平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




06/10/23(456号)
日本の核武装論

  • 間抜けなIAEA
    今週はまず北朝鮮の核実験について取上げる。爆発規模があまりにも小さかったため、今回の核実験は失敗だったという説が根強く流れている。そのため今後も核実験が続けられるという観測がある(北朝鮮首脳部と会談した中国外交部は、北朝鮮はもう実験をやらないと言っているが)。

    今回の失敗の主な原因として「プルトニウムの核爆弾であったこと」と「無理に核爆弾を小型化したこと」の二つことが挙げられている。原子爆弾にはウラン型とプルトニウム型の二つがある。ウラン型の方が仕組みが簡素で製造しやすいと言われている。しかしウラン濃縮のための遠心分離器が膨大な電力を食うため、電力不足の北朝鮮は難しい方のプルトニウム型の開発を行ったという指摘がある。

    また核弾頭をミサイルに搭載できるよう小型化を同時に行っていたと考えられている。核兵器は大型の方が作りやすく、小型化する方が難しい。実戦で使えるように各国で核兵器の小型化が試みられているが、最近になってようやく米国が成功したくらいである。このように北朝鮮は始めから高いハードルの核開発を行ってきたという観測である。


    強力な兵器の開発と言えば、直に核兵器という発想がある。しかし核兵器自体は60年以上も前に開発された古い兵器である。ところがこの古い兵器を手に入れようと意地になっている国が実に多い。これは核兵器が恐ろしい兵器と長年言い広められてきたことが影響していると考える。

    そのため核兵器はシンボリックな存在になった。何か核保有国が特別な存在として受取られている。特に日本ではそうである。しかし恐い兵器なら他にも沢山あるはずだ。他の大量破壊兵器としては化学兵器や生物兵器が知られている。筆者は、これらの大量破壊兵器より、強力で有効な兵器が既に開発されていたとしても不思議はないと考えている。


    ところが日本では核開発に触れること自体が固い禁止事項になっている。非核三原則(持たず、作らず、持込ませず)の論議をすることさえタブーである。憲法の改正でさえ議論になっているのに、非核三原則に触れるだけで今日マスコミから猛攻撃を受けるのである。日本のマスコミ人は本当に頭がおかしいのである。

    事実上、日本が核開発を行うことは無理である。IAEA(国際原子力機関)の査察が日本に対して特別に厳しいからである。IAEAの査察予算の10%が日本で使われている。驚くことに昔は予算の半分以上が日本の査察に使われていたという話である。つまりIAEAの存在と目的が日本の核武装の阻止であったと言える。最近聞いた関係者の話では、IAEAの日本に対する査察は以前と変わることなく厳しいと言う。

    核開発の潜在能力が高い国としては他にドイツがあるが、最近ドイツは原子力発電に消極的であり、将来の脱原発を目指している。またドイツはEUの一員であり、EUには英国、フランスという核保有国がある。さらにドイツ企業のシーメンスが核兵器を製造していたとされるフランスのフラムトム社を吸収合併している。つまり事実上ドイツは核保有国と言える。

    このようにIAEAはほとんど全精力を使って、日本の核武装化を阻止してきた。しかしインドとパキスタンが新たに核保有国になった。そして今回の北朝鮮の核実験である。IAEAの存在意義が問われると言おうか、実に間抜けた話である。ところがIAEAは間が抜けているとは誰も言わないのである。


  • 非核三原則の見直し論議
    今回の北朝鮮の核実験騒動で不思議なくらい米国と中国の動きが良い。米国が核不拡散に熱心なのは以前からである。しかし中国は、イランやパキスタンの核開発に鷹揚(おうよう)であったにもかかわらず、北朝鮮の核に対しては大変厳しい。

    これは中国が東アジアにおける核保有のドミノ現象を恐れているからである。北朝鮮が核保有国となれば、次は日本、韓国、台湾が核武装に動き出すと恐れているのである。特に日本が核武装をするとなったら、中国にとってまさに悪夢である。なんとしても北朝鮮の核武装化は阻止したいところである。

    米国も北朝鮮が核保有国になることの悪影響を深刻に受止めている。特にインド・パキスタンと違い、反米国家である北朝鮮の核保有は絶対に避けたい。また米国政府内では、北朝鮮が核保有国になれば、必ず日本が核保有に動くという観測がある。中国と同様、米国も日本の核保有を非常に警戒しているのである。


    このように日本が実際に核兵器を保有するかどうかは別にして、北朝鮮の核実験を契機に、核兵器保有の可能性を探るだけでももっと米国や中国を動かすことができるのである。反対に始めから日本の核保有の可能性が全くのゼロと分かっていたなら、今回のような米国や中国の素早い対応はなかったのではと考える。

    国際機関のIAEAは、大国がバックにない場合無力である。また対象国のガバナビリティーというものが関係してくる。構成員が法律や決め事を遵守しようとすること(または遵守する能力)をガバナビリティーと呼ぶなら、国際社会において日本のガバナビリティーは高い。一方、北朝鮮やイランのようにガバナビリティーの低い国々も多い。このようなガバナビリティーの低い国が増えれば、国際秩序というものがガタガタになる。


    これまでの議論をまとめれば、北朝鮮にこれ以上の核開発を止めさせるには、日本が一歩核保有に近づけば良いということになる。このことが直接的に北朝鮮を動かすことがなくとも、米国や中国を動かし、結果的に北朝鮮を動かすのである。したがって非核三原則の見直し論議などはこのためには極めて有効に機能すると考える。

    非核三原則は、昭和51年の核拡散防止条約(NPT)批准に合わせて、国会で決議したものである。しかしこれはIAEAなどの国際機関、そして核保有国が核拡散の防止に機能することが前提であった。ところが現実の世界では次々と新たな核保有国が生まれている。つまり非核三原則の前提が完全に崩れているのである。筆者などはインド・パキスタンが核保有国になった時点で、非核三原則の見直しの議論ぐらいは始めるべきと思っていた。もし仮に非核三原則を白紙に戻すくらいしておれば、中国はもっと必死に北朝鮮の核開発を止めさせる方向に動いたものと考える。



来週号は日本の国防・防衛問題のまとめである。

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06/10/16(第455号)「北朝鮮の核実験」
06/10/9(第454号)「安倍政権の生産性」
06/10/2(第453号)「安倍政権の発足にあたり」
06/9/25(第452号)「ポスト小泉の経済論議」
06/9/18(第451号)「ポスト小泉の経済と対米外交」
06/9/11(第450号)「ポスト小泉の対アジア外交」
06/9/4(第449号)「ポスト小泉について」
06/8/7(第448号)「郵政改革と宗教戦争」
06/7/31(第447号)「郵政改革論議の混乱」
06/7/24(第446号)「宗教・哲学と経済学」
06/7/17(第445号)「宗教と哲学への入門」
06/7/10(第444号)「劣勢のケインズ」
06/7/3(第443号)「トービン税について」
06/6/26(第442号)「自由放任(レッセ-フェール)の経済」
06/6/19(第441号)「筆者の税制改正案」
06/6/12(第440号)「筆者のニート対策」
06/6/5(第439号)「美しくない話」
06/5/29(第438号)「第三セクター鉄道の危機」
06/5/22(第437号)「テレビ番組の制作現場」
06/5/15(第436号)「日銀の実態・・憶測」
06/5/8(第435号)「日銀は魔法の杖か」
06/4/24(第434号)「もう一つ勇気を」
06/4/17(第433号)「格差とマスコミ」
06/4/10(第432号)「官僚の力と限界」
06/4/3(第431号)「日経新聞のダブルスタンダード」
06/3/27(第430号)「金融政策の失敗の歴史」
06/3/20(第429号)「量的緩和解除の波紋」
06/3/13(第428号)「コンビニ弁当の話」
06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」
06/2/27(第426号)「潜在GDPとGDPギャップ」
06/2/20(第425号)「労働力と経済成長」
06/2/13(第424号)「大衆社会における経済論議」
06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」
06/1/30(第422号)「ホリエモンと政治家」
06/1/23(第421号)「改革の旗手の危機」
06/1/16(第420号)「今年の景気予想」
06/1/9(第419号)「思考停止の日本」
05/12/19(第418号)「日本人の変質」
05/12/12(第417号)「日本的経営の行く末」
05/12/5(第416号)「アメリカ人」
05/11/28(第415号)「遠ざかる豊かな社会」
05/11/21(第414号)「移民問題と市場経済」
05/11/14(第413号)「ブリエアの解放者たち」
05/11/7(第412号)「第三次小泉内閣の感想」
05/10/31(第411号)「現実経済の乗数値」
05/10/24(第410号)「公共投資に伴う誘発投資」
05/10/17(第409号)「誘発投資の拡張版」
05/10/10(第408号)「経済理論上の乗数」
05/10/3(第407号)「政治家達の沈黙」
05/9/26(第406号)「大谷氏への公開質問状」
05/9/19(第405号)「デマの検証」
05/9/13(第404号)「選挙結果の雑感」
05/8/29(第403号)「今回の総選挙を読む」
05/8/22(第402号)「今回の総選挙の沿革」
05/8/8(第401号)「中国経済の本当の脅威」
05/8/1(第400号)「中国の為替戦略」
05/7/25(第399号)「経済のグローバリズムの行末」
05/7/18(第398号)「経済のグローバリズムの本質」
05/7/11(第397号)「郵政法案と小泉政権の行方」
05/7/4(第396号)「経済のグローバリズムと競争の公正」
05/6/27(第395号)「日本語の研究」
05/6/20(第394号)「公的年金とセイニアーリッジ」
05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」
05/6/6(第392号)「公的年金とマクロ経済」
05/5/30(第391号)「マクロ経済政策で解決するもの」
05/5/23(第390号)「ヴァーチャルなもの(その2)」
05/5/16(第389号)「ヴァーチャルなもの(その1)」
05/5/9(第388号)「中国進出の主導者」
05/4/25(第387号)「鎖国主義への誘惑(その2)」
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05/4/11(第385号)「ノストラダムスの大予言」
05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」
05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」
05/3/21(第382号)「人とグローバリズム」
05/3/14(第381号)「資本とグローバリズム」
05/3/7(第380号)「貿易とグローバリズム」
05/2/28(第379号)「マスコミの暴走」
05/2/21(第378号)「マスコミが流す誤った概念」
05/2/14(第377号)「日本のマスコミの権力指向」
05/2/7(第376号)「日本のマスコミの体質」
05/1/31(第375号)「財政当局の変心」
05/1/24(第374号)「経済成長の条件(その2)」
05/1/17(第373号)「経済成長の条件(その1)」
05/1/10(第372号)「中国経済の実態」
04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」
04/12/6(第370号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その3」
04/11/29(第369号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その2」
04/11/22(第368号)「構造改革派の常套手段」
04/11/15(第367号)「虚構の終焉(フィクション・エコノミクス)その1」
04/11/8(第366号)「第二次南北戦争」
04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」
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04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」
04/10/11(第362号)「日本経済のデフレ体質の分析(その2)」
04/10/4(第361号)「日本経済のデフレ体質の分析(その1)」
04/9/27(第360号)「豊かな社会ーー競争と共生」
04/9/20(第359号)「レーガンの規制緩和の実態」
04/9/13(第358号)「今こそ大胆な政策転換を」
04/9/6(第357号)「虚言・妄言が跋扈する世の中」」
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04/8/2(第355号)「日本の分割統治」
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04/6/21(第349号)「対談の論点(再)」
04/6/14(第348号)「対談の論点」
04/6/7(第347号)「富の分配と公正」
04/5/31(第346号)「小泉首相訪朝の成果」
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04/5/10(第343号)「日本経済の体質と財政政策」
04/4/26(第342号)「凍り付くマネーサプライ」
04/4/19(第341号)「デフレ体質の日本経済」
04/4/12(第340号)「火星の土地」
04/4/5(第339号)「円高は構造的」
04/3/29(第338号)「規制緩和に飛びつく人々」
04/3/22(第337号)「矛盾の出発点」
04/3/15(第336号)「日経の貧乏神」
04/3/8(第335号)「実感なき経済成長」
04/3/1(第334号)「為替介入ではなく財政支出を」
04/2/23(第333号)「為替介入への道」
04/2/16(第332号)「為替介入資金の働き(その2)」
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04/2/2(第330号)「為替介入政策の限界」
04/1/26(第329号)「今日の政治課題」
04/1/19(第328号)「今年の政局の課題」
04/1/12(第327号)「今年の日本の景気」
03/12/15(第326号)「日本の公的年金」
03/12/8(第325号)「足利銀行の破綻処理」
03/12/1(第324号)「日本経済を支えているもの」
03/11/24(第323号)「総選挙結果から見えるもの」
03/11/17(第322号)「総選挙結果の分析」
03/11/10(第321号)「総選挙の結果他」
03/11/3(第320号)「総選挙の予測」
03/10/27(第319号)「動態的会計による企業価値算定」
03/10/20(第318号)「道路公団、財務諸表の怪」
03/10/13(第317号)「藤井総裁解任劇」
03/10/6(第316号)「総裁選と総選挙」
03/9/29(第315号)「総裁選の総括」
03/9/22(第314号)「ドキュメンタリー総裁選」
03/9/15(第313号)「レポート総裁選・・その2」
03/9/8(第312号)「レポート総裁選」
03/9/1(第311号)「混迷の終始符」
03/8/25(第310号)「急がば回れ・・再び」
03/8/18(第309号)「自民党の総裁選に向けて」
03/8/4(第308号)「日本の実稼働率」
03/7/28(第307号)「設備投資の実態」
03/7/21(第306号)「企業経営と創造的破壊」
03/7/14(第305号)「頭が破壊されている人々」
03/7/7(第304号)「頭が混乱している構造改革派」
03/6/30(第303号)「経済の循環(その2)」
03/6/23(第302号)「経済の循環(その1)」
03/6/16(第301号)「経済政策の混乱」
03/6/9(第300号)「りそな銀行の件」
03/6/2(第299号)「規制緩和と日本経済」
03/5/26(第298号)「経済学と経営学」
03/5/19(第297号)「政府紙幣発行の認知度」
03/5/12(第296号)「滝田洋一氏への反論」
03/5/5(第295号)「政府紙幣発行政策の誤解」
03/4/21(第294号)「逆噴射の財政政策」
03/4/14(第293号)「危機管理下の経済政策」
03/4/7(第292号)「国債の管理政策」
03/3/31(第291号)「経済再生政策提言フォーラム」
03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
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