- 米国市場の混乱の再燃
今週は予定を変更して米国市場の混乱の再燃を取上げる。先週号で原油価格の今回の高騰劇は最終局面に来ていると述べた。しかしその原油価格がついに140ドルを突破した。6月22日に産油国と消費国の会議が持たれ、サウジアラビアが原油増産を表明した(後日クウェートが増産を表明)。これに反応したのか原油の先物価格は132ドルまで一時的に下がったが、しかしその後また上昇に転じた。
石油市場に限って言えば、現物の需給はかなり緩んでいると思われる。価格上昇によってさすがの米国のガソリン消費も減少している。新興国の消費が多少増えていても、むしろ世界全体の在庫は増えているものと見られる。それにもかかわらずの価格上昇であり、まことに奇妙な現象が続いている。これも投機マネーが依然商品市場に流れ込んでいるからである。
投機マネーの動きを読むことは難しい。しかし今の投機マネーの流れについてのポイントはいくつかある。原油先物市場を含め、今日商品市場に流入している資金は、株式市場、為替市場、債券市場を睨みながら移動している。
まず為替市場で注目されていることは、7月3日の欧州中銀(ECB)の0.25%の利上げ観測である。ユーロ金利が上昇すれば、米ドルが下落し、これが原油価格の上昇に繋がるという図式である。しかし欧州の株価は相当下落している。それにもかかわらず本当にECBが利上げをするのか注目される。
米国の株式市場は下落を続けている。減税の効果も多少あり実態経済は底割れ状態ではないが、厳しい状況は続いている。さらにここにきて金融機関の信用不安がまた再燃しており、これがNY株式市場の下落要因となっている。4〜6月で米シティ銀行が新たに1兆円の不良債権の追加償却に迫られているという話である。メリルリンチにも資産の評価損の拡大予想が出ている。他の大手金融機関やモノラインについても格下げがあった。
米政府はサブプライムローン問題はほぼ見通しがついたとしている。しかし他の資産の評価損や貸倒が増えている。具体的にはクレジットの破綻や商業用の不動産担保融資の焦げ付きの発生などである。7月の中旬に米国大手金融機関の4〜6月期の決算が公表される。筆者はそれまで株式市場の不安定な動きが続くものと見ている。もし株式市場が不調なら、株式市場から一部の資金が商品市場に流れ(その他の一部は債券市場に)、原油先物価格をさらに押上げる可能性がある。
サブプライムローン問題の表面化に対して、米国の当局はこれまで減税と連続利下げで対処してきた。さらにFRBは3月16日にはベアー・スターンズに緊急的な特別融資を決めた。これらの当局の一連の対策によって、米国の金融不安は峠を越したものと市場に安心感が漂った。その後米国の株価も急速に回復した。
しかし5月半ば、2〜4月期の証券会社の決算発表の頃から様子が変わってきた。米国金融機関の信用不安が再び頭を持上げてきたのである。しかし当局には利下げなどの大きな次の一手がない。これを見透かすように投機資金が活発に動いているのである。
- 次の対策
筆者はサブプライムローン問題のピークは8月頃と見ている。住宅価格上昇のピークは06年8月であり、これ以降のサブプライムローンの貸出しは急減している。サブプライムローンは、最初の2年間、低金利の返済がなされる。つまり08年8月には破綻懸念のある貸出し案件のほぼ全部が表面化するものと見られる。
しかし米大手金融機関の不良債権はサブプライムローンだけではない。例えば商業用不動産向けの融資残高は3兆ドルもある。サブプライムローンが1兆ドルであることを考えるとかなりの規模である。商業用不動産向けの融資は、サブプライムローンほどには杜撰に実行されたとは思われない。しかし商業用不動産の価格もバブル崩壊で下落が続いている。
住宅価格の下落ペースは昨年比二桁と一向に落ちていない。住宅価格の下落は今後も続くものと見られる。ただ筆者は08年8月までにはこの下落率は穏やかなものになると予想する。
しかし仮にサブプライムローン問題が峠を越え、住宅価格の下落率が小さくなっても、依然住宅価格の下落は当分の間続くのである。もし住宅価格の下落は続くことによって、10兆ドルの住宅のプライムローンに貸し倒れリスクが飛び火すれば収拾のつかない事態になる。つまり住宅価格や商業用不動産価格の下落が続く限り、今後も金融機関の信用不安は続くことになる。今年後半に米国で利上げが行われるという観測があるが、とても利上げできる状況ではないと筆者は見ている。
前段で述べたように、4月以降、米国政府やFRBに目立った動きがない。米ドル安を牽制する口先介入くらいである。おそらく減税や利下げの効果を見極めるということであろう。しかしこれと言った対策がないのも事実である。
しかし前段で述べたように米国大手金融機関の4〜6月期の決算が公表される7月半ば前後まで、市場の不安定な状況が続きそうである。当局が恐れるのは、株価下落や石油価格の高騰が実態経済に悪影響を与えることである。これらが原因でマクロ経済の回復が阻害されれば、住宅価格のさらなる下落を招く。またこれらの資産価格の下落が続けば、金融機関の経営安定がさらに遠のくということになる。まさに最悪のスパイラルに陥る。
最近の市場の動きを見ていると、筆者は、洞爺湖サミットの前までに、米当局によって次なる対策が打出されるのではないかと思っている。そこまで米国政府は追い詰められている。ただ財政政策や金利政策は無理である。しかし今年は大統領選挙の年であり、何らかの追加対策が出るものと見ている。
現時点での筆者が考える対策は、まず政府、あるいは政府機関による住宅資産の買い上げによる住宅価格の安定化策である。もう一つは原油先物市場や商品市場の規制の強化である。原油先物市場では監視の強化がなされているが、さらにもう一歩進んで規制を強化するのである。原油先物市場や商品市場が安定すれば、もう一段の利下げが可能になる。
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