- 下支えによる日本経済
年頭に当たり、今週号は今年の景気予想を行いたい。一昨年は面白みがないと予想を取り止めた。どうせ日本経済は底辺にへばりついているのだから、多少上向こうが、下がろうが平均的な国民の暮らし振りに大した変化はないからである。
全体の経済のパイの大きさが変わらないのだから、所得が増えた人がいれば、その分所得が減る人がいるという塩梅である。昨年、所得の格差が大きくなったと世間はようやく騒ぎ出したが、ずっと前からこの傾向は続いていたのである。
面白くないことを承知に、昨年は年初に景気の予想を行った06/1/16(第420号)「今年の景気予想」。まずこの予想の結果の吟味から始めたい。概ね予想は当ったと見ているが、外れたところもある。外れたと判断されるのは住宅投資の推移である。一応「団塊ジュニア世代の住宅購入があり底堅く推移する」と昨年は予想したが、当時、耐震強度偽装問題が騒がれており、多少なりとも住宅投資は減るのではと予測した。
しかし昨年は前年を少し上回りそうである。新設住宅着工件数自体は02年度の114.6万戸をボトムに、03年度117.4万戸、04年度119.3万戸、05年度124.9万戸と徐々に増える傾向にある。
昨年はたしかに1月こそ年率換算ベースで116.9万戸と不振であったが、尻上がりに住宅着工件数は増えており、特に11月(最新データ)は年率換算で135.8万戸と近年にはない活況(ちょっとこの数字は信じ難い)と言えるような水準である。このままの推移なら、今年度は130万戸前後の数字になりそうである。ボトムであった02年度と比べると約15万戸も住宅着工件数が増えている計算になる。
15年前までは150万戸前後であった年間の住宅着工件数が130万戸台なのだから、絶好調とまでは言えないが住宅建設はたしかに回復している。もちろん着工件数がそのまま住宅投資額に比例はしないが、住宅建築が日本経済の下差さえをしていることは事実であろう。
しかし一方消費は予想通り依然不調である。95年度、96年度がかろうじてプラスであったが、それ以降10年以上も消費支出はずっとマイナスを続けている。名目の所得が増えていないのだから当り前の話ではある。自動車の国内販売も伸びていない状態で、軽自動車の販売台数が増えているのだから、普通車の販売は減っている。
住宅建設が好調なのに対して、一般の消費や普通自動車の販売の不振が好対照をなしている。これも日本人の資産や所得の二極化(格差)を反映したものと考える。新築住宅を購入できる人々(資産があり安定した収入がある)がいる反面、消費額を削っている人々がいる。またどうしても車が必要な人々の一部は、普通車から軽自動車に乗り替えていると見られる。
もう一つ筆者が予想を外したのが為替の動向である。日本の経常収支は大きな黒字を続けており、はっきりと明言はしなかったが、どこかの時点で円高に転換するのではないかと予想した。たしかに日銀が量的緩和を止めたり、ゼロ金利政策を止めた瞬間には為替は円高に振れた。しかし日銀の追加利上げが当分ないことがはっきりしてからは、為替は円安に逆戻りしている。特に対ユーロでは最安値を更新している。
政府は景気が良くなったと喧伝しているが、世間では誰もそんな話を信じていない。昨年の日本経済は、円安と住宅投資に下支えされ、かろうじて底割れを回避しているのである。実際、好調なのは不動産関連と輸出企業、そして輸出企業の設備投資に関連した企業だけであった。
- 昨年とほぼ同じ予想
次は今年の景気予想の番であるが、本当に面白みがなく気が進まない。昨年の06/1/16(第420号)「今年の景気予想」を読み返してみたが、今年はそっくりこのままでも良いとさえ思われるほどである。正直言ってこのような状況がここ6、7年続いている。
気をとり直して今年の予想を行う。例年どおり各需要項目の予想を積上げて予想する。はっきりしているものから取上げる。政府支出は昨年とほぼ同レベルである。公共投資は減るが、社会福祉予算は増える。消費は金額が大きいが、トータルでは大きな変動はないものと見る。名目所得が伸びないのだから消費が大きくなるはずがない。むしろ定率減税の廃止や年金納付額が増えるので、消費支出はマイナスになる可能性がある。ただ団塊の世代の退職者の退職金からの消費が期待される(反面、団塊世代の所得が減り、この面では消費にマイナス)。
民間の設備投資は変動が大きい。たしかにバブル崩壊後の長い低水準の設備投資の反動という面はあったが、ここ数年、設備投資は好調であった。特に輸出関連企業の設備投資は伸びてきた。しかし末端の国内需要は冷え込んだままである。日経新聞はいつも設備投資が依然好調と言っているが、数字を見る限り、筆者は設備投資は下降トレンドに入ったと見る。実際、機械受注額は7月から4ヶ月連続して対前年比でマイナスである。筆者は、国内経済が不調なのに設備投資だけがいつまでも増え続けるという状況を想定できない。
輸出は依然好調を続けると見る。国内向けの機械受注額が伸び悩んでも、機械類の輸出は伸びるものと考えられる。特に対米ドル、対ユーロで円安が進んでいるため、日本企業の輸出圧力は相当大きくなっている。
輸入は国内の経済が不調のため伸びないと見る。特に原油代も落着いており、場合によっては輸入金額が減少することも考えられる。これらの結果、輸出額から輸入額を差引いた純輸出額は大きくなる。そして貿易・サービス収支の黒字幅はまたもや大きくなると思われる。
よく判らないのが住宅投資の動向である。日本の経済が二極化した影響か、住宅のような高額商品の販売動向を読むのが難しくなった。そろそろピークと思われた住宅建設であったが、少なくとも昨年の末までは好調を維持した模様である。
それにしても所得が伸びない中で、住宅だけが好調を続けることは不自然である。自動車販売に見られるように、住宅の販売もいずれ頭打ちになるものと考えられる。それが今年なのか来年なのか分からない。ただ日銀の追加利上げの話が昨年の半ばからあり、これに急かされて住宅を購入した向きがある。もしこの反動があれば、案外早く住宅投資が失速する可能性がある。
ここまでの話を総合すれば、今年も日本経済は良くないという結論になる。内需の不振が依然続き、日本経済は一層外需依存の度合を強めることになる。そして不透明なのが為替の動向である。いつ円高になっても不思議はないのであるが、キヤリー取引というものが大きくなっているため、むしろ異常な円安になっている。世界的に見ても、為替が経常収支を均衡させる働きをなくしている。
今年は為替が大きく変動する可能性はある。しかし中国の人民元が米ドルにまとわりついているため、急激な米ドル安・円高とは簡単にはならない。また仮に為替が円高になっても多少のことでは、日本経済に大きな影響はないと考える。
設備投資や住宅投資の動向は不透明であるが、日本の経済は低迷したまま推移すると思われる。外需だけで日本経済を支えると言っても限界がある。もし一段の冷え込みがあるとしたなら5月頃と見ている。この点の見通しについては昨年も全く同じことを述べた(昨年は「景気の変換点があるとしたなら、5月頃ではないかと筆者は予想している」と述べた)。
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