平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




05/3/14(381号)
資本とグローバリズム

  • 外資は貧乏神
    ライブドアによるニッポン放送株取得をきっかけに、時間外取引の規制強化が検討されている。さらに今国会では法案化が微妙であるが、外資系企業による放送局への出資規制がクローズアップされている。外資が放送局に影響力を強めることが問題ということがこの根拠になっている。

    ところで外資の影響が問題ということになれば、他の産業でも事情は同じである。たとえば防衛産業への外国の影響は考えものである。そして一般の企業でも外資の存在が大きくなれば、外資が企業経営に大きな影響を与える。どうしても外資は短期的な利益を重視する。

    企業には様々な利害関係者がいる。株主、従業員、下請け企業、取引先、地域住民、政府・地方自治体などである。今後もずっと今日の立地と市場を相手に経営して行くという企業経営と、いつ何時会社を転売して良いという企業経営では、経営手法に自ずと違いが出てくる。実際、外資の存在が大きくなるにつれ、最近の日本の企業経営は短期的な利益を求める傾向が強くなっている。


    外資にとって一番の関心事は、出資している企業の利益である。つまり今日日本に進出している外資は、企業の利害関係者の中でも一番株主の利益を重視する立場にある。これが日本の国民や国家にとって好ましいことなのか疑問である。たしかに世界の中には資本が乏しいため、外資の進出を好意的に受止める国もある。しかし少なくとも史上最低水準で金利が推移している日本において、資本が不足していることはない。

    外資の日本企業への資本参加は、その企業の合理化を進め、競争力を強める。しかし全て利害関係者に利益を与えるものではない。合理化によって従業員がリストラされ、下請け業者が整理されている。このことが原因で失業が増えれば、政府・地方自治体の負担が増えることになる。外資の進出で喜んでいるのは、株主と日経新聞くらいである。

    ところが外資の進出が良いことだと国民は完全に洗脳されてしまっている。これはある掲示板で投稿のあった自民党若手国会議員とタレントの対談本の一部である。「自民党の若手議員の勉強会で、今後の日本経済のシュミレーションで、株価を一定ラインに設定して、それ以下になるような企業は市場から淘汰される。それで、全体としては日本の株価は下がる。そこに、外資が入る。それによって全体としては日本の株式市場が活性化し、元気のいい日本の投資家も市場に戻り、株価が上がり景気も底上げする」との記述がある。自民党にしても民主党にしても、変な教育を受けた若手政治家は頭がおかしいというより病気である。

    日本の有力企業への外資の出資比率は30%から40%である。たしかに出資比率が高い企業の業績は良い。しかし企業業績が良いの反して、日本経済は低迷している。韓国では、有力企業への外資の出資比率はもっと高い。大手の有力企業は皆50%を越えている。特に銀行はほとんど外資が占有している。しかし韓国でも同様に、有力企業の業績が良い割には、国の経済は不振であり、政権の支持率が低迷している。まさに外資は経済を活性化させるのではなく、むしろ国民にとって貧乏神である。


    このように日韓の有力企業への外資の影響が大きくなっているのに対して、意外にも米国企業への外資の出資比率は小さい。有力企業の外人持株比率は15%くらいなものである。日本は、莫大な海外資産を持つが、ほとんどを外債などの形で持っており、株式はほとんどない。たとえば米ドルへの政府・日銀の為替介入資金は、米国債の購入に充てられる。米国債を売った米国の投資家が、その資金で日本の有力企業の株式を購入していると言った図式になる。また米ドルの価値はずっと下げ続けているが、これを大量に買っているのが日本であり、反対に円高で恩恵をうけているのが米国の投資家である。


  • ライブドアの「だまし討ち」
    2月23日の日経新聞で、滝田洋一氏が日米の海外投資の巧拙について解説している。昨年末の米国の純債務は約3兆ドルと推定される。ところが対外資産からの受取り額が、負債への支払い額を300億ドルほど上回ったということである。何と差引き3兆ドルも借金の方が大きい米国が、収益がプラスとなっている。さらに米ドル安による海外資産の評価益を加味すれば、プラス額はもっと大きくなる。米国が資本の自由化を主張したがるわけである。

    米国の03年の直接投資収益率は、10.3%である。特に対日では13.9%と目立って高い。反対に海外の対米の直接投資収益率の平均は4.2 %となっている。欧州が4.5%、日本が5.0%である。ほぼ米国の長期国債の利回り程度である。つまり日本が金利5.0%で米国の投資家に貸出し、米国投資家はこれで10.3% の収益を稼いでいる(特に対日では13.9%)ことになる。さらに米国は、日本や韓国の企業を支配下に置きつつある。それに対して日本には米国債(特に日本政府の持ち分は二度と売れない)があてがわれている。


    筆者は、米国の対日の直接投資収益率が13.9%と極めて高いことに注目している。日本は長期金利が1%台と金利が極めて低い国である。このような国で13.9%もの高収益を得ることは並み大抵のことではない。単に米国の投資家が運用に巧みという説明ではとても納得できない。かなり「えげつない」手法を用いなければ、このような高収益は得られない。

    たしかに日本の株式市場は、外人が主導している。外人投資家が買って来たと言って相場は上昇し、そしていつの間にか外人は高値で売り抜けている。為替相場も同様である。ある時までは為替の変動要因は「金利差」と言っていたのが、ある日突然、為替相場を左右するものは経常収支や経済成長率であると言い始める。このオピニオンリーダも外資と睨んでいる。

    しかし日本では、どうもこのような相場観だけでなく、経済の見方や経済政策までが外国人に操作されている可能性が強い。今回のライブドア騒動で、図らずも、数多くの日本のエコノミストや評論家が米国の投資銀行の顧問になっていることが明らかになった。これまで彼等がメディアが登場し、外資にとって都合の良いコメントを行ってきた可能性が強い。

    筆者は、今日の株式市場は合法的な「鉄火場」と認識している。株式市場はほぼゼロサムゲームであるから、勝つ者がいれば、必ず負ける者がいる。したがって外資が毎年これだけの莫大な利益を得ているとしたなら、国内の投資家が損をしているのである。手っ取り早く言えば、日本の投資家は気取っていても、米国資本の良い「カモ」になっているのである。したがって筆者の考えは、外資に勝てなくとも負けないためには、日本の資金運用者は株式市場での資金の運用を止めることである。ところが日本の政府は、「貯蓄から投資」と言って、株式市場への資金流入の旗ふりをやっている。

    ここ10年くらいの経済政策を見ても、外資にとって都合の良い政策ばかりである。法人税や所得税が引下げられたのに対して、消費税はアップされた。何故なのか分からないが、企業の株式の持合いが否定されてきた。また異常がないくらい公共投資が否定されてきた。ほとんどの日本人は一生日本に暮らすのであるから、国土の建設を否定する風潮がまん延することがおかしい。

    たしかに外国人にとって、日本における公共投資は全く意味がない。公共投資をやるくらいなら「減税」を行えと主張するであろう。目立たないが、小さな政府論も彼等が主導して来た可能性がある。日本国内で失業や犯罪が増え社会が荒れても、外国人の彼等には関係がない。カバンにこれまでの儲けを詰め込んで、次は中国、次はインドと移ってゆけば良いのである。


    少し前、日本での取引行為が違法であると、シティ銀行を金融庁が営業停止にした。よほど酷いことをやっていたのである。また都心で不動産を買い漁って、ハゲタカファンドが活躍している(中には気の良いハゲタカもいるが)。また今回ライブドアに対して、リーマンブラザースはMSCBといういかがわしい転換社債を引受、資金を貸付けている。さらにリーマンブラザースは、堀江氏の持株を借り、ライブドア株にカラ売りを仕掛け巨額の利益を得ているという観測がある。さらに今回の件も、元々はゴールドマンサックスが断った案件という話がある。

    どれもえげつない話ばかりである。ところが日本のエコノミストやマスコミは、このような外資の行動をグローバルスタンダードとかアメリカンスタンダードと解説している。しかしこれらの外資が、米国本国でも同じようなことを行っているかと言うとそうではない。日本だからこそこのような行動を行っていると考えられるのである。つまり日本における外資の行動は、必ずしもグローバルスタンダードとかアメリカンスタンダードと言ったものではない。


    フジテレビがTOBを掛けているのに、時間外で大量の株式が取引された。「これは違法ではないのだから、合法だ」「このようなことに制限を加えることによって株式市場は死んでしまう」という意見が飛び交っている。しかしライブドアのやったことは明らかに「だまし討ち」である。「だまし討ち」は一般のアメリカ国民が心の底から嫌う行為である。ただしここで言う「一般のアメリカ国民」とはまさに一般の人々であり、経済専門紙や株式業界紙の読者ではない。

    米国では、合法か違法かの問題ではなく、「だまし討ち」という行為が問題になる可能性が強い。第二次世界大戦で日本はハワイの真珠湾を奇襲した。しかし米国民はこれは「だまし討ち」といまだにしつこく問題にしている。一方、日本では、在米大使館の職員の宣戦布告文書の何故手交が遅れたかを問題にしている。ところがアメリカ人はそんな些末なことを問題にしているのではない。「だまし討ち」は「だまし討ち」と認識しているのである。リーマンブラザースも、米国内なら、とても今回のライブドアが行ったような行為なんかに加担することはないであろう。このように日本があまりにも「ちょろい」ので、不良外資が日本に全員集合状態になっていると筆者は認識している。  



来週は外国人労働者とグローバリズムを取上げる。

第三者割当増資は、ライブドア側の差止請求が認められ、フジ側が破れた。フジ側は100%の勝利を目指して、無理な対策(増資額をあまりにも大きくさせ過ぎた)を行ったことが裏目に出たようである。ライブドア側の方がM&Aに長けた法曹人を揃えているようだ。フジ側は何かを犠牲にすることを覚悟しなければ、この危機的な状況を脱出することが難しくなった。追加的な金銭的な支出か、あるいは株主代表訴訟を覚悟したような奇策である。

亀井静香勝手連の掲示板のアドレスが変更された。新しい掲示板には亀井静香勝手連のトップページから入ってもらいたい。亀井静香勝手連のアドレスは(亀井静香勝手連のホームページhttp://www.nb-j.co.jp/katteren)である。



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