経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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09/11/16(593号)
民主党と官僚

  • 官僚化した政治家
    選挙用マニフェストが原因で、民主党連立政権がモタついている。その一つが官僚依存からの脱却するという方針である。民主党が野党時代、財務官僚を日銀総裁に登用しようとした自民党政権にイチャモンを付けていたことがアダとなっている。

    民主党は、日銀総裁の場合は「財金分離」、つまり財政担当者に金融政策を委ねることに問題があったからと釈明している。しかし財務省と日銀の間では、人事交流が行われている。このことから分るように既に財務官僚が金融政策にも関わっているのである(一方、日銀マンは財政政策に携わっている)。

    国民にとっては、財政政策と金融政策がうまく噛み合っていることの方が重要で、日銀が独立性を保っているかどうかはどうでも良いことである。そもそも「財金分離」はインフレ時に問題になることである。国が発行した国債を中央銀行にどんどん買わせることの弊害を阻止することが目的である。しかし20年ちかくデフレ経済が続く今日の日本で、ことさら「財金分離」を主張する者は世間知らずの観念論者である。むしろ政府の財政政策に逆らうように、日銀の独立性を盾に金融引締めを行った速水日銀みたいなものこそ批難されるべきである。


    「官僚依存からの脱却」の背景の一つに官僚の性悪論があると考える。官僚が、政治を歪め、自分達の利益だけを追求していると映るのである。たしかにそういう事もあろう。しかし政治家が、官僚を攻撃することで、マスコミや庶民から喝采を受けることを計算している面が強い。小泉政権以降の自民党も、選挙が近付く度に官僚批難を繰返していた。


    筆者が官僚に抱く問題点はこのような些末なことではない。一番問題にするのは07/5/7(第480号)「日本の公務員」から07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」で説明したような、意識しているかどうかを別にして、日本の官僚組織が本能的にデフレ経済を指向していることである。これは歴史教科書にもはっきりと見てとれる。例えば荻原重秀のように改鋳を行った政治家は、インフレを起した悪徳政治家の代表として記される。

    財務省も、大蔵省時代と違って完全に緊縮財政指向になった。このことは大蔵省・財務省出身の政治家の傾向を見ても分る。昔は大蔵官僚出身の政治家にはむしろ積極財政派が多かった。池田総理、福田総理、宮沢総理、そして相沢英之氏などである。特に福田元総理は財政均衡派と見られていたが、オイルショック後の世界的な不況に際して、積極財政を展開した。財政再建を目立って唱えていたのは大平元総理くらいのものであった。やはり消費税導入以降、大蔵省・財務省にはマクロ経済はどうでも良いという雰囲気がまん延しているのであろう。


    民主党は、政策決定に「官僚を入れない」という方針である。国会答弁からも官僚を排除するという。筆者は政治家が官僚をうまく使いこなせば良いと素朴に思う。本来、政治家は、例えばデフレ指向に傾きがちの官僚に対して、「それは間違い」と大きな指針を示すべきと考える。

    しかし今日、事業仕分などに見られるように、政治家がむしろ官僚の仕事を担うようになった。官僚を信頼しない政治家の方が今日官僚化しているのである。デフレを好む官僚と官僚化した政治家しかいない日本が、デフレ経済から脱却するのは「夢のまた夢」の話になっている。


  • 公務員の天下りの根絶
    二番目の官僚の問題点は常識がないと言おうか、末端の情報に疎いことである。端的なこの例として法務省が裁判員制度のテレビCMに酒井法子氏を起用したことが挙げられる。地元の者なら誰でも「この人選はヤバイ」と思ったはずである。案の定、問題が起ったのである。しかし世間知らずは法務省の官僚に限ったことではない。

    ところが大蔵省・日銀の過剰接待が問題になって以降、事実上、公務員と民間人が交流することが禁止されている。このようなことを続けておれば、官僚はますます世間に疎くなる。筆者は奇妙な法律が増えたのもこの事が影響していると考える。そう言えば規制緩和や構造改革で経済が成長するという「嘘話」に真っ先に飛びついたのも、末端の経済を知らない官僚達であった。

    筆者は新卒者を公務員に直接採用することに問題があると考える。世間がこれだけ複雑になっているのだから、例えば公務員の採用条件に「最低3年以上の社会経験が必要」といった項目を加えれば良いと考える。裁判官も同様であり、このような採用条件にすれば、裁判員制度など不要である。

    以上の二点が日本の官僚組織の最重要な問題点と筆者は考える。しかしこのようなことを日本のマスコミが問題として取上げることはない。むしろマスコミは次に触れる「公務員の天下り」などに人々の関心を向けようとしている。


    民主党は、マニフェストに掲げた「公務員の天下りの根絶」というスローガンに振り回されている。「根絶」といった極端な表現を使ったことで自らの首を絞めている。まるで政権交代は起らず、自分達の野党時代が続くとでも思ったのであろうか。


    まず日本の定年制度の話から始める。民間で55歳の定年制度が一般化した明治の時代の平均寿命は50才くらいであった。つまり事実上の終身雇用であった。また公務員には定年がなかった(ただし退職金割増による勧奨制度というものが今日はある)。このような時代は今日のような「公務員の天下り」が問題になることはなかった。

    しかし日本人の平均寿命がどんどん伸びため色々な問題が起るようになった。民間は定年を60才に延長した。しかし年金支給開始年齢が上がっているので、定年がさらに延長する可能性がある。ただし民間は50才台の前半で給料のピークが来るような賃金カープに変えている。一方、公務員は退職の勧奨年齢まで俸給が上がり続ける給与体系になっている。


    「公務員の天下り」だけが問題になっているが、民間でも大企業は子会社を沢山作って退職者のOBの受け皿にしてきた。子会社の中にはOBの受け皿を主な目的に作られたものもある。親会社が資材を購入する場合は、これらの子会社を通した形にし、子会社にマージンを落としこれをOB退職者の給料に充てていた。

    ただ20年もデフレ経済が続き、大企業は子会社をどんどん作るわけに行かなくなった。子会社も生え抜きの者が育ち、簡単には親会社のOBを受入れられなくなった。一方、官の方は国費でOB退職者の受け皿となる公益法人を作り続けている。このように退職者の待遇で官民の格差が大きくなった。もちろん大企業より雇用条件がずっと劣悪な中小・零細企業の従業員にとっては、「天下り」なんて夢の世界の話ということになる。


    職員より役員の数の方が多い公益法人が目立っている。また国が無意味な資格制度をどんどん作り、これを公益法人に所管させている。とんでもないことにこれらが民間の経済活動を邪魔しているのである。

    一般国民が「官」に不満を持つのは当り前である。しかし「公務員の天下りの根絶」をしなければ何事も始まらないという民主党の方針も問題である。今日、これ以外にもっと重要な経済問題があるはずである。



来週は、素朴な経済に対する疑問をテーマにしたい。



09/11/9(第592号)「首都圏のハブ空港」
09/11/2(第591号)「日本郵政の新社長」
09/10/26(第590号)「八ッ場ダムの建設中止」
09/10/19(第589号)「返済猶予法は不合理?」
09/10/12(第588号)「返済猶予法の原案」
09/10/5(第587号)「モラトリアムのポイント」
09/9/28(第586号)「モラトリアムの話」
09/9/21(第585号)「自民党のカルチャーの変化」
09/9/14(第584号)「自民党再生の道」
09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
07/10/1(第498号)「新総理総裁の誕生」
07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
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07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
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07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
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