- ライブドアとヒューザー
今週は皇室典範改正を取上げるつもりでいたが、もう少し時期を見た方が良いと考え、このテーマはしばらく延期する。やはりライブドア問題を取上げる必要があろう。16日夕刻の強制捜査で、17日の小嶋ヒューザー社長の証人喚問が霞んだ。世間には、17日の証人喚問の印象を薄めるための強制捜査の日程という穿った見方もある。
そのことについては不明だが、両者には共通点が多い。どちらも規制緩和という世の中の風潮に乗り、業績を拡大してきた。具体的には、ヒューザー社が建築関連法の規制緩和であり、ライブドアが株式分割に関する規制緩和などである。ライブドアの株式分割が問題になり、その後株式分割のルールが厳しくなった。おそらく今後、建築確認についても規制が強化されるであろう。
両者はマンション関連ということでも共通している。ヒューザー社は文字通りマンション販売会社であり、ライブドアはダイナシティというマンション販売会社を傘下に収めた。偶然なのか、地検の内偵捜査を開始したのは昨年の9月と言われており、ライブドアがダイナシティの買収を開始したのがちょうどこの頃である。
両者は自民党というより、小泉政権の中枢に近い存在であった。小嶋社長と昵懇の伊藤公介衆議院議員は、自民党森派の一員であるというより、小泉首相の唯一と言っても良いほどの側近である。またライブドの堀江氏も自民党というより、イエスマンの武部幹事長を通じ、小泉首相に繋がっている。自民党の中には、先の衆議院選挙では無所属で出馬したのだから、堀江氏は自民党と関係がないとボケたことを言っている者がいる。しかし公認の話は自民党から持ち掛けたのであり、事実上これを堀江氏の方から断っているのである。
両者は、何となく闇の世界との関係を臭わせる雰囲気が漂っている。小嶋社長は、証人喚問の時こそ大人しいと言おうか、やつれた感じであったが、昨年の参考人招致の際にはどなりまくっていた。とても普通の事業家ではないと思われる。ライブドにも色々な噂が絶えない。ニッポン放送株買占めの時にも、不足する買収資金を闇から高金利で調達したという暗い話があった。
問題が世に出るやいなや、両者ともに事件の核心に位置するキーマンが自殺している。このことが問題解明の障害になっている。奇妙なことに自殺した元ライブドア幹部の野口氏は遺書を残していない。またカプセルホテルに泊まっていたとか、非常ベルが元で発見されたとか不可解なことばかりである。
- 財政出動なしの景気回復
ライブドアの堀江社長に対するマスコミの報道姿勢は、16日の強制捜査から一変した。いやマスコミは以前から堀江社長に対しては否定的だったと言うかもしれない。しかし衆議員選においてはヒーロ扱いであった。抵抗勢力の代表である亀井静香氏に、改革の旗手である若手の新興企業家が挑むという図式が作られた。おかげで亀井静香氏の当選はギリギリであった。
だいたい問題になっている偽計取引と風説の流布は、ニッポン放送買収騒動の前のものである。おかしなことに、今頃になってライブドアの株式分割が問題になっている。ところでテレビによく登場し、ライブドアの株式分割による錬金術を解説している経済評論家の山崎元氏は、楽天経済研究所の客員研究員である。ところがこの楽天も株式分割を何回も行っているのだから笑ってしまう。
本誌は、株式市場でのライブドアの問題を05/3/28(第383号)「株式に関する非常識」と05/4/4(第384号)「法律と現実社会との間」で取上げた。特に後者で株式分割の問題点を取上げた。株式分割問題の根底にはポリシーのない商法改正の歴史がある。そしてこの歪みをついたのがライブドアなどの新興企業のファイナンス戦略であった。
株式分割による時価総額の増大という奇妙な現象は日本独特のものである。ようやくこれが問題として認識されはじめた。しかし日本の株式市場には他にも奇妙なことがある。子会社の上場である。株式市場からの資金調達が必要なら、親会社が一括して行えば良いはずだ。親会社がファイナンスして、資金を子会社に融通すれば事足りるのである。市場における親会社の株価も子会社の財務内容を反映した連結決算を前提に動く。
ところが日本では親会社に実質支配されている子会社が堂々と上場する。子会社の株式公開は諸外国の市場では見られない行為である。ライブドアの錬金術は、株式分割とこの公開子会社の利用である。今のところようやく株式分割だけが問題にされているが、子会社の株式公開のいかがわしさを指摘する声はない。
ヒューザー社や総研の耐震強度偽装事件の根源は、建築確認制度の抜け穴を突いたことである。ライブドアの場合は、投資事業組合を使った不明朗な資金の流れと企業買収に関する誤った情報の開示である。しかし筆者は、これらの出来事に対してこのような表面的な解釈で結論を出すべきではないと考える。
筆者は、これらを「財政出動をしなくとも景気が回復する」という構造改革派の念仏を実現するための一連の施策の結果と考える。建築確認機関の民営化や建築基準の緩和は、建築物の安全を犠牲にしても民間資金を活用し、建築を促進することが目的であった。もっとも建築基準法の緩和は、米国の対日要求の一つでもある。阪神大震災があって建築基準を強化すべきところを、なんと逆に緩和したのである。一方、2001年の株式分割の要件緩和は、文字通り株式分割を盛んにすることであった。これによって株式市場への資金を呼込み、低迷する株価を上昇させることが目的であった。
これら以外にも日銀の超金融緩和政策の継続もこの一環である。円高に対する35兆円の常軌を逸した為替介入もその流れの一つである。日本経済のデフレ体質からの脱却には財政政策が必要である。しかし構造改革派は、構造改革でそれが実現できるといった大嘘をついてきた。この大嘘を実現するため、日本経済の仕組の歪みがどんどん大きくなっている。財政支出を渋り、円高不況対策が金融政策に偏重したため、土地取引市場と株式市場が狂ったバブル期を思い出す。
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