経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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09/9/14(584号)
自民党再生の道

  • 足腰が弱くなった自民党
    先週号で総選挙における自民党の最大の敗因を、小選挙区制の下での選挙を繰返すことによって、自民党の足腰が弱くなっていたことと指摘した。具体的な現象として、まず自民党の政治家と有権者との認識のズレが、とほうもなく大きくなったことである。だいたい自民党の政策決定プロセスがトップダウンとなり、政治家が支持者や有権者の声を聞こうとしなくなっていた。

    経済の状況が悪いのに、一部の経済数字を見て「景気は良くなっている」とトンチンカンな事を言っている。実際は、都会の一部や大手の輸出企業だけが良かったりしていたに過ぎない。また自殺者数が最悪の状態が続いているのに見て見ぬふりをしている。このような傾向は小選挙区制が始まって加速した。自民党の政治家は、選挙が近付けば地域の盆踊りに参加しておけば良いと思うようになっていた。


    第二に立候補者の質の劣化である。先代の名前が知られているということで、やたら二世、三世の立候補者が増えた。小選挙区制によってより多くの得票を得ることが必要になり、自分の力で地盤を築くことが困難になった。つまり活力と人望はあるが無名な者は、自民党の国会議員を目指すことが難しくなったのである。

    政治家が有権者の気持を汲み取れなくなったのは深刻である。ところで小選挙区制に変わったことにより、選挙民は複数の自民党立候補者から自由に投票相手を選べなくなった。つまり選挙がつまらなくなったのである。実際、小選挙区制の最初の頃は投票率がずっと低下していた。ところが今回の総選挙の投票率はかなり高くなった。有権者が今日の自民党をよほど嫌うようになったのであろう。


    筆者が小選挙区制の問題を最初に聞いたのは亀井静香議員からである。5,6年前、筆者達は亀井さんを囲んで何回か「飲み会」を開催した。会費を徴収し毎回六本木の居酒屋で開いた。筆者達は30名くらいのメンバーに声を掛けた。「飲み会」はいつも予定時間をオーバし、亀井さんにも「毎月やれ」とこれを気に入ってもらえた。

    「飲み会」では色々な話が出た。その一つが小選挙区制の問題である。亀井さんは「この頃の自民党の国会議員はいかん。公明票ばかりを頼って日常活動をやらない。」「自民党の再生のため、やはり小選挙区制に戻すべきであろう」とおっしゃっていた。また「ただ全面的に小選挙区制に戻すことは無理かもしれないが、せめて地方だけでも中選挙区に戻せたら良い(筆者の聞き違いで都会を中選挙区制に戻すだったかもしれない)」と言っておられた。


    先日、平沼赳夫議員事務所から今回の総選挙に関する見解を綴った文章が筆者にも回ってきた。事務所からと言っているがご本人の見解と見なして良いと考える。ここではやはり自民党の足腰が弱っていることが指摘されている。また第一回目(平成8年)の小選挙区制の下での衆議院選挙では、公明党と敵対していたにもかかわらず239議席を得たことも指摘されている。

    さらに「小手先の経済政策論議や民主党批判ではなく「国家のあり方」を問うことからはじめること」と「腰をすえてじっくりと保守の資質を備えた党の候補者を擁立(選定)することから着手すべき」と書かれている。亀井さんの考えと重なる部分が多い。


  • 再生は無理か?
    次に自民党の再生の可能性を探る。総選挙の惨敗後、自民党の政治家が敗因について述べている。しかしそれらは「自民党に風が吹かなかった」「麻生総理は解散のタイミングを間違えた」といった些末なものが多く、中には「小泉改革路線を継続しなかったから」といったとんでもない意見もある。

    亀井氏、平沼氏のように、10年以上の年月をかけて自民党の力が弱まったことを指摘する者はほとんどいない。いまだに小泉首相の下で行われた01年の参議院選挙と05年の郵政選挙での大勝が忘れられないのである。だいたい今日の自民党は、「風」を頼ったり、デマで世間を欺くことでしか選挙を闘えなくなっているのであろう。


    亀井さんのように、自民党がダメになった原因を「小選挙区制の導入」と喝破する者はいない。ただ自民党の関係者は薄々とこれに気が付いていると思われる。しかし自民党の国会議員でこれに触れる者はいない。もっとも本当の敗因が分るくらいなら、何らかの対応をしていたはずである。

    現職が公認で優先されることが、小選挙区制の下では一種の既得権になっている。彼等はとても中選挙区に戻すとは言えないのである。このままではますます自民党の足腰は弱くなると思われる。


    民主党の政策に対抗するためなのか、いまだに自民党の若手は「小さな政府を目指す」「小さな政府が基本」と言っている。何回も繰返すが、筆者は「政府は効率的であるべきだが、政府の大きさは、経済の状況や目指す国家の在り方にかかっている」と主張してきた。日本経済の慢性的デフレ体質を考え、さらに少子高齢化社会に向かう今日の日本では、政府は大きくならざるを得ないのである。

    年金改革を主張しているはずの河野太郎氏が、「小さな政府を目指す」と言っているのだから訳が分らない。彼は、論理的に矛盾していても、マスコミ受けする言葉を並べているのであろう。しかし彼のような何がなんだかさっぱり分らない政治家が、今日の自民党に残っている国会議員を象徴している。両院議員総会の混乱した様子を見ていてもその事がよく分る。


    自民党の政治家は「党の再生」「解党的出直し」と口では言っている。しかし自民党の弱体化の原因が「小選挙区制」ならば、選挙制度を改定しても党の再生には最低10年以上かかると考える。とても現実的ではない。

    おそらく今の自民党の政治家は、自力による自民党の再生は無理と感じていると思われる。考えられるのは民主党の失政やスキャンダルを待ち、これらで民主党を攻撃することである。とても建設的とは言えないが残された道はそれしかない。だいたい党を再生させられるような気骨のある人材を、郵政改革騒動で全部追出したのだからしょうがないのである。



来週は政治家が行っている勉強について述べる。

11日(金)ニュヨーク為替市場で為替レートがとうとう90円台に突入した。円高・米ドル安というより、米ドルの全面安である。ちょっと前までは米株式相場が上昇するとドル高、株価が下落するとドル安になっていた。ところが最近では株式相場と関係なくドル安傾向が定着してきた。原因は米国の低金利が長期化することがはっきりしてきたことである。米国の政治家は「強いドルが米国にとって良い」と主張してきた(どこまで本音なのか不明)。しかし筆者は逆に米ドル安の方が米国にとっては好ましいと考える。

短期な為替変動要因として投機的な資金の流れが気になる。日本では個人の為替取引がけっこう大きい(彼等は業界では「ミセスワタナベ」と呼ばれている)。つまり個人投資家の動きが円・ドル相場にかなり影響を与えている。最近の円高・ドル安の過程で、日本の個人投資家は逆に米ドルを買っているようである。どうもいまだに日本人には自虐的な為替観というものがあって「日本はダメな国、とても米国にかなわない」という信念のようなものがある。

米ドルが91円台前半になると、彼等の損失が大きくなって、買い持ちしているドルを一気に売ってくるのではないかという観測が以前からあった。金曜日に90円台になったということで、月曜日からの円相場が気になるところである。



09/9/7(第583号)「一番の自民党敗因」
09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
07/10/1(第498号)「新総理総裁の誕生」
07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
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