平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




09/4/20(566号)
年金制度改正の私案

  • 年金制度改正の最後のチャンス
    先週号で示した「筆者の経済対策案」は、ある意味で筆者の考えの集大成である。今日の世界的な経済の落込みは100年に一度程度のものと言われている。筆者はそこまで深刻なものとは見てないが、世界経済が簡単には回復しないことは事実であろう。

    しかし政府関係者が「100年に一度」というなら、思い切った対策を実行すべきである。筆者の提案は年金制度の抜本的な改正であり、これがデフレ経済脱却の処方箋にもなる。年金制度の抜本的な改正は必要だったが、政治家も官僚も難しいと思ったのかこれを避けてきた。団塊の世代が年金受給者になる今日こそが年金制度改正の最後のチャンスである。


    先の年金改正では「100年安心な年金制度に改正」と政府は胸を張っていたが、そのようなことは誰も信じていない。今後、保険料を上げ、年金支給額を減額すれば、制度としては100年でも200年でも持つという意味で理解している。つまり公的年金に関与する公務員の仕事がずっと保証されるということである。今の年金制度は、年金受給者ではなく、年金関連の職に就いている人々の生活を保証するものである。

    年金については、マスコミ人などの無知につけ込んだ嘘が蔓延している。最近、年金の支給額が現役時代の所得の50%を割るということが話題になっている。この原因が国民年金の未納者が想定を越えたからという事になっている。まるで国民年金の未納者が悪いという印象を与えている。

    しかし未納者が減れば、将来の年金の受給者が増えることになり年金財政はさらに悪化するのである。厚労省の言っていることは、当面の年金財政状況の話である。現実は、仮に国民年金の未納者がゼロになっても、受給率が50%を大きく割込むのは時間の問題である。デフレ経済が今後も続けば、受給率は40%、あるいは30%台に落ちることは十分有りうる。


    年金制度や年金問題を厚労省だけの所管にしていることが根本的な間違いである。厚労省に年金制度の改正を委ねれば、今日のようなアイディアしか生まれてこない。厚労省は、辻褄を合わせるために非現実的な出生率、経済成長率、そして国民年金の未納率を想定するのである。

    厚労省・社保庁は、国民年金の未納率を下げるため、未納になっている富裕な人々を必死になって追掛けている。このような人々こそ年金は不要である。また国民年金には国費が投じられるのだから、これでは将来この富裕な人々にもいくらかの国費が使われることになる。なんてばかげたことをやっているのであろうか。


    最も悪いのは、この辻褄を合わせのため、保険料の引上げを行うことである。ところがそれでも年金財政が悪化することは確実なので、年金受給率をどんどん引下げる。日本の年金改正を厚労省に委ねている限り、無駄に時間がどんどん過ぎる。また辻褄を合わせの保険料の引上げと受給率の引下げによって、日本経済のデフレをさらに悪化させるのである。

    厚労省は、年金問題の根本を国民年金の未納問題に摺り替えている。このようなまやかしはちょっと考えれば見破られるはずである。ところが常識のない日本のマスコミ人は、このような幼稚な話に乗ってしまう。先の年金改正では、年金の未納政治家をヤリ玉にして騒ぎ、みごとに厚労省の術中にはまっていた。


  • 維持が不可能な年金制度
    筆者は日本の年金制度を単なる社会保障問題の一つとは捉えていない。特に日本のように公的年金の積立金が200兆円となれば、当然、これがマクロ経済に多大な影響を与える。しかしこのことを指摘する者がほとんどいない。

    本誌は04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」で日本経済のデフレ体質について見解を述べた。ここで日本経済をデフレに陥らせている大きな要因は、土地の売却代金と膨大な公的年金の積立金と指摘した。

    この両者は、国内消費を減少せしめ日本の有効需要を削いでいるのである。もちろんこれらの巨額の資金が実体経済に還流し、有効需要を創出しているなら、デフレの要因とはならない。しかしこれらの一部は有効需要創出の力が弱い分野に使われている。また直接的・間接的に海外に流出している部分がありその分内需を縮小させている。


    公的年金の保険料から年金支給額を差引いたものが積立金となる。公的年金の積立金が有効需要創出にそっくり使われていたら問題は起らない。以前、これらは住宅融資、高速道路建設などに使われていた。また今日よく問題になるグリーンピア施設や厚生年金会館の建設にも使われた。採算の問題を別にすれば、これらの金の使われ方の方がマクロ経済の上では問題は生じない。

    しかし高速道路建設への支出が抑制され、グリーンピア施設なんてとんでもないとなれば、最終需要に結びつかない使われ方が増えていると見られる。また筆者は直接的・間接的に海外に流出した部分も大きいと見ている。資金の海外流出は為替を円安にし輸出を増やす効果はあるが、トータルの有効需要創出にとってはマイナスと考える。


    年金制度そのものも問題である。今日の公的年金は、厚生年金や公務員共済に比べ国民年金は圧倒的に不利になっている。厚生年金の保険料の半分は会社が負担している。これを当然のことと受取られているが、この費用は製品に転嫁され、国民年金加入者もその分高い製品を購入していることになる。また保険料の会社負担分は税務上損金に算入され、法人税が小さくなっている。

    筆者は、日本の年金制度は、国に社会保障制度を整備する体力がなかった時代に創られたものであり、いびつな発展をとげたと考える。会社も人手不足の時代がずっと続き、会社に対する忠誠心を喚起する意味でも、会社による社会保障制度の維持に力を入れてきた。


    しかしGMの経営危機を見ればはっきり分るが、民間企業が従業員の社会保障や厚生を担うことに無理がある。当然、このようなことに力を入れている企業は、社会保障・厚生の小さい企業や社会保障・厚生のほとんどない国の企業との競争に負ける。また永遠に発展する民間企業や業界がないのに、年金という永遠に費用負担が生じる制度を保証するのはばかげている。


    日本の年金制度は公的年金に一本化するのが理想である。これによって年金保険料の徴収は基礎年金だけになる。もし公的年金だけでは年金の受給額が少なすぎると思う人は、個人で民間の保険会社と別の年金契約を結べば良いのである。しかし保険料として払込んだ5〜6倍以上もの年金受給を予定している厚生年金や公務員共済の加入者からは、当然、これに対して文句が出る。厚生年金や公務員共済の加入者は5〜6倍以上の年金を受取る既得権があると主張するのである。

    本来、年金制度を抜本的に改正するには、既得権の抹消から始める必要がある。しかし現実はそのようなことが無理である。したがって既得権者との妥協的な改正を押しすすめる他はないであろう。まず既得権者の将来の受給率を保証することである。50%程度の受給率を維持することが適当であろう。日本の場合退職金が大きくこれを勘案すれば、これで欧米の受給率と遜色のない水準になると考える。

    国民年金の受給水準も厚生年金や公務員共済に近付ける必要がある。このために一律の定額年金を新たに導入する。また国民年金への加入は義務ではなく任意とするのが適当である。さらに一律の定額年金を導入することによって無年金問題はほぼ解消する。これらの年金制度の改正を行えば、社保庁の職員はほとんどいらなくなる。


    公的年金の財源は、当面、巨額な積立金の取崩しから行う。また将来的には税金の投入である。消費税の増税もその候補になる。しかし公共投資の削減分をこれに充てることも考えられる。本誌は、10年前から、当分の間公共投資を増やし、団塊の世代が年金受給者になる頃に公共投資を削減し、これを年金に充てることを主張してきた。まさにそのような時代がやってきたのである。

    さらに年金制度改正によって国民の可処分所得を増やすことは、消費者主権の原理にかなうものである。これについては09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」で取上げた。これを参考にしていただきたい。



来週はバブルがつきものの資本主義経済の根本を考えてみる。



09/4/13(第565号)「筆者の経済対策案」
09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
07/10/1(第498号)「新総理総裁の誕生」
07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
07/2/5(第468号)「財界人と「合成の誤謬」」
07/1/29(第467号)「日本の財界人の自信」
07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
07/1/15(第465号)「日本の財界」
07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
06/12/11(第463号)「筆者の主張のサマリー」
06/12/4(第462号)「高速増殖炉にまつわる誤解」
06/11/27(第461号)「高速増殖炉の話」
06/11/20(第460号)「日本の核融合研究」
06/11/13(第459号)「将来のエネルギーの本筋」
06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」
06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
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