平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




09/4/13(565号)
筆者の経済対策案

  • 見切り発車の増産
    筆者が注目している三つ目の景気指標は日本の製品在庫指数と製品在庫率指数である。巷間、日本の在庫調整は概ね終わったと言われているが、その話が本当かということである。これらの直近の数字は2月まで公表されている。

    リーマンショック以降、生産指数はマイナスに転じ、2月には前年同月比で▲36.8%になった。これだけ減産が強化されれば過剰在庫も調整される。実際、製品在庫指数の方は前月比で▲4.2%と過去最大の減少となった。また前年同月比でも▲1.7%と、とうとう製品在庫は前年の水準を割込んだ。

    このように在庫が減ったせいか、2月までマイナスであった製造工業生産予測指数が3月、4月はプラスに転じている。これらの数字を見れば、日本の製造業の在庫調整は2月で終了し、3月から製造業は増産に転じると読み取れる。実際、自動車メーカの中には、一部の生産ラインをフル生産体制に戻しているところがあるという話である。


    しかし筆者が気になるのはもう一つの製品在庫率指数の動きである。製品在庫指数が単純に在庫の増減を示すのに対して、製品在庫率指数は在庫と出荷の関係を示す。出荷に対して在庫量が増えれば指数は100を越える。つまり製品在庫指数が変わらなくても、出荷が減れば製品在庫率指数は上昇するのである。

    日本の製品在庫率指数はずっと100近辺で推移してきた。筆者はこの指数がいつ見ても100前後なので、景気指標の中で一番つまらない数字と思っていた。本誌はこの製品在庫率指数を02/12/9(第277号)「ルーカスの子供達」で取上げたことがある。

    この時は構造改革派の「日本の消費が低迷するのは、日本の産業構造が古くなり新しい需要に向いていないから」という大嘘への反論に使った。もしその話が本当なら、日本のどこかに在庫の山があり、一方では製品供給の逼迫があるはずである。しかし日本の製品在庫率指数はほとんど100で推移していたのである。つまりずっと日本ではみごとに必要な物が必要なだけ供給されて来たのである。


    その製品在庫率指数に異変が起っている。昨年8月頃から上昇し始め、特にリーマンショック以降上昇のピッチが上がった。1月にはとうとう151.3ととんでもない数字になった。

    筆者が注目することは、2月の製品在庫指数が前述の通り大幅に下がったのに対して、逆に製品在庫率指数が158.2と上昇したことである。つまり2月の時点で在庫の水準は通常のレベルまで下がったが、出荷がさらに減少しているためか、出荷に対する在庫の過剰感が一段と大きくなっているのである。


    ここまでの話をまとめれば、2月で在庫は通常レベルに戻り通常の在庫調整は終了し、製造業は3月からは増産に転じるということになる。ところが出荷が回復していないので、製品在庫率指数は異常なくらいに上昇している。つまり3月からの増産が見切り発車という印象を受けるのである。3月から出荷が回復すれば過剰在庫は発生しないが、出荷が思ったほど伸びなければまた在庫が増えることになる。

    4月からの政府の景気刺激策や自動車関連の減税、また中国など新興国の需要増を期待しての増産と見られる。しかし例えば3月の新車販売が対前年同月比で▲25%と相変わらず不振である。つまり3月以降出荷が思ったように伸びなかったら再び在庫調整が必要になると考える。3月以降の製品在庫率指数は下がると思われるが、どの程度の低下か注目される。


    このように製造業が置かれている環境は不透明である。また今後サラリーマンの給料は横這いか減少する(公務員の報酬の引下げも検討されている)。業績との連動を強めたボーナスは確実にかなり減る。さらに年金保険料の増額も決まっている。このように可処分所得はますます小さくなるのである。


  • 公的年金制度の改正による経済対策
    9日に自民党の補正予算による追加経済対策案が固まった。事前の話では10兆円の規模であったが、ほんの数日で15兆円に増えたことになる。なんと唐突な話であろうか。しかし自民党にはこの追加対策をかざして総選挙に打って出るという思惑がある。つまり対策案がいい加減なものでも、額が大きい方が選挙に有利というくらいの認識しかないのである。

    ほんの数日で50%(5兆円)も増えるような対策の中味を、こと細かく吟味するなんてばかばかしいことである。もちろんこの予算案がいつ国会を通るのか不明である。もし野党がこれに反対し、麻生首相が国会を解散すれば、まさに藻屑となってしまう可能性がある追加対策案である。ただ言えることは速効性のある対策がほとんどないということである。事前に予想していたように本当につまらない追加対策と言える。


    次は本題の筆者が提案する経済対策案である。今回は細かい対策を積上げたような提案はしない。もちろん先週号09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」で示した「相応の規模」と「効果の速効性」の条件を満たすものである。


    筆者の提案は05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」で説明した年金改正案を手直ししたものである。ここで筆者は、積立て方式の現行の年金制度(厚労省は修正積立方式と呼ぶ)を税方式に変えることを提案している。

    現在、公務員共済を含めると公的年金の積立金は約200兆円もある。筆者の提案で重要なポイントはこの積立金の扱いである。もし完全に税方式に改正するとなると基本的に積立金は不要になる。そこで将来の年金支給を税金で賄うとしても、まず先にこの積立金の取崩しを行うのである。つまり積立金の残高が一定額に減少するまで増税は実施せず、それまでの年金の支給は積立金の取崩しで賄うということにする。


    また将来、税方式に移行するわけであるから国民一律の定額年金を新たに導入する。現在、厚生年金と公務員共済は基礎年金と報酬比例分の二段階であるが、これが三段階になる。国民一律の定額年金が加わるため報酬比例分はその分縮小する。また国民年金は基礎年金に定額年金がプラスされる。無年金者は定額年金だけとなる。

    年金の実情を知っている人のほとんどは、おそらく公的年金を税方式に変えることに賛成であろう。ただ保険料による積立方式も残し、両者の併用方式を唱える人もいるかもしれない。またどの程度の年金支給額を保証するかも議論になろう。しかしここでは経済対策の提案が目的であり、議論が錯綜するであろう年金の制度上の話は割愛する。


    筆者は、将来も継続される公的年金制度の改正は与野党とも政争の具にしないという暗黙のルールがあると信じている。与野党の間で税方式の導入または税方式への全面移行が決められたら、現在の公的年金の全部、あるいは一部はいらなくなる。前述のように増税開始までこれを公的年金の支給に使うのである。

    筆者はさらに一歩踏込んだ政策を提案する。ここ一年ないし半年の間に納付された年金保険料を納付者に返還することである。金額としては数十兆円の規模になると見込む。今後、給料やボーナスのカットが予想されるが、少なくともこれを越える額の返還が望ましい。ただ会社負担分(公務員共済の公的負担分を含む)も返還するかといった附随する話も出てくると思われるが、これについてはここでは割愛する。


    ただ積立金は財投債、国債、株式、社債などで運用されている。積立金取崩しのためこれらを大量に処分すれば市場価格は暴落する。そこで年金積立金を担保にした債券(以前本誌はこれを国債と表現していたが債券の方が適切)を発行することにする。

    もちろんこれを市場で売却することも考えられるが、大半は日銀が購入することにする。経済状態が良くなった頃から、年金の運用資産を少しずつ処分し、その資金で日銀が購入した債券の償還を行ってゆく。一連のこれらの対策は「相応の規模」と「効果の速効性」の点で優れた経済政策と考える。



来週は筆者提案の経済対策についてもう少し説明を加える。



09/4/6(第564号)「経済対策に必要な条件」
09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」
09/3/23(第562号)「GDP統計のマジック」
09/3/16(第561号)「リーマンショックの影響」
09/3/9(第560号)「筆者なりの仮説」
09/3/2(第559号)「政府紙幣(貨幣)論の評判」
09/2/23(第558号)「政府紙幣(貨幣)への巧妙な反対論」
09/2/9(第557号)「政府紙幣(貨幣)論の急な盛上がり」
09/2/2(第556号)「続・構造改革派の変節」
09/1/26(第555号)「マスコミの論調は過渡期」
09/1/19(第554号)「今年の為替と株価の動向」
09/1/12(第553号)「09年今年の景気」
08/12/22(第552号)「デフレ経済の本質と克服」
08/12/15(第551号)「ポールソン財務長官の退職金」
08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」
08/11/24(第549号)「デフレ経済を語る」
08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」
08/11/3(第547号)「クライン博士の本心」
08/10/20(第546号)「ノーベル経済学賞の流れ」
08/10/13(第545号)「株価暴落のトラウマ」
08/10/6(第544号)「マンキュー教授の分類」
08/9/29(第543号)「構造改革派の変節」
08/9/22(第542号)「上げ潮派の経済理論」
08/9/15(第541号)「経済成長の定式(モデル)」
08/9/8(第540号)「またも総裁選」」
08/8/11(第539号)「投資ファンド資本主義」
08/8/4(第538号)「福田改造内閣の行末」
08/7/28(第537号)「日米のバブル崩壊後の対応」
08/7/21(第536号)「相場の流れの転換か」
08/7/14(第535号)「市場参入阻止行動」
08/7/7(第534号)「原油価格高騰劇の背景」
08/6/30(第533号)「信用不安の再燃」
08/6/23(第532号)「原油価格の暴落予想」
08/6/16(第531号)「原油価格とファンド」
08/6/9(第530号)「経済グローバル化と日本政府」
08/6/2(第529号)「もう一つの「から騒ぎ」
08/5/26(第528号)「地球の寒冷化」
08/5/19(第527号)「ばかげた経済政策の連続」
08/5/12(第526号)「日米のバブル崩壊」
08/4/28(第525号)「救済劇の背景」
08/4/21(第524号)「りそな銀行の救済劇」
08/4/14(第523号)「日米の中央銀行総裁」
08/4/7(第522号)「小泉的なもの」
08/3/31(第521号)「超長期の為替変動」
08/3/24(第520号)「市場の最近の動き」
08/3/17(第519号)「積極財政への障害」
08/3/10(第518号)「構造改革派の言動」
08/3/3(第517号)「米国経済の行方」
08/2/25(第516号)「虚言・妄言を見破る方法」
08/2/18(第515号)「またもや虚言・妄言・・その3」
08/2/11(第514号)「またもや虚言・妄言・・その2」
08/2/4(第513号)「またもや虚言・妄言・・その1」
08/1/28(第512号)「戦争をしている国」
08/1/21(第511号)「サブプライム問題の本質」
08/1/14(第510号)「08年今年の景気」
07/12/17(第509号)「サブプライム問題の根源」
07/12/10(第508号)「「金余り」と日本政府」
07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」
07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」
07/11/19(第505号)「金融当局の敗北」
07/11/12(第504号)「「金余り」の徒花」
07/11/5(第503号)「米国のサブプライム問題」
07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」
07/10/22(第501号)「増税派と成長派」
07/10/15(第500号)「プライマリーバランスの話」
07/10/8(第499号)「不況下の物価上昇」
07/10/1(第498号)「新総理総裁の誕生」
07/9/24(第497号)「GDP統計の読み方」
07/9/17(第496号)「安倍首相の辞任劇」
07/9/10(第495号)「経済数字の実感との乖離」
07/9/3(第494号)「内閣改造に対する感想」
07/8/6(第493号)「自民党の自殺」
07/7/31(第492号)「07年参議院選挙の結果」
07/7/23(第491号)「参議員選の注目点」
07/7/16(第490号)「またもやデマ選挙か」
07/7/9(第489号)「参議院選挙の比例区」
07/7/2(第488号)「ポンカス政党」
07/6/25(第487号)「歴史の教訓」
07/6/18(第486号)「歴史教科書の上での抹殺」
07/6/11(第485号)「老舗に伝わる歴史」
07/6/4(第484号)「金・銀の産出量と経済」
07/5/28(第483号)「荻原重秀と新井白石」
07/5/21(第482号)「インフレと歴史教科書」
07/5/14(第481号)「インフレへの警戒感」
07/5/7(第480号)「日本の公務員」
07/4/23(第479号)「米国の構造改革派」
07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
07/2/5(第468号)「財界人と「合成の誤謬」」
07/1/29(第467号)「日本の財界人の自信」
07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
07/1/15(第465号)「日本の財界」
07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
06/12/11(第463号)「筆者の主張のサマリー」
06/12/4(第462号)「高速増殖炉にまつわる誤解」
06/11/27(第461号)「高速増殖炉の話」
06/11/20(第460号)「日本の核融合研究」
06/11/13(第459号)「将来のエネルギーの本筋」
06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」
06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
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06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
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