平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




06/5/22(437号)
テレビ番組の制作現場

  • リサーチ会社からの電話
    ちょうど半年ほど前、筆者にあるリサーチ会社からいきなり電話があった。テレビに出演し自分の政策を訴えてみませんかというものであった。このリサーチ会社は、あるテレビ制作会社の下請で、テレビ番組に出演させるめぼしい人を見つけ出す仕事を全国的に行っているのである。どうも本誌02/3/11(第244号)「通常では行わないような経済政策」を読んで、筆者に連絡を取ってきたようだった。

    制作するテレビ番組の内容は、一般の人が自分の考えた政策を各政党の代表者に訴え、その政策を採用するかどうか判定させるといったものである。政党の代表者がその政策を気に入れば政党名が書かれた札を挙げるといった、一種の政治バラエティー番組である。昔の「スター誕生」を模した仕組と思えば分りやすい。


    リサーチ会社の担当者は、上記「通常では行わないような経済政策」の中の「紙幣に有効期限を設け、有効期限が過ぎると価値を減額させる」という奇策が特に気に入ったようで、これでオーディションを受けてくれという話であった。しかし当該コラムを読んでもらえば分かるように、筆者が推す政策はこれではなく政府貨幣(紙幣)の方であった。

    しかしリサーチ会社の担当者は、番組のインパクトを考えるとやはり「紙幣に有効期限」が面白いと言うのである。この政策は「ゲゼルの貨幣」という有名な話だと説明しても、担当者は引下がらない。筆者も気が進まないので、「他にもっと良い人がいる」とその人の住所と電話番号を伝えた。すると担当者は「それでは他の政策でも結構です。まずアンケート用紙をメールするので、とにかく設問に答え返送して下さい。」とのことであった。


    アンケートには1.「税制について」、2.「男女平等について」、3.「ニートについて」、4.「その他に政策ついて」といった四つの大きな設問があり、さらに各々にブレークダウンした質問があった。

    筆者は、各々の設問に回答し、直に返送した。2.「男女平等について」については、ちょうど当時問題になりはじめた皇室典範改正問題を取上げた。この回答は本誌06/2/6(第423号)「皇室典範改正法案に一言」でご紹介した通りである。問題は4.「その他に政策ついて」であったが、筆者は迷わず年金問題を取上げた。


  • 公的年金制度の改正
    この設問に対する筆者の回答は次の通りである。
    【Q1】その他に政策ついて。もしあなたが政治家になったら、「この政策を是非実現させたい」と考えているようなものがあったら、お書き下さい。

    消費税の導入と年金積立金取崩しによる公的年金制度の改正。


    【Q2】Q1の回答についてご質問致します。なぜ、その政策を打ちたてようと考えたのですか?

    日本の公的年金制度は、大きな問題と矛盾を抱えています。まずそれらを列記します。
    1.公的年金は、人口が減らず、経済が順調に成長することが前提になっています。したがって人口が予想以上に減少したり、経済が低迷すると前提条件が狂い、たちまち保険料が値上がりしたり給付額が減額される仕組になっています。年金の他に収入のない人々は、将来の生活設計が立たなくとても不安を感じています。

    2.世代間の年金給付額の格差が大き過ぎます。

    3.年金未納者の数が膨大であり、将来一千万単位の無年金者の出現が予想されます。

    4.年金の積立金が増加することが、マクロ経済に対するデフレ圧力となっています。

    公的年金の積立金は、国民年金10兆円、厚生年金137兆円、共済年金50兆円と合計で197兆円(2001年3月末)もあります。この積立金額は先進各国の中で突出しています。例えば日本の厚生年金の積立金は、給付額の5.5年分もあります。ちなみに米国が1.5年分であり、英国が1.2ヶ月分、ドイツにいたってはたった1ヶ月分です。これは日本の制度が基本的に積立方式である対して、ヨーロッパ各国が給付に必要な資金を、その時の税金や保険料で調達する賦課方式を採用しているからです。

    積立方式は、将来の給付に必要な金額をあらかじめ積立ておく制度です。制度発足当時は、日本は労働人口がどんどん増え、経済が高度成長であったため財源に問題はなく、また給付対象者も少なかったため給付水準を国際的に見て高くできたのです。

    しかし今日、経済の低成長、平均寿命が延びたことによる給付対象者の増加、さらに小子化という想定外の事柄が起っているのです。このため経済の動向によって、給付額の減額(給付開始年令の延期も含む)、さらに保険料を増額すると言ったいわゆるマクロスライド制を昨年(今日から見れば一昨年)の年金制度改正で導入しました。

    マクロスライド制によって年金制度自体は維持されるでしょうが、年金加入者は将来に大変な不安を持つことになりました。今日の経済動向、平均寿命の延び方、小子化の進展の具合を見ていると、将来の年金給付額が減額されることは必至です。

    また日本経済のデフレ体質の大きな原因の一つが、とほうもなく巨額なこの年金の積立金です。


    【Q3】Q1の回答についてご質問致します。その政策はどのようなシステムになっていますか?

    具体的には、まず年金目的の5%程度の消費税の導入します。ただしすぐには消費税の実施を行いません。現在、公的年金の積立金は、合計197兆円(2001年3月末)あり、消費税の実施の前にこの積立金の取崩しを行います。例えば積立金の残高が100兆円になるまで、消費税の実施を延期するといった具合です。

    つまり今日の積立方式の比重を小さくしながら、賦課方式を並行して導入しようというものです。ただ若い世代の人々が納得する給付水準を確保するには、将来、消費税税率を多少上げる必要があるかもしれません。

    積立金の取崩しのスピードにもよりますが、これにより年金の給付水準を下げなくても良くなったり、また年金保険料の徴収額の減額ができます。さらにこれによって全国民一律の年金制度を導入します。つまり国民年金は2階建、厚生年金・共済年金は3階建になります。

    この政策によって年金未納者の無年金問題が解決し、国民年金加入者の年金給付額が増えます。また厚生年金・共済年金については、年金保険料が減額されるにもかかわらず、将来の給付予定額は減額されません。

    ただし年金積立金の取崩す方法に工夫が必要になります。積立金は、国債や株式、そして財政投融資(財投債、財投機関債)などで運用されています。したがってそのまま取崩した場合、国債や株式が暴落する可能性があります。そこで年金積立金を担保にした債券を発行します。

    年金積立金担保債券は、原則的には市中で売却することになります。しかしこれも金額が大きくなると、国債と競合し、国債の価格が下落し、長期金利上昇という事態が考えられます。その解決策には、日銀による年金積立金担保債券の購入が考えられます。

    この年金制度改正で、年金給付額が安定し、さらに年金保険料が減額されるため、マクロ経済に大きなプラスとなり、景気は確実に良くなります。また税収も増えます。まず景気が良くなることによる税収増が考えられます。さらに年金保険料の減額によって、企業の社会保険料負担が減り、利益が増え、法人税が増えます。同様に従業員の課税所得が増え、所得税が増えます。地方税も増えます。

    税収増の一部は、年金積立金に繰入れます。これによって10年で取崩す年金積立金が15年、あるいは20年持つこともあり得ます。また景気が良くなれば、株価上昇によって年金積立金が増え、消費税の実施をさらに遅らせることができます。

    年金積立金担保債券の償還は、経済の状況を睨みながら、徐々に行います。景気が過熱してきたなら、日銀は購入した年金積立金担保債券を市中に売却したり、あるいは年金積立金で運用している国債や株式を直接市場で売却することが考えられます。

    また企業の社会保険料負担が減ることによって、企業の正社員採用の意欲も高まり、失業も減ります。

    以上である。まさに従来からの筆者の主張をまとめたものである。



来週は今週の続きになるが、第三セクター鉄道問題を取上げる。

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