経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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09/9/7(583号)
一番の自民党敗因

  • 新陳代謝の悪化
    今回の総選挙で、自民党は歴史的な大惨敗を喫し党の存続さえ怪しくなっている。敗因についてはメディアが色々と分析していて、その分析結果にはそれぞれ納得できる。しかし筆者が考える一番の敗因は、やはり選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に変わったことである。

    もっとも小選挙区制への改定は、政権交代を可能にすることを念頭においた制度変更であった。これ以降、自民党の長期的な転落トレンドがずっと続くことになった。選挙制度が変わってから15年にして実際に政権交代が実現したということである。

    ただ筆者は、小泉政権時代の2004年の参議院選での自民党の大敗(07年の参議院選ではさらに大惨敗を喫した)を見ていて、もし仮に同時に衆議院選挙が行われたなら、既に5年前に政権交代が実現していたのではないかと思った。たしかに自民党は翌05年の郵政選挙で大勝したが、単に4年間延命したに過ぎないと思っていた。


    自民党のような政党は、中選挙区制のもとで強さを発揮するものである。中選挙区制の場合、同じ自民党の立候補者と激しく競うことになる。したがって支持者や有権者に対するサービス合戦は激しくなる。

    一方、小選挙区では、自民党の候補者は一人だけである。したがって党の公認さえ得られれば、楽に当選できるケースが多くなった。また選挙民へのサービスもそんなに必要でなくなった。


    小選挙区制導入によって衆議院議員の質が変わった。小選挙区制になっても党の公認は現職が優先されている。また知名度があるからと二世、三世が担ぎ出されるケースが増えた。したがって今日の自民党は、ベテランと二世、三世議員がやたら目立つようになった。

    中選挙区制の時代のように、公認されなかった保守系の新人が無所属で立候補し、当選後、自民党に追加公認されるというケースはほとんどなくなった。亀井静香議員も最初の選挙では公認が得られず、無所属で立ち当選後に自民党に公認された。亀井さんは「今の小選挙区制だったらとても国会議員にはなれなかった」と言っておられた。

    つまり小選挙区制が実施されてから、自民党の新陳代謝が悪くなったのだ。前回の郵政選挙で大量の新人議員が生まれたが、選挙の基盤がないため、逆風が吹くと今回のようにほとんどが落選した。むしろ今度の選挙では、中選挙区制時代に地盤を築いた高齢のベテラン議員がしぶとく残った。


    小選挙区制導入に伴い、中選挙区制時代のボトムアップからトップダウンに政策決定プロセスが変わった。政党助成金の配分権と公認権を握ることによって、政権の執行部の力が強くなったからである。一方、一般の国会議員は将棋の「駒」的存在になった。派閥も相対的に力がなくなった。

    それまで自民党は部会や総務会といった党の機関を通じ、政策が決定されていた。部会には誰でも参加でき意見を述べることができた。ところが最近では、経済・財政諮問会議で大きな方針を決め、部会や総務会がそれを追認するという形に変わっていた。


  • 自民党の大惨敗
    政治の意思決定プロセスが、ボトムアップとトップダウンのどちらが好ましいか判断に迷うところである。ボトムアップ方式の方が大きな間違いはないが、関係者の利害の調整などでやたら手間ひまがかかる。またマスコミに言わせれば「族議員」の介入を許すということになる。しかし筆者は、このマスコミの意見には異論があり、まどろこしいがボトムアップこそ日本になじんだ意思決定プロセスと考える。

    一方、トップダウン方式は一種の「賭」である。トップが高い見識を持ち、完全な情報を得て正しい判断ができるのなら、これほど効率的で格好の良い意思決定プロセスは他にない。しかし一歩間違えれば、総理・総裁が全体主義国家の独裁者になる。


    もし組織のトップが、「バカ殿」であったり周辺から間違った思想を吹込まれていたら悲劇が起る。橋本政権は、地価の下落がまだ続き金融機関の不良債権が増え続けているのに、緊縮財政によるデフレ政策に転換した。また不況の最中、経済の素人にもかかわらず小泉首相は「郵政改革こそ構造改革の本丸」とか「構造改革なくして経済成長なし」とばかげたことを主張し数々の政策を強行した。

    しかし総理・総裁は、自民党の独裁者であっても、日本は独裁国家ではない。いずれ国勢選挙が行われるのである。その度に自民党は議席を大きく減らして来た。橋本政権では参議院選挙で大敗し、自民党は後に公明党などと連立を組まなければならない状況に追込まれた。

    05年の郵政選挙で自民党は大勝したが、これはマスコミを巻込んだデマ選挙であり参考にならない。筆者は自民党の低落トレンドに変化はなかったと見ていた。実際、大勝したのは大都市部だけであり、地方は得票数を減らした者が多かった。自民党はその前年の参議院選挙で大敗し、また郵政選挙の直前に行われた都議会選挙でも負けている。今回の総選挙での自民党の大惨敗は、筆者のような見方が正しかったことを証明しているといえる。


    ここまで述べてきたように小選挙区制の下では、総理・総裁や執行部の力が強くなる。しかし必ず党内にトップの政策に不満を持つものが現われる。ところが彼等の意見が正しくとも、政権の中枢はこれらを簡単に退ける。橋本政権の緊縮財政に異議を唱える者に対して、当時の与謝野官房副長官が「不況なら規制緩和で景気を良くすれば済む」と言ってのけたのをよく覚えている。

    小泉政権下では郵政改革に反対する議員集団ができたが、単に郵政改革に抵抗したのではない。彼等は小泉政権の独裁的なや政権運営や経済政策に異議を唱えたのである。しかし小選挙区制の下の自民党では、反対集団の中心人物達は造反者というレッテルを貼られ党を追われたのである。ところが思考力と常識に欠ける日本のマスコミは「郵政改革を巡る造反劇」と問題を矮小化し面白おかしく取上げたのである。


    郵政選挙のような広告代理店を使ったデマ選挙は二度と通用しない。また小選挙区制の下では政治家の質の劣化が続くものと筆者は見ている。したがってこの状況では自民党の再生は非常に難しいと考える。このことは自民党の次の総裁候補と言われている政治家の顔ぶれを見ればよく解るであろう。



来週は自民党の再生が難しいことを取上げる。



09/9/1(第582号)「09年総選挙の結果」
09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
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09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
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09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
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09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
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09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
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08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
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08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
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08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
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08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
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