党は野党時代のこのレッテル貼りの癖が直っていない。「ダムは全て無駄」「官僚は政策決定から排除」「マニフェストは絶対」といった具合である。どうして子育て支援は良くて、公共事業は悪いのか民主党の主張を筆者は理解できない。有益な公共事業は必要である。

    筆者は、このようなレッテル貼りの「罠」に落ちない方法として、常に素朴な疑問を持つことにしている。それにしても世の中のレッテル貼りの習性を悪用して、利益を得ようとする貪欲な詐欺師的な人々で溢れているのである。


  • 怪しい話の連続
    09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」で、「「改革」運動はアンポンタンな観念論者(経済学者、政治家、マスコミ人など)と、「改革」で利益を得ようとする貪欲な者が結び付いているのが常である」と述べた。しかし「改革」運動に限らず、これに似た構図の話は世の中に沢山ある。


    まず本誌で何度も取上げた「人間が排出した二酸化炭素で地球が温暖化」という話も、筆者はこの構図の中にあると思っている。近年、地球が温暖化しているのは事実である。しかし「人間が排出した二酸化炭素で地球が温暖化」という結論に対しては、科学者の中にいくつもの異論がある。このことは本誌でも何回か取上げた。ところが世の中(特に日本だけは極端)は、地球温暖化の原因が十分究明されたとは言えないのに、「二酸化炭素犯人説」で走り始めている。

    「二酸化炭素犯人説」は排出権ビジネスという奇妙な利権を生んだ。また最近ではエコ家電やエコ車が異常にもてはやされている。しかし今日「二酸化炭素犯人説」を唱えている人々は狂信的であると筆者には感じられる。


    地球は誕生以来、温暖化と寒冷化を繰返して来た。人類が出現する前から暖かくなったり寒くなったりしているのである。つまり「人間が排出した二酸化炭素」がない時代にも温暖化を経験しているのである。このような怪しい話に対しては、素朴な疑問を持つことが必要である。

    エコを唱える人々は下心があるためか論理がメチャクチャである。エコ車の販売が増えれば、トータルで二酸化炭素の排出量は増える。またエコを訴えていながら、一方で高速道路料金をタダにすると言っている。

    また二酸化炭素の排出量を減らすと言っても、ゼロにするというのではない。つまり二酸化炭素の総量は着実に増えて行くのであり、これでエコとは何事であろうかと思われる。ただ筆者は供給を外国に頼る化石燃料の節約には大賛成である。日本はエネルギーの確保を他国に依存しない形に持って行くべきである。しかしこれは地球温暖化とは関係がないと筆者は考える。


    次に最近の禁煙運動にも怪しさと無気味さを感じる。タバコの害が異常に強調され過ぎていると見る。ただしこれに関しては日本に限ったことではない。世界中、何か禁酒法時代を彷佛させるような時代なったと感じさせられる。

    喫煙が健康に害があることは承知している。しかし問題はその程度である。最近の研究では、煙草の害を小さくする遺伝子が見つかったという話である。この遺伝子を持っている人と持っていない人では、タバコによる健康被害の程度が大きく異なるということである。筆者も薄々感じていたことである。


    しかしこのような医学的・科学的な研究結果であっても、狂信的な禁煙主義者は全く相手にしない。とうとうタバコの値段を2倍にしようという話が出ている。明らかに禁煙運動に乗じた動きである。

    狂信的な禁煙主義者は「タバコ一本で5分寿命が縮む」と言った話を広めている。しかし筆者は、日本人の男性の喫煙率が先進国の中で突出して高いのに、なぜか日本人男性の平均寿命の長さは世界でトップクラスという素朴な疑問を持つ。また元世界最長寿(120才)の徳之島の泉重千代さんが愛煙家であったという話は有名である。


    三つ目の話として最近、民主党の政策を実行するには大量の国債の増発が必要という話が出て、急に日本国債が売られ長期金利が急上昇(その後急低下)したことを取上げる。実に怪しい動きであった。これについては来週号で述べる。

    ところで最近の素朴な疑問の一つはニキビに効くという化粧品にまつわるものである。軽やかなメロディーのCMが連日大量に流されている。しかしニキビ対策の化粧品がそんなに儲かるとは思えない。何かこのCMには怪しさが漂っている。



来週号は日本の財政が危機状態という嘘を取上げる。危機ということを煽って利益を得ようとする貪欲な人々がいるのである。



09/11/16(第593号)「民主党と官僚」
09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
07/10/1(第498号)「新総理総裁の誕生」
07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
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