- 為替操作国からの輸入に制限
中国経済の行末には、二通りの見方がある。このまま当分高成長を続けるというものと、近々崩壊するという見方である。筆者は、一応04/12/13(第371号)「第一回財政研交流会」の最後の方で述べたように、中国政府が今日行っているような強引な経済政策を続ける限り、経済の成長はまだ続くと考える。ただし筆者は、むしろ強引な政策が中国国内だけでなく、対外的に使われることを危惧する。
中国経済の行末を占うには、中国経済の実態を知る必要がある。しかし中国に関しては、統計数字自体が信用できない。社会主義国であり、計画経済の国でありながら統計数字が整備されていない。人口についてもいくつかの説があるくらいだ。また香港を含めるかどうかで、経済の数字はかなり変わってくる。
このようにあやふやではあるが、注目される経済数字が二つある。異常に大きな設備投資比率と貯蓄率である。設備投資のGDP比率が43%という数字を最近見かけた(筆者としてはこれが民間の設備投資だけの数字なのか疑問ではあるが)。また貯蓄率は40%という説がある。ただし40%の貯蓄率と言っても、家計の貯蓄率なのか国民所得に対する比率なのかはっきりしない。しかしともかく設備投資と貯蓄が際立って大きいことが、中国経済の特徴であることは確かである。
日本の設備投資のGDP比率は、04/10/18(第363号)「日本経済のデフレ体質の分析(その3)」で述べたように、15%くらいである。米国は日本より数パーセント小さい。ただし日本も高度成長期には設備投資のGDP比率が20%をちょっと超えていた。
いかに中国の設備投資のGDP比率が、異常に大きいかがご理解できるであろう。しかしここで大きな疑問が湧く。GDPの43%もの設備投資を行っていながら、経済成長率がたった9%前後しかないことである。高度成長期には日本は中国の半分くらいの設備投資のGDP比率にもかかわらず、毎年10%を超える経済成長率を達成していた。
どうも中国は、生産面では資本係数が異常に大きい。つまり中国では非効率的な設備投資が大々的に行われていると見受けられる。また需要面では、需要が供給を下回り、大きなデフレギャップが発生している可能性が強い。貯蓄率が大きいということは、需要が不足する可能性を示している。どこかに大きな製品の不良在庫がある可能性が強い。筆者は、中国の経済成長率が小さい原因が、これら生産面と需要面の双方にあると見ている。
中国では、生産性の低い設備投資が大々的に行われている。しかし一方設備投資が行われることによって、たしかに生産力は年々大きくなっている。つまり大きなデフレギャップが発生している可能性が強く、これを埋めているのが輸出と政府の公共事業・軍事支出、さらに皮肉にもこの非効率な大規模な設備投資である。中国経済の現状については、インフレとデフレの二通りの見方がある。都市部の不動産は金余りでインフレになっているかもしれないが、国全体ではかなり深刻なデフレと筆者は見ている。
しかしこれだけ非効率的な設備投資が大きければ、倒産も多いはずである。したがって大量の不良債権が発生していることが想像される。これまで不良債権は、国営企業のものだけが政府によって処理されてきた。もっともこれだけでもとてつもなく大きな額であった。
しかし民間にも巨額の不良債権が存在するか、あるいは今後発生する可能性が強い。このため中国政府は、各地で行われている小さな非効率的な投資を規制し始めている。しかし非効率な投資を止めたら、さらに需要が不足することになる。中国はジレンマに陥っている。さらに中国全体の消費が不足していることが状況を悪化させている。要するに金持は消費せず貯蓄ばかりし、貧乏人は所得が低いため消費ができないのである。テレビによく見かける、中国人の金持が車を買って、海外旅行で高額商品を買っているシーンは、例外的な風景ということになる。
このように中国経済は、混乱状態にある。西村真悟衆議院議員は、テレビ番組で中国経済を「闇市経済」と称していた。筆者はこれを適切な表現と思った。ポイントはどこまで中国政府が強引な政策を続けられるかである。今後、もし中国の設備投資や政府支出が減少したり、また貿易摩擦が激化して輸出が減少する事態になれば、中国経済はピンチに陥る。そこでそのような事態が起った時、一体どの国が余った大量の中国製品を買うのかが問題になってくる。
最近、本田が中国で生産した乗用車を欧州に初めて輸出した。おそらく中国国内での乗用車の販売が早くも頭打ちになっていることが影響していると想像される。しかし欧州で売れるということは、中国製の乗用車が日本にも輸出される可能性が出て来たことを意味する。ところで日本政府はこれまで、日系企業が中国で生産した製品の輸入を拒否できるのか考えてみたこともないと想われる。筆者は、中国からの経済侵略に備えるため、中国みたいな為替操作国からの製品輸入を制限する法律の整備を急ぐべきと考える。
- 企業の国内回帰政策
ここ数年、日本では中国への経済進出が大変なブームであった。中国に進出しないことが、経営者の怠慢という雰囲気まであった。しかし中国への進出企業の目的は、為替操作で作られたタダのような人件費だけである。ところで反日騒動の頃から、日本企業の中国経済の見方が少し変わったように見受けられる。中国が抱える数々のリスクにも目を向け始めたのである。
さらに今回、人民元の2%の切上が実施され、次は為替のフロート制への移行が話題になっている。為替がフロート制になれば、中国は企業の進出先として全く魅力がなくなる。しかしフロート制に移行せずとも、一段の為替切上圧力が続くことは当然あると考える。
ところで中国への日本企業進出ブームの仕掛人は色々いた。もちろん主役は中国政府である。為替の大幅な切下げだけでなく、色々な好条件を並べ、日本の有力企業の誘致を行った。日本政府の中でも、ジェトロや外務省のチャイナースクールの面々が中国進出を促した。
マスコミも中国進出ブームを煽った。エコノミストなのかレポータなのかよく分らない財部誠一氏という人物も、ブームの火付け役を演じていた。しかし一番影響力があったと見られるのは、やはり日経新聞である。日経は今日でも頻繁に中国特集を組んでいる。
日経の中国への入れ込み方は異常である。日経の以前の社長が中国に生まれ、戦後日本に引揚げて来たためか、中国に特別の思い入れがあったことが影響しているという話がある。また中国が特殊な国ということを無視して、中国への日本企業の生産拠点の移転が、日本の構造改革にとって好ましいというとんでもない意見も日経には頻繁に出没する。
日経新聞の中国経済に関する報道は極めて中国側に片寄っている。人民元が早晩切上げるといった観測記事を、薄い根拠で何回も掲載していた。何年もの間、同様の観測記事を流していたせいか、日経は読者に既に人民元の切上が実現したかの錯覚を与えている。しかし今日実現したのはたった2%の切上であった。また鈴置という日経の特派員は「人民元を切上げても、中国は合理化で簡単にこれをクリアできるので切上要求は無駄だ」「日本は中国と競合しない分野に活路を見出せ」とまるで人民日報のような記事を何度も寄せていた。
野方図な日本企業の中国進出は、国内の産業の空洞化を生んだ。先週号で述べたように、国内の産業の空洞化は中国の常軌を逸した為替操作が原因である。ところが日本政府はこれに対して全く無策であった。無策だったというより「何が何だかさっぱり分らなかった」のが実情であろう。むしろジェトロという政府機関がいまだに日本企業の中国進出を促進しているのだからあきれる。為替操作によって他国を経済侵略している中国に加担するジェトロは、犯罪的であり反日的な組織である。
日本の産業の空洞化の原因は異常に安い人民元の為替水準である。しかし既に2万社から3万社の日本企業が中国に進出してしまった。日本政府としては、第一に中国に為替を大幅に切上げることを要求する必要がある。一方、中国に進出して「失敗した」とか「しまった」と思っている企業も多いはずである。そこで日本政府は、一旦中国に進出した企業の国内回帰政策を行うべきである。これには各種の優遇策や補助金などが考えられる。
日本では、まことに奇妙な考えが流布されている。日本経済の再生には外資の進出が必要というプロバガンダである。外国に日本への投資を誘致するキャンペーンまで行っている。しかし日本に金がないという話ではない。銀行は融資先がなく、国債ばかり買っている。また日本の企業は、これまで国内より中国など海外を重点にした投資を行ってきた。
政府のやるべきことは国内の投資を増やす施策である。具体的には、第一に内需を拡大する政策への転換であり、第二に不正な為替操作国への抗議と対処策の実行である。やるべきことをやらず日本企業を中国に追いやっておきながら、不良外資の導入が日本経済の再生の道とは、関係者の頭は完全におかしい。
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