経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




09/11/9(592号)
首都圏のハブ空港

  • 15分で説得
    羽田空港の第4滑走路(D滑走路)の完成(来年)を前にして、前原国土交通大臣の「羽田空港のハブ空港化構想」発言が注目を集めている。前原大臣のハブ空港の概念を別にして、今週は首都圏におけるハブ空港について述べる。どういう訳か、最近本誌が取上げるテーマは亀井静香氏が必ずからんで来る。まるで日本で政治家と呼べるのは、亀井氏しかいないのではないかと言う錯覚にさえ陥る。

    羽田空港の第4滑走路の建設も、亀井さんが、自民党の政調会長時代、運輸省の官僚を説得し調査費を付けさせたのがスタートである(石原都知事の話ではわずか15分で運輸省を説得したとのこと)。石原都知事が羽田の混雑緩和と国際化を睨んで、同志であった亀井氏に頼み込んだのである。ちなみにこの二人は仲が良いのであるがしょっちゅう大げんかをしている。亀井さんによれば、石原氏が「東京さえ良ければよい」といつも我がままを言っているとのことである。


    当時、空港がパンク状態であり(状況は日々悪化)、航空増強策についていくつかの案があった。石原都知事達が推す羽田の新滑走路建設が一つである。しかし成田の二本目の滑走路は工事中であり、成田空港の建設で苦労している地元のことを考えると、運輸省はとても新滑走路の話を持出すことはできなかった。しかしぐずくずしている間に状況がますます悪くなっていた。ここに「断」を下したのが亀井政調会長である。

    当時、羽田の拡張に対抗する有力な案がもう一つあった。東京湾に本格的な首都圏空港を造ろうというものである。首都圏湾奥新空港研究会がその中心であった。これを強力にバックアップしていたのが一橋大学のOBで作る一橋総研であった。


    一橋総研は元々石原都政の政策ブレーンを目的に設立された。中心人物は学生時代から石原都知事と親友であった高橋宏氏(現在首都大学東京理事長)であった。高橋さんは、日本郵船の副社長から、航空貨物を扱う郵船航空サービス(株)に転出された。筆者達がお会いした時には会長であった。

    郵船航空サービス会長として日本の航空設備の貧弱さにずっと泣かされてきた。このような事情もあって、高橋宏氏は首都圏に新空港を造ろうという首都圏湾奥新空港研究会の有力メンバーとして活動された。首都圏湾奥新空港研究会は竹村健一氏なども巻込み、一時かなりの盛上がりを見せた。竹村健一氏が新空港の必要性をテレビで何回も取上げていたことを覚えている人も多いであろう。


    親友同士の石原都知事と高橋さんとの間で激しいキャンペーン合戦があった。週刊誌の誌上でも両者は激しい論争を行っている。しかし亀井氏の決断で羽田の拡張論が勝った形になった。

    高橋氏達は、首都圏の新空港をあきらめたわけではない。亀井氏の影響力を知った高橋さん達は、亀井さんに新空港の必要性を説明した。高橋さんの話では、最後には亀井さんも「俺は判断を間違ったかな」と言っていたそうである。

    これ以降、高橋宏氏達は政治的に亀井氏をバックアップし始めた。例えば亀井さんに国際性を身に付けてもらうため、一橋総研の人々は米国のアーミテージ元国務副長官との会談をセットしたりした。ちなみに日本経済復活の会の小野会長と筆者は、6年前に一橋総研の人々に対してセミナーを行ったことがある。


  • 新空港の建設を
    筆者は、羽田空港の第4滑走路建設の判断は決して間違っていなかったと考える。これでも完成まで10年もかかったのである。新空港となれば場所の選定から始めることになり、完成までに気が遠くなるほど時間がかかると考えられる。これでは今日の空港のパンク状態の緩和にはとても間に合わなかった。ただ羽田の新滑走路建設が決まったことによって、新空港構想が下火になったことも事実である。


    高橋宏さんによれば、標準的な国際空港の条件は「長距離のジャンボジェットが離発着できる滑走路が複数本ある」と「24時間使用が可能」ということである。特に欧米への直行便の離発着には、3,500m以上の滑走路が必要である。しかし首都圏では3,500m以上の滑走路は成田空港の一本(4,000m)だけである。

    羽田は3,000mが二本と2,500mが一本である。ちなみに成田の二本目と羽田の第4滑走路は2,500mである。つまり羽田や成田はとても標準的な国際空港とは呼べない。一時、横田基地の返還が話題になったが横田の滑走路も2,500mしかない。つまり標準的な国際空港となれば新空港を建設する他はないのである。


    前原国土交通相の発言で「ハブ空港」化が話題になっている。しかし羽田は国際標準のハブ空港にはなり得ない。3,000mの滑走路では、燃料を満タンにしたジャンボジェットが離陸できないのである。羽田はせいぜいアジア向けの中途半端な「ハブ空港」にしかならない。案外、このようなことは知られていないのである。「ハブ空港」と前原大臣は簡単に発言しているが、「ハブ空港」のことをどれだけ理解しているのか不明である。


    筆者は野方図なグローバル経済(特に金融面)に疑問を持っている。しかし航空貨物などが増えているのは現実である。またこれまでお話をした通り、羽田と成田だけでは首都圏の航空処理能力に限界が来ている。先ほど述べたように早くも「羽田に5本目の滑走路を」という声が出ている。

    第4滑走路(D滑走路)の完成を目前に、日本の貧弱な航空事情に関心が集まると思われる。新空港構想にとって今がチャンスなのである。空港建設には長い時間が必要であり、早く結論を出すことに越したことはない。

    新空港建設のための資材が不足しているわけではない(関西空港の不等沈下を考えれば、工法にはメガフロートなどが考えられるが、工法はここでは問わない)。人手も余っている。あとは財政といったバーチャルな問題だけである。


    空港のネットワークやアクセスにも不満がある。羽田は都心に近いということになっているが、都心までかなり時間がかかる。モノレールも時代の遺物になりつつある。またモノレールはやたら停車駅が増えている。

    新空港、羽田、東京駅を結ぶ高速鉄道が必要である。当然、これは大深度の地下鉄で建設することになる。さらにこれを成田まで延長すれば、首都圏の空港同士のネットワークが完成する。羽田は国内線、成田と新空港は国際線となる。ただどうしても成田は貨物の割合が大きくなると思われる。2016年の東京へのオリンピック誘致は失敗したが、次に誘致するまでにりっぱな新空港が完成していることが理想である。



来週は、今問題になっている政治の官僚依存を取上げる。



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