- 郵政民営化法案とマスコミ
今週は急遽予定を変更し、郵政国会の話を取上げる。衆議院で郵政民営化法案の採決がなされ、わずか5票の差で可決した。法案は参議院に送られ、8月13日の会期末までに審議と採決が行われる予定である。ところで今回の緊迫した採決で、もし法案が否決されていたならば、衆議院は即解散だったという話が出ている。また来月の参議院の採決で否決となれば、小泉首相は衆議院を解散するのではないかという観測が出ている。ところがマスコミには、このように政治的に緊迫しているという緊張感が全くなかった。当初、テレビの実況は予定されておらず、急遽、衆議院本会議での採決のテレビ中継が決まったようである。
随分前から、筆者は今回の事態を予想して、「マスコミが白痴化」していると指摘してきた。自民党内がこれだけ緊迫して政局が怪しくなっているのに、連日「サッカーの話」と「貴乃花騒動」しか扱わないマスコミはまさに白痴化の極みである。何だか様子がおかしいと、マスコミが騒ぎ出したのは採決が行われる前日の7月4日からである。それまでは法案が修正されれば、反対派の結束も瓦解して郵政民営化法案はすんり通るだろうというのが大方の見方であった。テレビによく登場する岸井というヒゲを生やした毎日新聞の論説委員なんかは、採決の当日7月5日の朝のテレビ番組で、なんと「反対は13〜15人、棄権は10人前後」と堂々と予想していた。
もっともこの岸井氏は、日頃から極めて偏向した発言が目立つマスコミ人の一人である。それにしてもこの人物の予想は酷かった。しかし穿った見方をすれば、これは小泉首相側の工作員的発言とも受取れる。「反対派が反対票を投じても無駄な抵抗なんだから反対はやめろ」という反対派に対する脅しのメッセージである。もしそうではなく岸井氏が新聞人としての経験と情報を基にし、客観的に「反対は13〜15人、棄権は10人前後」と判断したのなら、岸井氏には全く政治を見る目がないということになる。真面目に職業を変えることを考えるべきである。まさに素人以下の見識であり、恥ずかしくて今後テレビに出演できないような失態である。
それにしても郵政民営化法案の採決が近付くにつれ、奇妙なことが多くなった。日経新聞に、巨大宗教団体のカラー刷の全面広告が掲載された。経済新聞に宗教団体が大きな広告を出してどのような意味があるのだろうか。日経新聞に話を聞きたい。またテレビにもこの宗教団体のスポット広告が頻繁に流れる。また大新聞は、郵政民営化法案はずっと修正さえ行えば、簡単に衆議院を通過するという観測記事を流し続けていた。狙いは岸井氏と同様に「反対派が反対票を投じても無駄な抵抗だから反対はやめろ」という意味であろうか。酷い解説者は、反対派の活動を最初から「茶番」と決めつけていた。一体どの辺が「茶番」なのだ。「茶番」はむしろ大新聞の論説と解説だったことがはっきり証明されたではないか。
それにしても反対派に対する自民党の執行部と公明党の脅しは常軌を逸している。まるで「ヤクザ(本誌ではこの言葉を初めて使う)」そのものである。とても日本は民主国家とは言えない状態になっているのである。かろうじて37名が反対票を投じ、14名が投票を棄権してくれたお陰で救われた思いである。
これまで郵政国会の様子をほとんどマスコミは取上げなかった。しかし漏れ伝わってくる話は酷いものばかりであった。委員会では反対派の議員が小泉首相に説明を求めると、首相は「あなたと私が考えが違うのだから仕方がないじゃないか」と言ったセリフの連発であった。このような答弁ばかりなら、議会を開く意味がない。また小中学生がこの小泉首相のセリフをまねたら、日本の教育現場は一体どうなるのだろうか。
また亀井静香勝手連の掲示板に、民主党の小泉俊明衆議院議員のメールマガジンの一部が投稿されていた。面白いのでちょっとこれを紹介する。投稿には「【郵政民営化チラシ】に関して、竹中大臣による疑惑の発注を受けたと言われる受注業者の政府に対する内部文書が国会で明らかになった。 その内容は、国民を『財界勝ち組企業、都市部ホワイトカラー』や『構造改革・抵抗守旧派』など【IQ(知能指数)の高い層】と、『小泉内閣支持基盤である主婦・老人層=具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する』【IQの低い層】に分類し、後者に絞って民営化チラシを配布せよ、という代物だ。」とあった。読者の方々もこの機会に、「一体自分はどちらに分類されるのか」考えてみては。またそれで行けばテレビで「IQの低い層」に対するプロパガンダを担っているのが猪瀬氏であろう。
- 経済活性懇話会と郵政事業懇話会
昨年の6月17日、筆者はもう一人と一緒にある国会議員を訪ね話をした。帰り際、その政治家に「経済活性懇話会の提言がまとまり、今日それを記者発表する。時間があるのなら聞いておけ」と言われた。そこで我々二人は早速会場の自民党本部に駆付けた。
「経済活性懇話会」は派閥横断の経済に関する勉強会である。メンバーは主に橋本派と亀井派で構成されていた。会長は藤井孝男議員(橋本派)、事務局長が能代昭彦議員(橋本派、後に無派閥)であり、この二人の政治家が記者発表を行った。「経済活性懇話会」は小泉政権の経済政策に反対する政治家の集まりと見て良い。この時の提言は主に「金融」に関するものであった(提言は当時の額賀政調会長に提出済み)。記者発表会場には各マスコミの記者がかなりの集まっていた。記者の大半は若手である。
記者発表が終わり自民党本部を出る時、たまたま若い新聞記者と一緒になった。我々は「今日の会見の様子は新聞に載るの」と訪ねた。しかしその記者は「メンバーが離党するなり、政局に繋がらない限り、記事になることはないのでは」と答えていた。我々は「そのようなものか」と思った。つまりどれだけまともな提言を政治家が行っても、取上げないのが今日のマスコミと分かったのである。結果として日本では、構造改革派の論調だけがマスコミによって垂れ流されることになっている。
郵政民営化法案の国会審議が現実のものになるにつれ、これに反対する自民党の政治家が結集し、郵政事業懇話会ができた。誕生した当初はメンバーの数も少なかったが、会を重ねる度に参加人数が増えた。最終的には軽く100名を超える衆参の国会議員が集まり、一大勢力となった。筆者はよく集まったものと感心した。
ところが集まっている郵政事業懇話会のメンバーをよく見ると、経済活性懇話会とかなり重なっているのに気付いた。経済活性懇話会は主に橋本派と亀井派で構成されていたが、郵政事業懇話会の方はこれに堀内派、高村派、そして無派閥の国会議員が加わっている。つまり経済活性懇話会のウイングを少し伸ばし、メンバーを増やしたものが郵政事業懇話会である。
マスコミ(イコール自民党の執行部)の作ったシナリオは、郵政事業懇話会がどんなに人数を増やしても、郵政民営化法案が修正されれば反対派は瓦解し、最終的には衆参の両院を簡単に通過するというものであった。大半のマスコミは反対派の活動を「茶番」とさえ喧伝していた。しかしこれはあくまでもマスコミが作ったシナリオである。
ところで反対票を投ずるものと思われた議員が、最後に賛成票を投じたケースがある程度あった。しかしこれは法案に修正があったからではなく、常軌を逸した強烈な脅しがあったからと筆者は推察する。どのような事があったかについては、おいおい明らかになるであろう。反対票を投ずるつもりでいたが、最後に賛成票を投じざるを得なかった議員はさぞかし無念な思いであったろう。筆者は、最後に涙ながら賛成票を投じた議員を責める気は全くない。また中には小泉政権になって変な法律がどんどん通る(筆者の感想では裁判員制度など、今後は人権保護法など)ことに危機感を持って、郵政法案に反対票を投じた政治家もいたと聞く。
郵政事業懇話会のコアとなっている人々は、経済活性懇話会に結集して一年半前から小泉政権の経済政策、党運営に反発していた政治家である。郵政民営化法案に反対することはその延長線上にある。ちゃんと反対に腰が入っているのだ。むしろ郵政法案によってより多くの政治家を結集することができたということである。したがって簡単な法案修正で、これらの政治家が賛成に回ると考える方がおかしかったのである。筆者もそのことに気が付き、マスコミの郵政国会への無関心さに警鐘をならしてきたつもりである。
郵政民営化法案は参議院に回された。マスコミは参議院での反対票の予想と解散の見通しを報道し始めた。たった一週間前まで(若貴騒動ばかり取上げていた)とは様変わりである。次の関心は参議院での採決と衆議院の解散である。しかし参議院の本会議の採決に行く前に、委員会で否決されることも十分あり得ると考えられる。
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