平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


ゴールデンウィークにつき来週は休刊。次回号は5月7日です。

07/4/23(479号)
米国の構造改革派

  • 保護主義の敗北
    今週は米国での構造改革派の動きを中心に述べたい。先週号まで卑怯な構造改革派の生態について書いてきた。構造改革派が、誰の味方で、誰を擁護したがっているか指摘してきたつもりである。もちろん平均的な国民ではない。

    構造改革派が守りたい相手は、まず国際的に事業を行っている多国籍企業、特に中国に生産拠点を移しているようなところである。また構造改革運動は何も日本だけのものではなく、世界的な動きである(本誌ではアルゼンチンの構造改革の破綻を取上げたことがある)。米国でもこの構造改革派は大きな力を発揮している。


    9.11の同時テロに際し米国民は久々に愛国心に燃え、皆、星条旗を掲げ、ニューヨークの街は星条旗で埋めつくされた。ところがこの星条旗は中国製である。米国は、米ドルの価値を実力以上に維持してきたため(外国からの資金流入を野方図に放置)、あらかたの製造業は海外に移転してしまっているのだ。星条旗を製作する会社なんて、とっくの昔になくなっているのであろう。

    中国の人民元は為替操作によって異常な安さに維持されている。当然、米国にも国内の産業を守ろうという動きがあり、これに賛同する政治家は、中国の人民元の大幅切上げを主張している。しかし彼等は保護主義者としばしば批難の対象になる。

    しかし中国に進出した米国の多国籍企業にとって、人民元が安いことが大きなメリットになっている。米国の国内産業を守ろうという保護派の政治家は、国際大手資本の手先である構造改革派の攻撃の的になっている。そしてこの構造改革派とおそらく中国のロビィスト(チャイナロビー)の活躍によって、いつも米国の中国人民元切上の要求は腰砕けになっている。


    先週号でお話した金融関連(証券や保険など)も構造改革派のお得意様である。構造改革派は常に金融の規制緩和と自由化を主張する。しかし行き過ぎた規制緩和と自由化は、しばしば問題を起こした。この規制緩和の流れに乗じて粉飾決算を行っていたエンロンやワールドコムが破綻し、規制緩和から規制強化に米国の証券行政の流れが反転した。

    このため四半期決算の公表内容が細かくなったりして、企業の負担が増えた。たしかにこの結果、規制の緩い欧州市場に取引や新規上場が流れ、米国の金融市場は守勢に立たされている。この動きを再び反転させようという動きが米国にある。この先頭に立っている人物が、構造改革派と目されているCEA(米大統領経済諮問委員会)委員長も務めたコロンビア大学(ビジネススクール)学長のグレン・ハバート氏(竹中平蔵氏に近い経済学者)である。


    規制強化で競争力を失った米国の証券市場を活性化しようというものである。ウォール街出身のボールソン財務長官もこの動きを後押ししているようだ。しかし規制緩和は投資家にとっては不利益になりかねない動きである。

    筆者から見れば、グレン・ハバート氏の行動は明らかに証券会社や上場企業の利益に沿うものである。筆者が不思議に思うのは、米国の学者がこのような利害が対立する問題に、一方の利益を守るため躊躇なく精力的に活動することである。そしてこのような行動こそが構造改革派の学者の本質と筆者は考える。


  • もっともらしい構造改革派の理論
    米国の国民の国家観というものが希薄である。米国は移民の集合体で歴史の浅い国であり、米国国民と言っても国家観というものが醸成されていない。例えば中国は米国にとって軍事面での仮想敵国のはずであるが、その敵の中国の経済成長を助けているのが当の米国である。

    経済成長に伴い、中国は急ピッチで軍事力の強化を行っている。中国の経済成長の原動力になっているのは、中国に進出している米国などの外国資本であり、その製品を大量に消費しているのが米国である。米国は、中国の軍事力を牽制するため軍事費を使い、一方で中国の軍事力の強化を助けている。このように政策に一貫性のない米国はまことに変な国である。プラグマティズム的といえばそれまでだが、あまりにもご都合主義過ぎる。

    昔、日米の間に激しい通商摩擦があった。日本製のラジカセがたたき壊されたりした。しかし保護主義と批難されようと、当時の米国民のこのような感情や行動というものの方がまともだったかもしれない。


    共和党の政権は、どちらかと言うと自由主義経済の信奉者が多く、国際主義的である。したがって構造改革派にとって入り込む余地が大きい。しかし民主党の方が親中派が多い。次期の米国大統領の有力候補のヒラリークリントン氏も中国との関係が深いと噂されている。

    このように次期大統領が共和党であろうが民主党であろうが、中国に甘い政策が続くと予想される。筆者は最近、構造改革派の対立軸は国家主義派(国によっては民族派)ではないかと考える。自国民が犠牲になっても市場を開放する代わりに、多国籍企業(金融関連を含め)の外国への進出を認めさせるというのが構造改革派の主張である。構造改革は必然的にグローバルリズムに繋がるのである。


    構造改革派のバックボーンには経済理論みたいなものがある。極めて単純な古典派経済学の理論である。例えばグレン・ハバート氏のような学者らしき(学者としての業績は不明だが時の権力に取入ることに卓越している)人物がこのような流れを主導している。この周りに色々なエコノミストやマスコミ、そして政治家がたむろし、構造改革派を形成している。

    構造改革の主張はもっともらしい。市場開放で一部の国民が犠牲になっても、もっと生産性の高い分野に労働と資本が移動すれば良いと言う。また一部の国民のデメリットより消費者全体のメリットの方が大きいと説く。このようなプロパガンダが効くのか、米国民は、一部の国民の利益を守ろうとする行動を保護主義と決めつける構造改革派の口車に簡単に乗せられる。


    また構造改革派は、市場開放による競争激化が自国産業を強くするともっともらしいことを主張する。しかし中国のような為替を異常なくらい安く操作している国とまともに競争するには、産業分野によっては生産性を3倍にする必要がある。しかしこのようなことは不可能である。

    結果を見ても明らかのように、米国の製造業の弱体化は酷いものである。構造改革派の言っていたことが、全くのデマでありデタラメであったことが証明されたと言って良い。ここまで述べてきたように構造改革派の言動は世界的にかなり共通している。ただ今のところ日本は、米国ほどには構造改革派による破壊活動は進んでいない。これも日本には国家としての体裁がまだ残っているからと筆者は思っている。



ゴールデンウィークにつき来週は休刊させていただき、次回号は5月7日に予定。テーマは未定。



07/4/16(第478号)「構造改革派の正体」
07/4/9(第477号)「構造改革派とカルテル」
07/4/2(第476号)「構造改革派の生態」
07/3/26(第475号)「構造改革派の落日の始まり」
07/3/19(第474号)「超円高になる条件(その2)」
07/3/12(第473号)「超円高になる条件(その1)」
07/3/5(第472号)「今回の円高の分析」
07/2/26(第471号)「為替動向を占うポイント」
07/2/19(第470号)「今日の円安を考える」
07/2/12(第469号)「「女性は子供を産む機械」発言」」
07/2/5(第468号)「財界人と「合成の誤謬」」
07/1/29(第467号)「日本の財界人の自信」
07/1/22(第466号)「日本の財界の変質」
07/1/15(第465号)「日本の財界」
07/1/8(第464号)「面白みがない景気予想」
06/12/11(第463号)「筆者の主張のサマリー」
06/12/4(第462号)「高速増殖炉にまつわる誤解」
06/11/27(第461号)「高速増殖炉の話」
06/11/20(第460号)「日本の核融合研究」
06/11/13(第459号)「将来のエネルギーの本筋」
06/11/6(第458号)「LNG(液化天然ガス)の話」
06/10/30(第457号)「筆者の国防・防衛論」
06/10/23(第456号)「日本の核武装論」
06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
05/12/19(第418号)「日本人の変質」
05/12/12(第417号)「日本的経営の行く末」
05/12/5(第416号)「アメリカ人」
05/11/28(第415号)「遠ざかる豊かな社会」
05/11/21(第414号)「移民問題と市場経済」
05/11/14(第413号)「ブリエアの解放者たち」
05/11/7(第412号)「第三次小泉内閣の感想」
05/10/31(第411号)「現実経済の乗数値」
05/10/24(第410号)「公共投資に伴う誘発投資」
05/10/17(第409号)「誘発投資の拡張版」
05/10/10(第408号)「経済理論上の乗数」
05/10/3(第407号)「政治家達の沈黙」
05/9/26(第406号)「大谷氏への公開質問状」
05/9/19(第405号)「デマの検証」
05/9/13(第404号)「選挙結果の雑感」
05/8/29(第403号)「今回の総選挙を読む」
05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」
05/8/8(第401号)「中国経済の本当の脅威」
05/8/1(第400号)「中国の為替戦略」
05/7/25(第399号)「経済のグローバリズムの行末」
05/7/18(第398号)「経済のグローバリズムの本質」
05/7/11(第397号)「郵政法案と小泉政権の行方」
05/7/4(第396号)「経済のグローバリズムと競争の公正」
05/6/27(第395号)「日本語の研究」
05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」
05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」
05/6/6(第392号)「公的年金とマクロ経済」
05/5/30(第391号)「マクロ経済政策で解決するもの」
05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」
05/5/16(第389号)「ヴァーチャルなもの(その1)」
05/5/9(第388号)「中国進出の主導者」
05/4/25(第387号)「鎖国主義への誘惑(その2)」
05/4/18(第386号)「鎖国主義への誘惑(その1)」
05/4/11(第385号)「ノストラダムスの大予言」
05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」
05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」
05/3/21(第382号)「人とグローバリズム」
05/3/14(第381号)「資本とグローバリズム」
05/3/7(第380号)「貿易とグローバリズム」
05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」
05/2/21(第378号)「マスコミが流す誤った概念」
05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」
05/2/7(第376号)「日本のマスコミの体質」
05/1/31(第375号)「財政当局の変心」
05/1/24(第374号)「経済成長の条件(その2)」
05/1/17(第373号)「経済成長の条件(その1)」
05/1/10(第372号)「中国経済の実態」
04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」
04/12/6(第370号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その3」
04/11/29(第369号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その2」
04/11/22(第368号)「構造改革派の常套手段」
04/11/15(第367号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その1」
04/11/8(第366号)「第二次南北戦争」
04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」
04/10/25(第364号)「クライン博士を招いてのシンポジウム」
04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」
04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」
04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」
04/9/27(第360号)「豊かな社会ーー競争と共生」
04/9/20(第359号)「レーガンの規制緩和の実態」
04/9/13(第358号)「今こそ大胆な政策転換を」
04/9/6(第357号)「虚言・妄言が跋扈する世の中」」
04/8/30(第356号)「日本の「韓国化」」
04/8/2(第355号)「日本の分割統治」
04/7/26(第354号)「自民党大敗北の要因分析」
04/7/19(第353号)「参院選で見たもの」
04/7/12(第352号)「日本のエネルギー自立政策」
04/7/5(第351号)「危うい石油の確保」
04/6/28(第350号)「テロと中東石油」
04/6/21(第349号)「対談の論点(再)」
04/6/14(第348号)「対談の論点」
04/6/7(第347号)「富の分配と公正」
04/5/31(第346号)「小泉首相訪朝の成果」
04/5/24(第345号)「日本に必要な財政赤字政策」
04/5/17(第344号)「土地売買の盲点」
04/5/10(第343号)「日本経済の体質と財政政策」
04/4/26(第342号)「凍り付くマネーサプライ」
04/4/19(第341号)「デフレ体質の日本経済」
04/4/12(第340号)「火星の土地」
04/4/5(第339号)「円高は構造的」
04/3/29(第338号)「規制緩和に飛びつく人々」
04/3/22(第337号)「矛盾の出発点」
04/3/15(第336号)「日経の貧乏神」
04/3/8(第335号)「実感なき経済成長」
04/3/1(第334号)「為替介入ではなく財政支出を」
04/2/23(第333号)「為替介入への道」
04/2/16(第332号)「為替介入資金の働き(その2)」
04/2/9(第331号)「為替介入資金の働き(その1)」
04/2/2(第330号)「為替介入政策の限界」
04/1/26(第329号)「今日の政治課題」
04/1/19(第328号)「今年の政局の課題」
04/1/12(第327号)「今年の日本の景気」
03/12/15(第326号)「日本の公的年金」
03/12/8(第325号)「足利銀行の破綻処理」
03/12/1(第324号)「日本経済を支えているもの」
03/11/24(第323号)「総選挙結果から見えるもの」
03/11/17(第322号)「総選挙結果の分析」
03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
03/5/12(第296号)「滝田洋一氏への反論」
03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
03/4/21(第294号)「逆噴射の財政政策」
03/4/14(第293号)「危機管理下の経済政策」
03/4/7(第292号)「国債の管理政策」
03/3/31(第291号)「経済再生政策提言フォーラム」
03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
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