平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


毎週、経済などをテーマに独特の切り口で論評。最新号はトップページ。

97/2/24(第4号)
為替レ-トの動向を考える(その1)
  • かなり急速に下がって来た円の為替レ-ト(ドル高と言ったほうが良いかもしれない)もG7の蔵相会議後ほぼ安定している。では今週は、今後の為替動向の予想と関心のあるポイントについて述べてみよう。
    ただ、為替の動向と言っても、今日・明日と言う短期的なものと、もっと長期的な傾向つまりトレンドと言うものがある。しかし、筆者は正直言って、短期的な為替の動向はよくわからないし、あまり興味もない。いつも思うのだが、短期的な為替の動きについて色々説明する人の話を聞いてもあまり納得できない。その説明もたいてい「ある市場関係者」の伝聞である。つまり「風が吹けばオケ屋が儲かる」と言ったたぐいのものである。また、各国の通貨レ-トは市場参加者の「美人投票」で決まると言うケインズの言葉を引用する向きもある。筆者も短期についてはそんなところであるが、長期のトレンドについてはかなり根拠を持って予測できるのではないかと考えている。まず、長期の為替レ-トについての予測の前に、短期の為替動向の要因として巷間よく言われる事柄が、いかに根拠が薄弱か説明したい。

  • 一番言われるのは「内外の金利格差」である。これについては後でのべる。それ以外は次のようなものである。
    1. 「有事のドル買い」 過去においては、突発的事件が起こるとけっこう相場は動いたが最近はあまり大きな反応はないようだ。今ならさしづめ「朝鮮半島の情勢や要人の健康状態など」である。しかし情報の発達もあり、影響も限られる。特に米国自信が関係している場合はドル売の材料になったりする。
    2. 「原油の価格動向」 以前は原油が高くなると、米国が産油国と言う理由で「ドル高」の材料にされ、最近では日米ともに原油輸入国となり、むしろ産業構造の省エネが進んでいると言う理由で原油高は円高要因になるそうである。

    このように現象が同じでも起こっても時によって為替レ-トに及ぼす影響を正反対のように語られる。はなはだしきいたっては、「教科書問題」までも為替に影響あるといわれた時期も過去にはあった。実際これらの事象の経済実態に及ぼす影響を計量的にとらえることは難しく、市場関係者がそれらを全部納得して、為替売買を行っているとはとても考えられない。
    上げ相場の時には上げ要因のことばかり強調され、たとえ下げ要因となる現象が同時に起きていても、それは無視されるか、それとも軽視されるだけだ。相場が反転すればその反対のことが行われるだけである。いずれにしてもとても科学的とは言えない。
    そこへいくと「内外の金利差」による説明の方は、ちょっともっともらしい。つまり米国の金利が高いから資金が流れ「ドル高」になると言う説明である。しかし一般的には物価上昇の大きい国の通貨ほど金利が高いはずで通常は為替はそれに応じ下がるのが普通で、金利で儲けても為替差損をこうむれば近似値的にはどちらの為替で運用しても大きな差異は生じないはずだ。逆にいえばどちらの通貨で運用しても差が生じないレベルに金利水準は決まるはずである。つまり両国の物価水準に合わせて金利が決まると言ってもよいだろう。先物の為替相場も両国の金利差を反映してその分円高になっている。
    もし金利差でドルが買われるとするなら、それはドルが将来確実に高くなるか、または現在と同じ水準を維持(正確にいえば金利差によってはその分ドル安になってもかまわないが--現在の金利差なら5,6円位)されると言う確信がある場合だけである。今日にいたってもドルを買っている人々が本当にこの確信を持っているのか、はなはだ疑問である。(先週号で現在の日本のドル買い要因を筆者なりにまとめておりますので ご覧下さい)

  • 筆者のこのような考えに対し、「日米の長期金利の実質金利には大きな差はないが、短期の実質金利の差異が大きい。これが今までの円安・ドル高要因ではないか」と指摘する向きもあるかもしれない。事実、米国の短期の実質金利の方がは昔から高く、最近では約2%の後半近くになっている。しかしこの状態(米国の方が実質金利が高い)は前からずっと続いているのであり、その間には当然円高の局面もあったわけであるから、金利差だけで円安を説明するのは無理である。仮に今後円高局面になっても「米国の方が実質金利が高い状態」は続く出あろう。この現象は構造的なものであり、「日本の資金余剰」に対し「米国の資金不足」を反映するものである。従って短期の実質金利でのみで円安を説明するなら、半永久的に円安が続くことになる。

  • このように為替相場が必ずしも合理的に動いているとは考えられない。いや、合理的ではないから、しばしば相場が行き過ぎることがあるのだろう。このように短期的な為替の動きを予想することは困難である。
    このような相場で利益を得るのは、たぶん一番資金力があり、声が大きい者であろう。ある日突然ル-ルを変えてくるのである。昨日まで「金利差があるから買い」と言っていながら今日からは「失業率が低いから売り」という具合だ。一旦流れを変えることができたら勝ちである。動きの悪いディ-ラ-はこのル-ル変更に気がつかず、大損する。こつこつためた木端のような利益を一辺にまとめてもっていかれるのである。まるで昨日まで「囲碁」をやっているつもりが、今日からは「将棋」だと言われるようなものである。ずっと「囲碁」やっていたつもりがいきなり「王手飛車とり」と言われ、びっくりするのである。

  • このように今日・明日または一ヵ月後といった為替レ-トを予想することは難しい。しかし、長期にわたる動きにはある程度の規則性と言うものがあるはずである。次週号では長期の為替のトレンドと忘れてはならない政府・日銀の動きについて述べたい。
    最後に、筆者の為替についての予測は、第1号で述べたように「政府の経済政策に変化がなく」「外需頼りの景気回復」を前提にすれば、「円高局面を向かえることは避け難い」と言うことである。詳しくは次週号をご覧下さい。



日常的に起こる経済問題をトーク形式で解説
日頃忙しいビジネスマンへのオンラインマガジン



97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レ-トを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」