- ニートを公務員に
先週号まで話をしてきたリサーチ会社の設問はあと二項目ある。一つが税制であり、もう一つがニート問題である。今週はこのうち後者、つまりニート問題を取上げる。この設問とそれに対する筆者の回答は次の通りである。
【Q1】ニートについて。ニートについての政策が何かありましたらお書き下さい。※ニートとは雇用から離れ、教育も職業訓練も受けていない若者をさす。(例・ニート課税制など)
ニートを対象にした任期限定(任期は2年間程度)の公務員採用制度を提案します。なお、回答は一応ニートを対象にしていますが、フリータにもニートに近い問題があります。下記はフリータに対する対策も含んでいるものとご承知下さい。
【Q2】Q1の回答についてご質問致します。なぜ、その政策を打ちたてようと考えたのですか?(例・ニート課税制の場合・・・働いてなくても、成人であれば税金を払うべき。)
ニートが生まれたことについては、個人的な原因だけではなく、社会的・経済的な原因が考えられます。個人的な原因まではなかなか立入ることはできませんが、バブル崩壊後の日本経済の低迷が原因でニートになった人々も少なからずいます。この間、民間企業が新規採用を抑えたことがニート大量誕生に影響していると考え
られからです。したがって行政や政治がニートを救済することは妥当な施策と考えます。
将来の日本の豊かな国家を考える場合、高い所得水準が一つの前提になります。しかし所得格差をあまり広げない形で高い所得水準を維持するとなれば、ニートの存在が問題です。しかし企業は、昔のように新人を採用して教育を施すということに負担を感じています。つまり一旦ニートとなると、職能のレベルアップの機会がなくなり、ますます落ちこぼれることになります。またアルバイトを続けながら、専門学校に通って自らスキルアップを図る人もいるでしょうが、これは少数派でしょう。
ニートを一時的といえ公務員に採用することは、たしかに財政の負担になります。しかしニートを経済社会に参加させることによって、より大きな価値のある生産活動に従事してもらった方が、将来の日本の国にとって負担が軽くなり、好ましいことと思います。
【Q3】Q1の回答についてご質問致します。その政策はどのようなシステムになっていますか?(例・ニート課税制の場合・・・20代で無職の場合は住民税アップ。)
勤務時間の大半は教育に充てます。教育内容は、基礎学習と職業訓練です。基礎学習力があるものは、職業訓練が中心になります。その間、規定による手当(月額15万円程度)を支給し、年金・各種保険に加入させます。この制度が民間の職業専門学校と競合するという意見があるかもしれませんが、職業訓練の一部を民間の専門学校に委ねることも考えられます。
2年間の教育を受けている間に就職活動を行います。進路は、一般の民間企業、公務員、そして自営業です。一般の民間企業への就職が中心になると思われます。
しかし民間企業は、高齢の余剰人員を抱えており、新規採用に消極的かもしれません。その場合、ニート公務員を2名、ないし3名採用してくれる企業からは、1名の高齢従業員を公務員として採用する方法があります。これも任期限定公務員です。企業も従業員の若返りができ納得すると考えます。
また高齢従業員にも、利益を求める企業での生活に疲れ、もっと公的な仕事をしたいと希望する人も結構いると思われます。これらの高齢公務員には、民間企業での経験を活かした仕事をしてもらうことになります。ニート公務員の教育担当もその一つです。
以上が設問に対する筆者の回答である。この回答は、4年前の本誌02/2/18(第241号)「資金の使途(その2)」で紹介したものである。一見突飛な意見と受取られるであろう。ところが少人数ではあるが、ニート用の公務員枠を設けるという政策が最近現実に打出されている。ようやく本誌のような意見が受入れられる可能性が出てきたということである。
- またもや財政問題
日本においては、将来大きな問題になろうと思われる事柄が安易に取扱われている。ニート問題はその一つである。これを経済政策の観点から捉えるのではなく、個人の資質や家庭の問題に摺り替えられている。したがってニートに対して、「重い住民税をかけろ」と言った類の無責任でサディステックな意見が飛出す。このような事を言っている者は物事を真面目に考えていないのである。
このようなニートに追討ちをかけるような意見をはいている人々は多いが、それで問題が解決するわけではなく、だいたいそのような政策が実行できるはずもない。まさに酒場の酔っぱらいの言いぐさであり、ニートとは無縁な人々の自己満足の言葉に過ぎない。しかし今日の日本においては、一事が万事、これと同じような状況におかれている問題が山積している。年金問題なんかもその一つである(「年金未納者が悪い」「社会保険庁がけしからん」と言っておれば問題が解決すると思っている)。
これと同レベルの解決案が教育改革である。世の中に問題が起ると何でも教育せいにする人々がいる。特に戦後教育が問題になっているが、教育改革で全ての問題が解決するとはとうてい考えられない。むしろ戦前の教育を受けていながら「けちな権力」を得るため小泉支持に走った自民党老年政治家の情けない姿を見ていると、教育によって世の中を正すという施策はほとんど絶望的である。
実際、教育の内容を変えようとしても、人々の考えが異なっているのだから簡単ではない。教育基本法の改正一つをとっても長い時間をかけているのに、いまだに改正は実現していない。ましてや教育基本法の改正が現場にはたして浸透するかも不明である。日本を中国や北朝鮮と勘違いしている人々が実に多いのである。
教育によって世の中の問題を解決すると主張する人々は、問題の解決案を持っていないことを自白しているようなものである。解決案がないなら「アイディアはない」と正直に言うべきである。筆者は戦後教育が正されるべきと考えるが、とてもこれによって世の中の問題の全てが解決するとは思っていない(少しは良くなるかもしれないが)。むしろ教育問題に逃げる者が跋扈することによって、本当の問題解決を遠ざけると考える。
ニートに限らず、失業者を公務員に採用することは、決して不自然な政策ではない。民間が人員を受入れる余裕がない時期に、公的機関がこれらの人々を受入れることは理屈の通る政策である。先週号で戦後満州からの引揚者を大量に国鉄が採用した話をした。このような政策は、失業者が溢れていた戦争直後の日本において人心を安定させるために有効であった。むしろ新天地への移住と囃し立てられドミニカに送られた人々が悲劇的であった。
景気が悪い時代に公務員を増やし、景気が良くなれば公務員の採用を減らせば良いのである。ところが今日政府は「デフレは脱却していない」と言いながら、公務員の数を減らそうとしている。頭がおかしいのである。ところが日本の経済学者やマスコミは、このような異常な政策に反対するどころか逆に賛同している。
資本主義経済、あるいは自由主義経済は放っておけば不均衡が生じる。このような場合には政府が介入することになる。ところが政府の経済への介入の全てが「悪」という狂信的な自由主義万能思想が蔓延している。ニートの問題なども、この不均衡の現れの一つであり、このような問題にこそ政府が介入すべきである。
本誌が取上げている問題は、どれも財政支出によってほとんど解決が可能である。ところがどうしても財政ということになれば、財政赤字というヴァーチャルな問題にぶつかる。別に物価が上昇したり、金利が高騰しているわけでもなのだから、日本において財政は問題ではないと筆者は言い続けているが、このことを理解する人々はいまだ少数派である。もういい加減に、政府は日本の財政が問題ないことを正直に白状すべきである。このような状況が続けば、ニートの問題だけではなく、日本中がおかしくなる。
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