- 米国当局の機動的な動き
今週は日米両市場の最近の動きにスポットを当てる。先週の相場の動きは予想通りの波乱含みであった。NYダウ平均は大幅な上昇と下落を繰返した。しかし米国の当局が機動的に対策を次々に打ったので、それほどの混乱には到らなかった。異例と思われる16日の日曜日に、公定歩合の引下げと証券会社ベアー・スターンズに対する連銀の特別融資を決めた。これは月曜日に始まるアジア市場を意識した措置であった。
その17日にベアー・スターンズをJPモルガンが一株2ドルで買収することを決めた。18日にはFOMCがFFレートを0.75%引下げた。利下げ幅の市場予想(希望)は1%であったが、当局は0.75%にとどめた。それでもFFレートが2.25%になり、物価上昇率のコア指数を考えると実質金利がほぼゼロ金利となった。
先週から、相場つきと言おうか、市場の反応が変わってきた。NY株式相場の上昇要因であった原油先物などの商品市場の下落が、逆に株価の下落要因になった。かっては原油価格の上昇が物価高要因となり、結果的に利下げの障害になると考えられてきた。つまりこれまでは原油価格の上昇は株価の下落要因であり、下落は株価上昇要因であった。
しかし今後のFRBの利下げ継続がはっきりしている限り、商品相場の下落は企業業績の悪化要因という側面だけが際立つことになる。つまり原油安による石油会社の業績悪化予想がダウ平均を引下げることになったのである。このように相場の変動要因はコロコロ変わるものである。
ベアー・スターンズ株の買取り価格の一株2ドルは衝撃的であった。半年前の40分の1である。さすがにもう少し高いところで最終価格は決まりそうであるが、大手の証券会社がいとも簡単に実質的に破綻したことを意味する。日本では考えられないことである。
ベアー・スターンズは資金繰りに窮して破綻した。同社は、他の証券会社よりリスクの高い証券に対する投資比率が大きかった。ところが高リスク証券の市場での取引がほとんどなくなったのである。したがって手持ちの高リスク証券を現金化することができなくなった。そしてトドメは格付機関の格下げによって新規社債の発行が困難になったことである。
今、米国の金融機関の経営実態を知ることが難しい。米国企業は時価会計を採用している。しかし時価といっても市場が機能していることが前提である。ところが高リスク証券の市場は取引が無いため、時価といっても金融機関の恣意で決められている可能性がある。ベアー・スターンズも17日(JPモルガンが買収を決めた日)に、わずかであるが黒字(一株当たり0.9ドル)の四半期決算を発表する予定であった。つまり資金繰りさえつけば、ベアー・スターンズは黒字決算を公表し、いまだ存続していた可能性がある。
このように米国の金融機関の経営実態は、決算発表だけを見ていては分らないのである。そしてベアー・スターンズだけが高リスク証券に投資をしていたわけではない。日本で起ったような「資産査定を厳しくしろ」という愚かな声が強まれば、これが米国の金融機関のリスクとなると筆者は考える。またサブプライムローン問題は峠を越えたという一部の声は甘いと見る。例えばモノラインも延命策が施されているに過ぎない。
- 外人好みの国
米国経済は悪化を続けている。2月の住宅着工件数は、年率換算106万戸と対前月でわずかな減少にとどまっている。しかし住宅建設の先行指数である住宅建設許可件数は98万戸とかなり大幅に減少している。車の販売台数も確実に減っている。他の経済指標も悪くなっている。
ところで米国経済の実態が確実に悪化しているのに、NYのダウ平均だけ下落率が小さい。値下がりが目立っているのは金融株だけである。これはダウ平均を構成する大手の多国籍企業の業績が、それほど悪くなっていないからと考える。さらに米ドルの全面安によって、多国籍企業の海外からの収益の受取りが米ドル換算で大きくなっている。これが大手多国籍企業の収益を下支えしている。
つまりNYダウ平均の動きは、米国全体の経済の実態を今のところ正しく反映していないと言える。むしろ対象企業が多いS&P500の方が、米国経済の実態をより早く反映していると見られる。このS&P500が最安値を記録した後、しばらくしてNYダウが最安値を記録するという具合である。つまりS&P500がNYダウの先行指標となっている。
米国市場の乱高下を受け、日本の株式と為替の相場が動いた。前の週の金曜日(14日)にNYの株式市場が下落し円高が進んだため、特に17日の月曜日には日経平均が12,000円を割込み、円は95円台をつけた。しかしその後は、株式市場は少し持直し、円高も一服状態である。
先々週の第2週、つまり3月の10〜14日の外国人投資家の日本の株式市場での売り越し額が9,200億円と過去二番目の記録になった。ちなみにこれまでの一番は87年のブラックマンデー時の1兆1,200億円である。この影響もあって、14,000円まで戻していた日経平均が12,000台前半まで下落した。
この外人の売り越しを見て、また「日本売りだ」という声が上がっている。改革が後退しさらに日銀総裁も決められない日本に、外人が見切りをつけたという解説がなされている。しかし筆者に言わせれば何の説得力もない話である。外人が日本株を売ったと言っても、持株全体から見れば微々たるものである。
筆者は、日本株売り越しの一番の要因は円高と見ている。日本株は下がっているが、2割くらい米ドル安・円高になっているのだから、外人から見れば日本の株はそれほど下がっていないことになる。その日本の株価が一時的に14,000円まで回復したのだから、米ドル建てで見れば、利益の出ている銘柄も結構あるはずである。米国本国で資金繰りに窮しているヘッジファンドや投資銀行が、日本株を売っても何ら不思議ではない。
「日本売りだ」と騒いでいる人々は単なる間抜けである。ただ今後も円高が進んだ局面では、株高になれば外人が売ってくるものと考える。株価が上がった場面から急落したら外人が売っていると思えば良い。
日本株の上昇のためには外人の買いが必要という意見が多い。たしかに売買高の6割を外人が占めている。そのために日本を外人好みの国にしなければならないと言うのである。さもしい証券関係者に多い言い分である。しかし買ったものは、今回のようにいつかは売ってくるのである。
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