経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




09/9/1(582号)
09年総選挙の結果

  • 自民党の大惨敗
    衆議院選挙の結果は、メディアの予想通り民主党の圧勝、自民党の惨敗であった。通常、一週間前に出る報道機関の予想が有権者の投票行動にある程度影響を与え、逆の動きがあるものである。今回の予想は「自民党の大惨敗」であったから、多少自民党が持直すと思われた。ところが今回はほぼ報道機関の予想通りの結果であった。

    また期日前投票が前回の1.6倍まで増えていた。つまり多くの有権者は迷いなく民主党に投票したのである。形の上では民主党の大勝であったが、実態は自民党の大惨敗であった。国民ははっきりと政権交代を求めたのである。


    民主党が魅力的だから人々が民主党に投票したのではない。自民党が嫌だから民主党に票を入れた。実際、民主党の立候補者が選挙演説をしている前を、ほとんどの人々は素通りしていた。つまり一般の人々は民主党にそれほど興味がない。ところがそんな民主党に有権者は投票したのである。

    今回は自民党の支持者の30〜34%(報道機関によって多少数字が異なる)が民主党に投票している。これでは自民党が大敗するのは当り前である。それほど人々の自民党に対する不満が大きくなっていたのだ。


    与党に大きなスキャンダルがあったわけではない。それにもかかわらず負けたのだから、やはり自民・公明の政策に人々は不満を持っていた考える。自民党の落選した立候補者の中には「積年の政策に人々は不満を持っていたのだろう」と述べている。このような政治家はよく解っているのである。

    ところが一方には「人々はマスコミが作った風潮に騙され、民主党に投票した」と往生際の悪い自民党の古参議員もいる。つまり彼は与党の政策は間違っていないと言いたいのである。しかしこのような言動が自民党離れをさらに加速させたのである。自民党の政治家と支持者の間のズレは09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」で述べた通りである。


    ただここまで自民党と民主党の間に大差がついたのには他の要因もある。民主党は小沢一郎氏から鳩山由紀夫氏に代表が変わった。ギリギリのタイミングであったが、小沢氏が代表のままだったら、自民党もここまで惨敗をしなかったであろう。

    一方、自民党は麻生首相を変えることができなかった。もっとも07/7/2(第488号)「ポンカス政党」で述べたように、麻生氏に代わるめぼしい人材が自民党にいなくなっているのも事実である。また有権者が「積年の政策に不満を持っていた」ということになれば、首相を交代させても結果に大きな違いは出なかったと考える。


    自民党だけでなく、連立を組む公明党の力も弱体化している。実際、公明党の比例票は前回の898万票から798万票と100万票も減っている。小選挙区での全敗もうなづける。

    自民党を立直すと言っても難しい。かなり大胆な事をやる必要がある。例えば平沼赳夫氏を復党させ、総裁に据えるといったようなことである。しかし小泉信奉者の残党が何人か比例復活しており、これに抵当すると思われる。ただ来年の参議院選挙で、今回の衆議院選挙の落選者が回れば多少有利に戦えることは考えられる。これからの政局運営のポイントは参議院と参議院選挙である。


  • 連立与党の政策
    政権交代後の民主党を中心とした連立政権の政策は、概ね民主党の選挙用マニフェストに沿ったものと考えられる。しかしマニフェストは選挙用の政策の羅列であり、そのまま実行することは不可能である。例えば高速道路の全面的な無料化などは無理な政策である。おそらく段階的な値下げ程度に収まるものと見られる。

    農家への個別所得補償も技術的に難しい。ただ何もやらないわけには行かないので、何らかの形で実現するものと考える。自公政権でも定額給付金といった、通常行われない直接給付政策をやっている。


    この他に教育補助や子育て支援などがあり、財源が問題になっている。民主党は、無駄な歳出をカットしてこれらに充てるとしているが、これで全額を賄うことは無理である。まず埋蔵金と言われている政府の剰余金を取崩すことになろう。

    民主党は消費税増税と赤字国債の発行は行わないとしている。しかし本来国債の償却に使うべき剰余金を使うとなれば、赤字国債を発行するのと同じことである。また剰余金の取崩しだけで間に合わないのなら、筆者は赤字国債を発行してもかまわないと考える。


    民主党の外交政策が懸念されている。しかし今日の民主党政権成立はかなりの保守派の投票で実現した。民主党はこれを意識するため、おそらく外交・防衛政策は、自公政権とほとんど変わらないものと見られる。

    たしかにアフガンでの給油活動の続行が問題になっている。しかしこれは米国共和党時代にスタートしたものである。共和党政権には石油業界に繋がっている者が多かった。今給油されている燃料油は、シェブロンのバーレン製油所製のものである。シェブロンといえばライス前国務長官が役員を務めていた石油会社であるが、この燃料油の価格がばか高いという話である。

    オバマ民主党政権に代わり、米国政府がどの程度これにこだわっているのか不明である。ただ給油活動を止めれば、米国はアフガンで他の人的貢献を求めてくると思われる。民主党は、給油活動を止めるか、他の貢献に踏出すかの選択に迫られる。


    永住外国人の地方参政権や人権擁護法案といったデリケートな問題がある。しかし民主党は選挙用マニフェストからこれらを除いている。保守層からの支持を考えての措置と思われる。

    永住外国人の参政権については、国勢選挙の選挙権ではなく地方自治体の選挙権なら良いのではないかという意見がある。しかし筆者は、理由は割愛するが、何千もの離島を抱える日本にとって、地方自治体への参政権の方がずっと大きな問題と考える。


    このようなデリケートな問題が俎上に上った時にこそ、連立を組む国民新党に期待する他はないと思われる。民主党が社民党と連立を組む以上、国民新党の存在が重要になる。その意味でも、今回の総選挙で国民新党が議席を減らしたことがまことに残念である。国民新党は自民党票の受け皿になれなかったのである。



来週は政権交代についてさらに述べる。



09/8/10(第581号)「総選挙の国債増発」
09/8/3(第580号)「自民党の問題点」
09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
07/10/1(第498号)「新総理総裁の誕生」
07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
07/2/5(第468号)「財界人と「合成の誤謬」」
07/1/29(第467号)「日本の財界人の自信」
07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
07/1/15(第465号)「日本の財界」
07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
06年のバックナンバー

05年のバックナンバー

04年のバックナンバー

03年のバックナンバー

02年のバックナンバー

01年のバックナンバー

00年のバックナンバー

99年のバックナンバー

98年のバックナンバー

97年のバックナンバー