- 間抜けなIAEA
今週はまず北朝鮮の核実験について取上げる。爆発規模があまりにも小さかったため、今回の核実験は失敗だったという説が根強く流れている。そのため今後も核実験が続けられるという観測がある(北朝鮮首脳部と会談した中国外交部は、北朝鮮はもう実験をやらないと言っているが)。
今回の失敗の主な原因として「プルトニウムの核爆弾であったこと」と「無理に核爆弾を小型化したこと」の二つことが挙げられている。原子爆弾にはウラン型とプルトニウム型の二つがある。ウラン型の方が仕組みが簡素で製造しやすいと言われている。しかしウラン濃縮のための遠心分離器が膨大な電力を食うため、電力不足の北朝鮮は難しい方のプルトニウム型の開発を行ったという指摘がある。
また核弾頭をミサイルに搭載できるよう小型化を同時に行っていたと考えられている。核兵器は大型の方が作りやすく、小型化する方が難しい。実戦で使えるように各国で核兵器の小型化が試みられているが、最近になってようやく米国が成功したくらいである。このように北朝鮮は始めから高いハードルの核開発を行ってきたという観測である。
強力な兵器の開発と言えば、直に核兵器という発想がある。しかし核兵器自体は60年以上も前に開発された古い兵器である。ところがこの古い兵器を手に入れようと意地になっている国が実に多い。これは核兵器が恐ろしい兵器と長年言い広められてきたことが影響していると考える。
そのため核兵器はシンボリックな存在になった。何か核保有国が特別な存在として受取られている。特に日本ではそうである。しかし恐い兵器なら他にも沢山あるはずだ。他の大量破壊兵器としては化学兵器や生物兵器が知られている。筆者は、これらの大量破壊兵器より、強力で有効な兵器が既に開発されていたとしても不思議はないと考えている。
ところが日本では核開発に触れること自体が固い禁止事項になっている。非核三原則(持たず、作らず、持込ませず)の論議をすることさえタブーである。憲法の改正でさえ議論になっているのに、非核三原則に触れるだけで今日マスコミから猛攻撃を受けるのである。日本のマスコミ人は本当に頭がおかしいのである。
事実上、日本が核開発を行うことは無理である。IAEA(国際原子力機関)の査察が日本に対して特別に厳しいからである。IAEAの査察予算の10%が日本で使われている。驚くことに昔は予算の半分以上が日本の査察に使われていたという話である。つまりIAEAの存在と目的が日本の核武装の阻止であったと言える。最近聞いた関係者の話では、IAEAの日本に対する査察は以前と変わることなく厳しいと言う。
核開発の潜在能力が高い国としては他にドイツがあるが、最近ドイツは原子力発電に消極的であり、将来の脱原発を目指している。またドイツはEUの一員であり、EUには英国、フランスという核保有国がある。さらにドイツ企業のシーメンスが核兵器を製造していたとされるフランスのフラムトム社を吸収合併している。つまり事実上ドイツは核保有国と言える。
このようにIAEAはほとんど全精力を使って、日本の核武装化を阻止してきた。しかしインドとパキスタンが新たに核保有国になった。そして今回の北朝鮮の核実験である。IAEAの存在意義が問われると言おうか、実に間抜けた話である。ところがIAEAは間が抜けているとは誰も言わないのである。
- 非核三原則の見直し論議
今回の北朝鮮の核実験騒動で不思議なくらい米国と中国の動きが良い。米国が核不拡散に熱心なのは以前からである。しかし中国は、イランやパキスタンの核開発に鷹揚(おうよう)であったにもかかわらず、北朝鮮の核に対しては大変厳しい。
これは中国が東アジアにおける核保有のドミノ現象を恐れているからである。北朝鮮が核保有国となれば、次は日本、韓国、台湾が核武装に動き出すと恐れているのである。特に日本が核武装をするとなったら、中国にとってまさに悪夢である。なんとしても北朝鮮の核武装化は阻止したいところである。
米国も北朝鮮が核保有国になることの悪影響を深刻に受止めている。特にインド・パキスタンと違い、反米国家である北朝鮮の核保有は絶対に避けたい。また米国政府内では、北朝鮮が核保有国になれば、必ず日本が核保有に動くという観測がある。中国と同様、米国も日本の核保有を非常に警戒しているのである。
このように日本が実際に核兵器を保有するかどうかは別にして、北朝鮮の核実験を契機に、核兵器保有の可能性を探るだけでももっと米国や中国を動かすことができるのである。反対に始めから日本の核保有の可能性が全くのゼロと分かっていたなら、今回のような米国や中国の素早い対応はなかったのではと考える。
国際機関のIAEAは、大国がバックにない場合無力である。また対象国のガバナビリティーというものが関係してくる。構成員が法律や決め事を遵守しようとすること(または遵守する能力)をガバナビリティーと呼ぶなら、国際社会において日本のガバナビリティーは高い。一方、北朝鮮やイランのようにガバナビリティーの低い国々も多い。このようなガバナビリティーの低い国が増えれば、国際秩序というものがガタガタになる。
これまでの議論をまとめれば、北朝鮮にこれ以上の核開発を止めさせるには、日本が一歩核保有に近づけば良いということになる。このことが直接的に北朝鮮を動かすことがなくとも、米国や中国を動かし、結果的に北朝鮮を動かすのである。したがって非核三原則の見直し論議などはこのためには極めて有効に機能すると考える。
非核三原則は、昭和51年の核拡散防止条約(NPT)批准に合わせて、国会で決議したものである。しかしこれはIAEAなどの国際機関、そして核保有国が核拡散の防止に機能することが前提であった。ところが現実の世界では次々と新たな核保有国が生まれている。つまり非核三原則の前提が完全に崩れているのである。筆者などはインド・パキスタンが核保有国になった時点で、非核三原則の見直しの議論ぐらいは始めるべきと思っていた。もし仮に非核三原則を白紙に戻すくらいしておれば、中国はもっと必死に北朝鮮の核開発を止めさせる方向に動いたものと考える。
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