経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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09/8/3(580号)
自民党の問題点

  • 致命的な感覚の「ズレ」
    自民党の問題点を挙げるとなるとそれこそ切りがない。そこで筆者が一番の問題と考えることだけを取上げる。それは自民党と支持者、あるいは有権者との間の致命的な感覚の「ズレ」である。自民党の執行部だけでなく、自民党全体と一般の国民との距離がこれだけ開いた時代はなかった。

    これを示す例は数限りない。先日まで話題になっていた東国原宮崎県知事の出馬要請などもその一つである。筆者はあまりにもばかばかしいので本誌で取上げなかった。どうも自民党の幹部(少なくとも出馬要請に宮崎に出向いた古賀・菅の選対幹部)は、東国原氏を東京の比例区の上位に置くことによって、自民党は比例票を大量に獲得できると本気で信じていたようだ。


    自民党は経済が順調に回復していると思い込んでいる。また不況時にはやはり自民党でなければならないと、国民が思っていると自民党は信じている。しかしバブル経済崩壊後20年の間、日本の名目GDPはほとんど増えていない。このように経済が低成長の国は北朝鮮と日本くらいのものである。最近でも、毎月、失業率が上がり、有効求人倍率は下がり続けている。皆が疑わしいと感じている政府発表の雇用関連の数字でもこの有様である。

    2年前の参議院選の時の「景気回復を実感に」という自民党の選挙スローガンには筆者も驚いた。経済状態が悪いと感じる国民に自民党は「気のせい」と言いたかったのだ。自民党の政治家は、内閣府の官僚といい加減な経済学者に取り囲まれ「経済は順調に推移している」と洗脳されていたのであろう。本当に経済が良くなっていたなら、参議院選であのようなみじめな惨敗はなかったはずだ。

    極め付けは日本郵政の人事問題である。かんぽの宿の売却問題を含め、日本郵政の数々の疑惑を指摘した鳩山前総務相の方が更迭されたのである。どうも自民党は小泉改革路線を国民がまだ支持していると勘違いしている。鳩山前総務相を更迭した時、あんなに内閣支持率が急落するとは思っていなかったであろう。

    大手のメディアは報道しないが、日本郵政の怪しい経営について人々はかなり知っているのである。自民党の政治家は、メガバンク、ことに三井住友銀行出身者は優秀で清廉潔白な人々の集まりとでも思っていたのであろうか。日本郵政の問題を聞いて、かなりの人々は「やはり」と思ったはずである。


    麻生首相は、国会でカップラーメンの値段を聞かれ、「400円くらいですかね」と答え顰蹙をかった。一国が首相がカップラーメンの値段を知っている必要はないが、麻生首相が常識を持ち合わせていないことは明らかであろう。

    定額給付金を巡る発言で、首相の発言は迷走した。これだけでなく麻生首相の発言はよくブレる。これは麻生首相に常識がないからである。しかし常識がないのは首相だけではない。首相の側近グループを始め、ほとんどの自民党の有力政治家に言えることである。さらに反麻生を唱える政治家達にはもっと酷いのが揃っている。


  • 世間知らずの政治家
    自民党の政治家と国民との間の溝が広がっている。筆者の知人で熱心に自民党を応援してきた者も同じ感想を持っている。自民党の風通しが悪くなって、自分達の声が届かなくなったと言っている。筆者は、このようになった最大の原因を選挙制度が中選挙区から小選挙区に変わったことと考える。

    選挙選自体は、同じ自民党の立候補者と戦わなければならなかった中選挙区制の時代より楽になった面がある。ただ小選挙区制ではより多くの票を集める必要がある。したがって従来の後援会組織だけに頼っていては当選がおぼつかないと、立候補者自身は思い込んでいる。


    自民党の政治家の多くは、自分で票を掘り起すより世間の「風」みたいなものに乗りたがっている。したがって総理・総裁選びは、政治家としての経験・見識また実績といったものより、「世間の受け」がポイントとなっている。しかし世間の「風」なんていい加減なものであり、しょっちゅう変わる。

    風が変わる度に、「総理・総裁を取替えろ」という声が起るのである。もっとも世間受けする政治家が必ずしも正しい政治判断をできるとは限らない。むしろ反対というケースが目立ったと筆者は感じる。

    政治家も後援会組織を強化するより、マスコミに登場し名を売った方が手っ取り早いと考えるようになっている。地道な政治活動を行うより、マスコミにフラフラと登場し、世間受けを狙った発言をするのである。例えば「官僚はけしからん」と言っておれば良いと思っている。しかし後ほど話をするが、実際に成立している法律のほとんど全ては、官僚が立案し、官僚にとって通したいものばかりである。


    選挙制度の変更は、政治家の考え方や行動を変えた。政治家は支援者との関係を緊密にするより、世間の動向に迎合するようになる。しかし世間の動向と思っていることが、往々にして大手のマスコミ自身が発信し操作しているものである。

    このように支援者の声を政治家が聞かなくなった。また支援者だけでなく、一般の国民の声も政治に届かなくなった。ここ数年に成立した法律のほとんどは国民が望んだものではなかった。

    例えば「裁判員制度」なんて誰もやってくれと頼んでいない。またばかげた政策の極め付けは「タスポ導入」と「メタボ検診」である。その他にも「三位一体の改革」「定率減税の廃止」など数限りない。景気対策と言っても高速道路値下げはETCの普及を、エコ減税は地デジの普及を狙っている。筆者はこれらの全てが悪いとは言わないが、これらも国民が求めたものではなく官僚が推進したがっていた政策である。


    公平を期すため、中選挙区制時代より小選挙区制になって良くなった点も挙げておく。まず同じ自民党の立候補者との激しい選挙選がなくなったため、選挙資金がそれだけかからなくなった。とにかく小選挙区で自民党の候補になれば良いのである。

    これは良いことなのかどうか判断に迷うが、小選挙区制になって政党としての体裁が整い、政党としての方針の決定が早くなった。言い換えれば、自民党の執行部の権限が強まり、執行部の独走が目立つようになった。また支援者や地元への過剰サービス的な政策が減った。ただこれによって政治家と支援者や地元との関係が希薄になったのである。しかし支援者や地元との関係が希薄になるということは、末端の国民が思っていることを政治家が感知できなくなったということにもなる。要するに政治家が世間知らずになったのである。


    日本の政策決定が昔のボトムアップからトップダウンに変わった。しかし世間知らずの政治家が政策を立案できるはずがなく、ほとんどの政策は官僚まかせになったのである。自民党を再生するには選挙制度を中選挙区に戻し、一から政治家を育てる他はないと筆者は考える。



来週は、自民党だけではなく民主党の問題点も取上げる。再来週から2週間、夏休みにつき休刊となる。



09/7/27(第579号)「苦戦の自民党」
09/7/20(第578号)「米国経済の正念場」
09/7/13(第577号)「選挙マニフェストの話」
09/7/6(第576号)「日本郵政問題の結末」
09/6/29(第575号)「続・国有資産の纂奪者」
09/6/22(第574号)「国有資産の纂奪者」
09/6/15(第573号)「「かんぽの宿」の一括売却」
09/6/8(第572号)「経済をマクロで見る」
09/6/1(第571号)「日本のケインズ経済学」
09/5/25(第570号)「裁判員制度に一言」
09/5/18(第569号)「半径10mの関心」
09/5/11(第568号)「保護主義と国家」
09/4/27(第567号)「中央銀行の国債購入」
09/4/20(第566号)「年金制度改正の私案」
09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
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07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
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07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
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